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#経営・組織論

「財団ってそもそも何ですか?」新しく財団をつくろうとしているWIA加藤轍生さんに聞いてみた

2015.03.05 325view 

20代の初めから、社会起業家たちへのコンサルティングを仕事として取り組んできた加藤轍生さん。2011年には震災復興に取り組む社会起業家への投資を行うWorld in Asiaを立ち上げ、活動してきました。2015年、新しく財団を設立するとのことで、現在READYFOR?で賛同者を募集しています。

今回は、そんな加藤さんに、「財団ってそもそも何?」というところから、お話をうかがってみました。

加藤轍生さん

お話をうかがった加藤轍生さん

自らリスクを取り、社会を変える試みにお金を配分していく

石川:今日はまず、「財団って何?」というところから、お話を聞けたらと思っています。誰にでもわかるように説明してって頼まれたら、何て説明します?

加藤:"お金の流れを変える装置"。

石川:企業や行政も、お金を循環させていると思いますが、それとは違う流れを作るということですか?

加藤:そうだね。儲かることは企業がやればいい。公益を担う行政は、お金の再分配をする。じゃあ企業でも、行政でもない財団は何をするのか。それは,公益的だけど行政が取り組みづらく、儲からないから企業が進出しないような領域で、新しいチャレンジをして、世の中に成果を見せること。その結果、ビジネスになる可能性があったとしたら、企業が投資すればいい。取り組みの社会的効果が見いだせれば、行政がそれを引き継げばいい。

石川:「社会実験的なこと」に、ちゃんとお金を配分していくんですね。

加藤:それが本来の財団の役割だと。それと、財団はいくつかの約束から成り立っています。出して頂いたお金をこんな風に運用します、こんな対象にこんな配り方で使います、とかね。財団は、そういう新しい再分配やインセンティブなどの約束事を作るシステムとして、お金の流れを変えていくものなんです。

持続可能なお金の回し方の、ひな形をつくりたい

石川:加藤さんがつくろうとしている財団では、どういったことをやろうと思っているんですか?

加藤:最近、現代アートをやってるアーティストや、セラピスト・心理カウンセラー、医者など、異分野のプロフェッショナルたちと会っていて。ソーシャルビジネス業界だけでなく、社会と向き合っている人たちは大勢いて、そうした社会志向のあるアーティストたちともプロジェクトをやっています。「ファンドのようなビジネスモデルを組み込んで事業を立ち上げたら、こんなふうに持続可能になりますよ」っていうモデルをつくれないかなって。彼らと話をしてるところですね。ぼくらの財団がやってみせるだけではなくて、それが他のところでも使えるようなひな形になれば、という感じです。

石川:そうした財団の仕組みについては、いつから考え始めていたんでしょうか。

加藤:そのメカニズムを考え始めたのは、実は地域のNPOで働いていたとき。今のNPOの多くは、事業収入の多様化ができたとしても、あんまり持続可能じゃないんだよね。代表が倒れた瞬間に、不安定になってしまう。でも社会的な信頼はそれなりに出てきたから、数億円を借りられるリーダーはいると思う。例えば、それを運用して、1000万円の安定収入が入れば、それだけで財務的に安定するでしょう。

石川:数億円という資産をあずかるには、かなりしっかりした運営体制が必要ですね。

加藤:そう、お金の管理フローや運用フローなどの、仕組みがないとできない。でもそうした仕組みやナレッジができれば、やりたい団体はあるんじゃないかなと思う。ファンドレイジングのために駆け回るんじゃなくて、社会課題解決に注力できるよね。

石川:作ろうとしている財団のひとつのゴールは、そうした中規模の社会課題に取り組むファンドをつくる方法論を作り上げることなんですか?

加藤:方法論やプロセスも大事だけど、それだけで消えてしまわないように実践したい。行政依存で助成金をとるだけの財団には、意味がないからね。計算したら、財団というモデルを持続可能な形で運営していくには、最低17億が必要。40億円あると、投資のリスクヘッジができるようになって、より安定する。戦略コンサルタントとして、冷静に眺めると、17億以下の規模の財団だと、専門家をちゃんと雇用するのも厳しいというのが実情だろうな、と。

誰が社会課題を解決するのか?

プレイヤーをつなぎなおして、課題解決へお金を投資する

石川:財団をつくることによる、社会的なインパクトについてはどう考えていますか?

加藤:社会の中で、行政と企業と市民があって、役割分担してると考えるのが既存の考え方。でも実際は、社会ってもっと広くて、その中にそれぞれのセクターが点在しているけど、まだ誰も取り組んでいないフィールドも沢山あると思うんだよね(上図)。

石川:社会課題に対して、カバーしきれていない部分は多いですね。

加藤:今後の日本を考えたときに、経済は縮小するから企業単体による問題解決は縮小していくだろうし、行政も財政的に苦しいなかで、これ以上問題を大きく扱えない。人口が減る中で、市民セクターも再生を迫られている。そうすると未解決の領域が広がっていくわけだよね。

でも一方で、セクターの中で活躍しているわけじゃないんだけど、未解決の領域で問題解決に取り組んでいる人たちも多い。行政の中では評価されないから、隠れてやっている行政マンもいるだろうし、企業の中にもいると思う。そして、誰にも評価されていないところで、実はすごいことが起きていたり。彼らをつなぎなおすことによってしか問題解決ができないものがあるんだよね。たとえば、僕らが関わった事例だと、基礎教育を提供するのにITベンチャーとNPO法人が連携するとか。

石川:これまでは、なぜそういった取り組みができなかったんですか?

