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#ローカルベンチャー

ローカルキャリアチェンジのリアル。 東京から縁もゆかりもない熊本県南小国町へ、確信をもって飛び込めた理由。

2019.12.03 

2014年に「まち・ひと・しごと創生本部」が実施した「東京在住者の今後の移住に関する意向調査」では、東京から移住する予定又は移住を検討したいと思っている人は約4割に上るという結果が出ました。同調査では、移住を検討するきっかけとして子育てを挙げる声も女性に多く見られます。一方で移住する上での不安・懸念点として、仕事や日常生活、住居環境を挙げる人も……。

 

今回はそんな、「今後の子育てを考えるとU・Iターンもアリかなと思ってるけど、地方の情報も少ないし、自分に合った仕事が見つかるか不安で踏み切れない……」という方にぜひ読んでいただきたい内容です。南小国のWEBメディア「SMOMO」編集長の梶原麻由さんによる、今年の春に東京から熊本県南小国町に親子三人で移住したばかりという安部千尋さんへのインタビュー記事をお届けします。

 

南小国町は熊本県阿蘇地方に位置する、一次産業の盛んな中山間地域です。黒川温泉をはじめ人気の温泉地もあり、多くの観光客が訪れています。また南小国町は、NPO法人ETIC.が事務局を務める「ローカルベンチャー協議会」の参加自治体でもあります。西粟倉村など他の協議会参加自治体のサポートも得て、今年から実践型起業支援プログラム「南小国未来づくり起業塾」がスタートしました。お話を伺った安部さんは、この起業塾の運営を担当しています。安部さんの移住のきっかけから起業塾の詳細まで、率直に語っていただきました。

東京で南小国町を知ったきっかけは?

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SMO南小国・未来づくり事業部の安部千尋さん

 

梶原:こんにちは。今日は南小国町の未来づくり事業や、安部さんについても知りたくてお邪魔しました。よろしくお願いします。

 

安部さん:はい。なんでも聞いてください。よろしくお願いします。

 

梶原:まず一番気になったのが、なぜ東京にいながら南小国町を知ることができたのかということです。全国で1,700以上もある市町村の中で、ピンポイントで南小国町を知るのってなかなか難しいですよね?

 

安部さん:私の夫が社会起業家育成や、ローカルベンチャー協議会事務局も務めるNPO法人ETIC.に勤めておりまして、たまたま南小国町の担当だったんです。普段はとても穏やかな夫が、すごく熱のある感じで「南小国町っていいよ!」と。そこではじめて“南小国”という町を知りました。ただ、そのときは正直「へぇ、そうなんだ〜」くらいの感じだったんですけど(笑)

そして去年の6月に南小国町もブース出展した「地域仕掛け人市」という東京でのイベントに、私も仕事で参加しました。そこでたまたま南小国町の役場職員さんとお話しする機会があり、色々とお話を聞いて興味を持ったんです。

 

梶原:なるほど。もともとご主人から聞いて知っていて、実際にイベントで南小国町の人と話したことによって、関心を持ってくださったんですね。

 

安部さん:そうなんです。それから、南小国町の未来づくり事業のイベントなどが東京である度にお邪魔させていただいて、南小国町の人と深く関わっていくにつれ、ぼんやりですが何か私も南小国町にできることはないかと思うようになりました。

 

梶原:ありがたいお話です……実際、移住するまでに南小国町に来たことはあったんですか?

 

安部さん:はい。夫が大分の出身で、9月に帰省がてら南小国町にも行ってみようということになり、遊びに来ました。そのとき、地域仕掛け人市でお世話になった役場職員さんが飲み会を開いてくださって、町民の方々ともざっくばらんにお話することができ、ますます南小国町のファンになりました。

どうして移住しようと思ったの?

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梶原:色々とご縁があったんですね。でも、正直それだけじゃ移住してまで知らない土地で働こうとはならない気がするんですが……なぜ南小国町に移住してこようと思ったんですか?私が言うのもなんですが、南小国町より東京の方が何をするにも便利ですよね。

 

安部さん:そうですね、確かに移動などは東京の方が楽かもしれません。でも私は東京と言っても八王子の出身なので、そこまで都会ではないんです。なので、南小国町で生活すること自体は何の違和感もありませんでした。なによりもこの南小国町の“人と環境”に惚れ込んでいたので、“南小国町に移住”という固いイメージではなく“引っ越してきてた”という感覚でしょうか。

 

梶原:そうなんですか。ありがとうございます!南小国町のどこにそこまで惚れ込んでくださったんですか?

