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「利益追求型ではなく、人の役にたちたい」高齢先進国モデル構想会議・飯田佳孝さんインタビュー

2014.03.24 

高齢者をコミュニティで支える包括的なサービスモデルの構築を行う一般社団法人 高齢先進国モデル構想会議。現在は、宮城県石巻市において、在宅診療所(祐ホームクリニック石巻)の開設に始まり、コミュニティ創りや、医療・介護分野における情報連携に取り組んでいます。

DRIVEで募集要項を見て、ここ石巻健康・生活ネットワーク(ささえてぃ)に生活支援コーディネーターとして10月に転職した飯田佳孝さん(34歳)にお話しを伺いました。(採用側の土屋さんのインタビューはこちら)

高齢者先進国モデルの活動風景 写真:高齢先進国モデル構想会議の活動

利益追求型ではなくて、人の役にたてるところで働きたい

田村:今のお仕事の内容と、今回転職するまでにどんな仕事をなさっていたか聞かせていただけますか。

 

飯田:私がやっている仕事は、総務省の実証実験の一部で、サービスアドバイザーという職種です。医療介護者事業者の方から、療養中の高齢者のQOL向上の為に、現場で解決できていない課題等の相談を受け、高齢者向けサービスを展開する民間企業や、活用できるNPO、ボランティア情報を紹介し、QOLの向上、課題の解決を図るというものです。以前は、地方銀行に勤めており、東北にご縁はなかったのですが、取組内容に魅力を感じ、妻と一緒に参加することとなりました。

 

田村:ご家族でとはすごいですね。今回、転職を決めた経緯をお聞きしてもいいでしょうか。

 

飯田:実は以前、母親がうつ病になったことがあるのですが、地域に頼るところもなく、隠したがって外に出なくなったということがありました。その体験を通して、そうした時に手を差し伸べてくれる機関やネットワークが地域にあればいいなと、生活支援や地域のコミュニティづくりへ関心を持っていたんです。そんな時に、DRIVEでの募集を知り、自分のやりたいことが実現できる現職への参加を考えるようになりました。

 

田村:原体験をお持ちだったんですね。もとからソーシャルビジネスやETIC.のことはご存知だったんですか?

 

飯田:社会人となってから、学生時代にETIC.でインターンをしていたという人の話を聞いて、そこで初めてETIC.を知りました。社会問題を解決する仕事をしていると聞いて、ネットで調べて「いいなあ」と思っていたんです。でも、出てくる人も内容もレベルが高いな、自分は踏み込んじゃいけない世界なのかな…とハードルを感じ、なかなかNPOやソーシャルビジネスが就職先になるというイメージはつきませんでした。今回DRIVEができたことで、求職者として飛び込みやすくなったので、ありがたいなと思っています。

 

田村:飯田さんが、そうしてソーシャルビジネスに惹かれたのは、どういった理由なんでしょう?

 

飯田:これまでの就業経験の中で、自分が働くにあたって一番合う場所を考えた時に、利益追求ではなく、より直接的に人の役に立つことができる場ではないかと考えるようになりました。新卒で就職する時は給料で選んで、確かに給料はよかったけれども、もしかしたらお金というものに縛られていたじゃないかと思うようになり、お給料を貰わないといけないのはもちろんですが、人の役にたつことを追及できる場所を探すようになりました。

また、事業の立ち上げや運営をやりたいという気持ちがあり、小さい組織なら、関われるチャンスも多いのではないかと思いました。

社会課題の現場で、リアルな状況やニーズを知れる楽しさ

田村:実際に飛び込んでみて1ヵ月ですが、描いていたイメージとのギャップはありますか?

 

飯田:良かったなと思う部分は、医療介護の担い手の方々に会いに行って話を聴けること。アンケートの取得などで寝たきりの高齢者を訪問したりもしますが、現場のリアルな実態を知れたり、求められているニーズについて直接聞くことができ、肌で感じることが出来る場にいることは今後の自分にとって大きな経験の一つとなると感じています

ギャップに感じている部分としては、医療介護事業者が解決しきれていない高齢者の要望がたくさんあるという想定だったんですが、実際に話を聞いてみると、医療介護事業者の方はハートがあって、人脈等の自らのリソースを使いながら要望を解決しているケースが多いことです。

 

田村:現場に飛び込んでみないとわからないことは多いですよね。一緒に働く人たちとの関わり方なども、変化はありましたか?

