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#スタートアップ

「既存のモデルで起業するのと、市場にないものを創りだすことは違う」Lost In Japanリーダー・中村俊之さんインタビュー

2014.08.28 

自然・伝統文化・食などの日本の各地域の素晴らしいコンテンツと、世界の旅行客を繋ごうとしている「Lost In Japan」。ソーシャル・スタートアップ・アクセラレーター・プログラム「SUSANOO」に参加し、リーンスタートアップ(高速仮説検証)を行いながら、日々ビジネスモデルが進化しています。

もともとはビジネスセクターで活躍されていたリーダーの中村俊之さんに、事業を作るプロセスについて、お話を伺いました。

※SUSANOOは、MOVIDA JAPAN株式会社代表取締役CEO・孫泰蔵さんをプログラム・ファウンダーとしてETIC.が2014年5月より開始した、新しい起業家支援プログラムです。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

中村俊之さん

「この事業は自分のライフワークなのか?」

田村:「Lost In Japan」は、どういった事業なのでしょうか?

 

中村:外国人の個人旅行客に向けた、「日本の地域文化や、地元の人たちに出会おう」というサービスです。日本には、地域の名所だけではなく、自然・伝統文化・食など、住民たちの生活の中にもたくさんの素晴らしいコンテンツがあります。そういった地域と世界をつなぐツアープランニングのコンサルや、海外に向けたウェブでの情報発信を、一気通貫して行っていきます。

でも、プランニングやコンサルをやろうと決めて現在のスキームになったのは、実は1週間前のことなんです。SUSANOOに応募した時は、まだウェブでの情報発信をするぞという案だけでした。

 

田村:つい最近なんですね!そもそも、プロジェクトを立ち上げる前は、何をしてらっしゃったのでしょう?

 

中村:今年の3月で役員は退いたのですが、もともとは共同経営で会社を立ち上げて、WEB制作会社の副社長を6年間やっていました。それまでもIT専門の人材サービスを立ち上げたりと、経営幹部として様々な経験はつんできました。 ただ、2年位前からそうした仕事にどこか限界を感じていたんですね。この仕事をずっとしていくのか、自分のライフワークをどこに置くのかが、当時見いだせなかった。会社をやっていたけれど、事業をライフワークとして捉えることは出来ていなかったと思います。

その頃ちょうど、地域体験ツアーなどが流行っていて、面白そうだと参加してみて出会ったのが、各地で地域活性に取り組んでいるNPOリーダーや地域プロデューサーたちでした。「こういう人たちがいたのか」と目からウロコでした。 また、その頃AirbnbなどCtoCのサービスが流行ってきているというのを、海外の友人たちから聞き、「地域と海外をつなげるのは面白いんじゃないか」と思いはじめました。 lostin.co

既存のモデルで起業するのと、市場にないものを創りだすことは違う

田村:それが今の「Lost In Japan」に繋がるんですね。

 

中村:そうです。でも最初は大きく失敗しました。まずは国内向け、そのあと外国人向けに展開しようと思っていたのですが、それは無理だと途中で気づきました。ウェブの設計思想とかが日本人とは全く違うし、そのままサイトを英語にしても伝わらないんです。また、ツアーのコンテンツを作ると言っても、英語を喋れない人も地域には多いですし、外国人旅行客を受け入れたこともない人も多い。

「すでにサイトは作りこんでいるけれど、このままでは立ち行かなくなりそうだ、どうしよう」という時に、ちょうどSUSANOOの話を、今一緒にプロジェクトを進めている貝沼さんが教えてくれました。貝沼さんは、福島の会津若松で会津漆器の工房見学や制作体験などを行っていて、もっとスケールしていきたいと考えていた。一緒にSUSANOOに参加しないかと言われて、「すぐ行く!」と貝沼さんのところに向かい、即その場で応募ビデオを撮って、選考事務局に送りました。

 

田村:そして無事採択になったんですね。これまでも経営幹部や事業立ち上げなどを多く経験されている中村さんにとって、SUSANOOでやっている内容はどういう風にうつっていますか?

