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「ママの笑顔がいちばん!」新潟発ママの元気を支え続けるNPOの「ステップアップ」とは? ―認定NPO法人はっぴぃmama応援団

2022.10.24 

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認定NPO法人はっぴぃmama応援団

・「みてね基金」第二期ステップアップ助成で採択した「認定NPO法人はっぴぃmama応援団」は、「ママの笑顔がいちばん!」をモットーに新潟市で活動する子育て支援団体です。

・「みてね基金」の伴走支援では、資金繰りなど団体の大きな課題と向き合ったと同時に、産前産後と小児のケアに特化した訪問看護ステーションを立ち上げる決断をしました。

・訪問看護ステーションとは、介護保険法に基づいて保健師や看護師が管理者となって運営する事業所のこと。主治医から発行される、医師からの指示を受けるために必要な訪問看護指示書によって地域の人たちに訪問看護サービスを提供します(※)。

 

「みてね基金」は、子どもとその家族の幸せのために活動する非営利団体を支援しています。第二期ステップアップ助成では、資金的支援とあわせて、各団体が直面する課題が一つひとつ解決できるように事業や組織づくりに寄り添う伴走支援も行っています。

「認定NPO法人はっぴぃmama応援団」は、ママを中心に置いた子育て支援を持続的に継続するための団体の組織強化と、代表の松山由美子さんが長年思い描いてきた産前産後と小児のケアに特化した訪問看護ステーション「はっぴぃmamaはうす」の立ち上げを行いました。松山さん、はっぴぃmama応援団事務局の佐藤亜紀さんに、活動への思いや「みてね基金」での伴走支援を受けて感じた変化についてお聞きしました。

松山さんと佐藤さん

(左から)認定NPO法人はっぴぃmama応援団 佐藤亜紀さんと代表の松山由美子さん

 

※こちらは、「みてね基金」掲載記事からの転載です。NPO法人ETIC.は、みてね基金に運営協力をしています。

「ママのために」保健師たちが創った支援の場

 

ママのための産前産後のケアや育児相談などを行う「認定NPO法人はっぴぃmama応援団」代表の松山さんは、2005年、助産院のスペースを借りて、ママのための居場所をつくるために親子参加型の講座を始めました。

 

松山さん自身が、3人の子どもの出産、育児で抱いた「ママの話を聞いてくれる、ママを助けてくれる場所がほしい。ママのための場所をつくりたい」という想いから始めた活動。少しずつ賛同するかたちで集まったメンバーで前身の任意団体「はっぴぃmama応援団」を結成し、2009年、ママたちが気軽に支援を受けられる施設「はっぴぃmamaはうす」を開設、団体活動を本格化させました。

 

現在、団体の活動メンバーは、保健師の松山さんをはじめ助産師、看護師など専門職や先輩ママの15、16人。お互いを支え合い、産前産後の女性のニーズに応えながら活動の奥行きを広げていきました。

 

赤ちゃん教室

「はっぴぃmamaはうす」で開催されている「あかちゃん教室」

 

例えば、「産前産後デイケア」は、産後のママが施設「はっぴぃmamaはうす」で赤ちゃんと布団で休めるほか、育児相談やママの身体の相談などが受けるケア事業ですが、ママが一人でゆっくりと過ごせる保育付きの休息や入浴の時間も大切にしています。必要に応じ、会員サービスとして無料の送迎も行っています。

 

活動を始めて10年以上、施設「はっぴぃmamaはうす」での支援は多くのママたちをサポートしてきましたが、いつしか松山さんは団体としての課題を感じるようになっていました。特に、資金面では常に「来年も施設での活動を続けられるかどうかわからない」状態だったといいます。

 

「団体や活動をこれからどう発展させていけばいいのか迷っていました。過渡期を迎えていたのだと思います。ママの思いに応えた支援を続けるために、意識的にも運営的にももっと強くなりたいと思っていました。」(松山さん)

 

スタッフ

「はっぴぃmama応援団」事務所の風景

 

「組織化」への葛藤

 

松山さんは、「みてね基金」に申請した時のことをこう振り返ります。

 

