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地方創生ど真ん中一丁目 〜行列のできる中小企業の事業相談所はいかにしてできたか? (前編)

2016.05.10 

小出宗昭さんをリーダーに静岡県富士市で始まったf-Biz。これまでの中小企業支援とはまったく違うアプローチから成果を生み出し続け、地方創生を牽引するモデルとして、経済産業省もこれをモデルとした「よろず支援拠点」がはじまるなど、全国に広がりはじめているf-Bizモデル。

小出宗昭さんと、そしてf-Bizの初の横展開として、”行列のできる中小企業相談所”となった、岡崎市のOKa-Bizセンター長である秋元祥治さんに、f-Bizのこと、OKa-Bizのこと、そして地域を動かすということについて、お聞きしました。(以下敬称略) 1464

中小企業支援の完璧な成功モデルを作るために

——f-Bizはこれまでの産業支援と比べて、どんなところが画期的だったのでしょうか?

 

小出: f-Bizが最初から目指していたのは、中小企業支援の分野で国レベルにおける完璧な成功モデルを作るということでした。完璧な成功モデルとは何かというと、これは単純な話で、”f-Bizに来れば明確に結果が出る”というところを目指した。結果が出てれば来る相談数も必ず増えるだろうと。こんなように考えてやってきたんです。

これまで結果を出すこと、結果が重要だ、という目標設定をしていた公の産業支援は、本当になかったんです。 日本の中小企業、小規模事業者は、人・もの・金すべてにおいて問題を抱えています。みんなが今より良くありたいと思っている。

そんな中で流れを変えようとしたときに必要なものは何かというと、”知恵”なんですよ。でも知恵の出せるコンサルティングは、日本国内にあったでしょうか。少なくとも僕は探してもなかった。連続的に知恵を出して、連続的に成果を出し続けているコンサルタントというのはなかったんです。特に、中小企業、小規模事業者向けコンサルはそもそも少ないですし。そのモデルを作りだしたのがf-Bizです。

 

——中小企業者の支援における”知恵”というのは、具体的にどういったものですか?

 

小出: 中小企業者に圧倒的に多い問題点は何か。売り上げです。7-8割がそうです。売り上げを上げる方法というのは、実は3つしかない。 1:販路開拓 2: 新商品・新サービスの開発 3:新分野への進出。 この3つだと思うんです。

では具体的にどうすれば新商品開発につながるのかと。具体的にどうすれば新分野進出につながるんだという、この具体的にこうするっていうのが知恵なんです。

それってすごいことなんじゃないですか?

小出: 例えば、倒産寸前の金属加工業の中小企業さんの例。売り上げの95%が自動車メーカー向けの金属加工をやっていました。売り上げが下がってしまって、どうしたらいいか分からない、という状態で相談にいらっしゃった。我々は1回目のミーティングで流れをポンと変えていきます。

よくよく話を聞いてみると、全体の95%は金属加工をやっているんだけれども、残りの5%は試作部品、プロトタイプの部品を作っているという。 「じゃあ試作部品はどうやって作っているのか?」 と聞いてみると、 「どんな無理な仕事でも引き受けている。急いでると言われたら、すぐに図面を引いて一生懸命削って、3日で納品しています」 ということをサラッと言うんです。

そこで我々は、「3日で納品ってすごいことなんじゃないですか? そんなにスピーディーに作れるなら、それを求めているところなんていっぱいありますよ」と指摘をする。真のセールスポイントを発見したわけです。

そして、知恵というのはたとえばそういうことなんです。その上で、じゃあそのセールスポイントを生かすために、明日から新サービスを始めることにしましょうと。”試作特急サービス3DAY”っていう名前をつけて、ウェブサイトも作りましょう、その上でもう一度やり直してみよう。

こういうのが真のセールスポイントを生かして知恵を使った具体的な新商品開発、新サービスの提案なんです。 結果どうなったかというと、ある一部上場の自動車メーカーがそれを発見し、施策を直接依頼。今来ている仕事はその自動車メーカーの電気自動車の試作部品。利益率が2.5倍にあがって、売り上げが8割アップして再生したんですよ。

いいじゃんそれ!

