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3つのステージからなる「地方創生先駆者モデル」とは?―ローカルリーダーズミーティング2023レポート(1)

2023.08.22 

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7月8~9日の週末、宮城県気仙沼市で「ローカルリーダーズミーティング2023」(以下LLM2023)が開催されました。ローカルベンチャー協議会が主催し、NPO法人ETIC.が事務局となったこのシンポジウムには、全国からローカルベンチャー(地域資源を活用した事業家)、自治体、中間支援組織、さらに首都圏の大企業などから約160名が参加。以下の3つのテーマで設計されたフィールドワークや分科会、さらに若手起業家によるピッチ(プレゼンテーション)などを通して有意義な意見交換・ネットワーキングを行いました。

 

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【LLM2023テーマ】

1 人口減少社会を前提とした幸福な働き方、生き方、地域づくり

2 生物多様性や森林資源の利活用などのサステナブル産業の創出

3 ローカルベンチャー×グローバル(地域企業の海外進出や連携、インバウンド観光)

 

本稿では、1日目のオープニングとして行われた基調セッションの内容を要約してお届けします。2人のローカルベンチャーの活動事例から上記テーマを考え、さらに成功するローカルインダストリーの育成環境についてデジタル庁統括官・村上敬亮氏の知見から学ぶ意義深い時間となりました。

 

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【登壇者】

・村上敬亮 氏 デジタル庁 統括官(国民向けサービスG担当)  ※オンライン登壇

・阿部勝太 氏 一般社団法人フィッシャーマンジャパン 代表理事 / 漁業生産組合 浜人 代表(宮城県石巻市)

・小林味愛 氏 株式会社陽と人(ひとびと)代表(福島県国見町)

【モデレーター】

石井重成 氏 青森大学社会学部 准教授

※各登壇者のプロフィール詳細は文末を参照。以下、文中敬称略

イントロダクション―青森大学社会学部 准教授 石井重成氏

 

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石井重成 氏

 

2016年にローカルベンチャー協議会が立ち上がり、ローカルベンチャー推進事業が始まった。第1ステージでは、各地でたくさんのプレーヤーが新しい事業やプロジェクトを生み出し、そのための仕掛けづくりの知見をシェアしてきた。

 

次のステージに向かうにあたってのポイントは、こうした小さなビジネスが本当の意味で「事業」になり、プレーヤーたちの集積が地域にインパクト与える産業へと育っていくかどうか。社会や暮らしのあり方を地域から提示していくことができるのか。それが問われている。

持続可能な水産業を目指して―フィッシャーマンジャパン 阿部勝太氏

 

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阿部勝太氏

 

石巻市で漁師をしている。仙台から戻って家業を継いだ2年後に大震災が起き、漁船も住宅も工場も流された。家業を立て直すところから始め、震災同年に「漁業生産法人 浜人(はまんど)」、3年後にフィッシャーマンジャパンを設立した。昨年は未利用食材を使った商品開発の会社(サステナミール)を立ち上げ、現在は3つの会社を営んでいる。

 

日本の漁師は減り続け、20年間で約半分になった。当然、水揚げも右肩下がりでピークの3分の1にまで落ちた。日本人の魚食消費も減り続けている。同時に日本の食料自給率も下落している。世界一の漁業大国だった日本は、いま7~8位に沈むが、世界全体で見れば水産業は成長産業だ。その世界の海で水産資源が枯渇し始めている。

 

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そんななか、水産業をどうしたら持続可能にできるか考え続けてきて、突き詰めると3つのテーマが浮かんできた。「人材」、「環境」、その2つを循環させるための「収益性」だ。それぞれで様々な活動を行っているが、ここでは代表的なものだけ紹介する。

 

■人材 : 担い手育成事業

 

