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「社会関係資本が、生徒のレジリエンスに影響する」DRIVE×NEWVERYトークライブ"いま、キャリア教育を考える"レポート(1)

2013.10.13 267view 

有山篤利先生(聖泉大学教授)、今井紀明さん(NPO法人D×P 共同代表)、岩切準さん(NPO法人夢職人 代表理事)、斉藤寛子さん(フリーキャリアアドバイザー)、山本繁さん(NPO法人NEWVERY 理事長)、渡辺一馬さん(一般社団法人ワカツク 代表理事)ら6名のキャリア教育実務家が集まり、これからのキャリア教育を考える機会となったDRIVE×NEWVERYトークライブ「いま、キャリア教育を考える」。どんなやりとりがなされていたかを、数編に分けて紹介します!

子どもの「原体験」「人との出会い」を、体験活動で養う

山本:前半では、どんな子どもたちを対象に、どんな活動をされているか、どんな問題意識を持っているのかを話していけたらと思います。まずはNPO法人夢職人の岩切さんからお願いいたします。

岩切:10年前ぐらいから、主に学校外での文化芸術活動や自然体験活動を東京都心部で行っています。一番下だと4歳ぐらいから、上は小中学生が主な対象です。大学生が中心となりつつ、社会人も関わって、地域全体で子どもたちの成長を支えていく取り組みです。僕自身もともと東京の下町出身で、血縁関係がなくても面倒を見るのが当たり前みたいな文化で育ちました。週末に同い年の子たちと遊ぶよりは、地域のおじさんと遊んでもらうほうが楽しくて、魚釣りなどによく連れていってもらいました。高校生の時には、地域の子ども会でジュニアリーダーという子どもたちの面倒を見るお兄さん役をやり、大学生の時には、児童養護施設や各地のNPOで子ども関係のボランティアをしていました。

そんな中で、自分の地元で看護師をされているひとり親のお母さんと出会いがありました。「実は週末に子どもを預かってくれる先がない。平日は学童があるんだけど、自分は看護師だし入院している患者がいるから土日はどうしても働かなきゃいけない。ずっと家においておくわけにもいかないしとても困っている」という話を聞きました。もともと起業するつもりはありませんでしたが、「じゃあお子さんお預かりしますよ」という流れになって、2,3人ぐらいからスタートして、今は210名前後を預かっています。

「キャリア教育」の定義はそれぞれ違うと思うんですけど、僕は、「教育」は社会で活動する力をつけるということなので、そもそも「教育=キャリア教育」だと思っています。そして、実際に社会で活躍する力を身に着けていく上で、1つめに重要だと思うのが「原体験」です。大学時代は心理学を専攻していたのですが、メンタルヘルスの観点からも、子ども時代の多様な経験が非常に重要だと感じました。就職活動をしても、自分の好きなことと嫌いなことでさえうまく説明できない。「やってみたけどこれはうまくいかないな」「なんかわからないけどすごく好きだな」とか、子ども時代に体験させることが大事です。

2つめは、「人との出会い」。昨今、孤立状態にある家庭を心配しています。祖父母や親戚など、子どもを預けられる環境が近くにある人はいいんですが、そうでない家庭もいっぱいあります。地域でフォローアップしていければいいのですが、それも簡単ではありません。各家庭が独立してしまっていて、なかなか学校や地域単位で繋がりが生まれていかないし、価値感が混ざっていきません。親や先生以外の様々な大人との関わりがその子の視野や価値観を多様化させていきます。うちは体験活動を中心に、学生や社会人など様々なバックグラウンドを持った大人を巻き込んでやっています。

セレブ学童と公立学童?所得格差が可視化される、子どもの世界

岩切:あとは地域で子どもを見ていて感じる問題は、所得格差です。もうホントに、年々凄まじいスピードで広がっています。親が持っている所得というリソースによって、教育格差や健康格差などが子どもたちにも反映されています。子どもたちの世界も分断してしまっていて、お金がある家庭は習い事に行ったりして、あまり暇がありません。東京の子どもはもうびっくりするぐらい忙しくて、3月の初めぐらいに学校に行くと、受験で子どもがクラスに数名しかいないというエリアがあります。通っている塾によってヒエラルキーもあったり、結構殺伐としていますね。地域と関わるのが好きだったり、やんちゃが大好きな子どももいますが、公園に行っても誰もいないと言います。行政がハードをいくら整備しても仲間がいないと遊びようがないんですよ。

山本:子どもの貧困ってずっと言われていると思うんですけど、たとえば20年前の小学生と今の小学生の子どもの貧困って、違いはありますか?

