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まちづくりや子ども支援の分野から拓く横断型子ども福祉のコレクティブインパクト。~自然治癒力の高い地域を目指して~

2021.08.10 

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岡山県では、岡山NPOセンターが中心となり事業創設し、NPO、社会福祉法人、企業、行政など様々な主体が連携する体制を構築しながら、「KOTOMO基金」や夜の街で働く親の生活実態調査など幅広い取り組みを通じて、横断的に子どもに関する課題を解決していこうとしています。今回は、同法人の石原達也代表、同法人・参画推進センター西村こころ参画推進センター所長、井上正貴事業フェローに、岡山市内及び県内の子どもが抱える課題と、新たな連携の取り組みについてお話をうかがいました(以下、各自敬称略)。

 

岡山NPOセンターが仕掛ける新たな基金とは。現場で働く人たちは何を感じているのか。それぞれの話から、今後の変化に期待が高まりました。

 

NPO法人ETIC.(エティック)は2019年度より休眠預金等活用法に基づき、資金分配団体として「子どもの未来のための協働促進助成事業」を推進しています。全国の子どもを支援する団体が、協働による地域の生態系醸成を実践すること目的に、そのモデルとなりうる実行団体に対して資金的・非資金的な支援を実施中です。

>>助成事業について詳細はこちら

事業開始から2年目を迎え、6つの採択団体(実行団体)およびその連携団体へインタビューし、6回のシリーズで活動の状況を紹介していきます。

地域の“自然治癒力”を高めるためには何が必要なのか

 

岡山NPOセンターの活動概要について教えてください。

 

石原 : 岡山NPOセンター(以下、NPOセンター)は、1998年に「NPO」というコンセプトを広げることを目的としたネットワーク組織として設立されました。2005年に、私が入職してからは、中間支援組織として個別のNPOの運営(経営)のサポートをするように。2012年ころからは、セクターを超えた連携やアライアンスを進めるべく、つながる機会を提供してまいりました。

 

しかし、法人設立から20年となった2018年に西日本豪雨が起き、その支援活動の中で、もっと団体や組織の枠を超え連携できるよう、踏み込んでコーディネートする役割がNPOセンターにはあると再認識。そして、どこかひとつのNPOが高い負荷をかけて課題に取り組むのではなく、法人・個人など各自が配慮することで課題そのものが起こりにくい状態になる――自然治癒力の高い社会の実現が必要だと思いました。

そして、社会課題への対応に多くの人たちが参加するなど、それぞれの当事者意識が、地域の“治癒力”を高めることにつながると信じています

 

子どもの課題に取り組もうとしたのはなぜでしょう。

 

石原 : 現状を改めて見たとき、子どもの抱える問題は深刻です。一方で、岡山県は子どもの支援に取り組むNPOの割合が多く、あらゆるNPOが子どもの課題を解決するため、体験学習、シェルター、女性(母親)支援など、実績がいくつもあります。しかし、社会の変化により子どもの課題も複雑化し、支援や支援を支える資源が足りていない状況にあります。

 

2018年の災害の経験を踏まえて、未来を変えるためにも、未来の担い手となる子どもたちのために地域全体が切れ目なくつながっていく――こうした支援の実現に向けて、基金の設立や団体同士の連携を進めるアクションを始めたのです。

子どもの課題を3つの段階に分けながら丁寧な支援を強化

 

岡山NPOセンターでは、子どもの課題への対応にむけ「KOTOMO基金」を設立。基金の構想のお話の前に、岡山県の子どもの状況についてお聞かせください。

 

石原 : 岡山県には、進学校も数多く、“教育県”と認知されてきました。

最近では、コロナの影響を受けて困窮する子育て世帯が顕著に。岡山市や岡山市社会福祉協議会と実施した調査では、生理用品をはじめとする日用品や食料品の支援を受けたいなどの要望が多くありました。

