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#ローカルベンチャー

60%がコロナは「プラスの影響もあった」と回答。コロナ禍におけるローカルベンチャーの事業・プロジェクトへの影響調査レポート

2020.11.16 

認定NPO法人ETIC.(以下、エティック)は、コロナ禍における地域(地方・都市部ともに含む)での事業・プロジェクトへの影響調査を、エティックとローカルベンチャー協議会が運営する地域に根ざした事業創造を学ぶプログラム「ローカルベンチャーラボ」 のこれまでの参加者を対象に実施しました。この記事では、その調査結果についてご報告します。

 

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【コロナ禍におけるローカルベンチャーの事業・プロジェクトへの影響調査 実施概要】

実施主体 NPO法人ETIC.

調査方法 Googleフォーム

調査期間 2020年9月11日〜2020年9月26日

調査対象 ローカルベンチャーラボ1〜4期生

回答数 131件

 

<ローカルベンチャー協議会 >

全国10市町村が連携し、地方創生の核となる「地方での起業・新規事業(ローカルベンチャー)」を創出するためのプラットフォームとして、2016年秋に誕生。国の地方創生推進交付金の対象事業として、2020年度までの5年間で新規起業・事業創出の件数176件、新規起業・事業創出による売上増約60.1億円、起業型・経営型人材の地方へのマッチング366人を目指す。2019年度までの4年間に、新規起業・事業創出201件、売上増約41.3億円、起業型・経営型人材の地方へのマッチング277人を達成。現在、以下の10自治体を幹事自治体とし、他にパートナー・メンバー自治体・企業を募集中。

岡山県西粟倉村(代表幹事)、岩手県釜石市(副代表幹事)、北海道厚真町、宮城県気仙沼市、同石巻市、石川県七尾市、島根県雲南市、徳島県上勝町、熊本県南小国町、宮崎県日南市

 

<ローカルベンチャーラボ >

地域(都市部・地方ともに含む)に根ざした事業の経営者や、起業型地域おこし協力隊として事業構想中または起業して間もない人材、都市部や地方で会社員として働きながら特定地域に根ざした起業を目指す人材を発掘・育成する半年間のプログラム。全国の先進的な実践者を招聘し、東京都内での座学と地方(原則としてローカルベンチャー協議会参画自治体)でのフィールドワークを組み合わせて、互いの事業構想を磨き合ってきた。

※リアルでのフィールドワーク開催は1〜3期のみ。4期は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、フィールドワーク含めて全面オンライン開催。

2017年度のスタート以来、受講生数は1期生47名、2期生56名、3期生69名、4期生54名。受講者の年代は20~50代と幅広く、職業も会社員や経営者、フリーランス、農家からパティシエまで多様。参加動機は、独立・起業のための準備に限らず、大手企業の新規事業開発の場として活用されたケース、地域おこし協力隊の任期終了後へ向けて事業づくりの場として活用されたケースも。

危機の中で事業のレジリエンスを高めているのは、横のつながりのネットワーク

 

最初に、調査結果から明らかになった以下4つのポイントをご紹介します。

 

1)地域で起業・プロジェクトをつくったローカルベンチャーのプレイヤーたちは、危機の中でもポジティブに新しいイノベーションの担い手になっている

ローカルベンチャーのプレーヤーたちは、コロナ禍で事業へのマイナスの影響(マイナスもしくはプラスマイナス両方の影響の回答78%)を受けていますが、危機にあっても前向き(ポジティブ67%)に新しい取り組みを始めています。

社会の変化が激しい時代において、制限の中でも新しい価値を生み出すための行動を続け、地域での新しいイノベーションの担い手になっていることがわかりました。

 

2)各事業・プロジェクトのレジリエンスを高めているのは、横のつながりのネットワーク

ローカルベンチャーのプレーヤーが事業を推進するうえで、各地の取り組みやケースに関する情報交換や事業相談へのニーズが高く、横のつながりのネットワークを構築することが各事業のレジリエンスを高めていると考えられます。その中でローカルベンチャーラボは、地域を超えた事業者同士のネットワークとして機能しています。

 

