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#経営・組織論

NPO・ソーシャルビジネス向け融資「CHANGE」での融資は2年間で総額約2億円に

2016.02.25 503view 

西武信用金庫は、NPOやソーシャルビジネスなど社会や地域の課題解決にチャレンジする組織を「資金面」と「経営面」で応援する「西武ソーシャルビジネス成長応援融資『CHANGE(チェンジ)』」という融資制度を提供しています。過去2年半の間で35件、総額約2億円の融資を実行してきました。

他の金融機関ではなかなか例がないNPOやソーシャルビジネスへの融資に、なぜ西武信用金庫は本業として取り組んでいるのでしょうか?

今回は、『CHANGE』の活用団体と西武信用金庫によって行われたパネルディスカッションのなかから、なぜ西武信用金庫がNPO・ソーシャルビジネスを応援し続けるのかとういう背景や想いについて、西武信用金庫・常勤理事、業務推進企画部長である髙橋一朗さんのお話をご紹介します。

西武信金1

西武信用金庫・常勤理事 髙橋一朗さん

業界に先駆けた融資制度を生み出したのは、地域への深い理解だった

西武信用金庫は、その名の示す通り地域の信用金庫です。中小企業や地域のひとのために何ができるかというのが創立の目的の一つでした。この10年近く、地域向けの貸出を増やし、集めたお金を地域に融資する比率を70%まで引き上げ、金融庁からは「日本で一番しっかりやっている」とお褒めの言葉をいただけるまでになりました。

そうしたことを実現できた背景には、お取引先のみなさんの経営支援をさせていただく際の、私たちの姿勢があったと自負しています。 これまで職員一丸となって、我々自身が企業の一部となり、お客さまの一部となり、売上を上げたり、技術を開発したり、一緒に利益を上げていくんだという姿勢を保ってきました。

また、そのなかでNPOやソーシャルビジネスに対する支援についても、およそ15年の歴史があります。融資商品を作ることを決めたときは、NPOという言葉自体もほとんど世の中に浸透していない時代だったと思います。しかし、「地域はいずれ、自治体だけでは支えきれなくなる。けれども一方で、自治体からこぼれ落ちた事業を担い、活躍する方々がたくさん出てくるはずだ。NPOやソーシャルビジネスは、その受け皿になっていくはず」と考えたことで、融資制商品をスタートしました。

以降、資金面を支援する制度を整えるとともに、業務提携による支援体制の充実にも力を入れてきました。我々は金融機関の人間ですから、それぞれの専門の分野や、みなさんのお仕事についてはわからないことだらけなのが正直なところです。そこで日本財団さんやETIC.さんのような、それぞれの分野に長けた方々と業務提携をしたり、大学との連携、中小企業診断士や税理士、最近では大手企業となど、横断的な業務提携を行いうことでみなさんの活動を支援させていただいています。

決して我々だけで、というわけではなく、こうした方々のお力をお借りしながら地域のみなさんを支援する体制を整えてきたというわけです。

西武信金2

20年前から1日の営業は4〜5件に。挑戦のための組織変革をいとわない姿勢

我々は業界に先駆けて、NPOやソーシャルビジネス向けの融資制度を整えてきました。しかし未だに他の金融機関では、NPOやソーシャルビジネスへの融資は後ろ向きです。

それは、組織の変革なくして支援を実行することが難しいという側面があるからと考えています。しかし、それでも当金庫はそうした取り組みを続けてきました。

まず我々が行ったこととして挙げられるのが、NPOやソーシャルビジネスを手掛けるひとたちを支援する体制作りです。

通常、信用金庫や地銀が行っている営業活動では、いまだに1日30件近く、もしくはそれ以上の企業に訪問していることは少なくありません。当金庫では、そうした営業形式をおよそ20年前に止めています。現在は1日に4〜5件ずつ訪問するようになりました。その代わり、その4〜5件にじっくり時間をかけるようにしているのです。

NPOやソーシャルビジネスを手掛ける方々を支援する際には、ときにじっくりと目指している社会についてお話をうかがい、具体的にどのような手法でそれを実現して行くのか一つずつ策を練る必要があります。つまり、時間をかけなければなかなか必要な支援が実現できないのです。

NPO・ソーシャルビジネスへの融資のリスクは低い

ここまで当行の取り組みについてお話いたしましたが、ここで金融業界全体におけるNPO・ソーシャルビジネスへの融資の状況について少し言及させていただきたいと思います。

現在、NPO・ソーシャルビジネス向けの融資は、他の金融機関ではほとんど事例がありません。いくつか理由はあるようですが、一番の理由はNPOやソーシャルビジネスに対する不十分な理解による先入観であると思います。

残念ながら、「NPOやソーシャルビジネスを行う方たちは危ない」、「何をやっているかわからない」、「すぐ潰れるんじゃないか」といった先入観を持った金融機関が多いのが現状です。しかも、1回も貸したことがないにも関わらず、です。