人口が集中している岡山市、倉敷市を始めとして、東京等の大都市同様に経済困窮など、格差の問題が現れ始めています。

 

子どもの支援をよく水槽の図に例えていますがどのようなものでしょうか。また、「KOTOMO基金」にはどのような構想があるのでしょうか。

 

石原 : 子どもの課題と一口で言っても実態は非常に多様です。よく“水槽”の図に例えるのですが、子どもの支援は次の3つの段階に分けられます。

・予防や早期発見する(水槽の蛇口を止める)段階。例)体験学習などの居場所つくりや、ひきこもり支援など

・直接的支援の連携を高める(水槽の中)の段階。例)衣食住の提供や自立援助ホームなど

・セイフティーネットを張る(こぼれおちる水を受け止める)段階。例)シェルターなど

 

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子どもの課題を示した“水槽”の図

 

KOTOMO基金では、団体同士がアライアンス(同盟)を組んで、つながりながら支援できる環境を整えていきます。そして、予防・早期発見⇒直接的支援⇒セーフティーネットと段階に応じた支援を、切れ目なく支えたい。例えば、水槽の中である直接的支援を進めるためにアウトリーチへの資金を提供する、零れ落ちる水を受け止めるセーフティネットの維持に資金を出す、遊び場や広場の早期発見の取り組みに資金を出すことなど。アライアンスに参加する団体には、情報共有など活発に連携してもらいたいですね。

 

なお、KOTOMO基金のPRおよび支援先の選定など、運営面で山陽新聞さんと協働しています。もともと山陽新聞さんは、コロナによる影響で困難を抱える方々とその支援に関する特集記事を連載されており、活動へ共感いただけました。

 

KOTOMO基金の構想に基づき、新たに仕掛けている具体的な取り組みや感じたことについて教えてください。

 

石原 : 特に、「夜の街で働く親の生活実態調査」「支援先に使える制度がわかるシステムの構築」をお伝えしたいですね。また、KOTOMO基金では、新たに「実績払い型寄付(アウトリーチの支援をするたびに報告され、寄付者は自分の寄付がどの程度貢献しているか実感できる仕組み)」の仕組みを導入するのですが、こちらも特徴的。※夜の街で働く親の生活実態調査については後述。

 

使える制度がわかるシステムではその世帯の状況に応じて活用できる行政制度や民間支援が検索できます。これにより、支援者の知識や経験だけに頼ることなく制度をうまく活用できるようになります。そして、過去の使用例も表示されるので、どのように制度を活用すればよいかも明らかになります。

 

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データベースの画面イメージ

 

なお、新聞広告を通じて寄付の募集をはじめると、高齢者の方からすぐに3000円からの寄付だと年金生活でも力になれると思えたなど、うれしい反応を得ました。助け合いの気持ちに広がりを大切にしたいです。

 

私自身でいうと、KOTOMO基金やデータベースの取り組みを進めるにあたって、関わりの薄かったセクターとのつながりができたのがうれしかったですね。特に、社会福祉法人さんなどの福祉関係の組織は近くて遠い存在でもあったので、今回のことを機に、「まち」や「市民」を主語に連携して、面白い化学反応を起こしていきたいです。

 

岡山の新しい取り組みを進めていく中で見えてきた未来

 

自らも子ども食堂での支援をされながら岡山NPOセンターのフェローとして活動されている井上さん。実際に現場で見えるのはどんな課題ですか。

 

井上 : 倉敷市で「水島こども食堂ミソラ♪」という子ども食堂を運営しています。日頃、子どもたちやその親とと接するので課題が見えますが、特に、コロナの影響は顕著。支援を必要とする世帯が増えました。現在は、食料や日用品、お弁当をお渡しする「フードシェア会」を行っています。

 

ただし、私たちの支援にたどりついた場合はまだよいのですが、実は見えてこないケースも多い。

 

