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#経営・組織論

Teach For Japanに3年で3,000万円の支援 ―ソーシャルビジネスの資金調達に革命を起こす「日本ベンチャー・フィランソロピー基金」とは(前編)

2015.03.10 307view 

日本ベンチャー・フィランソロピー基金(以下JVPF)がTeach For Japan*1(以下TFJ)に3年で3,000万円の資金提供を行う」――このニュースを目にしたとき、大きな衝撃が走った。なぜならこの出来事は、日本のソーシャルビジネスにおける大きな「革命」となる可能性を秘めているからだ。

Teach For Japanの活動風景(JVPFのトップページより)

Teach For Japanの活動風景(JVPFのトップページより)

JVPFは、2013年の3月に設立された、一般社団法人Social Investment Partners*2(以下SIP)と日本財団*3とが共同で運営する、社会的事業を支援対象とする日本初の本格的なベンチャー・フィランソロピー(以下VP)基金だ。現在「放課後NPOアフタースクール」への支援を行なっており、今回のTFJへの支援は2案件目となる。

本記事では前編と後編にわたって、TFJへの支援の仕掛け人である、SIP代表理事・白石智哉氏と日本財団・工藤七子氏へのインタビューを中心に、ベンチャー・フィランソロピー(VP)の概要とその目的、そしてTFJへの支援の詳細をお伝えする。

日本のソーシャルビジネスは金銭的、そして人的・物的なリソースの不足により、その発展を妨げられてきた。そんな現状を打破し、日本のソーシャルビジネス界に革命を起こそうとするJVPFが、なぜ「革新的」なのか。その大きな可能性をぜひ感じていただければと思う。

*1:認定NPO法人Teach for Japan。「すべての子どもが素晴らしい教育を受けることができる社会の実現」を目指して活動。主な事業として、教師として選抜した若者を育成し、2年間フェローとして学校現場に派遣する「Next Teacher Program」がある。 *2:一般社団法人Social Investment Partnersは、社会的事業に中長期の資金提供と経営支援を行い、支援先の団体の社会的インパクトを最大化させることをミッションとする、日本初の本格的なベンチャー・フィランソロピー組織。 *3:公益財団法人日本財団は、公営競技のひとつである競艇の収益金をもとに、さまざまな社会的事業に対して支援を行う日本最大の資産規模を持つ公益財団法人。

ベンチャーキャピタルの「社会事業版」:ベンチャー・フィランソロピー

まずVP(ベンチャー・フィランソロピー)という概念から説明しよう。VPとは、いわゆるベンチャー・キャピタル(以下VC)の「社会事業版」であるといえる。

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ベンチャー・フィランソロピーのイメージ図 (「ベンチャー・フィランソロピーとは」JVPFのWEBサイトより)

VCは、主に営利企業を対象に、これから成長する企業・株式会社を中心に資金と物的・人的なリソースを提供して経営支援を行う。その目的は金銭的なリターンであり、投資の期間は通常3〜5年と長期にわたる。

VPはスキームとしてはVCと同様であるが、主に2つの点で大きく異なる。(1)その投資対象が社会事業であること、(2)投資の目的が金銭的リターンではなく投資先が生み出す社会的インパクトの最大化であるという点である。つまり、VPはソーシャルビジネスに対する資金提供と経営支援と捉えることができる。

25年ものあいだ、ベンチャー企業への投資、企業買収、経営支援を行ってきた「投資のスペシャリスト」であるSIP代表理事・白石智哉氏は次のように説明する。

白石:VCの場合、投資側は株式を引き受けるため、投資先の事業を成長させ金銭的なリターンを得ることを最大の目的として支援を行います。一方VPの場合、お金は「寄付」という形でファンドに預かるため、お金の出し手に金銭的なリターンが返ってくることはありません。

白石さん

投資先の事業が上手く回った結果ファンドにお金が返ってくる場合もありますが、あくまでもそれは主従の関係でいえば「従」。返ってきたお金は元のお金の出し手(寄付者)には還元せずに、別の団体への再投資に回します。このことにより、投資先の団体は活動のミッションを「社会的インパクトをいかに拡大させていくか」ということに集中することができるというわけです。

あえてVCという言葉を使わずにわかりやすくVPの役割を定義するならば、「社会的事業に対して資金を提供し、数年間経営支援をしたうえで、社会的なインパクト・成果を最大化させること」といえるでしょう。

従来の助成事業とは異なるベンチャー・フィランソロピーの革新性

VPはいわば、営利企業の成長のためのスキームとして活用されているVCの枠組みを、ソーシャルビジネスの分野に応用したものだといえる。ではここには、どんな意味があるのだろうか。

事業の発展には営利・非営利に関わらず、金銭的、そして人的・物的なリソースが必要となってくる。営利企業の場合、それを提供する存在がVCであった。では社会的事業の場合はどうか。一般的にはさまざまな助成団体が資金の提供の部分を担うが、そこには大きな課題が存在する。VPの革新性は、既存の助成事業が長年抱えてきたその課題を一挙に解決するポテンシャルを秘めている点にある。

工藤さん

工藤:日本財団でもこれまで50年ほど社会的な事業に対する助成事業を行ってきました。しかし、それは「公益事業に対してお金を渡します、以上」みたいなものが一般的です。つまり、その資金を活用してどのような成果を生み出すのか、そしてそれを達成するためにはどんなことが必要になるのか、そういった点に関しては介入することはせず、資金を提供する「だけ」にとどまっていたんですね。