岩切:20年前は自分も子どもだったので、はっきりとは言えないのですが、貧困状態にある子どもの絶対量が違うというのは非常に思いますね。40人クラスで、昔はそういった子は数名だったと思うんですが、今はエリアや学校ごとそうなっているというケースがかなり多くなっていると思います。僕がキャンプをやっているのは、そういった家庭の状況からある種切り離させて、衣食住をキャンプ生活の中で一緒にする中で、段々と価値観を混ぜ合わせているというものでもあります。

有山:今のお話は、非常に興味深いですね。ただ、「昔の子」も階層社会だった側面はあります。江戸時代も明治以降も、「あそこの子と遊んじゃ駄目」というのはあったと思う。僕らは子ども時代に誰とでも自由に遊べたけれど、それってすごく特殊な時代だったかもしれないし、昔は子どもは労働力だったでしょう。そこらへんを踏まえて、じゃあ昔の子どもと今の子どもは何が違うのか、もう少し聞きたいですね。

岩切:日本は、幕末に来日した欧米の公使から「子どもの楽園」と評され、日本ほど子どもが大切にされていて、笑顔が絶えない国はないと言われていました。子どもたちがとてもよく大人に可愛がられている国として、文献とかに残っているんですね。で、その頃と違う点として、昔は違う階層と接する機会が子どもはそもそも少なかっただろうと思います。今は混ざっていて、その中で「僕はあの人よりも…」「やってもできない…」という負け意識のようなものが、大学生になる前からずっとあります。階層が混ざっているがゆえに、子どもたち同士ですごく比較しているのかなと思います。ある市で子どもの夢に関する調査をしましたが、「夢がない」「お金持ちになりたい」という夢だけがやたら上がってくる。「お金持ちになってどうするの」って聞いたら、「色々買いたい」って小1の子が言うんですよ。

山本:格差があって、格差が強烈に可視化されているということですか?

岩切:子どもが生活の中で実感するんだと思います。親の年収を事細かに知っているわけではないけど、子ども同士でなんとなく違いがわかります。今は学童も、セレブ学童と公立学童の2種類があります。ある一定以上のリソースを親がかけられるところは、小学校まで車で送迎が来て、学童でご飯も出て、習い事も車で連れて行ってくれて、親が帰って来る時間に家まで送ってくれる。公立学童は、そういったことはもちろんありません。学校が終わって「じゃあバイバイ」とした放課後に、そういう格差はとても顕著にあらわれていますし、子どもも気づきます。

通信制高校の生徒のためのキャリア教育プログラム「クレッシェンド」の様子(NPO法人D×P)

通信制高校の生徒のためのキャリア教育プログラム「クレッシェンド」の様子(NPO法人D×P)

中退・不登校経験者が多い、通信制高校でのキャリア教育

山本:貧しさに気づいてしまうことの大変さのようなものがあるのかもしれないですね。では次は、NPO法人D×Pの活動について今井さんにお聞きしたいと思います。

今井:D×Pは4人でやっている、まだ2年目の小さな小さなNPOです。いくつか事業があるんですが、今日は通信制高校のキャリア教育の授業の話をしていこうと思います。通信制高校は、簡単に言うと、ほとんど学校に通わずとも高校の卒業資格がとれるところなんです。今、全国で19万人ぐらいの生徒がいて、ここ5年くらい生徒数が伸びてきているんですね。昔は勤労学生のイメージがありましたが、今は全く違っていて。統計上、7割が高校を一度やめた生徒、4割が中学校時代に不登校経験をしている。通信制高校によっては生徒の8?9割が不登校経験者であるという学校もあります。そして、学校から卒業しても、43%は進学も就職もしません。

うちは、キャリアの授業を関西の通信制高校の複数校と契約しています。授業形態としては、10人ほどの少人数クラスに、スタッフと社会人8人を投入して経験を語らせるっていう形態をとっています。ほとんど喋らなかったり、あきらめモードの子どもたちを、いろんな企業のインターンやアートプロジェクトやPC研修なんかと繋げて、意欲的な状況に持っていく。そうした中で「できた!」という価値観を作っていきながら、進学や就職に結びつけていく活動をしています。