水産業には代々受け継がれる漁業権というものがある。漁師の子でないと漁師になれないのだ。でも、継がせたくない・継ぎたくないとなった瞬間、この仕組みはマイナスにしかならない。漁師の子でなくても、海や自然が好きだからといった理由で漁師になってもいいのではないか。そこで、「トリトンプロジェクト」という担い手育成プロジェクトを2015年から始めた。海に特化したハローワークみたいなものだ。ベテラン漁師などに人材ニーズを聞いて回り、ホームページをつくって掲載したところ、思いのほか反応が大きかった。1年目で問合せ30件、8件のマッチングが成立。そのほとんどが移住者だった。

 

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これがメディアに取り上げられ、行政や漁協のみなさんも応援してくれる体制ができ、宮城県外からも声がかるようになった。いまでは9都道府県で同じ仕組みを運営している。開始後これまで延べ200名くらいの移住(県外から、あるいは同じ自治体内での移動)就業者を生み出すことができた。

 

■環境 : 持続可能プロジェクト(国際認証取得推奨)

 

海は一団体だけ、一国だけでどうにかできるものではないが、自分たちなりにできることを考えてアクションを起こしている。代表的なものがASC(水産養殖管理協議会)認証の取得推奨だ。ASCは、いわば世界共通のエコラベルみたいなもの。海に負荷を与えすぎることなく海産物を収穫したり育てたりする漁業を認定機関に認めてもらうと発行される。

 

最初に調べたとき、欧米ではASC取得は当たり前なのに日本は全国で7例くらいしかなく、恥ずかしかった。漁師自身が環境の持続可能性について真剣に考えてこなかったということだ。これを改めようと認証取得の推奨を開始。現在、全国19例まで伸びており、最多は宮城県となっている。

 

■収益性 : ブランディングと産地ロスの活用

 

これまで生産者には、自分たちの海産物がどんなふうに売られているかまったく見えなかったし、価格決定権もほとんどなかった。でも、生産者が価格決定の主導権を持てば、大きな価格変動を抑えられ、収益性も安定するはず。そのために、国内外に向けて漁師たちのストーリーや「こだわり」を発信している。自分の顔写真の入ったラベルを貼って都内などで販売しているのもその一環だ。

 

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きちんとブランディングして「より高く売る」努力と同時に、もうひとつ力を入れているのが、産地ロスの価値化だ。フードロスというと、賞味期限切れや食べ残しなど流通・消費段階のロスを指すことが多いが、実はそれよりも生産段階で廃棄される産地ロスのほうが圧倒的に多い。海藻で言えば、味も栄養も食感も同じなのに、ちょっと色が悪い、穴があいているなどの理由で廃棄され、その量は半端じゃない。そこで、国内外の加工品メーカーと組んで商品開発した。色が良くない昆布も傷ついたワカメも加工すれば同じ。原材料は、訳アリだからと安く仕入れず正規の価格で買い取る。そして正規の価格で販売する。そういう好循環を生み出している。

 

このような取組みが注目され、いろいろな自治体から声をかけてもらっている。3.11のときの恩返しという意味でも、課題先進地となった東北での事例を広く共有して全国の水産業の課題解決を手伝いたい。

 

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より良い状態で地域を次世代へ引き継ぐために ―株式会社陽と人 小林味愛 氏

 

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小林味愛 氏

 

公務員を5年、民間企業で3年、大震災を経て2017年に国見町で会社を立ち上げた。国見の基幹産業は農業で、桃やあんぽ柿などで知られる。当時は移住者などほとんどおらず、転入届を出しにいったら考え直した方がいいと言われたくらいだ(笑)。やりたいことがあって創業したが、事業計画などなく、とにかく農家さんたちの話を聞き、自分たちに何ができるか考えるところから始まった。いまは子育てしながら東京と二拠点生活をしている。

 

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陽と人は、どうしたら将来の世代にこの地域をより良い状態で託していけるか、それを社会実験している会社だ。よく持続可能性というが、それがいったい何なのか、わかりきっていない感覚を持つ人は多いのではないか。正解はないが、私たちは自分たちで何かをやってみて、その結果、産業や地域がどう変化するかを実験している。

 