 

飯田:医療介護の専門家と直接会えて、やりとりできるのはすごく良い経験となっています。医療介護事業者の方たちはハートがオープンで、あたたかさを感じます。地域のお母さんたちも含めて、人間くさい愛情を持っている人たちと密接に関わりながら、一緒に仕事ができることに喜びを感じています。あとは、支援してくださっている富士通さんや協力企業の方がいらっしゃったり、いろんな方たちに出会う機会が多くあります。

 

田村:温度感のようなものがあるのは、NPOやソーシャルビジネスの面白さかもしれませんね。逆に、こういったことが難しいなという部分はありましたか?

 

飯田:高齢者の方からあがってくるニーズは、慢性的な問題であり、解決のための社会的資源がないことが多いです。たとえば、今、もっとも難しいと感じているのは、高齢者の方の生きがいについてです。身体が不自由で出かけたりはできないのだけれど、頭はぴんぴんしていて何かやりたいという方が多くいます。地域でもお年寄りの拠り所をつくろうという活動が少しずつできていますが、お年寄りが自分の状態に合わせて最後まで自分の人生を全うすることができるような機会、場所が不足していると感じています。

 

田村:現在の仕事での目標はどういった感じなんですか?

 

飯田:当初は主に民間企業のサービスへつなげることを目標に掲げていましたが、ボランティアなどの無料サービスを望む声はあっても、有料サービス紹介にいたるケースはほとんど無いのが現状です。民間サービスの紹介につなげようと焦りを感じていましたが、実証として、過程や考え方を残すこと自体が成果ではないかと気付くようになりました。

先が不安なのは大企業も一緒、だったらやりたいことにチャレンジしたい

田村:先ほど家族で引っ越されてきたと伺いましたが、ご家族やまわりの反応はどんな感じだったんでしょう。銀行で安泰な生活を送るキャリアから、いきなり移住して先の見えないキャリアに飛び込まれるって、ご家族がいると余計に決心がいるかなと思います。

 

飯田:親に話しても困惑していて、友だちも「大丈夫か、何があったんだ」みたいな反応で、自分はやっぱり変わっているのかなとも思いました(笑)。でも、妻はおおらかで幸せそうにしていて。逆に私が「これから大丈夫かなあ」って妻に相談しても、「だいじょうぶ、だいじょうぶ!」という感じなので、その姿勢は見習いたいですし、すごくありがたいなと思っています。それに、妻もここで一緒に働かせていただくことになったんです。

 

田村:奥さまも一緒に働くのは、予想しなかった展開ですね(笑)。応援や理解があるのはとても心強いですね。

 

飯田:年齢的にも、まったくの異業界に飛び込むことができるのは、これが最後のチャンスじゃないかと思い参加しました。挑戦することってすごく大事だと思っていて、最初は難しく感じても、あとからやってよかったなと思うことが多いんですよね。せっかく生きているので、やりたいと思うことをやっていきたいなと。

 

田村:今後、こういうことをしていきたいというのはありますか?

 

飯田:高齢者の方が自分の状態、環境に合わせて社会参加できる仕組みを作りたいです。たとえば、傾聴のボランティアは仮設住宅の高齢者の方のみを対象とするなど、対象が狭まくこぼれちゃう人が出てくるんですね。そういった人たちにも届くことができるような、仕組みが作れないかなと。高齢者の方を見ていると、絶望感を感じている方も多くいらっしゃるんです。その方たちが100%ハッピーとはいかなくても、少しでも毎日の生活を過ごしやすく、生活の中から喜びが生まれる仕組みができて、その仕組みが地域に根差すことでいい循環ができれば、石巻に来てよかったなと思えそうです。

 

田村:自分のやりたいことを提案して形にしやすいのは、小さい組織の面白みだと思うので、働いていく中で機会があるといいですね。最後に、転職を考えている方へメッセージをお願いします!

 

飯田:やりたいと思うことを本や机の上で調べるだけではなくて、現場に出て実行、実感していくことがすごく大事だと思うし、入口から出口まで自分が携わることができる経験は企業ではなかなか持ちにくい気がします。おもしろい仕事だから、自分で一歩踏み込んでいきたいと思えるし、自ら踏み込むことで自分の経験として積み重なっている実感がありますね

プロジェクトマネージャー、募集中 高齢先進国モデル構想会議

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田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。