通信制高校って逆転の発想をすると、通常の学校と違う教育ができるんですよ。全日制高校や定時制高校は毎日通わないと単位が取れないんですが、通信制が面白いのはほとんど通わなくても卒業資格が取れる。海士町に長期間インターンに行くような生徒も出てきたりしましたし、実は企業インターンなども行きやすい環境なんです。キャリア教育を単位化したり、通信制高校全体に対してハンドメイキングで企業インターンをしたりして、いろんな生徒たちにチャンスを設けていかなければと思っています。

「キャリア教育」という言葉自体は僕も嫌いなんですけど、うちのキャリア教育の方針を話しておくと、1つは「社会関係資本を作ること」。いろんな世代、いろんな人間たちと関わる状態を作るというのが第一方針です。2つ目は「自律力」。自分で問題解決能力を作るということですね。岩切さんも話していましたが、社会に通じる能力をつけないとやっていけない。その2つを大切にしています。あと、キャリア教育は職業体験とは違うと思います。13歳のハローワークみたいなことじゃなくて、多様な人間たちとの関わりを増やしていくこと自体が、学校の中でのキャリア教育として必要なんじゃないかと僕らは考えています。

海士町インターンの様子(NPO法人D×P)

海士町インターンの様子(NPO法人D×P)

社会関係資本が、生徒のレジリエンスに影響する

山本:通信制高校の生徒さんの多くが、不登校や中退の経験があるという話がありましたが、実際に現場で見ていて、不登校や中退のホントの原因ってなんだと感じますか。

今井:よく聞かれるんですけど、原因は複合的なんですよね。ただ、日本の通信制高校の生徒が微増している理由は、今の学校の教育のシステムと合わなくなってきている子が増えているからではと、直感的に感じています。学校に毎日通うということや、学校教育そのものへの疑問が、情報化社会の中で起きているのではないかというのが、僕の仮説です。統計的には出ていないのではっきりはわからないですが。不登校という選択自体は悪いものじゃ全然ないですしね。

岩切:他のことは選択肢があることが多いのに、教育があまりにも画一的で選べない状況なのは不思議ですよね。せめて選択肢がいくつかあってもいいし、所得に関係なくそれを選択できるべきなんじゃないのかと思います。ポジティブ心理学の中で、精神的回復力とか耐久力ということを指す「レジリエンス」という言葉があります。歴史が浅くわからない面もまだまだありますが、社会関係資本、家族以外のサポートがどれだけ得られているのかというのが、確実にレジリエンスに影響していると言われています。もちろん、ストレスフルな状況に置かれても強いとか、自分軸と呼ばれる価値観がはっきりしているとか、個人特性もレジリエンスの強弱を判断する要素に入ってくると思います。通信制高校ではそういったサポートなどが少ないと、先ほど今井さんはおっしゃられていましたよね。

今井:たとえば中学校時代に不登校になって、2,3年閉じこもっていて、高校をやめて通信制高校に入ったとする。不登校になった原因は友達にいじめられたり、学校の先生と何かあったりしてということで、前に通っていた学校に人脈はなくて、関わっている人間はホント親と先生ぐらいしかいないんですよ通信制に通って週1?3回学校に行く中で、友達や先生に恵まれたらいいかもしれないですけど、みんながみんなそうではない。進学するきっかけも就職するきっかけもわからない、バイトにも行かなくちゃいけない。サポートも動機付けも、社会関係資本も少ない状況なわけです。2年間サポートしていて変わってくる生徒も出てきたのですが、やっぱりステップを作っていかないといけないんですよね。

■「学生を、価値の消費者から生産者に変える」トークライブ・レポート(2) ■「1人が複数の仕事を持つことで、地域を維持できる」トークライブ”・レポート(3) ■「何がやりたいかわからない大人を生まないトークライブ”・レポート(4)

<本記事にメイン登場する岩切準さん・今井紀明さんの活動や情報は下記よりご覧ください> ○岩切準さん ・NPO法人夢職人 WEBサイト(社会人のサポートスタッフを随時募集中) ・子どもと若者の成長を支えるアナタのためのウェブマガジン「ひみつ基地」本人twitter ○今井紀明さん ・NPO法人D×P WEBサイト(通信制の高校生たちと関わるコンポーザーを募集中) ・本人twitter 協力:本記事の文字おこしは、竹田周平さん、溝渕加純さん、渡部寛史さんにサポートいただきました。

この記事を書いたユーザー

田村 真菜

田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。

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