アプローチしている課題は2つある。ひとつは、国見町および周辺地域の農業の課題解決。具体的には農家の収入アップだ。ふたつ目は女性の健康課題の解決。この2つが重なるところでプロダクトの展開もしている。

 

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以下の図は、何をすることで、どんな主体がどう変化するかをまとめたロジックモデルだ。

 

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事業立ち上げの原点のひとつは、桃畑で見た光景だ。農家さんを訪ねると地面に桃がたくさん落ちていた。木からとってはポンポン捨てていくのだ。腐っているのかと聞いたら、「いや、食べたらうまい」という。なぜ?と驚いた。桃は、ちょっと枝がこすれたりして見た目が悪いと値が付かない。家庭用B級品として出荷しても農家の収入はゼロ。市場に持っていくだけコストになるから畑で捨てた方が楽なのだ。もったいないとは誰しも思う。でも、そんな農産物を価値化して流通させるなど「できた奴はいない」と言われて、やる気に火が付いた。

 

その後、流通の仕組みなどを調べていくと、現行の制度は大戦後に構築された産業構造がベースになっていることがわかった。果物の見た目や大きさが同じでなければいけないのは、そのほうが大量を効率的に運べたからだ。でも、いまは人口が減り、市場が縮小し、生産者も減っている。畑で捨てられる桃は、生産量の少なくとも1割、天候によっては4割にも上る。金額換算すると10アールあたり10万円程度、1ヘクタールなら年間100万円のロスになる。販売価格を上げるのも大事だが、いま無価値と思われているものに価値を見出すことができないか。私たちはそれをやってきた。

 

あんぽ柿の製造段階で出る大量の柿の皮。これを3年かけて研究、有効成分を抽出して「明日 わたしは柿の木にのぼる」という化粧品をつくった。女性特有の健康課題を解決する商品として国内外に展開している。

 

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柿の皮をもとに開発した化粧品「明日 わたしは柿の木にのぼる」シリーズ

 

ローカルベンチャーの現状と課題:地方創生先駆者モデル ―デジタル庁 統括官 村上敬亮氏

 

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村上敬亮氏(中央)

 

今日の阿部さん、小林さんの話を聞くと、「二人ともすごい、この人達だからできたんだ」と思うかもしれないが、大切なのはそこではない。また、何を作ってどう売ったかというところに目が行きやすいかもしれないが、そこでもない。どんな人をどうやって巻き込んでいるか、というところに注目して欲しい。というのも、地方創生に成功している地域ではたいてい、「多様性のあるワンチーム」という状態ができているからだ。

 

今日は、地方創生の先駆者達と討議してきた、「地方創生先駆者モデル」をご紹介したい。これは「あの人がいたからできた」という属人的な要素に頼らずとも、「型」にはめることで一定レベルまでの地方創生を成功させることを狙っている。このモデルは、図のような3つのステージからなっている。その第一段階が、まさに多様な人材の巻き込みだ。

 

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我々は、この最初のステージを「暖気ステージ」と呼んでいる。地域にスターが一人いても、スターだけで成功している地域はない。うまくいっている地域にはその仲間がいる。そして、その仲間が潜む「藻場(もば)」のような場があることが多い。藻場とは、いろいろなプレーヤーたちが、クマノミのようにその物陰に隠れ、必要に応じて出たり入ったりできる場だ。誰だって、一人だけ衆人環視の中に置かれたら、やりにくくて仕方が無い。ふだんは藻場の中に隠れているが、できそうなことがあればこっそり藻場から出てきて、プロジェクトを手伝ったり、主催したりする。こういう状況を作り出すことが大切だ。

 

個人でも、仲良しな人と嫌いな人の間に、色々な距離感の人がいる。しかし、その一見面倒くさい人間関係に耐えて一緒に仕事をするから、色々と新しいものや変化も生まれるものだ。これは、地域も同じだ。地域でも、関わる人を、身内、よそ者に二分類しておしまいにするのではなく、その中間のところにいろいろな才能やキャラクターを持った人を孕んで置くことが必要だ。それが地域のポテンシャルに直結する。

