「自分の仕事が誰を幸せにしているのか、腹落ちできなかったんですよね」
4年務めたIT企業を退職し、NPO法人ピースウィンズ・ジャパンに転職した野田悠吏(のだ ゆうり)さん(24)は、そう転職理由を語ります。子どもの頃からずっと貧困問題の解決に関わりたいと願い、今年、夢を叶えました。ここまで何を考え、どのように動いてきたのか、お話を伺いました。
すべての子どもが安心して寝られ、温かいご飯を食べられる社会をつくる
野田さんの小学校の頃の夢は「ユニセフで働くこと」。図書室で読んだマザー・テレサの伝記に影響を受けたと言います。紛争や貧困で困っている人のために働いた人たちをリスペクトし、「いつか自分もそうなりたい」と夢を抱いてきました。
すべての子どもが安心して寝られ、温かいご飯を食べられる社会をつくる。そのことにより、貧困の連鎖から一人でも多く救いたい。この想いが、野田さんの人生の軸となります。
「本当は10代の頃からソーシャルセクターに関われたら良かったんですけど。高校卒業後、すぐに国際協力の道に進むのは難しくて」
高校3年生のとき、NGOのインターンに応募するも、落選。「自分に力がないと人を助けられない」と気づき、高校卒業後は、IT企業でシステムエンジニアとして働く道を選びました。「高3の卒業式に内定が出るくらい、進路が決まるのがギリギリでした」と、当時を振り返ります。

高校生のときに参加したカンボジアでのボランティアの様子
社会人の基礎を叩き込まれた4年間
就職したIT企業では、2年間、車関係のシステム開発に従事したあと、インドネシアの子会社にジェネラルマネージャーとして出向します。高校生のときに、インドネシアに留学していた経験を買われての抜擢でした。

インドネシア駐在時の様子
「ロジカルシンキングなど社会人の基礎を、当時の上司のもとで叩き込まれました。そのときの経験が、今の現場での迅速な判断、相談、事業の進め方、効率的なチーム運営に役立っていると思います」
インドネシアでは、現地のローカル社員の業務効率化がミッションだったそう。マネージャー陣の方向性の不一致の解消、財務情報の開示など、メンバーが不安になる要因を取り除く施策を数々実施。また、「チーム内の信頼関係」が業務改善に不可欠と考え、メンバーがいつでも上司に相談できる環境づくりにも力を入れてきました。成果に手応えも感じるなかで、野田さんの中にひとつの疑問が浮かび上がります。
「目の前のインドネシアの社員が成長し、業務効率を上げて、定時で帰れるようになったりしているのは『役に立てているな』って感覚もあったんですけど・・・『それで?』って思ってしまって。会社の中だけで世界が閉じているみたいな」
もっと視野を広げたい、という気持ちは野田さんの中で膨らんでいきます。IT企業で働きながら、NPO法人アクセプト・インターナショナルでボランティアにも従事しました。テロや紛争に加担してしまった若者の、社会復帰を支援するNPOです。元テロリストと日本人の対話型のオンラインイベントを企画・運営していました。
このままIT企業で働きながら、ボランティアを続ける道もありましたが、野田さんは退職をする決断をします。同学年の友達が大学を卒業する、22歳の年でした。
「利益を上げることの大事さは理解できる。でも、自分の仕事が誰のためになり、誰を幸せにしているのか、どうしても腹落ちができなかったんです。自分のやりたい仕事はここじゃない、とわかったので続ける選択はありませんでした」
動きながら、考える
退職した当時、大学に進学するか、ソーシャルセクターに就職するか迷っていたと野田さんは言います。
「就活するなかで『大卒、強いな』と感じることがあって。経済学部卒、など自分の専門領域をわかりやすく表せるところに憧れもありました」
そんな野田さんがとった選択は、「動きながら考える」。フリーランスとしてNPO法人に少しでも関わりながら、次の道を考えることにしました。NPO法人ETIC.で起業プランコンテストのマーケティングリーダー(業務委託)として、トータルで約1年間働きます。
くわえて気になるイベントに足を運んだり、採用説明会に参加したり、情報収集も行っていました。
「SNSで過去につながった方々の投稿を見て、積極的にイベントに行くようにしていました。登壇した方で『もうちょっと話聞きたい』って思ったら、名刺交換させてもらって、あとからSNSで感想を送ったりとか。『私もそれ共感してます』って相手に伝えることは、結構やってますね」
今は、大学進学じゃない
大学進学か、就職か──。転機となったのは、フィリピンへの語学留学でした。
業務委託の仕事を途中で半年間休職し、語学留学に参加します。「英語ができることで得られる知識量が増えるという明確なイメージがあったので。語学留学は迷わず行きました」と、野田さん。
英語力を磨いたあと、今度は、南アフリカにあるケープタウン大学のサマープログラムを見学します。ケープタウン大学は、世界トップクラスの教育と最先端の研究で知られる大学です。開発学に関心があった野田さんは、フィールドワークも多いことに魅力を感じて飛び込みました。
しかし、結果的に出した答えは「今は、大学進学じゃない」でした。
「有名校ゆえに、肩書目的で入学している人も数多くいました。学ぶ内容重視で選びたいので、『この大学じゃないな』と思ったんです」
くわえて感じたのが、「仕事が好き」という自身の性分です。
「語学留学中、半年間も仕事しなかったんですよ。勉強だけやってたら、3カ月目くらいで『やばい、仕事やりたい』って思って(笑)。4年間、勉強中心で過ごせるのか疑問に思い、『今は、いったん、大学はいいや』とストンと腹落ちしたんです。
アフリカに行ってからわかったので、ものすごく良い経験でした」
スキップできるくらいウキウキして働いている
今、野田さんは、NPO法人ピースウィンズ・ジャパンで児童養護施設の子どもたちにさまざまな越境体験を提供する「ピースワラベ」プロジェクトと、保護猫を支援する「ピースニャンコ」の2つに主に広報として関わっています。