「『みてね基金』は、助成金だけでなく伴走支援があることに惹かれました。今後、『はっぴぃmamaはうす』でママたちへの産前産後ケアを続けるために、『NPO法人はっぴぃmama応援団』という団体のあり方や、一緒に活動するメンバーと共有すべき意識の持ち方などを私自身が学びたかったんです。ダメもとで申請したので、採択された時は、『わーっ!』とみんなで拍手しました。」(松山さん)

 

2021年春、「みてね基金」第二期ステップアップ助成の二年間の伴走支援が始まって、まず松山さんたちが向き合ったのは「団体の組織化」でした。メンバー同士で何度も話し合いを重ねた最初の一年は、ママたちへの支援を行ってきた施設「はっぴぃmamaはうす」で、産前産後と小児のケアに特化した訪問看護ステーションを新たに立ち上げることにもつながりました。はっぴぃmama応援団事務局で経理を担当する佐藤さんは話します。

 

メンバー

はっぴぃmama応援団の頼りになるメンバーの皆さんと

 

「『団体の組織化』というと、事業で稼ぎ、常に目標額の達成を重視する組織というイメージを持っていました。私たちは資金面でいつもギリギリなことには困っていましたが、活動を始めたのは、あくまでもママたちのためです。だから、最初、『団体の組織化』といわれてもどうすればいいかわかりませんでした。」(佐藤さん)

 

「みてね基金」による伴走支援では、そんな佐藤さんや松山さんたちにこんな言葉もかけられたそうです。

 

「『団体の組織化といっても、組織という言葉に捉われすぎないように気を付けてくださいね』と言われました。『お金のためではなく、やりたい事業を続けて行くためにどうするべきかを一番の優先順位に考えて行きましょう』と。

でも、その時は、『お金のためじゃなくやりたいことのために組織化なんて、きれいごとのように聞こえる。だって、本当にお金がないんです』と心の中で反発していました。資金面で気持ちに余裕が持てない自分たちの焦りが前面に出ていたと思います。」(佐藤さん)

「はっぴぃmama応援団」らしさと資金の関係

 

「みてね基金事務局の方からは、『はっぴぃmama応援団らしくいてほしい』とも言われました。組織化を意識しすぎると、団体の良さが崩れてしまうことが少なくないから、『自分たちらしさを大切にするためにがんばってほしい』と。」(佐藤さん)

 

伴走支援で問われた「らしさ」。自分たちらしく団体を組織化させるとはどういうことなのでしょうか。また、「はっぴぃmama応援団」らしさとは何なのでしょうか。松山さんは話します。

 

「私は、一人ひとりが責任感を持って、ママを一番に思って活動することが団体の良さだと思ってきました。でも、以前、団体運営の利益を優先させてその自信が揺らいでしまったことがあります。当時は、資金面を優先し過ぎると、もめごとが起きるんだとも思いました。最初はみんな思いだけでスタートしたはずなのに。」(松山さん)

 

松山さんたちは、これまでに一度、事業収入へのモヤモヤをきっかけにメンバー同士の関係性が壊れかけるという経験をしていました。

 

松山さんたちの施設「はっぴぃmamaはうす」で行う産前産後ケア事業の一つ、「産後ママのための育児相談」は、施設利用料として会費300円(非会員500円)のみをママたちからいただきながら、満足度の高いサービスを提供しようと努力を続けてきました。しかし、資金面では、事業への単年度の助成金補助があって事業が成り立っている状況。松山さんたちは、「団体として資金面で自立しなければ、いつまで支援を継続できるかわからない」と危機感を抱き、「稼ぐ」ことを最優先に事業を運営していた時期があったそうです。

 

当時は「稼ぐ」に重きを置き事業を運営した結果、メンバー間で報酬面への複雑な感情が噴き出しました。松山さんはメンバーの理解を得るため、一人ひとりの話を丁寧に聞き、メンバーとの課題を解決していったといいます。

 