小出: あるいは、廃業寸前のレトルト食品製造メーカーさんの例。設備が老朽化して生産効率が悪いから仕事が取れなくて困っている。もはや来月に廃業しようと思うという相談で来た。

「レトルト食品は何個から作ってるんですか?」 と聞いたら、 「100個からです」 と。既存のレトルトメーカーは、5千個から1万個くらいの生産ロットで作っている。だから、例えば地域の中で流行っている洋食屋さんが、「自分のところで出しているカレーとかスープをレトルトにしたい」と考えたときでも商品化できない、という現状がある。

あるいは農業者が六次産業化の流れで、自分のところで生産した売れない野菜や果物を加工食品にして、レトルトにして売りたいな、というニーズなんかもある。でも5千個から1万個なんてとても売れないから、断念していたりする。 そういうことを我々は知っている。

「100個から作れるんだ。いいじゃんそれ!」 ってめちゃめちゃ褒める。そうすると、 「どんな商品持ってきたってレトルトにできる!」 と言ってくれるから、じゃあいける、やろう、ということになる。

ターゲットは、飲食店、農業者、農林水産事業者にして、“レトルトクリエイション”という名前を付けて、レトルト食品の開発製造を100個から受託するサービスでやろうと。リサーチしてみると、レトルト食品の開発製造を受託するサービスなんてどこを探したって1000個からなんです。100個から作れるなんていうのは桁違いなんですよ。差別化が効いてるでしょ。あっという間に売り上げが倍増して再生。こういうのが知恵なんです。 DSC08002

これってニーズありますよね。

秋元: たとえば化学薬品の卸問屋さんからの相談。 繊維の染料や農薬などをBtoBで展開していた会社さんで、従業員は12名。新商品を作ったが売れないということで相談にいらっしゃいました。

商品は、小袋に入った1グラムの青色の粉末。 「これはなにに使うんですか?」 と聞くと、 「1リットルの水にこの粉末を溶かして、そこに切り花をつけておくと、花が青くなるんです。でもお花屋さんに営業したけれど売れないんです」 と。なるほど面白いな、と聞いていました。

でも青い花が欲しかったら、青い花をふつうに買うな、とも思いました。そして、「誰がこれを欲しいだろう?」と自然に考えていてふと思い出したのは、小学校3年の理科の教科書です。 「理科の実験じゃないですか?!」 と。そこで、楽天市場で”自由研究”を検索した画面を一緒に見ながら、 「夏休みの自由研究って、いまこんなふうにキットを皆さん買って、やってるんですよ。これってニーズありますよね。」 って。

ターゲットを絞って、利用シーンを絞ったわけです。 そこからぐっと事業が進んだ。1グラムずつ3色のキットを作り、無料で出店できるヤフーショッピングのモールで売りだしました。

すると、8月後半にバーンと売れたんです。それを見た学研さんが連絡してきて、3万袋の注文。科学と学習の付録つきの雑誌で「レインボーフラワーキット」として全国展開です。その後、小売店への営業を強化。東急ハンズでは名古屋店、新宿店、アマゾン、量販店にも置かれるようになった。まさに、ターゲットを絞って、利用シーンを絞る、という知恵を使ったわけです。

“ビジネスセンス”は経験ではなく、適性

——相談に来た事業者から話を聞いていて、「ここは他にないところだな」、と小出さんや秋元さんは気づくわけですよね。「試作部品を3日で作れる」「100個から作れる」「花の色が変わる」というところで”ピン”とくる。

小出さんは、著書の中で、中小企業の相談支援者に必要な能力として、1:ビジネスセンス、2:コミュニケーション力、3:情熱、の3つをあげておられましたが、ビジネスセンスにあたるのが、”ピン”とくるところなのかなと思いました。そのセンスを培うために必要なのは、経験の蓄積ということになるわけでしょうか?

 

秋元: 必ずしも経験じゃないですね。ビジネスセンスの磨き方っていうのは、この本を読めばいいとかってことではない。面白がること、知らないことを知るのが楽しい、なにこれって思うことが気になったら調べちゃう、という考え方や物事の捉え方。そういう人は、ほっといても毎日情報を収集してるわけです。

 

——苦労してやってるわけじゃなく、楽しくてやってるんですね。秋元さんはもともとそういうタイプでした?

