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テレワークならぬ「寺ワーク」にオンライン宿坊…次世代のお寺の形を創る、シェアウィング佐藤さんの挑戦

2020.09.11 

1.サムネイル用メイン画像

 

日本のお寺の数はコンビニより多い。皆さん、この事実ご存じでしたか?コンビニは約5万店、お寺は7万7千あるそうです。しかしお寺の後継者不足やお寺を支える檀家さんの減少により、今後20年で3分の1は消滅すると言われています。

 

今回は、「お寺とテクノロジーでワクワクする空間をつくる」をビジョンに掲げ、宿坊(お寺に宿泊すること)体験を提供している株式会社シェアウィング代表取締役 佐藤真衣さんに、「これからのお寺」についてお話を伺いました。

 

佐藤 真衣(さとうまい)/株式会社シェアウィング 代表取締役社長

埼玉浦和生まれ。早稲田大学スポーツ科学科卒業。学生時代にインターンシップでベンチャースピリッツに触れ将来の独立を決意。独立系ベンチャーキャピタルウィルキャピタルマネジメント株式会社にてライフスタイル分野の投資先発掘、投資育成を担当。担当投資先のアロマ空間演出メーカーに転職。2006年26歳にてスパプランニング会社、有限会社ホットマーク創業。

14年で120か所以上の岩盤浴、ホットヨガ施設を企画、施工工事。2016年に長年縁ある雲林院奈央子と上田浩司の3人でシェアウィングを共同代表取締役として創業。ホットでほっとできる、わくわくする場づくりが趣味でもあり、ライフワーク。

議論が面白い形に進む。お寺という場が持つ可能性

 

お寺に縁もゆかりもなく、詳しい知識もなかったのにお寺の世界に飛び込んだ佐藤さん。なぜこの仕事を始めたのでしょうか?

 

「26歳の頃、仕事の縁が重なり、岩盤浴やホットヨガ施設の施工工事会社を立ち上げました。全国120箇所くらい施設を作ったと思います。心と体を整える健康的な場をつくるということにやりがいも感じていましたが、商業施設は流行り廃りがあるので5~10年くらいで無くなってしまう場所なんですよね。30歳を超えた頃から、50年、100年残っていく場をつくっていきたいなと思うようになりました」

 

長く残っていく場所をつくる、その対象にお寺を選んだ理由は何でしょうか?

 

「友人がお寺の息子で、よくそのお寺で遊ばせてもらっていたんです。楽しい事を企画して人を集めて、ワイワイ夜通ししゃべっていました。その中で、お寺で話すと議論が面白い形で進んでいくことに気づいたんです。場所が変わると議論の結果が変わる。場の力で潜在的なアイデアまで引き出される。非科学的なんですが、そこに面白さを感じました」

 

4.お寺写真正面

 

3.お寺写真

 

「私自身、ワクワクする場に身を置いて人と話すのが大好きで。その場の中で、友だちが仲良くなったり、仕事が生まれたりするのを、そっと影から見るのが趣味なんです。

お寺が持つ場の力で、人と人との間にワクワクする事が起こる。その瞬間を横で見ていたいな、と思い、この事業を始めました。」

 

実際に、株式会社シェアウィングに出資している株式会社ガイアックスでは、社員研修を山梨県・身延 端場坊(はばのぼう)で実施しているそう。(2020年は、コロナウイルス感染拡大防止のため中止しています)

 

ガイアックスの社員の方に、お寺でやる研修と会議室でやる研修、何が違うのか感想を聞いてみました。

 

「『心を整える』という場の力が大きいと思います。研修中は、全社員同じプログラムを受けるのではなく、『のんびりする』という選択もできるようになっているので、場の力が重要なんですよね」

 

確かに、会議室ではのんびりしづらいですね(笑)。リモートワークが普通になってきた中で、対面で集まるハードルが上がってきているように思います。わざわざ時間をかけて集まるのに、リモートでも出来ることをやっても意味がありません。“なぜか落ち着く”“空気が澄んでいる”のような場の持つ力の重要性が、これからもっと見直されていきそうだと感じました。

 

お寺が死ぬことは、地域が死ぬこと

 

お寺は長い間、その地域で暮らす人々の想いがたくさん詰まっていた場所でした。しかし、人口減少の波はお寺にも押し寄せており、今後20年間で2万近くのお寺が廃寺になると予想されるそう。

 