「あの時は、団体運営の利益を優先した方法から利益を求めない運営に変更し、メンバーとの関係を修復しましたが、それからはもうお金のことでもめたくないと思っていました。ただ、当時メンバーたちと資金面について徹底的に話し合ったからこそ、今回の『訪問看護ステーション』の立ち上げも実現できたと思っています。

今回の伴走支援を通して何度もメンバーやみてね基金事務局の方と本音で話すうちに、『お金のためにやりたくないことはやめよう。ママのニーズに応えることを一番に、やりたいことをやろう』と確認し合えました。」(松山さん)

 

また、佐藤さんは、自身の考え方が「変わった」と感じた瞬間についてこう語ります。

 

「みてね基金事務局との定期的な面談では、自分たちがそれまでの考え方を根本から見直すことにまで踏み込んでくれました。するとそのうち、『やりたいことを信じて続けていれば間違いない』と確信できるようになったんです。メンバーたちも前向きな考えになっているのを感じました。」(佐藤さん)

 

伴走支援の一環で、みてね基金事務局から紹介された、訪問看護ステーションを運営する先輩経営者にも大きく励まされたそうです。

 

「『自分が正しいと思うこと、やりたいことを信じてやろう。お金はあとからついてくるから』と言われました。その後、メンバーみんなで『自分たちを信じて進もう』と決めたんです。組織化とは一体何なのか、今でも正しい答えは出ていないかもしれませんが、それまで以上に、メンバー一人ひとりが、「はっぴぃmama応援団」の活動を自分事として考え、ママたちと向き合えるようになったと思います。」(佐藤さん)

 

サロンの様子

ママの笑顔がいちばん!をモットーに活動中

 

「はっぴぃmama応援団」だからできる訪問看護を

 

「実際、訪問看護ステーションを開設し、継続するためには、人員や資金の確保以外にも難しい課題があります。」と松山さんは話します。

 

「私はもともとメンバーに『いつか訪問看護をしたい』と話していて、メンバーたちも必要性を感じていました。でも、既存の産前産後ケア事業だけでも人員、資金ともに厳しい状況だったため、新しくステーションを立ち上げること自体のハードルが高く、やりたくても挑戦できませんでした。だから、伴走支援で訪問看護をやるかやらないかの話が出た時は、『なぜ今なの?』とメンバーからも疑問が出ました。」(松山さん)

 

松山さん曰く、医療的ケアが必要な子どもがいる家庭でも、重症度が高くない場合は行政の支援や訪問看護の対象にならないそう。

 

「でも、訪問看護ステーションを立ち上げ、医師の診断をもとに訪問看護指示書を交付してもらえれば、私たちが訪問看護でサポートできる場合が多いんです。

また、ママの心身のケアや育児と家事のサポートなど、一つひとつ訪問看護から派生する需要に応えていくことで新しい利益が生まれて、他の事業の継続性を支えられる可能性があることもわかりました。伴走支援で組織課題や産前産後ケア事業について話し合う中で、みんなが、ずっと子育て支援をしてきた『はっぴぃmamaはうす』の施設をこれからも残したいと強く思っていることもわかって、新しい事業を行う覚悟ができました。」(松山さん)

 

「ママたちの元気を自分たちで支えられる施設『はっぴぃmamaはうす』を残したい」。この思いをメンバー同士が確認しあえたことも、一人ひとりの意識により大きな変化を生み出したそうです。

「例えば、訪問看護ステーションの立ち上げでは、みんな『私には何ができる?』と積極的に役割を見つけていきました。看護職員との同行で、保育士と調理師が一緒に訪問すれば子どもを預かりながらご飯を作れるよね、大変な早朝の準備も手助けできるよねとアイデアを出し合って。やりたいことを『やってみようよ』と、どうすればサービス化できるか一緒に考えて、いつでもできるようにシフトを作るなど、今まで以上に責任感が具現化されていきました。」(松山さん)

 

こうして2022年7月、これまで産前産後ケアを行っていた施設「はっぴぃmamaはうす」内に、訪問看護事業として、産前産後と小児のケアに特化した訪問看護ステーション「はっぴぃmamaはうす」が誕生しました。この訪問看護ステーションは、早く生まれた赤ちゃんや哺乳が安定しない赤ちゃん、医療的ケアが必要な子ども、また産前・産後の育児に不安を抱えたママなどを支援対象としています。

