学生や都市部で働く社会人等、地方に興味がある人と、外部の力を借りながら新たな挑戦をしたいと考えている地域の組織(企業・自治体・NPO等)をつなぎ、サポートする……そんな役割を担うのが「地域コーディネーター」です。
今回は、都内で団体職員として働きながら、副業として地域コーディネーターをされている池山貴大さんにお話を伺いました。どのようにコーディネーターとしてのスキルを身につけたのか、具体的にどんな業務をされているのか、詳しく教えていただきましたので、今の生活スタイルを大きく変えることなく地域と関わってみたいと考えている方は、ぜひご一読ください!
池山 貴大(いけやま・たかひろ)さん 副業コーディネーター
三重県四日市市出身。法政大学文学部哲学科卒業。東京都の政策連携団体である公益財団法人東京観光財団に勤務。2021年に地域人材コーディネーター養成講座を修了し、副業コーディネーターとしてNPO法人ETIC.に参画。同年ETIC.が長野市から受託した社会課題解決事業「NAGA KNOCK!」参画企業である株式会社CocoChouChou(ヴィーガン洋菓子店)の営業支援人材等を募集する等、副業コーディネーターとして活躍中。
「地域コーディネーター養成講座」の受講が活動の第一歩に
池山さんが副業として地域コーディネーターを始めることになったのは、2021年にNPO法人ETIC.(エティック)が主催する地域コーディネーター養成講座を受講したことがきっかけでした。
「僕自身が地方出身ということもあり、元々地方への関心は持っていました。現在は東京観光財団という、東京都の観光施策を実行する組織に勤務する傍ら、副業としてコーディネーターの仕事をしています。
本業の方で僕が配属されたのは、地域に根づいた観光振興を目指す地域振興部です。その中でも伊豆諸島や小笠原諸島といった島嶼(とうしょ)地域と呼ばれる、東京都の離島を担当することになりました。ただ、その中で行政の方向性と島のみなさんが求めている支援にギャップを感じることもありました。
そこで、地域をより深く知ることができる事例はないかと検索していて見つけたのが、地方の中小企業に特化した副業求人サイト『YOSOMON!』です。副業として地域に関われる道があるんだ!と受講したのが、地域コーディネーター養成講座でした」
養成講座では、「YOSOMON!」に掲載されている案件のように、地方企業が抱える課題を実際に解決することを目指す、長期実践型プロジェクトのコーディネートに焦点を当てています。座学だけではなく、実際にプロジェクト設計や求める人材の募集要項作成等にも取り組む、実践的な講座です。
「一口にコーディネートすると言っても、大学生向けのインターンや社会人向けの副業兼業等いろいろあります。プロジェクト設計から応募してきた方との面談、プロジェクト期間中の伴走支援や振り返りまで、一連の流れを教えてもらいました。
実際に講座では地域の企業経営者をお呼びして事業内容やニーズをヒアリングしたり、それを基に各自で外部人材活用の募集要項案を作成・提案したりと、実際のコーディネート業務でも行うことをやらせてもらえたので、コーディネーターの仕事がどういうものかつかむことができました。
オンラインがメインでしたが、グループワークで他の参加者の話を聞いて、自分も考えを話しながら進めていくので、腹落ちしてから進んでいく感覚がありました」
養成講座の講師からの紹介で、副業コーディネーターとしての業務をスタート
一受講生として養成講座に参加していた池山さんでしたが、受講期間中に講師から「NAGA KNOCK!(ナガノック)」という長野市主催の起業支援プログラムにコーディネーターとして参加してみないかと声がかかります。
「声をかけていただいた講師の方のアシスタントのような形で、勉強と実践を兼ねて『NAGAKNOCK!』の運営をサポートさせていただきました。現地では、参加者のみなさんが市内の経営者の方々に事業プランを発表する場のファシリテーターを務めたんですが、『こんなにも長野市で事業を起こしたい人がいるんだ!』と驚きました。パワーあふれる空間に自分も携わることができて、わくわくドキドキしたのを覚えています」
そのときの縁が、「NAGAKNOCK!」に参画していた企業の伴走へとつながります。池山さんが地域コーディネーターとして初めて副業人材のマッチングを成約させたのが、Coco ChouChou(ココシュシュ)という長野市内のヴィーガン洋菓子店の案件でした。自身も副業としてコーディネーターをやりながら、副業で経営をサポートしてくれる人材探しに奔走します。
