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「仲間とつながり、プロジェクトが加速する」。Social Impact for 2020 and Beyond マンスリーギャザリングレポート(後編)

2018.10.06 

2020東京オリンピック・パラリンピックやSDGsを、個人と組織のアントレプレナーシップを解放する契機にしようと始まった「Social Impact for 2020 and Beyond」。

若い意欲的な次世代リーダーや社会起業家、そして大企業や行政などがポジティブに次の社会を創ろうとする「未来意志」でつながる、創発型のマッチングプラットフォームを目指しています。

今回は、月に1度行われている「未来意志」を共有する仲間が集うギャザリングのレポートをお届けします。後編では、8名のアジェンダオーナーによる社会にしかけたいプロジェクトの残り2名のご紹介、そして「高卒就職」「高卒革命」共同のゲストとの意見交換の場で起こった議論をお伝えしていきます!

>>前編はこちらから。

「医療的ケア児と社会の隔たりをなくす」、「ヘルスケア業界への女性進出を」・・・8名の社会を変えるプロジェクト

7.「医療的ケアの必要な子どもたちも“あたりまえ”にオリパラの感動を味わえる社会を作りたい」一般社団法人Orange Kids’ Care Lab. /オレンジホームケアクリニック 増永英尚さん

 

「医療的ケア児を知っていますか?」「医療的ケア児と関わったことがある方はいらっしゃいますか?」。そんな問いかけから始まった、増永さんのプロジェクト紹介。

 

福井県福井市を拠点に、在宅医療を0〜103歳までの約300人の患者さんへ届けているオレンジホームケアクリニックでは、医療的ケア児の患者さんも担当しているのだそうです。 今回のアジェンダの中で問いたいのは「無意識の偏見」だと語る増永さん。

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「実際に医療的ケア児と関わったことのある方は、限りなく少ないです。ちょうど2年半ほど前に障害者差別解消法が制定され、合理的配慮をしましょうということになりました。けれど、合理的配慮とは、違いに線を引いているだけなのではないですか?つながりを断とうとしていませんか?」と続けました。

 

今回のプロジェクトは、「皆で楽しく旅行しましょうという企画です」と語る増永さん。「関わりもないのに思い込んでいませんか?」という想いを背景に、東京ディズニーランドへ行ってみたくてもいけなかった医療的ケア児との旅行を皆で共有したいのだと続けます。

 

「全都道府県、最低1組は連れ出して、そこに皆さんに同行していただきたいと思っています。何が起こるかわかりません。そこで揺れ動いた心をレガシーにしたいと思っています」

 

今回のギャザリングでは、「これを実現するにはどうすればいいのか、どうやったら関わる人を増やせるのかについて話し合いたい」と増永さんは語りました。

 

8.「Empowering Women and Boost Innovation in Healthcare Industry」Healthtech Women Japan 小西千尋さん &山田偉津子さん

 

サンフランシスコで2014年に始まったNPO団体の日本版である、Healthtech Women Japan。ヘルスケア業界の中で女性の活躍が進んでいないことに問題意識を持ち、女性たちが活躍できる場所を作るために、知識・つながりを伝えていくコミュニティとして生まれました。

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2017年のスタートから1年間、月1で業界で活躍しているリーダーの話を聞き学び合い、ネットワークを作る場を設けているのだそう。来月には、イスラエルから10名の起業家を招いてイベントを行うまでに成長したと語ります。

 

「土曜の午後に開催しているため、休みを割いてくる参加者の皆さんは意識の高い方達ばかりです。様々なバックグラウンドの方々との交流を皆さん楽しんでくださっていますが、これからさらにこの活動をどうやって知ってもらえるのか、ヘルスケア業界での女性の活躍、テクノロジーの活用がどうやったらさらに進むのか、皆さんと考えていきたいと思っています」と語りました。

ぶっ飛びOK、乗っかりOK、アイディアの数が勝負。アジェンダオーナーを囲んでブレーンストーミング

8名のアジェンダオーナーからのプロジェクト紹介が終わり、アジェンダオーナーを囲んでのブレーンストーミングに移ります。

 

「ぶっ飛びOK、乗っかりOK、アイディアの数が勝負」というこの場の心得を共有し、参加者はそれぞれ関心を持ったテーマのテーブルへ移動。 すべてをご紹介したいところですが、今回は「高卒就職」と「高卒革命」共同のテーブルで生まれた議論の一部をご紹介します。

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 「高卒革命」アジェンダオーナー・毛受芳高さん(以下、毛受):大企業が大卒と高卒の垣根のある人生を作っていると思っていました。けれど今日、企業としてそこに切り込もうとしているロート製薬さんの存在を知りとても嬉しく感じています。 私は「高卒就職」という既存のイメージに“夢がない”印象が強いので、「高卒プロキャリア採用」という言葉で、仕事を通じて成長していくような新しい時代の高卒就職の定義を作りたい、広げていきたいと考えています。

 

NPO法人ETIC.事務局長 鈴木敦子(以下、鈴木):私も今回のプロジェクトは、新しい時代に高卒からキャリアを積み上げていくという選択があってもいいんじゃない?という提案だと感じています。

 