また、医師が診断し、訪問看護指示書が交付されることで保険適用が可能になり、経済的な負担の軽減も実現しています。

 

「私たちがママの自宅に訪問して、『沐浴も任せていいし、その間、ママが傍らで食事をとってもいいんだよ』と言うと、『えー!』と驚かれます。訪問している間、育児相談の合間にお話をたくさんされる方もいます。医師との連携や子育て支援の施設が活かせる私たちのステーションだからサポートできることも多くて、ママたちの笑顔を見ると、やっぱり『ママのために』という私たちの軸は間違っていないと思えます。」(松山さん)

 

ママたち

ママたちの憩いの場「はっぴぃmamaはうす」

 

自分が幸せだと思える時間を大切に

 

松山さんによると、産前産後と小児のケアに特化した訪問看護ステーションは、最近、全国で生まれ始めているものの、新潟県では「はっぴぃmamaはうす」が初めてとのこと。

 

「今後は、個人で訪問活動をしている保健師、助産師や看護師たちの拠点になることが大きな目標の一つです。がんばっている人たちが、がんばりすぎなくてもやりたい活動を続けられる体制を作りたいですね。例えば、新潟市は、地形が縦に長いので一カ所で広範囲をカバーするのは難しいんです。だから、サテライト形式で、『はっぴぃmamaはうす』を運営の母体に一人ひとりが活動したい地域で訪問看護ができるようにしたいです。

 

また、現在、訪問看護サービスといえば高齢者の方のイメージが強く、支援内容や経済的な面も手厚いと言われています。そういった充実した訪問看護のサービスが、産前産後のママや子どもたちにも適用されて、ママたちがほしい支援を経済的な負担を感じることなく受けられ、もっと安心して子育てできる社会になればと思っています。」(松山さん)

 

「大きな夢なんですけどね」とはにかんだ笑顔を見せる松山さん。続けて、ママやパパたちへの思いについて聞くと、こう語ってくれました。

 

「自分が幸せだと思える時間を大切にしてほしいです。子どもたちも、大人のそんな姿を見ながら幸せな気持ちで育つと思うんです。

また、私は、ママのための場所がないという思いが『はっぴぃmama応援団』の活動を始めた原点ですが、今は、パパが気軽に相談できる場所がありません。突然、赤ちゃんとの生活が始まって、世間からのプレッシャーもあって、追いつめられているパパは多いと思います。いつかパパの支援もしたいですね。」(松山さん)

 

主要メンバー

(左から)はっぴぃmama応援団の村上さん、石黒さん、松山さん、佐藤さん、森さん

 

< 取材後記 >

 

「ママを助けてくれる場所がほしい」。松山さんのこの想い、実は私も同じようにママのための場所を探していた時がありました。産前産後の女性を支えるNPOと出会った時のうれしさは今でもはっきりと覚えています。今回、組織の基盤づくりに取り組む中でみなさんが感じた変化について書かせていただきましたが、より自律的にお互いを信頼し合ってママのために動かれる松山さんたちの活動で、子育てを楽しめる女性や家族がもっと増えるのだろうと思いました。(ライター たかなしまき)

 

「ママの笑顔がいちばん!」という、小さな子どもにとって一番大切なことを主軸に活動されている温かい団体さんだと思います。これからも新潟でたくさんのママとパパ(これからはパパもとのことですね)に寄り添う、頼もしい存在でいることを楽しみに応援しています。(みてね基金事務局 関まり)

 

***

 

フォトグラファー : 白井絢香

Lovegraph(ラブグラフ)フォトグラファー。東京を拠点にフリーランスとして全国出張撮影にて活動。ラブグラフの撮影の他には広告やファッション撮影、ライブ撮影などの撮影を行う。

 


 

団体名

認定NPO法人はっぴぃmama応援団

申請事業名

妊娠期からの切れ目ない支援を継続するための基盤強化事業

 

この記事に付けられたタグ

みてね基金子育て寄付訪問看護
この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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