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#経営・組織論

人を育てるための「仕組み」は人を育てない? いいチームをつくる秘訣を、西條剛央さんと考えてみた【その3】

2016.07.07 1,340view 

第2回目(記事はこちら)では、インターネットが成熟した現代、その想いは近くても、それぞれが小さなチームとして独立しているからこそ、仲間になればたちまち戦力は2倍になるんだということが明らかにされていきました。そんな、志で無限につながっていける可能性を秘めている“チーム”というあり方。第3回目では、地域の中小企業の2代目社長のチャレンジを例に、もう少し組織の仕組みについて掘り下げていきます。

西條さんは現在、「ふんばろう」の経験を基に被災地支援のプラットフォーム「スマートサプライ」を構築、熊本地震においても導入されています。くまモンの生みの親・小山薫堂さんとの対談記事はこちらから>>熊本地震で考える「募金の生きた使いみち」【小山薫堂×西條剛央】
「状況が変わったら他の方法を試す」がキホン
西條さん、宮城

左から早稲田大学客員准教授・哲学者の西條剛央さん、NPO法人ETIC.代表理事・宮城治男

鈴木敦子鈴木

ETIC.では、地域の中小企業の2代目・3代目の社長が新しいチャレンジをするときに、若者をインターンとして派遣したり、社長の右腕になる人をマッチングして、一緒に経営計画に取り組むプログラムを運営したりしているんですね。

2代目社長は先代が作ってきているものを受け継ぐわけですけど、従業員さんは、新しい社長さんより年上であることが多いんです。たとえば2代目の社長さんが30代くらいの方だとすると、50〜60代くらいの会社員の方がいる。そうすると、もうこの方々の「当たり前」と2代目社長の方が感じている危機感とが全く食い違ってしまっていて。新しいことにチャレンジするのに、味方もいなければ理解者もいないという孤軍奮闘みたいな状況になってしまっているんですね。

西條剛央西條
やはり、「どういう方法が有効かは、状況・目的に応じて変わる」んですよね。こういう「方法の原理」を、小学校や中学校の段階で身につけておいてもいいんじゃないかと思っているんですが。それがOSみたいにみんなに共有されていたら。どんなにそのときは新しくても、古くなってきてしまうということはありますからね。
宮城治男宮城

うちで採用や転職のサポートをしていても、やはり学生時代に「やわらかくなる型」のような、そういう「生き方のOS」みたいなものを持つ機会があった方というのは、いくつになってもわれわれのようなヘンな組織で楽しく仕事ができるんですよね。

だけど、そのまま大きな組織に入って外の世界とふれあうこともなく、完全にその価値観に染まってしまった人が40歳になって、概念としては社会起業やソーシャルビジネスが面白そうだと思ってお手伝いしたいといって来てくれても、なかなか波に乗れない。

ご本人は、頭では「ソーシャルビジネス、素晴らしい!」「大事な事業だ」と感じているんですけど、実際に現場に行くと、考え方が硬くなっているのを自ら変えるのは難しい。

鈴木敦子鈴木
「なにをすればいいですか?」って尋ねられるんです。「やりたいことはなんですか?」とこちらが尋ねても、答えられない。
宮城治男宮城

本当に「助けたい」と思って来てくださっているんですけど、自分になにが求められていて、自分がどう役に立つかという、ごく基本的なことを探り当てるということができなくなってしまっているのかもしれません。

しかも、シニアの方たちになってくると上司の経験が長いので、上から命令するような姿勢も自分のなかで染みついてしまっていて。「若い子には命令する」というような。その構造を自分でつくってしまっている。

鈴木敦子鈴木
普通に企業の中に入って、そこの評価で何十年と生きてきているから、それ以外の行動も思考パターンもとれなくなってしまうんですよね。
西條剛央西條
状況が変わって、もうそれ通じないよってなっても、そのままやり続ける。「状況が変わっているから、他の方法を試そう」みたいなことを考えられない制度や構造になってしまっているのかもしれないですね。
宮城治男宮城
そうなんですよね。そういう意味でも、大学生よりもさらに若い人たちや子どもたちとの接点をこれから増やしていきたいと思っていて。やはり早いほど人生への投資効果は高い。さらに、子どもや若者が変われば大人もかわる、という構造もある。
真剣勝負のスイッチを入れるのは、外からきた若者
宮城治男宮城