先日も、祖父母と暮らす高校生へお弁当配布を始めたところです。祖父母がケガをしたうえに、コロナ感染で入院し、高校生の当人も「隔離」が必要な状態に陥っていました。偶然にも、地域の高齢者支援センターの協力で、この高校生の孤立を察知でき、食事の配布支援ができました。今では、好き嫌いを教えてもらえるほどの関係になり、信頼関係をゆっくりと構築しています。

 

これからは、こうした「見えない困窮者」へのアプローチがとても大切。KOTOMO基金では、現状調査実施が助成対象になります。実態が明らかになれば、どのような支援が必要になるか、団体同士の役割分担も明確になるでしょう。

 

岡山NPOセンターとはどのように協働されていますか。具体的な活動を教えてください。

 

井上 : 夜の街で働く親の生活実態調査が、NPOセンターとの協働事業のひとつです。夜の街で働く方65名に課題を聞きました。

>>>詳細な実施結果はこちらから

 

調査を通じて職業には関係なく、コロナの影響には同じような傾向があると感じました。具体的は、仕事量の減少や子どもへの教育支援など、求める支援内容は似ています。夜の仕事だからということではなく、支援の網目を広げることが求められているのです。

 

NPOセンターとの連携を通じて変わったことはありますか。

 

井上 : NPOセンターさんとの出会いは、岡山県倉敷市の真備町で大規模な災害があったときや子どもの支援に関する会議の場です。これまでの私たちの活動を認めてもらえたのか、代表の石原さんに、夜の街で働く親やその子どもの生活実態調査を進めたいという話を受けて、一緒に私も何か力になりたいと思いました。

 

仕組みが変わらないと同じ課題は続きます。先ほど紹介した高校生のケースのように、見つけられた子は助かっても、そうじゃない子は助からない。子ども食堂を運営しながら、ずっとそうした問題意識を持っており、石原さんから協働の話があったときはうれしかったですね。

 

私がNPOセンターさんとつながったように、多くの団体が連携し合いながら、切れ目ない支援を提供する「支援の生態系」を作ることは、今後の岡山にとって非常に重要だと思っています。

 

これからの取り組みなどメッセージをお願いいたします!

 

井上 : 私はこれからも現場で起こっている課題を「伝える」ことに注力していきたいですね。そして、連携に参加する新たな仲間をもっと増やし、「支援の生態系」を広げていきたい。引き続き、連携の輪をもっと広げていきます!

 

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食事を配送する井上さん

 

次に、NPOセンターの事務局として活動を支えている西村さんに活動を通じて感じていることをお聞かせいただきます。NPOセンターの現場で活動をしていて重要と感じることは何でしょうか。

 

西村 : 私は、法人内の参画推進センターという部署で、ボランティアなどの参加の入口を支える仕事をしています。特に、岡山高校生ボランティアアワードなど、若い世代の参加には力を入れています。

 

虐待など、理不尽な子どもの課題対応に向けて、同じ町にくらす大人がもっと自分事に捉えてほしい。当事者意識を高めるには、若いうちに社会課題に触れる経験が必要だと思います。

 

成長の過程で「社会」にどのようなまなざしを向けるか、その社会でどのように生きていくか考える機会があると、社会課題への見かたも変わっていき、自分事として捉えられるようになるのではないでしょうか。

 

なお、KOTOMO基金は、寄付を通じて課題解決への参加ができます。当事者意識をもって解決していく仕組みのひとつとなるでしょう。

 

NPOセンターで感じた現場での成果について教えてください。

 

西村 : 夜の街で働く親の生活実態調査など、新しい取り組みのアイディアが出たとき、ここと連携したらよいかなと「顔ぶれ」が浮かんできます。このような関係性は一朝一夕で築けるものではないので、これまで積み上げてきた様々な連続してきた活動の成果ではないでしょうか。

 

また、最近ではKOTOMO基金に関して個別にお伝えする機会が多く、団体さんとじっくり膝を突き合わせる機会が増えました。そして、大事にされていることや、人となりを含めて改めて知るきっかけにも。

