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#スタートアップ

「SUSANOOが取り組む3つの社会テーマ」ソーシャル・スタートアップ・アクセラレーター・プログラム「SUSANOO」コーファウンダー・孫泰蔵さん

2014.04.07 

前編に続き、SUSANOOコーファウンダー・孫泰蔵さんの「前口上(本取組の紹介)」をお送りします。Airbnb、Uber、Google Carなどシリコンバレーの事例から"スタートアップ"の意味をひもといた前編に続き、後編はイノベーションを生みだす「オプトアウト」の文化と、SUSANOOが取り組む3つのテーマについてまとめました。

前編:人々の生活を変える"ソーシャル・スタートアップ"を応援したい SUSANOOファウンダー・孫泰蔵さん

写真:代々木能舞台にて”ソーシャル・スタートアップ”について語る孫泰蔵さん

イノベーションを実現するために、民間自ら規制や法案をつくる

Googleのロボットカーの開発担当者に、「ところで、ロボットカーは公道を走ってもOKなんですか?許可は取っていますか?」と尋ねたところ、「いやいや、何も取ってないよ。イリーガル(違法・非合法)だね」と言うのです。

「イリーガル?それって会社として大丈夫なのですか」と驚いたのですが、「そう、イリーガルだよ」と担当者は平然としていて、全然話が噛み合いませんでした。 アメリカでは「オプトアウト(opt out)」といって、「法律に書いていないことは、基本やってもOK」というカルチャーがあります。そういった中からGoogleのロボットカーのような既存の法律に縛られないイノベーションが生まれてくる。

でも野放図にやると問題が起こるということで規制ができる。一旦ルールが確立されたら、それは厳守する。これがアメリカ式のオプトアウトです。 一方で日本は「オプトイン(Opt in)」、法律に書いていないことは「グレーゾーン」といって、基本的にやってはいけないことになっています。この文化の違いは、イノベーションを生みだす上で、非常に大きな差となっています。 SUSANOOキックオフイベントの様子 Google Carの担当者の話に戻ると、彼の「イリーガル」は、日本でいう「違法」という意味ではなくて、「法律に定められていない」という意味だったのです。だから、「法律で決められていないこと=違法、やってはいけないこと」だと思っていた僕と話が噛み合わなかった。

そして彼らは、ロボットカーを実現するために、自ら必要な規制や法案を行政に提案したことをとても誇らしく思っています。いくらオプトアウトの文化だと言っても、ロボットカーのような社会的影響の大きい取り組みを勝手にやるのはよくないと、全米自動車協会やカリフォルニア州政府と規制法案を作成したそうです。

僕はそれを聞いて目からウロコが落ちました。これこそ「民間による公共に対する貢献」だと思ったのです。 他にも、「そもそも道路を走る必要があるのか」と考え、ロボットヘリコプターを開発しているスタートアップもあります。都市の高層マンションに住む高齢者にお弁当を届けることを考えた時、陸路をトラックで走って、マンションの上層階まで配達員が運んでいくより、ロボットヘリコプターが配送センターから部屋の窓へ直接届けたほうが効率的だというアイディアです。

まるでSF映画の世界ですが、こうした革新的な取り組みが次々に事業化されています。 僕はかれこれ15年以上スタートアップの世界にいますが、これまでに経験したことがないような急激な変化が、ここ数年で起きています。この変化を後押ししているのは、モバイルネットワークの発展です。今までのネットワークは、パソコンが主体だったので、変化は家やオフィスの中に限られていました。それがスマホやタブレット、その他のデバイスに組み込まれて外に出たことで、劇的な変化が生まれているのです。 ソーシャルスタートアップ

SUSANOOの3つのテーマ 1.Reducation 2.Dual life 3.Republic

こうしたスタートアップのうち、特に「市場の失敗」に取り組むものを”ソーシャル・スタートアップ”と呼んでいます。経済学でいう市場の失敗とは、例えばホームレスの支援や環境保護のように、サービスの対価がもらえないために、ビジネスになりづらい分野のことを指します。

こうした領域はこれまで行政やNGOが担ってきたのですが、公平性が重要な行政では効率が悪かったり、伝統的な手法では解決できなかったりすることがあります。そういった領域において、イノベーションを通じて人々の生活と世の中を変えていく起業家が“ソーシャル・スタートアップ”です。 reducation SUSANOOの第1期では、3つの分野におけるソーシャル・スタートアップを支援したいと思っています。1つめは、”Reduation(レデュケーション)”。これは、Re(再びという意味の接頭語)とEducation(教育)をつなぎあわせた造語で、「教育をもう一度見直す」という意味を込めています。教育というと、学校の先生や親がするものとか、子どもや若者が対象というイメージがあります。

でも、本当にそうだろうか。僕たちは、先入観にとらわれていないだろうか。かつては、地域コミュニティが教育を担ってきたし、社会がめまぐるしく変化し、かつ寿命が伸びている昨今、教育は若者だけのものとは限りません。教育に関するニーズとサービスを新しくつなぎなおすことで、イノベーションを生みだす。これが”Reducation”です。 dual life 2つめが、”Dual Life”。日本の地域に目を向けると、高齢化や人口減少など、色んな課題があります。一方で、都市にも特有の社会課題はたくさんあります。僕らが考えたのは、2つの生活を両立できないかということです。どちらか一方だけの課題に取り組んでもなかなか解決しないので、これらをつなぐことで何か新しい価値を生み出せないか。都会に住みっぱなし、田舎に住みっぱなしというのではなく、都会と田舎を行き来する。あるいは、消費者でありつつ、生産者にもなってみる。

ひとりの人が複数の生活を並行して楽しむ中で、同時に地方や都市の課題を解決する仕組みができないか。そういった問題意識で掲げたのが、この”Dual Life”というテーマです。 republic 3つめは、“Republic”、「パブリック(公共)を見直す」というテーマです。公共サービスだから行政に任せておけばいいという姿勢ではなく、パブリックのあり方を自分たちでリデザインしよう、というものです。公共の無駄や非効率を、激的に改善していくようなソーシャル・スタートアップが出てくるといいなと思っています。

これら3つのテーマには、人々の生活を大きく変えていく可能性があると思っています。絶対に実現したいというアイディアと熱意をもったソーシャル・スタートアップと、お金だけでなく、知恵や人脈を使って、一緒に社会を変えていく。これが、今回SUSANOOというプログラムを立ち上げた僕の想いです。

前編:人々の生活を変える”ソーシャル・スタートアップ”を応援したい

 

 

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石川 孔明

石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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