工藤氏によると、VPには、従来の助成事業とは異なる3つの大きな特徴があるという。

1. プロジェクトベースではなく組織に対して支援を行う 基本的な助成事業は「Aという団体がやっているBCDEの事業のうちBにだけ支援します」という形をとる。この場合、資金の使い道が制限されるため、助成を受ける側としては使いづらい部分がどうしてもある。VPは「Aという団体が生み出す社会的インパクトを最大化させる」という大きな枠組で資金を提供するため、組織の基盤を整備するといった、事業の拡大に重要で本質的な部分に資金を注力することができる。

2. 単年度ではなく長期の支援 一般的な助成事業は、単年度でお金を使い切ることが基本だ。一方でVPは「この団体は現状こうで、ここまでいくにはどのくらいの期間と資金が必要か」ということを精査し、最低3年程度は伴走していく。これにより短期的な成果を追い求める必要はなくなり、「社会的インパクトの最大化」という大きな目標に向かって一歩一歩着実に積み重ねていくことができる。

3. 資金の提供だけではなく経営支援を伴う 通常の助成事業は資金を提供した後は特に介入を行うことはせず、助成期間終了時に資金の使途の報告を求めるのみである。他方VPは、前述の通り資金以外の経営支援も行う。投資先とともに成果と期限とを明確に設定し、それを達成するのに必要な法務面・戦略面などのサポートを、パートナーシップを結んでいるプロボノの提供という形で支援する。

このようにVPは、従来の助成事業が抱える課題、資金の用途の融通が利かない、持続性がない、長期的な組織基盤の整備に資金を使うことができず本質的な成長に繋がらない、といったさまざまな問題点を一気に解決し得る革新的なスキームなのだ。

JVPFによる支援第2号案件:Teach for Japanへ3年で3,000万円の資金提供

以上にみてきたように、ソーシャルビジネスのさらなる発展においてVPの存在は欠かせない。欧米ではその必要性は早くから認識され、1990年代から多くのVPが設立されてきた。

そんななか日本で初の本格的なVP基金として満を持して設立されたのが、日本ベンチャー・フィランソロピー基金(以下JVPF)である。JVPFは2013年の3月に設立された。資金規模は1.5億円で日本財団の内部に設置され、SIPと日本財団が共同で運営を行っている。1号目の案件として、「放課後NPOアフタースクール」への支援を現在も行なっている最中である。

JVPFの運営スキーム

JVPFの運営スキーム (「事業内容」SIPのWEBサイトより)

そして2015年1月、新たな支援先として選ばれたのは「認定NPO法人Teach for Japan(TFJ)」だ。3年間で3,000万円の支援という、長期かつ大規模なものとなっている。

そして何より、JVPFの価値はソーシャルビジネスの発展に欠かせない「第二創業期」の支援を担う点にある。

白石:これまでにも社会的事業のスタート時期を支援するスキームは日本にもありました。ETIC.さんやSVP東京(Social Venture Partners東京)さんなどです。これらの団体は、どちらかというと起業家育成という要素が強く、事業の立ち上げ期を支援します。

しかし、事業がひとまず上手く回り規模的にも質的にもこれから事業を拡大していく、いわゆる「第二創業期」を支える仕組みは日本には存在しませんでした。

このタイミングにおいては起業家個人の養成ではなく、組織の基盤という足腰を強化していくような支援が必要となってきます。そこでわれわれはそのステージを支えるためにSIPと日本財団とでJVPFを設立しました。

社会事業への支援の3類型

社会事業への支援の3類型 (「日本におけるVPの必要性」SIPのWEBサイトより)

まずは、そのような時期、つまり第二創業期というフェーズにある団体が日本にどれくらいあるのか、そして彼らは私たちが考えているような支援を必要としているのかなどのニーズ調査を行いました。

「日本のイケてる社会起業家リスト150人」みたいなものを作って、実際に会ったのが20?30人くらい。それがJVPF設立前の2012年の夏ごろ。そのなかの一つに今回支援が決定したTFJがありました。

ソーシャルビジネスは、その事業の本質上「第二の創業」を超えられる組織が少ない。たとえ小規模に事業を回すことができても、それを量的・質的に拡大していく人的・物的なリソースがまだまだ不足しているからだ。

「ソーシャルビジネスの第二創業期を支える」――現場では必要とされながらも、日本には存在してこなかった大きな役割を担うのがこのJVPFというわけなのだ。

後編では、TFJへの支援の詳細やVPの今後についてお伝えする。

>>後編へ続きます

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この記事を書いたユーザー

梅村 尚吾

梅村 尚吾

1992年生まれ、東京大学文学部英語英米文学科3年。学生インターン。大学受験中にマザーハウスのドキュメンタリー番組で「ソーシャルベンチャー」という概念に出会い、その道を志すように。大学1,2年次はアフリカ渡航などを経験。3年次を休学し、認定NPO法人フローレンスで1年間のインターン。ソーシャルセクターにおけるIT技術活用のインパクトの大きさに可能性を感じ、現在キャリアを模索中。生涯スポーツである水泳のため、スポーツジムに通うのが日課。

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