毛受:高卒と大卒という違いでまるで“人種”のように働いているけれど、大卒だって全員高卒ですよね。まずはそういった先入観をとったうえで、今日は考えていって欲しいと思っています。

 

参加者:ドイツでのマイスター制度を連想しました。たとえば農業のプロを目指して専門的な高校に入れば、卒業後にはマイスターという証を得て高卒であっても尊重されます。日本でもそれぞれの専門分野に極めることを社会から認められる仕組みを作ってみてはと感じました。

 

参加者:大学に行きたくても行けないとき、大学に行っていないからこそ得られる経験があるって大事なことなのでは。たとえば、そうした学生たちを海外に派遣する制度を企業が作るのはどうなのでしょうか。若ければ若いほど、異文化の中でたくさんのことを吸収できます。英語も仕事も経験値が上がっていくのでは。大学に行く以上の価値を得られる就職先だったら、より働きたくなりますよね。

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参加者:海外で起業してもらうのもありかもしれませんね。一般的には若い頃は会社を知る下積み時期として位置付けられますが、考えようによっては比較的少ないコストで新規事業を担ってもらえることになりますよね。

 

参加者:私の会社は高卒を採用していないんです。専門的な人を採用しようとすると、院卒になります。今の大学生は、高校生の延長で専門性が低い。高校から専門的なことをできれば、高卒就職も変わるのではと感じます。もしくは、大学も入りやすくて出にくい仕組みにするであるとか。大学の改革も必要ではないかと感じます。

 

鈴木:高卒就職がキャリアアップの機会になれば飛び込みやすくなりますよね。入った後も地域や海外で経験を積めるような。たとえば地域の中小企業さんは、海外にマーケットを出したいのに人材がいなくて困っています。マイスター制度のお話は、そういう意味でいいなと感じました。

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参加者:極端な話、中学生のうちから専門性が学べる場所あってもいいと思いますよね。

 

「高卒就職」アジェンダオーナー・ロート製薬株式会社 河崎保徳さん(以下、河崎):本当の専門分野を学ぶことは今の制度上大学でないと難しいけれど、たとえば営業は可能かもしれませんよね。弊社の営業の社員に知識としてどのレベルのものを使っているかと尋ねると、ほとんどが中学生と答えます。つまり、研究職以外であれば、本人の意思と企業の意思が合えば就職後にどんどん成長させていけるのではと感じているんです。

若者は国の大切な資源です。人口減少の時代、それをさらにすり減らしているのは私たち企業です。私自身は、20代は世界のどこにでも行けるし、親に反対されても何でもできる年代だと思っているんです。けれど企業は20代を新卒採用で囲い込んで、絶対失敗させないようにして苦しめていると感じています。

このプロジェクトの根本にある想いは、若い人にチャンスを与えたいということなんです。若い人を育てる土壌に企業がなれたらいい。昭和の時代には若者を部品のように扱ってきたのかもしれませんが、もうそんなことは終わりにしたいですよね。

 

参加者:たとえば発達障害を持っていてもI.Qが天才的な子どもたちと関わっていると、それこそいち早く企業とマッチングしていればすごく価値になるのにと感じます。日本は飛び級がないから、この国で彼らは苦しそうなんですね。

 

鈴木:もうちょっと自由度があってもいいのではと感じますよね。いったん働いてから大学に進むという選択肢も生まれたら、大学生の質も高まるように感じます。

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河崎:80歳まで働かないといけなくなりますし、30歳くらいでまた大学で学び直してとか、時代もそう変化していくのではないでしょうか。

応援者・協力者がつながるマンスリーギャザリング

1度目のブレーンストーミングを終え、それぞれのテーブルで生まれたアイディアを共有していくと、高卒就職以外の各チームも以下のようなアイディアが生まれてきたもよう。

  • 2年後、修行しに行った企業から背中を押してもらえる仕組みがあるといい。リスクをとって仕事を発注してくれる企業軍を作れたらいいのでは?(新卒一括採用グループ)
  • ダチョウ抗体でインフルエンザ菌に対抗するチョコを作ってダチョウ抗体を流行らせるのはどうか(ダチョウ抗体グループ)
  • タレント事務所のようなスポーツ選手の専門事務所を作って応援していくのはどうか(トップアスリートのセカンドキャリアグループ)
  • トップのエンジニアはできるだけ縛られたくなく、社会にインパクトがあるかどうかに一番価値を置く人材が多い。そこに解があるのでは。社会にインパクトを生み出している企業に人材を派遣してマッチングできたらいいのでは(企業×テック人材マッチンググループ)
  • 東京まで到達する過程を可視化、各地域で競争感出せたら?(医療的ケア児グループ)
  • 課題は、チームメンバーがテックに弱い。テックに強い人は男性でもいいのでは? メンバーに男性を迎え入れよう!(ヘルスケア業界への女性進出グループ)

熱い議論を交わした空気のまま、2回目のブレーンストーミングへ。懇親会では、それぞれのプロジェクトに関心を持った参加者とアジェンダオーナーがつながる場面がいくつも生まれているようでした。

*

「Social Impact for 2020 and Beyond」では、ゲストやアジェンダオーナーを招いてのマンスリーギャザリングを今後も開催していきます。次回の開催は2018年10月16日。詳細はこちらをご覧ください!

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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