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#経営・組織論

お金への苦手意識を変えたいなら。創業7年目の社会起業家に聞く、意識の変化をもたらす「融資」の話

2017.02.27 160view 

「働くこと」と「子育て」の両立への不安を取り除くために、働きながら子育てをする家庭での生活体験を大学生へ提供する「ワーク&ライフ・インターンシップ」を事業の中心に創業して7年目を迎えたスリール株式会社

同社は、5年目に企業や行政に仕事が広がり、事業を加速させるタイミングを迎えていました。そんなタイミングで組織のために選んだのが、「融資を受けること」です。「融資」というと身構えてしまう方も多いかもしれませんが、スリールはどのような決意で融資を選択したのでしょうか。融資を通しての学びを、代表の堀江敦子さんに伺いました。

スリール株式会社代表・堀江敦子

スリール株式会社代表・堀江敦子

日本女子大学社会福祉学科卒業。大手IT企業勤務を経て25歳で起業。 花王社会起業塾に参画。「働くこと」、「家庭を築くこと」をリアルに学ぶ「ワーク&ライフ・インターン」の事業を展開。経済産業省「第5回キャリア教育アワード優秀賞」を受賞。両立支援や意識改革を得意とし、企業や大学、行政等多くの講演を行う。2015年日経ビジネス「チェンジメーカー10」に選出される。内閣府「男女共同参画 専門委員」や、厚生労働省「イクメンプロジェクト」、「ぶんきょうハッピーベイビー応援団」など複数行政委員を兼任。
仕事と子育てのリアルを学んで、学生の両立不安を解消

当時25歳だった堀江さんが立ち上げたスリールは、今年で起業から7年目。スリールが実施している「ワーク&ライフ・インターン」事業には、これまで550名以上の大学生が参加しています。

インターンシップというと企業での職場体験のイメージがありますが、「ワーク&ライフ・インターン」は共働きをして子育てしている方のご自宅を訪問して人生について学ぶというプログラム。4か月間のインターンシップでは、座学だけでなく実際に子どもを保育園にお迎えに行き、その子のおうちで面倒をみるなど、働きながら子育てをする社会人の生活の一部を体験することができます。

「仕事と子育ての両立に、直面する前から不安を抱えてブレーキをかけてしまうことがあります。例えば、大学生のときに営業などのアグレッシブな仕事に興味があっても、仕事も子育ても大変そうだから事務職にしようと、就職する時点であきらめてしまう。 自分も働きたいし、子育てもしていきたいけれど、どうしていいかわからないといった両立不安を感じている人たちが、自分の将来を考えていくというプログラムです。

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こういった悩みを抱えているのは、大学生だけではありません。社会人でも、子育て中の社員が悩んでキャリアを諦めてしまうことがあります。最近では、このプログラムを企業の研修に導入して、若手社員やマネージャーにこの状況を理解してもらい、マネジメントに活かしてもらうプログラムも増えています。 プログラムでは、子育ての体験をするだけでなく、働きながら子育てをしている社会人に話を聞いたり、社会人のメンターに相談したりすることができます。

「私たちが課題だと思っているのは、生き方の選択肢の少なさです。自分の親か先生しかモデルがいないので、こういう生き方をしないといけないと思い込んでいる人が多いんです。自分の意見を発信して人に認められた経験が少なく、自分が人と違ったり、アクションをおこしたりする自信がないので、将来に不安を抱える大学生が70%近くいます。」

そうしたもやもやした不安を抱える大学生たちは、インターンシップを通して、いろいろな生き方や働き方の選択肢があるということを知っていきます。

「課題に対して、スモールステップで成功体験を積むことで、参加した人たちの意識がみるみる変わっていく」と堀江さんは言います。

プログラムに参加した大学生から「このプログラムがなかったと思ったら怖いです。それくらい人生があまりにも変わったから」と言われたこともあるそうです。

最終的には多くの人に体験してもらえるように、インフラ化を目指す

仕事と子育てが両立できるかという不安に直面するのは、就職のタイミングだけではありません。出産や結婚、転職、復職など、キャリアを考えるタイミングは、人によってさまざまです。