 

多様な人材が集まり、場が暖まり始めたら、次に手を打つべきは、核となる事業をつくる「本格ステージ」だ。ポテンシャルのある人をたくさん抱え込むことがスタートだとしても、それをただ囲い込み続けているだけでは次に進まない。

 

ポイントは、鍵となる事業を引き受けるGP役だ。ファンド用語で、有限責任のLP(リミテッドパートナー)に対し、最後まで残った責任を引き受ける人をGP(ジェネラルパートナー)という。阿部さんや小林さんが引き受けている役割だ。よく「(自分の地域に)そんな人材はいない」と言われるが、それは間違いだと思う。どんな立派な会社でも最初から立派な経営者などいない。GPも経営者も、取り組みながら大きく育つ。問題は、GPにチャレンジしたいと思えるようなGPポストがデザインできていないことにある。

 

どういうことか。テックベンチャーなら成功したときのリターンが大きいので、GPとLPとの間にリターンの差がつく。だから、リスクが高くても大変でも、GPは自分が引き受けようという人材が出てくる。しかし、ソーシャルベンチャーはもともとリターンが少ない。となると、GPとLPの間のリターンの差もつかない。

 

するとGPは、リターンが少ないのに責任だけ重いことになる。加えて、万が一成功しようものなら、地域中の人から、あれもこれもと頼まれる存在になり、下手をすればこき使われることになりかねない。こんな状況のままでは、真面目にGPに取り組んでも次から次へと大変なことが起きるだけで、報いが少ない。だから、なかなか引き受け手が現れないのだ。それなりのリターンがあること。過度に頼られるでも過度に放置されるでもない、コミュニティとGPの適切な距離感が作れること。これがあれば、GPをやってみようという若いチャレンジャーはたくさん出てくると思う。

 

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もうひとつの取組みのポイントが「分配文化から投資文化へ」の転換だ。地方創生が闘っているものの正体の一つは、実は、ここにあると僕は思う。補助金をはじめとした、自治体からの分配を当てにし続けるだけでは、結局、生産性も給与も上がらない。

 

AIやらフィンテックやら、国際競争力の先端にどれだけ支援しても、それで生産性や給料が上がるのは、先端産業だけだ。しかし、日本の就業人口の相当部分は、物流、小売、医療、教育、宿泊、飲食など、地域に根付いた暮らしを支えるサービス業にある。これらはいずれも、生産性も給与も他と比べると低い。こうした労働集約的な地方のサービス業の給料を上げていかねば、先端産業だけ伸ばしても、日本の二極化がますます深刻化する。

 

正直なところ、地域には、困っても、ただ補助金の分配を待っているだけの事業者が少なくない。自腹を切ってGPの責任を負うこともなく、補助金が終われば直ちにプロジェクトも終了してしまう。これでは何も生まれない。第二・第三のフィッシャーマンジャパンや陽と人を作り出し、そこにどんどん地元の人を巻き込むことで、最終的に地域に暮らす人たちが就く仕事の生産性や給与が上がるような仕事へのチャレンジを促すこと。その取組みなく、ただ単に、知名度を上げるための華々しい地方創生プロジェクトをいくらやっても、地域の暮らしにとっては何の意味もない。

 

GPを核に、普通に資金調達を行い、しっかり事業を成功させる。その際、補助金をきっかけに人や資金を集めるのは構わない。しかし、最後の責任はしっかり引き受けること。そして、そこでGPが立ち上がったら、すかさず、補助金の分配を待っているような人たちに対して、自分みたいに、自ら投資をして自らチャレンジしたほうがおもしろいぞと、巻き込んでいくことが必要だ。核となる事業を軸にして、そこに「自分もやってみるか」と業態シフトにチャレンジする事業者を巻き込んでいく。その巻き込みに成功すれば、地方創生の第一段階は完了だ。