 

秋元: そうですね。知らないものは知りたい、というタイプですね。 akimoto2 小出: 蓄積というより適性なんです。日向や福山をはじめ、これから出てくる各地での求人では、こうした人材を求めていて、DRIVEの求人を通じて、適性のある人を見つけたいんですよ。

これまでこういったコンサルティング、あるいは公の産業支援などでは、資格や経験を重視して人を登用していた。クローズされた世界の中で登用されていたので、新しい人たちが入り込む余地が全くなかったんですね。僕はそこに大きな疑問を持ってきました。国の委員もを何年もやっているけども、成果が上がらないとずっと問題視されている。

一方でチームf-Bizは7名いますが、全部僕がスカウトした人間です。資格や経験じゃなく、適性を見ていた。それがビジネスセンスであり、コミュニケーション力であり、情熱の3つです。

必要なのは適性であることを明確に証明しちゃったのが、秋元くんや高嶋さんたち、OKa-Bizの成功なんです。全く資格もないし経験もない若い二人に任せたときに、ものの見事に成果を上げた。それはもう期待している以上の成果を上げた。

僕はビジネスセンスって3つの要素だと見ているんです。 まずとにかく、ビジネスセンスが高い人に共通するのは、圧倒的な情報量を持っているということ。圧倒的な情報量を持っているということは、情報のアンテナが高かったり、情報感度が高いっていうこと。人が見逃すような情報でもハッと気づけるんですね。テレビを見ていても、何をしていても、ハッと気づける勘のよさ。

そして、掴んだ情報を自分自身で調べること。自分自身で調べると、生きた知識に転換されるんです。生きた知識の集積から知恵が生まれる。情報→知識→知恵、という3つの要素のサイクルがグルグル回る人が、ビジネスセンスが高いっていう人間だと思うんですよね。だから経験ではないと思うんです。

 

——それは訓練や練習で、得られるものですか?

 

小出: メンタリティとか、ものの見方とか、世の中の見方とかですから、磨くことができるものです。自然に、日々それを磨いているような。たとえばコンビニに行ったら、自分の欲しいものを買うだけではなく、新商品や新しい棚に一通り目を通すようなこと。コンビニ発のヒット商品が、日本の市場を制しているっていうことがちゃんと知っていたら、自然にそうなる。

しかも、見るだけじゃなくて面白いものを探していて、発見したらそれを自分で調べる。生きた知識に転換する。こういうことを普通にやれている人はいると思う。天性のひらめきではないんです。

 

——コンビニってほんとうに最先端のものが並んでるから、下手な雑誌より面白かったりしますね。

 

小出: そう。面白いもの探しをしている、という感覚だと思う。僕はそうだし、秋元くんもそうだと思う。世の中には面白いものがいっぱいあるという前提で、それを探すことを毎日やってる人、という言い方をするとわかりやすいかもしれません。面白いものって絶対あるはずじゃん、なんかないかな? って面白いものを探しているわけだ、どこへ行っても。

上からでも下からでもなく、横から

——支援について秋元さんとやり取りをしたときに、”伴走”という言葉が印象的でした。下から支えるのではなく、上から指導するのでもなく、横で、伴走するんだと。このありかたも、今までの企業支援のとは違うあり方なんじゃないかなと思いました。

 

小出: 確かにそれはこれまでになかったタイプかもしれない。今までの産業支援の世界において、たとえば経済団体なんかでは「経営指導員」になるのね。指導する側、される側。そういう言葉に表れちゃってる。

相談に来る人たちっていうのは、どんなに厳しい状態でも何とか生き残ろうと思って、相談に来てるわけです。経営者であれば家族もいれば、従業員がいて従業員の家族もあって、その人たちの人生を預かっているような、重要な仕事なんですね。この仕事はその人たち全部の人生預かっちゃってる。

我々がサポートするとその人たちがハッピーになるし、その人だけじゃなくてその従業員の家族までハッピーになる、という状況なんです。だからものすごく重要な仕事だってスタッフたちに言ってるんですよね。絶対に手を抜くなって。人の人生を預かってるんだから。前向きに何とかしようとしている、困っている人たちに対して、とにかく一緒になって頑張ろうって言う。

 

——一緒になって。

 

小出: そう。その意味では伴走してるんです。そして、流れを変えるためにはさっきも言ったように知恵が必要なんです。ただ一生懸命に、頑張ろうと走っていたってお互い疲れちゃって、「ゴールどこだっけ?」みたいなことではいけない。勝たなくちゃいけないんです。

 

——一緒に走りながら、ドリンクをあげたり?

 

小出: ドリンクをあげるっていうよりも、こう腕を振って、こう足を上げて、スピードアップさせるような走り方を伝授したりするようなイメージかな。具体的にこうすれば勝てるぜ、というところをポンと押して、スパーンと走らせるみたいな。

後編はこちら>>「地方創生ど真ん中一丁目 〜行列のできる中小企業の事業相談所はいかにしてできたか? (後編)」

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