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Hyperloopプロジェクトから垣間見る、未来のコト起こし

2016.09.14 206view 

現代最高の起業家といわれるイーロン・マスク。テスラやスペースXに加え、最近では時速1300km/h(カリフォルニアからサンフランシスコが一時間!)で走る次世代交通機関「ハイパーループ」の推進でも注目されている。

イーロン・マスク

ハイパーループ構想を世に打ち出したカリスマ起業家イーロン・マスク(wikipedia)

このハイパーループ、実はプロジェクトの運営方法がテスラやスペースXとはやや異なる。その特徴は、テスラやスペースXのように、イーロンが代表を務める「単一の会社が取り組んでいるのではない」ということ。

とびきり難易度の高いイノベーションを実現するために、イーロン・マスクは、夢のある目標に向かってプロフェッショナルが自主的に集まり、切磋琢磨するしくみをつくった。この新しい「コトをつくる作法」を以下で紹介していく。

「白書」でハイパーループの可能性と課題を提示

イーロンがハイパーループ構想を世に打ち出したのは2013年のことだ。「空気圧を調整したチューブの中を、ポッドを走らせることで、時速1,000kmを超える超高速交通を実現する」というアイデアは、白書「Hyperloop alpha」にまとめられ、誰でもアクセスできるようにインターネット上に公表された。

Hyperloop Alpha

白書「Hyperloop Alpha」冒頭のイメージ図(Hyperloop Alpha)

白書には理論上の実現可能性や社会的意義が記載されているが、それだけではない。具体的な構造や目標とする速度、消費電力、コストなどが詳細に記されている。白書に目を通した専門家やギークたちが、「自分はどの部分なら関われるだろうか」と考えずにはいられないような、魅力的なものになっていた。

この構想を受けて、われこそはというプロフェッショナルたちが動き出した。現在、ハイパーループの実現に向けて一歩リードしているのがハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ社(Hyperloop Transportation Technologies、以下HTT)だ。

ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ社

ハイパーループ・トランスポーテーション・テクノロジーズ社のWEBサイトより

オンライン・プラットフォーム、JumpStartFundから生まれたHTT

HTTが誕生したプロセスは、従来のプロジェクト組成とは大きく異なる。同社は、JumpStartFundと呼ばれるオンライン・プラットフォームから生まれた。これはクラウドソーシングとクラウドファンディングを統合した「プロジェクトを生み出す」仕組みだ。

JumpStartFundの仕組みを簡単に説明しよう。この仕組みは、従来のクラウドファンディングの成功率(達成率)があまりにも低いという問題意識から生まれた。そのため、(1)アイデアの評価と、(2)協力者コミュニティの構築という機能を備えている。

プラットフォーム利用者は、アイデア段階でオンライン上のコミュニティに投稿し、参加者から賛同を得る。多くの賛同が得られれば、商品開発に移り、無償で協力するサポーターによるコミュニティをつくる。そして本格的に事業化段階に移ったら、ストックオプションと引き換えに週10時間働いてくれる人を雇い、事業を進めるのだ。

では、HTTは具体的にどうプロジェクト組成を進めたのか。HTTは初期に計画書を公開した。そこにはトイレの有無に関する問題やコンプレッサーの設計に関する問題など、様々な課題が記載されていた。この課題リストによって、必要な人材ニーズを明確にし、専門家がスポットで参加することを可能としたのだ。

人材が集まったところで、HTTは情報と人材のマネジメントを徹底した。パートタイムとはいえ、機密事項は存在する。メンバーは必要な情報にはアクセスできるものの、その他の情報は全くアクセスできない状態になっていた。これによって、核となる技術や情報を漏らさず、モジュールごとに仕事を依頼することに成功したという。

初期段階でHTTは世界中から200人を超える賛同者を巻き込み、その数は現在500人を超えている。なかにはボーイングやNASAではたらく極めて優秀なエンジニアが大勢いるそうだ。

ハイパーループが示唆する新しいコトづくりの仕組み

ハイパーループは世界の交通事情を一変させる可能性を秘めたプロジェクトだ。だが、これまでにみてきたとおり、プロジェクトの組成運営も極めて革新的である。この方法は、新たな交通システムといった大規模プロジェクトだけでなく、はるかに小さなものであっても参考になるだろう。

イーロンやHTTが実施したように、「ワクワクするテーマ」を社会に提起し、具体的に構想と課題を示すことで、関心とスキルをもつ専門家の参画を促す。彼らの空き時間と貢献意欲を最大限に活かすよう、オンラインプラットフォームを駆使する。プロジェクトが組成したあとでも、それは同じだ。

現代において新たにうまれるプロジェクトの多くは、「あえてやろうというほどおもしろい」か、「解決すべき社会課題である」かどちらかだ。いずれにせよ、人々の共感を獲得し、ともに目標に向かってはたらく共犯者に仕立てあげてしまうような、魅力的なテーマであるに違いない。草の根レベルでも、多くの「ハイパーループモデル」が生まれていけば、きっと世の中はもっと楽しくなるはずだ。

この記事を書いたユーザー

青木 佑真

青木 佑真

1992年生まれ。慶應義塾大学商学部卒。大学時代にNPO法人ETIC.にて2年間インターン生として参画。社会起業塾や社会起業家向け融資プロジェクトの運営などに携わる。現在は日系SIerの営業として働くかたわら、会社員ができるソーシャルビジネスの形を模索中。

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