NPO法人ピースウィンズ・ジャパン保護猫を支援する「ピースニャンコ」の仕事の様子
「いろんな団体の話を聞いたとき、ピースウィンズ・ジャパンが一番ワクワクしたというか。保護犬の事業やってるの? 子どもの事業もあるの? 難民支援もやってるの? みたいな。自分が新しいことに挑戦できる、学ばせてもらえることが想像できて、『絶対楽しいじゃん!』っていう確信がありました」
自分の知らない世界を知れるとき、野田さんのワクワクスイッチが入るそう。仕事に安定や継続性は求めておらず、挑戦できる機会が多いところに魅力を感じると話します。
「会社に行くとき、スキップできるくらいウキウキしている」という野田さん。これまでと何が違うのでしょうか。
「好きなことをやっているのが、今までと一番違います。ピースウィンズ・ジャパンでは、自分のやりたいことや貢献したいこと、成し遂げたいことと仕事がつながっているので、みんな目をキラキラさせて仕事をしていて。チームでひとつのプロジェクトをやっている実感が強い。『この人たちと一緒にやっている』と思うだけで誇りに感じます」

NPO法人ピースウィンズ・ジャパン「ピースワラベ」プロジェクトの仕事の様子
自分のやりたい事と仕事がつながっている──。その実感が得やすい背景に「支援現場の近さ」があると言います。
「この夏、児童養護施設の子どもたちをカナダに引率したんですが、その中に『この16年間、楽しい思い出はひとつもない』と言っている子がいたんです。表向きは明るいんですが、さまざまな事情を抱えていました。その子が、最終日の振り返りのとき、『カナダでの10日間が自分の良かった思い出の1つ目になれた』って話してくれて。
支援を通じて、その子の中に良い思い出をつくれたことがとてもうれしくて。その場にいた大人たち、みんな涙、涙でした」
「ピースウィンズ・ジャパンの仕事は『社会に役立つ』という抽象的な概念ではなく、具体的な仕事の影響を目の前で感じることができるんです。留学体験で子どもが変わっていく様子が見られたりとか、猫の保護先が見つかったりとか。こんな風に誰かの役に立っているんだ、というのを実感しやすいのは、ソーシャルセクターならではだと思います」
やらない事は後悔しても、やった事は後悔しない
野田さんの魅力は「人たらし」であることだなぁと、話をしていて感じます。「何かしてあげたくなる」魅力にあふれているのです。自分のワクワクに忠実で、言葉にウソがなく、清々しいほどの行動力があります。
そんな野田さんの、私が好きなエピソードを最後に。
インタビュー終盤、「フィリピンの語学留学行ったり、南アフリカ行ったり。どうしてそんなに躊躇なく行動できるの?」と聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「『やった事は後悔しない』って推しが言ってて。推しの言うことは絶対! なので(笑)」
推し活、侮るなかれ・・! (笑)
行動するから情報が集まる。情報が集まるから次のチャンスが手に入る。私もワクワクしながら人生の旅路を歩みたいと思った1時間でした。
NPO法人ピースウィンズ・ジャパンでは現在以下ポジションで求人募集中です。記事を読んで興味を持った方は是非こちらもご覧ください。
あわせて読みたいオススメの記事
#ワークスタイル
 
"猟師"をキーワードに若者と集落をつなげる。東海若手起業塾出身、郡上市起業家インタビュー前編
 by DRIVE by ETIC.
by DRIVE by ETIC.
#ワークスタイル
 
#ワークスタイル
 
#ワークスタイル
 


イベント
【11/20(木)19:00~開催】採用イベントin大阪「NPOの現役職員に聞く、”社会をよくする仕事の話” ーソーシャルセクターで働くリアルを知る」
大阪府/大阪市福島区
2025/11/20(木)

研修
【モニター参加者募集】企業向け研修プログラム 〜森から学ぶ100年の視点!北海道厚真町の森から学ぶ、長期的視座とシステム思考〜
北海道/北海道勇払郡厚真町
2025/11/19(水)?2025/11/20(木)









 







