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子育てを「まちの力」で豊かに <後編>「こまち」が描くカラフルな未来図―認定NPO法人こまちぷらす

2022.04.12 

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認定NPO法人こまちぷらす

 

すべての子どもとその家族の幸せのために活動する団体を支援している「みてね基金」では、2021年3月に第二期ステップアップ助成を決定し、団体の成長期を基盤強化から支えています。

採択した団体の1つ、「こまちぷらす」は、子育てが「まちの力」でプラスになる社会を目指して活動するNPO法人です。親子をはじめ多様な人たちが集う居場所「こまちカフェ」を中心に、人と人がつながり、やりたいことを自分らしく実現できる機会をつくっています。

「みてね基金」採択後は、組織基盤を強化しながら、各地で活動する団体がその団体らしい居場所づくりを進めるサポートもしています。後編では、「こまちぷらす」理事長の森 祐美子さんに、今でもよく覚えているというエピソードや「みてね基金」とのチャレンジ、2030年に向けた想いについて語っていただきました。

*前編記事はこちらから。

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認定NPO法人こまちぷらす代表 森祐美子さん

 

※こちらは、「みてね基金」掲載記事からの転載です。NPO法人ETIC.は、みてね基金に運営協力をしています。

「まわりに頼らなきゃだめ」

 

「どうしよう」

 

ある日、子育て中の女性が「こまちカフェ」で悩みごとを話し始めたそうです。

 

聞くと、遠方に住む親族に介護が必要になったものの、どうしても自分は行くことができないとのこと。一人で抱えきれなくなったところで、「こまちカフェ」を訪れたのでした。

 

スタッフが商店街の人たちに相談すると、「まわりに頼らなきゃだめ」と一言。その後は一時間もかからないうちに、親族が住む地域の介護情報を集めてくれ、介護サービスの会社とのやりとりも買って出てくれたそう。女性は無理して動く必要なく、解決することができたといいます。

 

「こういうエピソードが日常的に起こるんです。それは、リアルに人と人が会える場があるからだと思っています。『まち』の人たちとつながっていれば、遠方でも海外でも関係なく誰かとつながることができます。解決の糸口も早く見えてきます。結果的にとても気持ちが軽く、自由になれると思うんです。」

 

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ご近所さんとハイチーズ

 

夢を語りながらみんなの思いを叶えたい

 

「人の力が発揮される仕掛けをどうすればできるか、日々考えています」と話す森さん。人のつながりをたくさん生み出してきた「認定NPO法人こまちぷらす」の今後について、「一人ひとりのやりたいことを確実に実現していくために、大きくジャンプしたい」と強い意欲を見せます。「次のステージに進みたいと思ったときに『みてね基金』のことを知って、すぐに応募しました」

 

「こまちぷらす」がこれから実現したいこと、その大きな柱となっているのは、「こまちカフェ」のような居場所を各地に広げることです。多くの人が見学や視察に訪れるなど居場所づくりに関心をもつ人からの要望を感じて「こまちぷらす」がまず始めたのは、居場所を創りたい人たちが無理なく実現できる仕組みをオープンソースとして提供すること。2022年1月、カフェの開業やメニュー開発、日々の業務に必要な管理表などを無料で公開しました。実際に、人と人とが出会い、活動するきっかけを生み出す居場所づくりを始めた人たちにも寄り添っています。

 

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こまちカフェのキッチンの風景

 

「ゆるやかに応援し合える関係ができればと思っています。これからは今まで以上に団体や企業、行政との協働が増える予定なので、より豊かな組織になりそうです。とはいえ、組織を大きくする気はなく、あくまでも自分たちの手が届く範囲内で丁寧に事業を育てていきたいです。」

 

2030年に向けたビジョンは、カラフルな一枚の絵で表現しました。スタッフと協力しながら1年かけて作った力作です。(記事トップに掲載)

 

「みんなのやりたいことを、遊び心を大切にしながら実現したいですね。いろいろな人と学び合いながら現実にしたいです。」

 

なかには、もう叶ったものもあるとか。

 

「多様な人たちが住む『こまちアパート』は、2023年、形になりそうです。どうしても関わってほしい人たちに協力をお願いして実現しました。

 

また、これからは学校に通わない子どもたちも増えていくと考えているので、『こまちスクール』も作りたいです。たとえば商店街のおじさんが自転車を分解しているそばで、子どもたちが絵を描いたり、寝そべったりしながら同じ時間を過ごすんです。図書館も作りたいですね。私たち『こまちぷらす』だけでなく、『まち』や企業の人たちにとっても大切な未来を一緒につくっていきたいです。」

まわりに頼ることは、子どものためにもなる

 

森さんが仲間たちと「こまちぷらす」を始めてから、2022年2月で10年が経ちました。「こまちカフェ」ではたくさんの親子と関わることを楽しんできました。そんな日々を通して、実感することがあるそうです。

 

「アフリカに『一人の子どもを育てるには一つの村が必要だ』という古いことわざがあります。昔からあるくらいなので、子どもを一人育てるためには、本当に村中の力と知恵が必要なんだと思っています。

 

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おしゃべりをしながら軽作業をする「もくもくの会」

 

だから、子育て中の方たちは、一人だけで、夫婦だけで子どもを育てようと思わないでほしい。保育園やベビーシッター、民間の家事代行サービスを利用したからといってダメな母親ではありません。どんどんまわりを頼ってください。いろいろな人たちの力を借りて子育てしていくことは、愛する子どものためにもなります。」

 

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こまちカフェの手作りクッキーコップちゃん

 

取材後記

 

「こまちぷらす」の基盤をつくるママたちについて、「スタッフのみなさんがとても素敵ですねとよく言ってもらえるんです。それが本当にうれしくて」と森さんは満面の笑顔を見せてくれました。「最初から私一人で『こまちぷらす』をつくるのは無理でした。みんなで知恵を出し合って少しずつ形にしていったんです」とも。苦労も喜びも分かち合いながら、毎日工夫を積み重ねてきたみなさんの様子が想像できるようでした。仲間同士のこうした温かな信頼関係は、カフェを訪れる人や街の人たちにも心地よく伝わっているに違いありません。(ライター たかなしまき)

 

取材撮影で訪れた「こまちカフェ」で活き活き楽しそうにされているスタッフの皆さまやお客さま、明るい近所の方々がとても印象的でした。このような人と人とのつながりが大切にされる居場所が全国にもっと増えれば、街の空気もあたたまるだろうな、と想像しワクワクしました。(みてね基金事務局 関まり)

 

***

 

フォトグラファー:鳥野みるめ

Lovegraph(ラブグラフ)フォトグラファー。「写真を残すことを楽しんでもらいたい」をコンセプトに家族を残す写真を中心に由比ヶ浜のアトリエで暮らすフリーランスのカメラマン。

 


 

団体名

認定NPO法人こまちぷらす

申請事業

産後の居場所やまちで子育てを応援するプロジェクトの全国展開

 

この記事に付けられたタグ

みてね基金子育て寄付
この記事を書いたユーザー
たかなし まき

たかなし まき

1971年愛媛県生まれ。松山東雲短期大学英文科卒業後、地元の企業に就職。その後上京し、業界新聞社、編集プロダクション、美容出版社を経てフリーランスへ。いろいろな人と関わりながら新しい発見をすること、わくわくすること、伝えることが好き。

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