 

安部さん:一番は、スピード感とポテンシャルの高さでしょうか。去年すっかり南小国のファンになった私は、その当時の仕事との兼ね合いもあり、東京で南小国町の活動を紹介するイベントの企画を町に持ちかけたんです。そしたら二つ返事で「いいね!やってみよう!」と。

 

梶原:確かに、昔からあるものをしっかりと継承し守っていく風土と、今あるものを活かしつつ新しいことにチャレンジしていく風土がどちらもうまく共存しているというのは、私も住んでいて感じます。そしてなんでもすぐ「やってみよう!」という勢いがある感じ、すごくわかります(笑)

 

安部さん:そうですよね。やったことがないことでも積極的に取り組む姿勢がとにかくすごい。イベントまでのやりとりも本当にスピーディで、これまで様々な自治体と関わってきましたが、なかなかこんな自治体はないなと思いました。南小国町から色々な提案やご協力をいただいたおかげで、そのイベントは大盛況でした。何をするにも「こんなにポテンシャルの高い町があるのか!」と感心し、すっかり南小国町の虜になってしまいました。

 

梶原:イベントを通して実際に町の人と関わっていく中で、南小国町のいいところを体感し、好きになってくださったんですね。

移住の決め手って?

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梶原:安部さんが、最終的に南小国町に移住しようと思った決め手はなんですか?

 

安部さん:私が南小国町に移住しようと思った決め手は2つあります。1つ目は、役場職員の方が「町民が自分の町に誇りと自信を持って、住んでいてよかったと言える町にしたい」とおっしゃっていたことです。そんな熱い想いがあって、こんなに町民のことを第一に考えている人達がいる場所でうまくいかないはずがない!と思ったんですよね。

 

梶原:なんだかジーンときます。町の中枢となる役場で働いている方がそんな想いをもってくれていると思うと、安心感がすごいですよね。

 

安部さん:そして2つ目が、南小国町特産の小国杉を使った家具やインテリア小物を製作しているブランド「FIL(フィル)」の存在です。夫から「すごく尖ったブランドがあるよ」と教えてもらって何気なくホームページを覗いた瞬間、心を動かされました。

FILキャプチャ

「私にとっての『満ち溢れた人生』ってなんだろう……」と考えたときに、別に東京だからというわけではないんですが、年収や学歴などいつも同じものさしで人と比べられて、「人よりよければそれで満ち足りているの?」と、常にそんな問いを突きつけられているような気がして……。

ありのままの自然、継承されている文化、目に見えない絆を当たり前に大切にしている、そんな南小国町の中に入りたい、と強く思いました。

 

梶原:本当に色々な縁があって、「来るべくして来た」という感じなんですね。

 

安部さん:ありがたいことに、私の場合は私自身の“やりたいことと・やってみたいこと”と、南小国町の“やってほしいこと”がマッチして、南小国町に行かない理由がなかったくらいです。

 

梶原:安部さんの場合は、何度もイベントに参加したり、南小国町へ来る機会があったりと、知るきっかけが多くあったと思うので、移住するというハードルがそこまで高くなかったかと思うんです。だけど、そもそも南小国町を知るきっかけ自体がない方も多いかと思いますし、移住のハードルってほんとはもっと高くないですか?誰ひとりとして知らない土地で、しかも事業を展開していくとなると、結構な勇気がいると思うんですが……。

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安部さん:その通りだと思います。なかなか私のようなケースは稀で、ほとんどの方はやってみたいと思っても、何をどうすればいいのか分からないといった感じですよね。そんな方達に南小国町を体感してもらうきっかけを作るべく開催するのが、「南小国未来づくり起業塾」なんです。

「南小国未来づくり起業塾」って?

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梶原:起業塾を開催されるということですが、そもそも安部さんは南小国町でどんな仕事をされてるんですか?