たとえば地方の中小企業さんの例でいうと、昭和の親父たちがやってきたビジネスが成り立たないというときに、業態の転換だとか非連続な進化が求められている。しかも、変わらないとビジネスが成り立たけないだけではなく、つまらないんですよ。親父がやってきたことを維持していくために仕事をする、というやらされ感だと経営者自身が燃えられない。出力がでないというか。そういうときに、われわれはインターン生として若者を企業に入れるようにしているんです。

若者はお金のためでもなく、しがらみもなく、興味があるからその仕事をしにくる。われわれがそうマッチングするので。その企業がやろうとしていることの可能性に、ただシンプルに面白みを感じているからやってくる。しかも期間限定のインターンなので、打算的でなく関わることができる。就職だと、若者側にも打算が働くんですよ。雇用する側も、お給料を払っているって目で若者を見てしまいますし。

これは、経営者からしてみれば我にかえる機会になるわけです。 ピュアに楽しむ若者を目の前にして、「あぁ、俺たち本当はこういう楽しさや、こういうことを大事にしたかったんだよな」と。「ああ、忘れてた、この楽しそうな感じ、ひたむきな感じ」と気がついて、スイッチが入る。

そして、スイッチの入った後継経営者が仕事に対して本気で情熱を持って向き合っていき、これまで先代が築いてきたリソースをもとに、地域や社会に対して貢献できる新しいビジネスモデルに挑む。これをわれわれは、「中小企業のソーシャルビジネス化」と呼んだりしています。

もちろんこの新しいビジネスは簡単にはペイしないんですが、それが突破できたりするんですよ。答えのない問いに挑むのはエキサイティングだし、何より求められていたことなので周りからも感謝される。しかも突破すると、そのビジネスで一人勝ちみたいな状況になる。なぜかっていうと、そのビジネスモデルっていうのは誰もがまだ向き合ってこなかった領域で、これまで儲かっていなかったところだから。だからまだマーケットがなかった。

人を育てるための“仕組み”は人を育てない?
NPO法人ETIC.事務局長・鈴木敦子

NPO法人ETIC.事務局長・鈴木敦子

宮城治男宮城

われわれは若者を育成するためにインターンシップに送り込んでいるんですけど、受け入れた側も進化するという、常に若者と企業双方の成長が循環していく、フェアな「構造」を大事にしているんですね。その構造が成立する条件として、そこが真剣勝負の現場でなくてはならないと思っていて。これを「研修」としてやってしまうと、提供する側も上から目線で、行く側もあくまでシミュレーションというか、受け身で依存的な関係になってしまう。こちらも彼らをお世話しなくてはいけなくなる。

インターンシップって、多くの地域の企業さんは大学や行政から押しつけられているので、本当はお金をもらいたいくらいなんですよ。でもわれわれは、その構造を変えていこうとしていて。

われわれも、少なくとも自分たちが魅力を感じられるような経営者や職場、欲しいと思えるプロジェクトでないと、若者を送ることもできない。そういう自分たちが大事にしていることの「軸」を、おそらく感覚としてインターン生も持っているんだと思うんですね。特にETIC.では、ブランドだとかお金で学生が縛られる構造じゃないので。あくまで自分で選んで、自分で意思決定をしていくということが大前提なんです。

だから楽しい現場じゃなかったら、人が来ないんですよ。いくら高い給与を出すと言ったとしても、来ない。すごく名の通った大企業であっても、面白いプロジェクトじゃないと来ない。なので、次はどうやったら面白く、自分でやりたいと思ってやってきた若者たちが自ら意思決定をして、挑める現場を作ることができるのかという目線から見続けていて。

鈴木敦子鈴木
そのコーディネートを、コーディネーターが「天然」でやっているんですよね。その関係性を、ある切り口からみるとインキュベーションにみえて、ある切り口からみると人材育成にみえてくる。そして、コーディネーターがわくわくしているっていうそのオーラが現場の潜在意識をまた引き出すというか。企業側も、「え、そんなに共感してくれるの!?」って(笑)。

一同:(笑)

宮城治男宮城

企業の立場からしてみれば、すべての人は思惑をもって接してくるように思える。「自分たちの方が儲けたい」と思っているんだろうな、とか。ビジネスだから当然といえば当然ですけど。対してわれわれは、NPOとしてニュートラルなので、「一緒に面白いことやりましょう」「こうすれば社会が変わるかもしれない」「好きなことやったらいいんじゃないですか」という、別の軸を持ち込むわけですよ。そうすることで彼らも、我に帰るというか。