3)都市部在住者の地方への関心が高まり、移住に限らない多様な関わり方が求められている

オンライン化の促進、価値観の変容により地方への関心は高まり(事業・プロジェクトを実施中・都市部層、事業・プロジェクトなし層ともに50%以上が今まで以上に前向き)、具体的に地方と関係性を深めることへのニーズも増えています。移住に限らない、多様な関わり方の機会づくりが求められています。

 

4)経営人材に移住してもらいたいなら、ローカルベンチャー誘致に特化した施策が有効

ローカルベンチャーの担い手である経営人材が地方移住&起業を決めた要因として、ローカルベンチャーのための施策(地域資源を活かしたビジネスを創出することを目指した地域の起業家育成の仕組みづくりや、起業文化の醸成、地域資源の見える化・発信など)に関する項目が多く挙がりました。

また、これから移住&起業を考えたい潜在層にとっても、地域との関係性・地域内の関係性といった関係性要因に続いて、ローカルベンチャーのための施策が最も重要な要因として挙げられています。イノベーションを担う経営人材を地域に呼び込むためには、事業創造を支援する各施策が有効であると示唆されます。

観光や飲食業など影響を受けやすい事業形態が多い一方、60%が「プラスの影響もあった」と回答

 

それでは以下、詳細についてレポートしていきます。

 

全回答者131名のうち、70%以上にあたる93名が現在地域で何らかのプロジェクト・事業に取り組んでいると回答。この記事ではその93名へのアンケート結果についてご紹介します。

 

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新型コロナウイルス感染拡大が取組みに与えた影響について、「プラスとマイナスの両面の影響があった」「マイナスの影響があった」の回答合計が78%。

 

ローカルベンチャーは、観光、カフェ・飲食業、ものづくり、場づくりなど、コロナ禍の影響を受けやすい事業形態も多く、何らかの打撃を受けている事業者が多いことがわかりました。

 

一方で「プラスとマイナス両面の影響があった」と54%が回答、「プラスの影響があった」6%と合わせると、60%もの事業者がプラスの影響もあったと回答しました。

 

具体的な影響としては、「オンラインの推進」「地域の中で新しい役割ができた」「価値観の変化による新しい顧客の獲得・自身の事業変化」の3点が多くあがっており、コロナ禍での価値観や地域内の役割の変化を活かし、新しい事業機会を創出していることがわかりました。

マイナス影響の事業者「従来の計画から変更なし」24%「規模を縮小した(する予定である)」42%

 

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マイナスの影響があった事業者らを対象に絞り、事業やプロジェクトの今後にどのような影響があったのかを調査しました。

 

「従来の計画から変更なし」が24%、「規模を縮小した(する予定である)」が42%となり、一部影響を受けながらも事業を推進しているローカルベンチャーが多いことがわかりました。

 

また、「撤退・中止した(する予定である)」は6%にとどまりましたが、問1の回答からも大きな事業影響を受けているローカルベンチャーが多いことが推察され、コロナ禍での社会影響が長期化する中でより影響が広がることが懸念されます。

 

コロナ禍における地域のローカルベンチャー支援においては、新規サービス開発や地域の中での役割づくりといった取り組みを支援することが求められていると考えられます。

持続化給付金を活用。加えて「新規事業の実施」30%「既存事業のピポッド」27%

 

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コロナ禍における事業やプロジェクトの推進に際してどのようなアクションを取ったのか、複数選択制の回答からは63%が「感染症予防対策」、35%が「持続化給付金などの助成金の活用」と回答しました。

 

あわせて30%が「新規事業の実施」、27%が「既存事業のピポッド(方向転換や路線変更)」と回答。コロナ禍において、周囲の環境や社会の状況変化に合わせてレジリエンス高く新しい価値創造を行う事業を生み出す活動をしていることが示唆されます。

 

さらに、具体的なアクションについての補足回答では、問1で上がった3点と同様に、「オンラインの推進」「コロナ禍において地域で新しい役割を担う」「新しい事業の提供価値創造」が多く挙がりました。コロナ禍で影響を受けている事業者も、新しい展開に向けて動き出していることがわかりました。

ローカルベンチャーの鍵である「関係資本」。地域内外問わず、事業相談できる関係性が求められている

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都市部のベンチャーと異なり、地域の中で特定の事業領域だけでない多様な役割を担うローカルベンチャーは、地域内の関係性が事業基盤の一つになることも多く、関係資本が非常に重要であるといえます。