「本業もあるので、平日の夜や土日のスキマ時間にコーディネーター業務をやらなければならないのは大変ですが、それ以上にやってみたいという気持ちが強かったですね。Coco ChouChouさんは『YOSOMON!』を活用して頻繫に副業人材を募集されていて、これまでに営業サポート、webコンテンツ作成、ブランディング等を担ってくださる方をマッチングしてきました。幸いどの案件にも数名の応募があり、十分なスキルをお持ちの方とおつなぎすることができています。
個人的な感想ですが、僕も含めて、あえて地方での副業を探している方は、お金よりも社会貢献や自身の成長といった「意味的報酬」を求めている方が多いように感じます。応募が来ない時は、タイトルやキャッチコピーをスキル重視のものから社長のビジョンを強く打ち出したものに変える等、マイナーチェンジすることで最終的な応募につながりました。
コーディネーターの業務内容としては、社長へのヒアリング、募集要項の作成、『YOSOMON!』への掲載、エントリーしてくれた方との面談や選考、採用後の伴走支援、振り返りまでを一貫して担当しています。養成講座で練習したことを、そのまま実践するイメージです。
副業で関わってもらうという性質上、基本的には遠隔での業務となるので、受入れ企業と副業人材のコミュニケーション面のサポートが重要です。『企業側が求めている基準と副業人材の想いや活動にズレはないか?』『多忙な社長と副業人材は円滑にコミュニケーションが取れているか?』といったことを注視しています。連絡があまり取れていない状況であれば、『この時間帯だと比較的電話を取ってもらいやすいですよ』と副業人材にアドバイス等をしています。コミュニケーション面でのサポートが必要という点は、大人も学生も共通ですね」
本業で関わりの深い、八丈島の企業と学生の架け橋に
2023年には、養成講座の講師の紹介で、横浜国立大学経営学部の「マーケティングプラクティス」という講義にもコーディネーターとして関わる機会がありました。講座内では、ケーススタディとして学生が実在する企業の事業分析や現地視察を行い、経営課題の解決策やマーケティングの提案に取り組みます。池山さんは、東京の離島である八丈島の企業・大竜ファームを学生達に紹介しました。大竜ファームは本業で関わりのある企業でもあります。
「大竜ファームの主な事業は、椎茸の生産・販売です。八丈島特有の海風と高い湿度のおかげで肉厚でジューシーな椎茸が育つので、『うみかぜ椎茸』としてブランド化しています。
講座では、毎回2~3社から学生達が自分でケーススタディの対象とする企業を選ぶのですが、現地訪問等の交通費は自己負担です。遠方の大竜ファームは選ばれにくいのではないかと思っていたのですが、10名の学生が大竜ファームをケーススタディに選び、八丈島まで足を運んでくれました。現地訪問では学生達が『この椎茸マジでうまい!』と絶賛だったので、大竜ファームのみなさんも喜んでくれました」
また、団体職員ではなくコーディネーターとして学生と共に地域の企業を訪問したことで、本業の立場からは見えにくかった側面にも気付くことができたと言います。
「本業で八丈島を訪問したことは何度もあったのですが、業務上、売上構成や事業課題等突っ込んだ質問をするのはなかなか難しい面がありました。一方コーディネーターとして訪問すると、事業者さんが課題だと感じていることに対して本気で向き合う学生をサポートができます。
学生への伴走を通じて事業者さんの本音を垣間見ることができましたし、学生達が提案した商品アイデアは刺激的で、とても勉強になりました」
副業で見える違う景色。迷っている人はぜひ挑戦を
最後に、副業で人材コーディネーターをやることに関心がある人へ、メッセージをいただきました。
「まだまだ場数は少ないですが、副業コーディネーターとして活躍できる場があれば、積極的に挑戦していきたいです。特に、本業である観光分野の案件があれば、専門スキルを活かせますし、本業にもいいフィードバックがあるのではないかと思います。
僕の周りでは副業自体やったことがないという方が多くて、勤務先でも僕はめずらしい事例です。軸足をもう1つ持つことで、違う業界に目を向けたり、ものごとを俯瞰的に見られるようになったりと、メリットも多いと感じます。
実際に腰を上げる人は少ないので、迷っている方にはぜひ挑戦してもらいたいですね。視野が広がって、違う景色が見えると思います」
2024年は、副業として地域コーディネーターに挑戦したいという方向けの「地域人材コーディネーター養成講座」を開催予定ですので、興味のある方はぜひご応募ください。
あわせて読みたいオススメの記事
#ワークスタイル
好きなことが仕事に。黒田製作所・黒田知範さんの原体験とは──
#ワークスタイル
#ワークスタイル
#ワークスタイル