 

一連の取組を通じて、団体への理解が深まることで、今後の新たな連携に向けてますますイメージがしやすくなりました。同時に、団体さんとの対話は、自分たちの意義や価値を見つめ直す機会にもなっています。これからも、地域内の団体さんから信頼してもらうために、自分に厳しくなければならないと思っています。

 

今回のプロジェクトでの当法人と地域の団体さんとの協働は、始まったばかりです。目に見える変化はまだまだ小さいかもしれませんが、これから積み重ねて行けば、大きな変化になっていくものと信じています。

 

当法人としても、KOTOMO基金を始めとする地域内の団体と協働を進めるうちに、それぞれのスタッフがいつもよりも少しずつ背伸びをしながら頑張っています。こうした頑張りが出始めたことで、団体や組織がぐっと成長する――こちらも成果の一つだと思っています。

 

NPOセンターで働いて西村さんが変わったことやこれからの展望ついて

 

西村 : 意識しているのは、職場の次世代の育成です。若い世代がチャレンジしやすい環境を整えるなど、成長を感じられる場にしていきたいですね。そして、そのチャレンジする姿を外から見た、学生やさらに下の世代が「こんなところで働きたい」と思うようなロールモデルを示せるよう頑張っていきたいですね。

 

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参画推進センターの西村さん

 

まとめとして、最後に石原さんからこれからどんな地域を作っていきたいか、メッセージをお願いします!

 

石原 : 岡山には長くに子どもの支援に取り組んできてくださっている大先輩がたくさんいます。今回の取組は、そうした先輩からの「宿題」だと思っています。まだまだ力不足ですが、新たに仕掛けている活動を通じて、なんとか踏ん張りつつ、これまで子どもに届けてきたことを、次世代にも同じく届けていきたい。先人のバトンをつなげていきたいと思います。

 

また、KOTOMO基金への寄付などを通じて、多くの人に課題解決に参加してもらいたいですね。当事者意識を持つ人が増えてほしい。そして、誰もが肩肘張らずに助けたり、助けを求めたりができるような社会になってほしい。この取り組みだけでなく、周縁にあるものも繋げながら、参加を意識して、新たな取り組みや仕掛けをどんどん実現していきます。そして、特定の団体や組織が支援しなくても、地域内で自然と助け合える社会の実現を目指します!

 

 

※ETICコメント

岡山NPOセンターさんは、今回の休眠預金事業に関わらず、子どもの問題に関して行政やNPO等と協働するという実績を何年もかけて築いていらっしゃいました。1年間ご一緒させていただいた中で、岡山NPOセンター内の関係者や周囲の協働主体の方々にお会いしましたが、これまで育んできた様々な関係性や土壌のもとに、子ども支援の新しい流れが生まれているのを感じています。特に、協働主体内の連携においては、現場のリーダーたちのコミットメントが協働を可能にし、支援の輪を広げています。あらゆる人が当事者として、共通のビジョンづくりに関わっていく、そんな大きなうねりが生まれていくことを期待しています!

 

<お話いただいた方>

岡山NPOセンター:

石原達也代表

西村こころ参画推進センター所長

井上正貴事業フェロー

 

<聞き手>

エティック:佐藤淳

エティック:川島菜穂

 

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この記事を書いたユーザー
望月愛子

望月愛子

フリーライター。 アラフォーでフリーランスライター&オンラインコンサルに転身。夫のアジア駐在に同行、出産、海外育児を経験し7年のブランクを経るも、滞在中の活動経験から帰国後はスタートアップや小規模企業向けにライティングコンテンツや企画支援サポートを提供中。ライティングでは相手の本音を引き出すインタビューを得意とする。学生時代から現在に至るまでアジア地域で生活するという貴重な機会に恵まれる。将来、日本とアジアをつなぐ活動を実現するのが目標。 タマサート大学短期留学、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修了。

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