 

そのためローカルベンチャー支援は、事業計画やビジネス指導だけではない、地域の事業者間での情報交換や、事業相談をできる関係を作るなどの地域内ネットワーク構築支援などが求められます。

 

地域で事業やプロジェクトを進める上で困ったときの相談相手としては、「ローカルベンチャーラボなどの事業創造プログラムで出会った人」、「地域外の事業者仲間」の回答も多く、地域内の基盤はありながらも地域を超えて事業相談ができる相手も求められていることがわかりました。

 

また、ローカルベンチャーラボで出会った人たちとのプログラム終了後のアクションについて、約65%がラボ終了後メンバー同士での情報交換を行っていると回答。

 

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メンターへの事業相談や勉強会の実施などの回答も多く、ローカルベンチャーラボは横のつながりが非常に強く、地域外の相談先として機能していることがわかりました。

 

ローカルベンチャーラボに自地域のプレーヤーを送り込むことで、事業を磨くとともにそのプレーヤーを起点にしたネットワークの構築ができるともいえます。また、問1・3から推察されるように、ローカルベンチャーラボにはコロナ渦でも新しい価値創造に取り組む人材が多く集まり、このような人材同士の情報交換やネットワークが各地域のローカルベンチャーのレジリエンスを高めていると考えられます。

コロナ禍の事業推進について、67%以上が「非常にポジティブである」「ポジティブである」と回答

 

次は、プレーヤーの心理状態についての質問です。

 

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コロナ禍の事業推進について、67%以上が「非常にポジティブである」「ポジティブである」と回答。ネガティブは3%のみにとどまりました。

 

事業影響を受けながらも非常に前向きに事業を推進していることがうかがえ、問1・3の回答とあわせ、危機の中でもポジティブに起業家精神を発揮しながら新しい価値の創造に取り組んでいることが示唆されます。この背景には、問5でも分析したように、危機の中でも前向きに行動を続けるコミュニティの存在が支えとして機能しているのではないかと考えられます。

 

*

 

問7以降の概要は、以下になります。全文はこちらのリンクからご覧ください。

 

【問7】コロナ禍において、地方で暮らす/地方に関わることへの意識の変化

地方で暮らすことへの意識の変化については95%が前向きであると回答、そのうち50%が新型コロナウイルス感染拡大を機に「より前向きになった」「前向きになった」と回答。

 

【問8】都市部に居住されている方の地方との関わり方への意識の変化

「都市部と地方の2拠点生活を始めたい」と50%以上が回答。

 

【問9】地域に移住し起業やプロジェクトを開始したきっかけになったもの

最も重要だった要因として「そのエリアの地域資源の活用したビジネスを始めるため」「地域側に求められたから」などの回答が40%。

 

【問11】現在地域での事業・プロジェクトを推進していないケースにおける、コロナ禍での地方で暮らす/地方に関わることへの意識の変化

地方で暮らすことについて前向きである人が約90%。

 

【問12】現在地域での事業・プロジェクトを推進していないケースにおける、具体的な地方との関わり方へのニーズ

60%以上が「都市部と地方の2拠点生活を始めたい」と回答。45%が「オンラインで地方との関わりを増やしたい(増やした)」と回答。

 

【問13】地域に移住し起業やプロジェクトを進める上で、重要だと思うこと

「その地域に頼り先がある」「もともと住んでいる住民と移住者の関係が良好」など関係性要因、「検討しているビジネスに活用できる地域資源がある」「起業に前向きな文化や評判」などの回答が多数。

 

>> コロナ禍におけるローカルベンチャーの事業・プロジェクトへの影響調査

 


 

【関連記事】

>> コロナ禍における、社会起業家の「今」と「これから」に迫る〜NPO法人ETIC.記者会見レポート

 

現在、自分のテーマを軸に地域資源を活かしたビジネスを構想する半年間のプログラム「ローカルベンチャーラボ」2022年6月スタートの第6期生を募集中です!申し込み締切は、4/24(日) 23:59まで。説明会も開催中ですので、こちらから詳細ご確認ください。

 

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この記事を書いたユーザー
桐田理恵

桐田理恵

1986年生まれ、茨城県育ち。医学書専門出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2017年からはフリーランスのライターとして活動している。

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