 

安部さん:私はこの春から、観光地域づくり法人(DMO:Destination Management/Marketing Organization)である「株式会社SMO(Satoyama Management/Marketing Organization)南小国」でローカルベンチャー推進事業を担当しています。日本が誇る里山を継承・発展させていくため、南小国町の未来を担う「人」と「事業」を育てることがミッションです。挑戦する人を応援し、事業を育て、さらに人が集まるという経済循環をつくり、上質な里山を受け継いでいくことを目指しています。

……という説明だとちょっぴり難しいですよね(笑)

少し砕いて言うと、南小国での起業・新規事業が軌道に乗るよう全力でサポートする仕事です。チャレンジ精神旺盛な人が集まることで、南小国町や阿蘇地域がいつまでも元気で、今あるような自然・文化・人のあたたかさを残していけるようになると思うんです。そんな、町と人、そして人と人を繋ぐ事業、といった感じでしょうか。

 

梶原:「南小国未来づくり起業塾」はその一環ということですね。どんなことをやるんですか?

 

安部さん:今年新たに立ち上がった起業塾では、ただ南小国町に移住してきて自分のやりたいことをやる、という方を募集するのではなく、実際に南小国町の人やモノに触れた上で、「南小国町ならではの事業にチャレンジしてみたい!」「南小国町から未来を一緒につくってきたい!」という方を募集します。

また、「移住してみたらイメージと違った……」というミスマッチが起こらないよう、南小国町に2泊3日でお越しいただきます。町の事業者さんとも接点をもってもらい、より深く南小国町のことを知っていただいた上で、やってみたいことに挑戦できるかどうかを吟味してもらえるようなプログラムを組んでいます。

 

梶原:少しでもよいマッチングをするために、実際に南小国へ来てもらうんですね。最後に、安部さんにとって未来づくり事業のゴールってなんですか?

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安部さん:ちょっときれいな言葉で言うと、100年先を見据えて、南小国町の美しい里山に付加価値をつけ、暮らし・文化・人々のあたたかさを語れる人を町内外問わずに増やし、次の世代へ繋いでいく……といった感じでしょうか。

南小国町では、自分のやりたいことを仕事としてやれている人がすごく多くて、ほんとはそれってとても難しいことなんだけど、自然体にできる力がある方ばかりなんです。

そんな方達と南小国町の未来を一緒に考え、そこから挑戦していく人を応援する。そして新たな事業が生まれることで、そこに人が増え、また南小国町や阿蘇を愛する人が増えていってくれるとうれしいです。

まだまだ、私自身もこれからチャレンジしていく側なので、皆様と一緒に走っていければと思っています!

おわりに―「SMOMO」編集長・梶原麻由さんからのメッセージ―

今回安部さんのお話を伺って、「南小国町に来てからは、朝の忙しさも自然の景色を見ると癒される気がします。心が落ち着いて、カラダが喜んでるんですよね」という言葉にとても共感しました。

朝ってどこに住んでいても変わりなく慌ただしいですよね(私が朝に弱いからかもしれませんが……)。私自身、福岡に住んでいた頃は毎朝ぎゅうぎゅうの満員電車に揺られて通勤し、景色や時間を楽しむ余裕なんてまったくない日々を送っていました。

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ですが南小国町に帰って来てからは、なんだか人間らしい毎日を取り戻せた気がします。毎朝カーテンを開けたときに山を見ながら一呼吸。通勤しながらきれいな空気を吸って一呼吸。そして道で会った人には知らない人でも元気にあいさつ。いつもどこかで写真を撮りたくなる、癒しの風景がそこら中にある。そんな南小国町では当たり前の、穏やかな日々を過ごしています。

一度外に出たからこそわかる、外から見た南小国町の良さ。これがきっと、町外の人から見た南小国町の魅力なんだろうなと気付かせていただきました。

今後も未来づくり事業の情報は里山再発見メディア「SMOMO」にて紹介してまいりますので、そちらもぜひご覧ください。


 

南小国の梶原さんからのレポート、いかがでしたか?

「南小国未来づくり起業塾」について関心のある方は、以下のページもご参照ください。

 

【未来づくり起業塾HP】

https://miraimogstaff.wixsite.com/kigyojuku2019

【未来づくり起業塾Facebookイベントページ】

https://www.facebook.com/events/704790943362788/

 

Facebookページ「ローカルベンチャーラボ」、Twitter「ローカルベンチャーサミット」では、ここでご紹介したような地方でのチャレンジに関する情報を日々お届けしています。ぜひチェックしてみてください。

 

この記事を書いたユーザー
梶原麻由

梶原麻由

編集者・ライター。熊本県・南小国町出身。不動産会社の営業を経て、2017年に福岡からUターン。WEBメディアSMOMOで主に阿蘇の観光情報発信業務を行うほか、フリーで旅館や飲食店のプロモーションも担当。

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