われわれはわかりやすい「力」を何も持ってない存在なのかもしれません。みんな別にマッキンゼー出身なわけでもないし、起業家として事業を成功させた実績があるわけでもない。だけど、コーディネーターとして起業家や企業側とフェアに寄り添いながら話を聞いていくのが役割なのかもしれない。

自分が本当に大切にしたいことをみつめる
宮城治男宮城

ただ、そういうことがちゃんと理論的に価値あることだっていう自覚のもとにあまりやっていない、ないしは、そういうふうに「それが価値があることなんですよ」という説明を、経営者にも学生にもしてない(笑)。さきほど鈴木が「天然」といったのは、そういう意味もあって。

たとえば、よく評価してくださる方や熱烈な支援者になってくださる方も、言語化して誰かに説明しようとするとできない。「いやもうETIC.さん素晴らしいんですよ、すごいんですよ」と紹介してくださるんですが、それ以上の言葉がでてこない(笑)。

一同:(笑)

宮城治男宮城
「インターンで日本一」とか(笑)。
鈴木敦子鈴木
「起業家をたくさん支援しています」とか(笑)。
宮城治男宮城

ただ、不用意に言語化してしまうと、押し付けになって効力を失ってしまうこともあるのだとは思います。それから、そういうように自分たちでも言語化していなくて、西條さんの『チームの力』にも書いていただいているなと感じたのは、その人の「本当に大切にしたいことがどこにあるのか」ということ。そこにフォーカスをしているというのはあるのかもしれません。

たとえば、インターンの受け入れをしていただいている企業さんにしても、スタートアップしたいと相談しにくる人たちにしても、その人が本当に大事にしていること、やりたいと思っていることはなんなのかということに、まっすぐにフォーカスするわけですね。

たとえば、起業するときも「何かでっかいことしたい」、あるいは、事業は「正しいことでなければならない」といった動機から入っていくんですけど。その「正しいこと」にむしろとらわれてしまって「自分が本当にやりたいこと」とズレてしまったり、自分の本当の関心がどこにあるのかということを見失いがちになってしまったりということがある気がします。それだと、始めたとしても肝心な時に力がでない。突破ができない。時に誰かのせいにしてイライラする。

男女でいえば、特に男性に多いと思います。女性の場合は、もうちょっとストレートに、天然で向き合っている方が多いと思うんですけど。男性の場合は志は高いんですが、いろいろ考えすぎていて結果踏み出せない、ということが多い。

西條剛央西條
観念的ですよね、男性の方が。女性の方が「天然」というか、感性ベース、つまり良いか悪いかという「感じ」で決めているんだと思います。

第4回目はこちら>>「本当にあなたが大事にしたい役割、自分に合ったスタイルは何ですか」。いいチームをつくる秘訣を、西條剛央さんと考えてみた【その4】

第1回目>>いいチームをつくる秘訣を、3.11で3000人とチームをつくった西條剛央さんと考えてみた【その1】

第2回目>>組織は「内と外」があるけれど、チームは境界をのばしていける。西條剛央さんと考える、チームをつくる秘訣【その2】

現在、西條さんは東日本大震災時に3000か所以上を継続的にサポートした仕組みから開発した「スマートサプライシステム」を、熊本支援プロジェクトに導入しています。2016年3月には、減災産業振興会主催の「第2回グッド減災賞」で最優秀グッド減災賞を受賞したスマートサプライ。熊本への支援にご関心のある方は、こちらから詳細をご覧ください。くまモンの生みの親、熊本出身の放送作家・脚本家の小山薫堂さんとの対談記事「熊本地震で考える「募金の生きた使いみち」 【小山薫堂×西條剛央】」はこちらから。ご著書『チームの力』はこちらから。

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この記事を書いたユーザー

桐田 敬介

桐田 敬介

哲学者・遊び研究者/よはく代表。1986年生まれ、埼玉県育ち。大学で哲学理論を作る一方で映画制作や演劇などを楽しみ、大学院では日本各地の面白く豊かで多様な学校を訪れ図画工作と造形的な遊びの研究を行う。現在はベンチャーで勤務しつつ遊びの研究を続けながら、哲学とアートを遊ぶワークショップを運営する団体「よはく」を主催している。

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