矛盾はチャンス。カギはデータ。挑戦が楽しいという環境づくりを

 

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石井 : いまのお話は、「あの人がいたからできた」問題に対する挑戦だと思う。地域の仕組みとして、またそれを作り出す中間支援団体の視座として、こういう道筋をたどるのだという汎用性のある「型」を示していただいた。

 

阿部 : たしかに責任と重圧だけあってリターンがなければ人は育たない。自分もそこを作ろうとがんばっているが、やっぱりそこなんだなと。でも、ゼロからイチを生み出すのは楽しいし、地域が元気になる姿を見るのはサラリーマンとは違うやりがいがある。そういう働き方への需要は本来たくさんあるはずで、リターンが作れれば一緒にやりたいという人は結構いると思う。

 

石井 : それが難しいわけだが、なにか事例があれば紹介いただきたい。

 

村上 : 例えば、静岡県三島市で始まった「三島ウイスキープロジェクト」(※)というのがある。受賞歴のある若いブレンダーが作る、三島に行かないと買えない限定生産のウイスキーの購入権が付いたトークンを販売した。初回の発行トークンは用意した2000セット、早々に完売し、結果として先行投資の回収が最初に終わってしまった。このように、地域でカギとなるような事業であって、話題性もありレアなものであれば、進んで投資を検討する人はたくさんいる。

 

今、三島では、この仕組みを将来的に伊豆全体をカバーする伊豆ファン倶楽部へと拡大し、第二、第三のウイスキーのケースとなるトークンのネタを掘り起こすと同時に、例えば、このトークンホルダーが三島に来た際に、ちょっとお得なポイント特典で更に他の施設やサービスに誘い、もう半日、伊豆を回遊し消費をしてもらうための企画に取り組んでいるところだ。

 

大事なのは、割引によって消費を誘発することではない。鍵は、付与したポイントの利活用から得られる行動データだ。人の流れが読めるデータがとれれば、それを次の施設やサービスへの導線開拓につなげられる。これが、3ステージの三つ目、「拡大ステージ」のひとつのパターンだ。人口減少時代、出店や新製品・サービスの開発を促す際の最大のカギはデータだ。カギとなる事業の周囲にいる人々に客の流れのデータを読んで、ある程度集客の予想できる状態で、プチチャレンジ、プチ創業を促し、創業循環をつくる。これが最終的に目指すべき取組みだ。

(※参考 : プレスリリース「Whiskey&Co.が、「FiNANCiE」にてトークン新規発行・販売開始!三島限定Whiskeyづくりへの参画権や購入権を提供」)

 

小林 : 地域でもマーケティングの思考が必要であり、需要を把握するひとつの手法としてデジタルがあるということだと思う。地方の行政も私たちも、産業構造が変わるなか、人口が増えていた時代のやり方のままでいいのか、という目線で物事をとらえ直さなければいけない。そこに選択肢が生まれてくるのではないか。

 

阿部 : 日本の食は世界でトップクラスだと思うが、まだその強みを生かしきれてない。地方も同じことで、可能性は大きいがうまくデータ化されておらず、地方自身が自分たちの強みを理解しきれていない。その理解を深めていけば、同じ地域は二つとないことがわかる。だから僕は「ライバルはいない」と言っている。そこをしっかりブランディングして闘っていけば伸びしろだらけだ。

 

村上 : 改めて、カギは「データ」だと申し上げたい。核となる事業を進める人を中心としてデータが読める環境をうまく作ってほしい。これは自治体主導ではなかなかできない。事業者の仲間たちでデータを持ち寄り、地域のデータを地域で活用することによって、「需要の見える化」を進め、どんなお客が来るのだろうかと想像しながらチャレンジすることは楽しい、そういう環境作りにチャレンジして欲しいし、デジ田交付金などを使って、支援をしていきたい。

 

石井 : ありがとうございました。

 


 

【登壇者プロフィール】

村上敬亮(むらかみ・けいすけ)氏   

デジタル庁 統括官(国民向けサービスG担当)