我々は、『CHANGE』を始める以前から、10年ほどで約300件のNPO・ソーシャルビジネス向けの融資を行ってきました。その間、しっかりと返済をいただけなかったケースはたった1件だけなんです。ほとんど0と言いたいくらいです。

この理由は明確です。NPOやソーシャルビジネスを手掛けるみなさんは、地域から求められている仕事をしているからです。地域にニーズがある限りは事業が続くに決まっています。だから、事業自体には、実はリスクは少ないのです。

ただし、想いが強いぶん数字になりづらいこともあるので、そこは経営者のみなさんにもご注意いただきたいところです。「私たちは正しいのに、なんで融資をしてもらえないんだ!」と独りよがりな状態になってしまうと、地域にも受け入れられなくなってしまいます。

こうした状態から抜け出し、地域に還元される事業を行っていただけるのであれば、私たちもしっかりご支援させていただけると思いますよ。

西武信金3

同じ「目指すべき社会」を持つ仲間として

地域のニーズに応えていくことで事業に継続性が生まれるという点に触れましたが、これはそもそも私たちが、NPOやソーシャルビジネスに取り組むみなさんをご支援すべき根本的な理由でもあります。

信用金庫は限られた地域内でのみ営業できる金融機関です。すなわち、同じコミュニティのなかでNPO やソーシャルビジネスに取り組むみなさんが活動を通じて解決しようとしている問題は、私たちの問題でもあり、同じ「目指すべき社会」を持っているはずだと私は考えています。

実際地域には、私たちだけでは解決できないことや、取り組みきれないことがたくさんあります。そこでNPO やソーシャルベンチャーのみなさんに融資をして、私たちの代わりに問題解決に取り組んでいただく。その代わりに、資金や経営ノウハウについてはサポートして協業していくという感覚が私どもとしては強いですね。

そして、地域を一緒に作って行く立場だからこそ、NPO やソーシャルビジネスに取り組むみなさんには融資の使い方には気をつけていただきたいというのも本音です。

「時間を買いたい」、そんな時こそ融資を活用して欲しい

融資の金額は決して安いものではありません。手元の資金でやりくりをし、資金を増やすというのが純然たる状態だと私は思っています。ただし、あるケースの場合には、融資を積極的に活用していただきたいと思っています。

それは、「時間を買うケース」です。「時間を買うケース」というのは、具体的に2パターンあります。

一つ目は、タイムラグを埋めるという意味合いで「時間を買う」というケースです。 例えば、行政の仕事を受託していて、行政からの支払いが半年や1年に1回だけ。しかし、スタッフの給与やさまざまな経費はかかるというようなケースがこれに当たります。立て替え払いには限界がありますから、融資を受けたいというケースは多いですね。

もう一つは、中長期的な目標を前倒しで達成するための使い方です。実行したい事業のためにお金を貯めてから行動に移せば、利息もかからないし、頭を下げてさまざまな調整を行うことも減るので良いのでしょう。しかしながら、特にソーシャルビジネスの場合には事業形態上大きな利幅が期待できず、非常に長い期間をかけないとそれが実現できないという場合も多いです。

また、自治体からの助成金だけを利用していたら数十年はかかってしまうという場合には、達成までの時間を早送りするために資金を利用するのは必要な融資と言えるでしょう。みなさんの事業は地域からの要望があり、待っているひとがいるわけですから。

NPO・ソーシャルビジネスへの金融支援が世の中のスタンダードになる日を目指して

私たちの取り組みも15年を迎えるタイミングとなりますが、こうした取り組みが特別なことではなく、日本中で行われて、目立たなくなるくらいの未来が早く来てほしいと心から思っています。

さらに15年後を想像すると、もっとこうした動きが活発になるだろうと私は信じています。

世の中自体も人口減少社会になり、公共だけでは地域に対して賄えないことばかりになってくることは間違いありません。そうしたなかで、足りないことは自分たちでやろうと。そう考える人たちの受け皿がNPOやソーシャルビジネスであり、融資させていただくみなさんがそのお手本となるような存在となるのではと思います。

だからこそ、私たちはみなさんの理想の社会の実現のためになる活動に賛同して、精一杯ご協力をしたいと思っています。 夢や想いが強いぶん、ときに上手く数字が上がらなかったり、下手をすると数字の部分まで夢のような状態になってしまったり、ということもあります。そういうときは、どうぞ私たちを頼ってください。

現実的な数字の計画を立てて実行できる状態を作る支援をさせていただくのが、我々の使命だと思っています。

この記事を書いたユーザー

村上 萌

村上 萌

1988年静岡県生まれ。高校卒業後、管楽器の修理人を3年間経験後一念発起して大学へ。法政大学卒業後は人材系企業で自社運営の新卒採用求人サイトの大学・学生向けプロモーションや、中途採用人材紹介の法人営業に従事。2015年3月より、配偶者の転勤により南アフリカ共和国在住。現在はクラウドソーシングでコラム執筆などを行っている。

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