ここ数年、ソーシャルセクターへの転職に関心が高まりを見せていますが、実際、採用活動を行う企業や団体の方々はどんな感触を持っているのでしょうか。
社会の動きをふまえて求人媒体を活用しようとする時、どんなことに気を付ければいいのか、どんな傾向が表れてくるのか、始めてみたからこそわかることも多いはず。
今回、特定非営利活動法人サンカクシャ代表理事の荒井佑介さんに採用の手ごたえや決め手などをお聞きしました。今後の採用活動の参考になれば幸いです。
荒井佑介さん/特定非営利活動法人サンカクシャ代表理事
大学在学中の2008年からホームレス支援に携わり、2010年から子どもの貧困問題に取り組む。教え子が高校進学後に様々な課題に直面したことから15歳から25歳くらいまでの若者を支援するNPO法人サンカクシャを2019年に設立。親や身近な大人を頼れない若者が孤立せず、自立にむかえるよう、「居場所」「住まい」「仕事」の3つのサポートを行なっている。
※DRIVEキャリアでは、人材採用にお困りのNPOをサポートしています。
経験から見えてきた、「採用は相性がすべて」
――サンカクシャさんは、2020年に『DRIVEキャリア』を利用し始めてからこの3年くらいで累計130人以上がエントリーされています。ソーシャルセクター全体でも高い数字だと思いますが、そもそも求人媒体を使い始めたきっかけは何だったのですか?
ちょうど組織が大きくなっていた時期で、クチコミだけだと追い付かなくなっていたんです。財政的にも「採用にお金をかけても大丈夫」と思えたので求人媒体を使うことになりました。
2019年、サンカクシャを立ち上げた頃の荒井さん
――採用の決め手はありますか?
これは採用を重ねながら見えてきたのですが、「相性がすべて」だとしみじみ思います。
スキルがどうか、ポジションに合っているかというより、「この人と働きたい」とか「この人がサンカクシャに入ってきたらすごく面白くなりそう」とか、その人自身を見て採用するかどうかを判断するとうまくいく気がしています。
若者たちとコミュニケーションを取る荒井さん
――スキルやポジションよりも、その人自身なんですね。
そうなんです。あと、面白い傾向にも気づいて。求人には、事務局、広報などある程度ポジションを決めて出しますが、別のポジションに応募した人から採用を決めることが多いんです。「こっちの仕事の方があっているかも」と。
今、サンカクシャで長く働いている人たちにはそういった方が目立ちます。採用された人たちは、面接で「自分はこういうことができます」と自信があるスキルをはっきりとアピールしてくれることが多いのですが、「実はこういったこともやってみたいんです」と言ってくれる人も多くて。それが、ポジションに関係なく、その人自身の可能性を発見するきっかけになっています。
というのは、求人に興味を持ってくれた人たちとスタッフが話す場を作っていて、先輩スタッフが「実は別のポジションで応募したけれど、今はこの仕事をしているんです」「自分は未経験だったけれどダメもとで応募してみたら採用されました」という話をすることもあるんです。そんなこともあって、「ダメもとで応募してみました」という人も多いです。
また、チーム別に動くのでチームとの相性が合うかどうかが大事にはなりますが、一緒に働きたいと思う人に共通しているのは、人としてどうありたいか、どう働きたいか自分の考えを言葉にできる人のように思います。
「ポジション」が教えてくれた面白い傾向
――ポジション別に応募の特徴が出ることはありますか?
ポジションでいうと、応募が比較的多く集まるのは、若者たちとかかわる居場所支援です。逆に採用が難しいと感じるのは、居住支援など支援の過程が少し大変なイメージのある仕事ですね。
現場支援に100%くらいのモチベーションで深くかかわるというより、現場に触れるようなポジションに応募が集まりやすいのかなと思います。つまり、現場色はそれほど強くない、現場の“手触り感”があるポジションです。
学習支援でのワンショット。荒井さんは左端
――事務局スタッフやファンドレイザーなどバックオフィスの求人で何か傾向はみられますか?
それがすごく面白くて、最初、現場のポジションに応募してくれた人の中から、事務局スタッフに採用される人が多いんです。そういった人たちは現場への思いをもちながら、自分の得意を活かしたいとスタッフになることを決めてくれているので、仕事への姿勢も主体的だし、事務局と現場の両方で活躍を期待できる人が多いです。
サンカクシャ立ち上げの頃、若者たちと語り合う荒井さん(写真上中央)
――キャリアコーチングをしていても、今の職場に不満はないけれど、「社会に役に立っている手ごたえがもっとほしい」という相談が多いです。
最近すごく感じるのですが、支援の現場経験がなくても、社会人経験さえあればできる仕事って意外と多くあるんです。例えば「部下の話を丁寧に聴けるスキルがあればもう十分なんじゃないか」と思うこともあります。
私たちは、別に支援の専門家を求めているわけではなくて、「現場の仕事は難しいです」という人でも力を発揮してくれる場合がよくあります。
だから、求人でも、ソーシャルとか社会貢献とか、あまり現場感を特色として出しすぎない方がいいんじゃないかと思うし、スキルをどこまで求めればいいのか迷います。「現場に触れる」仕事にしても、求人でどう表現するかそのバランスが難しいと思っています。
――腰を据えて現場にかかわる仕事ではない、「現場に触れる」仕事とはどんな仕事なのか、境目を調整するのは難しいと思います。
そうなんです。一般的に「支援の仕事は経験したことがないからわからない」という人が多いので、「支援の経験がないといけないんじゃないか」って気になるでしょうし。どこまで現場感やスキルを求人に出せばいいのか、それが今の課題ですね。
ただ、『DRIVEキャリア』のコーディネーターの方に採用活動を含めていろいろと相談させてもらっているので、これからもほど良いバランスを手探りしていきたいです。
転職者の思いに触れると元気になれる
――サンカクシャさんから見て、『DRIVEキャリア』から採用された人たちはどんな人が多いですか?
全員いい人です。みなさん思いがあって、その思いに触れるとこちらも元気になれます。すごくいい人に出会いやすいという印象は圧倒的にあります。
今うちで働いているスタッフのほとんどが『DRIVEキャリア』経由です。「いい人と働きたい」、「いい仲間と出会いたい」という時には『DRIVEキャリア』一択で、全力で推したいです。
――ありがとうございました!
子どもたちと海へ。荒井さんは左から2番目
特定非営利活動法人サンカクシャでは、ただいま一緒に働く新メンバーを募集中です。ご興味ある方はぜひ詳細をご覧ください。
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