1967年、東京都出身。1990年、通商産業省入省。IT政策に長らく携わった後、クールジャパン戦略の立ち上げ、COP15,16等の温暖化国際交渉、再エネの固定価格買取制度創設等に従事。2014年より内閣官房・内閣府で、地方創生業務や国家戦略特区業務に従事し、2020年7月より中小企業庁経営支援部長。2021年9月より現職。

 

阿部勝太(あべ・しょうた)氏   

一般社団法人フィッシャーマンジャパン 代表理事 / 漁業生産組合 浜人 代表

1986年、宮城県石巻市に漁師の息子として生まれる。仙台や東京で会社員を経験後、故郷の同市北上町の十三浜に戻り、ワカメ漁師になる。震災後、壊滅的な被害を受けた漁業と地域の再生を目指し、5つの家族とともに浜人(はまんと)を立ち上げ、東京の大手企業と組んだ商品開発やプロモーションなどを実施。また、三陸の若手漁師らと協力してフィッシャーマンジャパンを設立、代表に就任。漁業を「儲かる産業」へとイメージを変え、後継者を育成するプロジェクトなどを展開している。WEB : https://fishermanjapan.com/

 

小林味愛(こばやし・みあい)氏   

株式会社陽と人(ひとびと)代表

東京都立川市出身。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、衆議院調査局入局、経済産業省出向、株式会社日本総合研究所を経て、福島県国見町に株式会社陽と人設立。 福島県の規格外農産物の流通など福島の地域資源を活かして地域と都市を繋ぐ様々な事業を展開。2020年には国見町のあんぽ柿の製造工程で廃棄される柿の皮を活用したフェムケアブランド『明日 わたしは柿の木にのぼる』を立ち上げ。第9回環境省グッドライフアワード特別賞、2021年度地方創生賞など数多くの賞を受賞。商品の販売に留まらず、経済産業省フェムテック実証事業など、女性の健康課題に関する研修など医療の専門家と連携しながら様々な普及啓発活動も行う。 2021年3月から復興庁「復興推進委員」も務める。 子育てをしながら福島と東京の2拠点。WEB : https://hito-bito.jp

 

石井重成(いしい・かずのり)氏

青森大学社会学部 准教授

国際基督教大学を卒業後、経営コンサルティング会社を経て、東日本大震災を機に岩手県釜石市へ移住。多様な復興支援・官民共創事業を手掛け、人口減少時代の持続可能なまちづくりを探求する釜石市「オープンシティ構想」を統括。2021年4月より青森大学に拠点を移し、自治体・中間支援団体・企業の事業組織開発や人づくりを支援。コミュニティの撹拌を通じたイノベーション創発に取り組む。一般社団法人地域・人材共創機構代表理事、総務省地域力創造アドバイザー、デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師、環境省地域循環共生圏プラットフォーム事業アドバイザー、国土交通省東北圏広域地方計画有識者委員など。1986年愛知県西尾市生まれ。

 


 

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>> 目指すは地域発のスタートアップ・エコシステム。地方創生xデジタルが日本経済に必要な理由とは?〜ローカルリーダーズミーティング2022レポート(1)〜

 

<関連リンク>

>> ローカルリーダーズミーティング2023

https://initiative.localventures.jp/event/3142/

>> ローカルベンチャー協議会

https://initiative.localventures.jp/

 

 

この記事を書いたユーザー
中川 雅美(良文工房)

中川 雅美(良文工房)

福島市を拠点とするフリーのライター/コピーライター/広報アドバイザー/翻訳者。神奈川県出身。外資系企業で20年以上、翻訳・編集・広報・コーポレートブランディングの仕事に携わった後、2014~2017年、復興庁派遣職員として福島県浪江町役場にて広報支援。2017年4月よりフリーランス。企業などのオウンドメディア向けテキストコミュニケーションを中心に、「伝わる文章づくり」を追求。 ▷サイト「良文工房」https://ryobunkobo.com

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