 

中村:衝撃的でしたね。毎週セミナーがあるのですが、初回に孫泰蔵さんに「頭がちぎれるぐらいに考え抜き、努力し尽くせ」「自分の哲学を「志」のレベルまで高めろ」と言われて、2回目にNPOサポートセンターの笠原さんの「リーンキャンバス」ワークショップがあって、3回目はもうピッチプレイ。かなり刺激的でした。

僕は副社長をやっていましたが、直近6年は、今のトレンドであるリーンスタートアップやグロースハック、デザインシンキングなどにちっとも触れていなかったんです。同じ「起業する」でも、既存のビジネスモデルをなぞってやっていくのと、今回のように、これまで市場にないビジネスモデルを考えながらやっていくのは違うなと、とても感じましたね。

 

田村:市場にないビジネスモデルを考えていかないといけないというのは、ソーシャル・スタートアップの面白味かもしれませんね。そこから、仮説検証していくうちに、もとのプランとは変わっていったんですね。

 

中村:単にウェブで情報発信をするだけでなく、コンサルから発信までをやる形になりましたね。ツアーのアイデアを出すセミナーやワークショップを地域の人たちとやって、トライアルのツアーをつくりながら、オペレーションや通訳の問題なども検討していく。で、外国人モニターを連れて行って、フィードバックをうけながら、ツアーを改善し、マーケティング等の支援もしていく。あまり海外の人を呼び込んだことのない人たちでも、使えるようなものになってきていると思っています。

先日もちょうど体験を行って、千葉に棲んでいるカップルの所に、外国人を3人連れて行って、一緒にそば打ちをしたりしました。来週もまた福島の会津若松で、会津漆器のモニターツアーをやります。こうしてトライアルを繰り返す中で知見をためて、今後は行政なども交えた形でどこか1地域で型を作り、横展開しようという風に考えています。あとは海外でどうローカライズしていくかなんかも考えていますね。プロジェクトのメンバーには、システムエンジニアやコンサルもいるので、彼らと協力しながら構想をすすめています。 i-6GHdckf-X2  

小さく始めて、改善しながら、協力者を巻き込む

田村:失敗して軌道修正したりしながら、実現に向けてまさに動いている最中ですね。これから起業したい人は、こういう点を考えるといいよというような、アドバイスなどはありますか?

 

中村:どういう人たちがターゲットで、自分たちのソリューションは何かをまず考える。それを考える手法がリーンスタートアップなのかなと思います。小さく始めて、「こんなのどう?」とまわりに意見をもらって、アイデアをちょっとずつ改善して、協力者を巻き込んでいく。

今はたくさん起業支援プログラムがあるので、そういうセミナーやプログラムに参加するといいと思います。機会はどんどん利用すべきだし、そうしていろいろフィードバックを受ける中で、自分のやりたいことが研ぎ澄まされていく。いろんな所に顔を出すのは、新しい人脈にもつながります。

あと、僕は、株式会社設立しか知らなかったからそうしたけど、それは違っていたんですよね。どういう規模を目指すのか、どういう支援を必要とするのかで、組織体も選べるということを、今のソーシャルな分野に来てみて知りました。収益事業、委託事業、寄付など様々な収入な形があって、行政から委託をうけるときにはNPOの方が良かったりもします。どの形態や手段がいいのかも、試してみてわかるのかなと思います。

 

田村:確かに私も、会社にいたときはそうしたことを知りませんでした。多様な経営や働き方がありますよね。

 

中村:今の世の中の流れは、1つの組織に所属するとか、1つの事業にコミットするとかではなくなってきている。例えば生活の柱は持ちつつプロボノをやったり、複数のプロジェクトに自分のスキルやリソースをうまく配分していくというのが、働き方と生き方をリンクさせていく方法なのかなと思っています。

起業と言っても、いろいろなやり方があります。ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合なんかはフルコミットしなきゃいけないけど、そうじゃなかったら自分のやれるところからやっていくというのがいいんじゃないかな。いろんなセミナーやプログラムでエッセンスを学んで、ミニマムにやってみながら、事業アイデアをブラッシュアップしていく。僕自身そうしているし、これからそういう人は増えていくんじゃないかなと思います。

この記事を書いたユーザー
田村 真菜

田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。

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