加藤:NPOは制度的に資本集約的なことが難しいし、いろんな取り組みを労働集約的に低コストでやらなきゃいけなかった。数億円かけてe-learning(インターネットを活用した教育のこと)を開発したりすることは、既存のNPOだけでは難しい。だから課題解決の枠組みを組みなおさなきゃいけないんだよね。

NPOでもちゃんと成果を出せる仕組みも増えてきているけど、成果を出せば出すほどお金が集まらなかったりするのが現状。「かわいそうじゃないからお金を出しにくい」みたいに思われることもあって、事業規模で言うと数千万円を超えたあたりで資金調達がすごく困難になってくる。あと一億円あればものすごいインパクトが出せるはずなのにという状況でも、財団はそんなお金持ってないし、銀行も安定してないところに貸さない。NPOだと上場もできない。そういう状況が、今起きている。

石川:各セクターやプレイヤーをつなぎなおすこと、課題解決に対してお金を投資するのが必要であるという事ですね。

財団設立説明会の様子

財団設立説明会の様子

ひとりずつとの、信頼しあえるコミュニケーションから

石川:財団をつくる上で、どういったことを大事にしていきたいと思っていますか?

加藤:安全なコミュニケーション、信頼し合えるコミュニケーションから始めていきたい。社会の課題解決において、コミュニケーションのズレって結構あるわけです。お金を持ってる人や企業は、よくわからないものにお金を出せと言われることも多い。お金をもらう側の視点から見ても、現地のNGOからみると、あまりありがたくないような支援もたくさんある。

石川:のちに活きるものが少ない、一過性の支援も多いですよね。財団というと、申請をして、お金をもらって研究やイベント活動をやって終わりっていう、そんなイメージが一般的にはあるかもしれません。

加藤:「いいことをやってる」という実感のためにお金を使っちゃうのは、たちが悪いなと。ビジネスとしても成り立つようにしていかないとダメで、そうじゃないお金の回し方は、延命措置にしかならない気がしています。あくまで、最適規模があって、そこにどうやって到達するか。自転車操業にお金をつけるなら、一度ちゃんと失敗して、再挑戦してもらった方が健全だな、といつも。財団でも、経営にたいして支援をしている所もあるんだけどね。ベンチャーフィランソロピー(NPOやソーシャルビジネスに対して、中長期の資金と経営支援を同時に提供すること)のような成果志向の概念があまり浸透していないから、財団自体の枠組みやルールにはなっていないけれど、担当者が個人で経営者のことをちゃんと見ていたりする。

石川:社会起業家に投資していくお金は、どこから調達しようとしているんですか?

加藤:たとえば、「親族の遺産を、教育機会に恵まれない子どもたちに」という問い合わせも受けています。社会的投資はまだまだい新しい仕組なので、やって成果を出すということとのバランスはあるかなとも思ってますね。

石川:そうした賛同者を集めていく上で、まずは300万円のクラウドファンディングにチャレンジしようとしているということですね。

>>後編「僕が、心臓病の手術から見えたこと」に続きます。

READY FOR? "投資家"と"社会起業家"の新しい関係性を産む財団をつくる。

WIA - World in Asia -

WIA Lab Inc.代表取締役/加藤轍生

1980年大阪市に生まれる。喘息患者として公害病認定され、小学校時代の3年間を療養生活に費やす。経済成長の渦中のアジアを旅する中で、過去の日本と同じ構造の社会問題が再生産されているにも関わらず、それを解決するイノベーションが移転されてないことを知る。 大学在学中より、独立系のベンチャーキャピタルで事業開発の経験を積み、経営コンサルタントとして独立。その後、非営利セクターの事業開発に転じる。09年より、アジア圏での事業開発に軸足を移し、2011年に震災復興に挑戦する社会起業家への投資を行うWorld in Asiaを立ち上げ。以降、アジアの社会的投資のアクターとして活動する。著書に「辺境から世界を変える」(ダイヤモンド社)

聞き手/石川孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

この記事を書いたユーザー

田村 真菜

田村 真菜

フリーランス/1988年生まれ、国際基督教大学卒。12歳まで義務教育を受けずに育ち、野宿での日本一周等を経験。311後にNPO法人ETIC.に参画し、「みちのく仕事」「DRIVE」の立ち上げや事務局を担当。2015年より独立、現在は狩猟・農山漁村関連のプロマネ兼ボディセラピスト。趣味は、鹿の解体や狩猟と、霊性・シャーマニズムの探究および実践。

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