そうした中でスリールは、大学生だけではなく、企業向けのセミナーやコンサルティングも行い、若手社員や妊娠中・育休中の社員、管理職などに向けたセミナーや体験プログラムを提供しています。その取り組みは広がりをみせ、今では行政との連携も進んでいます。

「私たちがスケールアップするだけでは、世の中は変わりません。最終的には、多くの人たちに体験してもらえるように、インフラ化していく必要があると思っています。体験することで本当に意識が変わっていくプログラムだと思っているので、世の中に広げていくために道半ばです。」

2起業してから3年目までは、主に堀江さんと大学生スタッフとで運営していたスリール。起業当時は、まだライフキャリア教育※1 があまり理解されず、学生のベビーシッターと言われ続けたといいます。 その中で活動を続け、ようやく認められたと感じたのは、起業から4年目のこと。経済産業省のキャリア教育アワードで優秀賞にも選ばれ、大手企業での導入も実現しました。

7年目となった今は、スタッフも5人に増え、その取り組みはさらに広がっています。

※1. 「ライフキャリア」とは、仕事、家庭生活、地域社会とのかかわり、個人の活動など、生活全般において生涯に果たす役割や経験の積み重ねのこと。

起業の覚悟とは違う、スケールアップへの覚悟

堀江さんは、創業5年目に融資を申請しています。それは、どういうきっかけだったのでしょうか。

「その頃、企業や行政に仕事が広がりはじめました。世の中の流れが押してくれて、事業を広げていくためには、『今だ!』というタイミングでした。ドライブをかけたいという思いがあって、やりたいことをやるためには人が必要で、スタッフを採用したくて応募しました。」

事業を加速させたいというタイミングで利用した融資。事業のスケールを大きくすることには、覚悟が必要だったと堀江さんは話します。

「当時の私は、結婚もしていなくて、子どももいなくて、女性としての自分自身の人生はこれからなのにと思うと、正直人を雇いたくないわけです。起業のときの覚悟とは全然違います。起業のときは、自分がボロ雑巾になってもやり続けるという覚悟(笑)。でも、人を雇って、スケールアップさせるということは、メンバーも含めて自分の身の回りの人を幸せにするという覚悟がいりました。」

それでも、人を雇い、事業を広げていくと決めたのは、志をともにする人たちが周りにいたからだといいます。

「一緒に働く4人のすばらしいスタッフがいて、世の中を変えるミッションに向けて、一緒に本気になってやってくれるという感覚がもてたんです。本当に社会を変えていくためには、一人ではぜったい無理だと思っていた中、私も覚悟がもてました。」

融資をきっかけに変わった、スタッフの覚悟

さまざまな融資や助成金がある中で、堀江さんが利用したのは西武信用金庫の「CHANGE」という融資。NPOやソーシャルビジネスといった、社会や地域の課題解決にチャレンジする組織を資金面と経営面から応援することを目的につくられた融資です。

「知り合いが『とりあえず借りてみなよ』と、このプログラムを教えてくれました。金利が0.1%なので、『確かに、これなら私でも借りられる!』と思いました。とりあえずお金がないと広げられないと思っていたので、踏み切るきっかけとして申し込ませていただきました。」

金利が低く設定されているため安心感があり、チャレンジの背中を押してくれるこのプログラム。それでも、融資で受け取った資金をどの程度使うのか、どのタイミングで返済していくのかということは、しっかりと考えなければいけないところです。堀江さんの場合は、実際に融資を受けてみて、どうだったのでしょうか。

「融資を受けることをメンバーと共有して、考えることがいちばん大事です。融資を受けるということのハードルは高いから、『借りるのだからここまでちゃんとやろう』という覚悟をメンバーも持つことになりました。お金は大切ですが、それ以上に融資をきっかけにメンバーのコミットが変わっていくことを実感しました。」