「1人でも檀家さんがいれば、他のお寺のお坊さんがお経を上げにきてくれるなどして、お寺自体は存続するんですね。でも、檀家さんがゼロになると廃寺になります。檀家さんがゼロになるってことは地域に人がいなくなるってことです。お寺が死ぬことは、地域が死ぬこと。逆に、お寺が盛り上げれば、象徴的に地域が盛り上がることにつながると思っている」と、佐藤さんは言います。

 

「これから人口は減っていくので、地域の中だけでお寺を盛り上げていくのは限界です。じゃあどうする?って考えると、いかに外部から新しい人を連れてくるかですよね」

 

シェアウィングでは、廃寺になりそうだった飛騨高山の善光寺の再建に取り組み、宿坊体験の提供で売上を4倍に伸ばしたのだそう。今は、お坊さんを3名正社員として雇い、飛騨高山の善光寺で働いてもらっているのだとか。

 

4.座禅写真-1

 

5.宿泊客

 

「お坊さんを正社員で雇う」という響き自体が新鮮ですが、お坊さんはどんな仕事をされているのでしょうか。

 

「普通のビジネスパーソンと同じですよ。宿泊客への接客対応やWEBでの集客など。実家のお寺の仕事もやりながら働いてもらっています。お盆など、お寺が忙しい時期は、みんな山梨や北海道など実家にそれぞれ帰るのでいなくなっちゃうんですけどね。個人でのお坊さんとしての活動も応援しているので全く問題ありません」

 

人とお金が動けばお寺は持続していける、という佐藤さん。コロナ禍を契機に、様々なプランを打ち出しています。例えば、お寺でリモートワークをしてもらう「寺ワーク」。Wi-Fiやホワイトボードなど働くための設備が整ったお寺で、個人のリモートワークや1棟貸し切りのグループ合宿ができます。

 

これまで、お寺は檀家制度という土着型の会員システムで支えられてきましたが、崩壊しつつあります。一方で、遠くに住むファンからのサブスクリプションモデルや企業からのサポートなど、今の時代にあった「お寺を支える形」はまだまだ可能性が広がりそうだと思いました。

 

計算できないから面白い。伝統を大切にしながら、イノベーションを興す

 

最後に、佐藤さんに次にめざしたいことをうかがいました。

 

「事業の面でいうと、コロナで大打撃を受けました。お寺によっては、宿泊するお客様のうち、外国人観光客が95%だったので。でも、それによって500円でお寺の体験を味わえる、オンライン宿坊のサービスを始めています。夜にプチ修行体験をして、朝5時半にモーニングコールをしてお客様を起こすんです。

これからは、オンラインとオフライン両方で、心と体を整えるという機会を広くお客様に提供していきたい。親しみを感じた人が実際にお寺に足を運んでくれたらいいですね」

 

6.座禅写真

 

インタビューを通じて何度も登場したのは「計算されていない」というセリフ。予定調和でない、というのは佐藤さんにとっての萌えポイントなのだと感じます。未来の展望を語った、こんな一言も。

 

「新しいファン、新しい人たちがお寺に面白がって集まってきてくれると、次にまた何か新しいことが起きると思うんですよね。起こるのは、寺子屋のような学びの場なのか、文化の発信なのか、寄合のような地域のコミュニティなのか。どんなことになるのかは未知数なんですが、その未来を計算できないところが、面白いなと思っています

 

伝統を大切にしながら新たな物語を紡いでいるシェアウィング。今後の展開も楽しみにしています。

 

 

ただいま、シェアウィングでは求人募集中です。副業OK!佐藤さんと一緒に働いてみたい方は下記より求人記事をご確認ください。

 

株式会社シェアウィングの求人の詳細はこちら!


 

※今回のお話は、社会課題解決に取り組む人を応援するオンラインコミュニティ「NEXTA」のイベントにてご登壇された時にお伺いしたものです。

 

NEXTAは、毎週木曜、21:00~オンラインでイベントを開催しています。次回(9月17日)のゲストは、一般社団法人マツリズム 大原 学さん。ご興味のある方は、こちらよりお申込みください。

 

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この記事を書いたユーザー
乗越 貴子

乗越 貴子

1982年埼玉県生まれ。早稲田大学卒業後、塾講師、ネットサービスベンチャー企業を経て、NPO法人ETIC.参画。2児の母。志ある人と組織をつなげる求人サイトDRIVEキャリア(http://drive.media/career)で、事務局業務を担当しています。モットーは、「書くことと人をつなげることで、一歩踏み出す勇気を生み出せる人になる」

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