融資をきっかけに、堀江さん自身やメンバーの意識が変わり、予算の交渉などもできるようになったと堀江さんはいいます。

「融資を受けたり、人を雇ったりするようになって、『予算をちゃんといただかないと、いいものが作れないし、私たちも食べていけないんです』とちゃんと言えるようになりました。当たり前のことなんですが、新しいビジネスすぎると”やらせて貰うこと ”で必死になってしまい、無理して安い予算でやってしまうことが多いんです。ただ、無理して実施したら良いプログラムを提供できる訳はないので、お互いにハッピーになるためには、しっかりとお金もいただき、しっかりと価値を出すことだと改めて舵取りができました。

こうした意識の変化が、飛躍的に事業が伸びるという結果につながったそうです。

お金をもうけていない事業は、誰も幸せにしない

堀江さんは自分自身の経験を振り返って、女性起業家や社会起業家には、陥りやすい三つのポイントがあるといいます。

その一つ目は、「完璧主義」

自分のやりたいことにこだわり、人に任せることができない。そのため、一人でしか動けなかったり、自分から営業をしなかったりするから、広がっていかない。堀江さんは、仲間を見つけて任せることで完璧主義から抜け出したといいます。

「営業を嫌うのではなくて、自分の足で稼いで、とにかく導入してもらおうと思いました。新しい事業は実績を積まないと次にいけないので、地べたをはいつくばってやっていました。新しいビジネスが本当にお金になるのは、3年後以降です。そこまで、ちゃんとやり続けられるかが大事です。

二つ目の陥りやすいポイントは、「お金をもらうことへの罪悪感」だといいます。

今の堀江さんは、「お金がないと何もできないので、正当なお金をもらうように心がけている」そうです。お金は自分がしたことへの対価。苦手だった価格交渉もするようになったといいます。

「やってもやっても貧乏という時期がありました。起業してから、前職の年収を全然越えませんでした。 その頃、同じようなフィールドで事業をしている知人に、『世の中を変えていこうとしているんだから、プログラムを値下げするなんて、よくないですよ。』と言われたんです。それが自分の商品にしっかり価格を付けていこうと思ったきっかけです。」

商品に自信があるから、ちゃんと交渉する。人件費も含めて、かかっているコストをちゃんと見つめる。当たり前ですが、そうしたことを積み重ねて、正当なお金をもらえるようになっていったといいます。

三つ目の陥りやすいポイントは、「投資ができない」ということです。

堀江さんも最初はボランティアの方に頼ることが多かったそうですが、それではやって貰えることが限られると感じられたそうです。事業が広がるタイミングで人を雇う必要が出てきたら、融資や助成金を活用してきました。人を雇うための投資を恐れていると、やってもやっても広がらないという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

「お金は必要です。もうけていない事業は、誰も幸せにしないと気付きました。」

堀江さんは、自身の経験からそう言い切ります。正当なお金をもらうことで、仲間を増やし、自分たちが実現したいことに一歩一歩近づいていく。お金を稼ぐということがゴールではなくて、お金を手段の一つにして社会の課題を解決していこうと考えていることが伝わってきます。

まだ事業も途上ということですが、今回の融資も新たな一歩を踏み出すためのきっかけとなったようです。

みなさんも、お金を稼ぐことの意味をもう一度見つめ直して、次への一歩を考えてみませんか。

スリール株式会社代表/堀江敦子

日本女子大学社会福祉学科卒業。大手IT企業勤務を経て25歳で起業。 花王社会起業塾に参画。「働くこと」、「家庭を築くこと」をリアルに学ぶ「ワーク&ライフ・インターン」の事業を展開。経済産業省「第5回キャリア教育アワード優秀賞」を受賞。両立支援や意識改革を得意とし、企業や大学、行政等多くの講演を行う。2015年日経ビジネス「チェンジメーカー10」に選出される。内閣府「男女共同参画 専門委員」や、厚生労働省「イクメンプロジェクト」、「ぶんきょうハッピーベイビー応援団」など複数行政委員を兼任。

この記事を書いたユーザー

鈴木 まり子

鈴木 まり子

1988年生まれ。大学卒業後、出版社で4年間編集の仕事に携わり、小学生向けの書籍づくりなどを担当。2016年春から、三重県尾鷲市九鬼町という小さな海辺の町に暮らし始め、編集・執筆・宿やワーキングスペースの企画・運営など活動中。

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