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【プロボノ募集中!】横浜市行政職員とチームを組んでのリサーチ・プロジェクト

2013.09.11 

社会人が仕事を通じて培った知識やスキル、経験などを活かして、本業以外の時間で社会貢献に取り組む「プロボノ」。

プロボノ元年と言われた2010年以降、プロボノの機会が拡大・多様化しつつあり、DRIVEラボが実施したこれまでのインタビューの中でも、プロボノ経験を経てNPO業界へ転職した方が数多くみえました。

そういった中で、ETIC.横浜ブランチは横浜市経済局と協働で「行政職員と、社会人がチームを組んで、地域の社会起業家を支援する」というユニークな取り組みを進めています。地域に根づいたプロボノの機会として、横浜でどんな取り組みが進められているのか。背景にどんな想いがこめられているのか。ETIC.横浜ブランチでプログラム運営を担当する腰塚に、話を聞きました。 ETIC.横浜ブランチ 腰塚志乃

ETIC.横浜ブランチ 腰塚志乃

行政にできる起業家支援は、お金だけではない

石川:行政職員とビジネスパーソン(民間社会人)がチームを組むというプロボノのあり方は、とてもユニークな取り組みだと思いますが、どういった経緯で実現したのでしょうか?

 

腰塚:ETIC.横浜ブランチ(横浜支店)では、2008年から横浜市経済局と協働で市内の社会起業家支援を実施してきました。その過程で「行政の資産は、委託事業や助成金などの“資金“だけじゃないはずだ」という議論が起こり、2011年から行政職員と民間社会人のプロボノ・チームによる支援を開始することになりました。

 

石川:資金以外の支援とは、どのようなものですか?

 

腰塚:行政職員は、それぞれの仕事を通して市内の課題に精通していますし、市役所内外にネットワークを持っています。そういった知見や情報は、起業家が取り組みを深め、拡大していく際に非常に役立ちます。横浜市の持っている情報や人材はとても貴重な資源だと思うのです。

でも、なかなか現状では両者がつながる機会はありません。横浜市のプロボノ・プロジェクトでは、これらをつなげる場をつくることで、横浜市の持つ人材や情報などを活かした、行政だからこそできる起業家支援プログラムにできたらと思っています。

 

石川:行政職員に蓄積された課題解決のための知見が活用できるのは起業家にとってありがたいでしょうね。今年で3年目になるわけですが、手応えはいかがですか?

 

腰塚:行政職員の参画という意味では、「市内の社会問題と向き合える良い機会になった」という声をいただいています。背景には、自分の仕事の成果が見えづらいという職員の悩みがあると思います。横浜市は巨大な政令指定都市ですし、担当部署によっては現場の受益者から遠くなってしまうので。

 

石川:地方の県庁のような役割も多いでしょうしね。なかなか、直接的に受益者と関わる仕事が少ないのでしょうね。

 

腰塚:そうですね。そういった問題意識をもって参加された行政職員プロボノの方からは、「普段の仕事や、そこで培った知見が社会に役立つということを、あらためて実感した」という言葉を頂いています。

また、「社会的課題の重要性をどう可視化したら効果的に伝わるのか、分析力や表現力が鍛えられ、本業の業務に役立つ力がついた」という意見もあり、「横浜市のためになる仕事をしよう」と志高く入ってきた職員の方々にとって、社会起業家と共同で社会課題に取り組む経験が、その思いに立ち返ったり、スキルを磨いたりするよい機会となっているのかもしれません。

あとは、民間社会人と行政職員がチームを組んでプロジェクトを進めることで、お互いのビジネススキルや思考法を知ることができ、プロボノ同士でもとっても良い刺激を受けたという意見が多いです。 NPO法人ムイットボン!代表の上田尚矢さんと、プロボノチーム

NPO法人ムイットボン!代表の上田尚矢さんと、プロボノチーム

最大5名のプロボノチームで、起業家とともに3ヶ月間のリサーチを実施

石川:それでは、実際のプロジェクトの進み方について教えてください。

 

腰塚:ひとつの事業について3ヶ月間、4?5名によるプロボノ・チームで支援します。期間中に5回程度、顔をあわせてのミーティングの機会があって、進捗を確認しながらリサーチを進めていきます。

 

石川:はじめての人たちが集まり、しかも日々顔をあわせるわけでもなく、遠隔でプロジェクトを進めていくわけなので、毎回の打ち合わせがとても大事になりそうですね。

 

腰塚:そうですね。平日の日中はみなさん本業をされているので、適宜メールやスカイプでやりとりを進めていくことになります。でもやっぱり顔をあわせて話し合うことって大切なので、みなさんミーティングを自主的に設定して、よく集まっているようです。

 

石川:3ヶ月という短期間に、ぐっと集中して実施するイメージでしょうか。ちょっと非日常的な体験ですし、チームの絆は強くなりそうですね。

 

腰塚:プロジェクトが終わった後も、起業家が実施する総会に参加したり、時々報告や相談をする場をもったりしているみたいです。そういう関係ができた、という報告を聞くのは嬉しいですね。

リサーチを通して、起業家のアイデアを検証・具体化する

石川:具体的なリサーチ内容としては、これまでにどのようなものがありましたか?

 

腰塚:これまでに6件のプロジェクトを実施してきましたが、テーマは障害者雇用や一次産業、後見人制度など、本当に様々です。横浜という地域の課題に密着したものが多いですね。

 

石川:何かひとつ、どんな調査で、どういった成果があったのかご紹介いただけますか。

 

腰塚:発達障害やその悩みを抱える大学生の支援サービスのあり方を調査したケースをお話します。株式会社kaienという発達障害の方が強みを活かして働くことを支援されている事業者と実施したプロジェクトになります。kaienは、発達障害の傾向があるものの本人に自覚のない大学生が、就職活動の時点でつまづいてしまうという現状を解決する事業を検討していました。 チームで整理したプロジェクトのお題:kaienプロボノチーム作成

プロボノチームが整理した、プロジェクトのお題:kaienプロボノチーム作成

石川:そこで、当事者がどういった状況に置かれているのか、そして新規事業のアイデアが本当に当事者の行動変容につながるのか、丁寧に調査されたのですね。

 

腰塚:そうですね、就職活動をはじめた機会でサービスを提供すべきか、それとももっと早期から対策していくべきか。後者が望ましいという想定でしたが、自身や家族が発達障害の認識がない場合、どのようにサービスを提供したらよいのか。そういった問いに対する答えを、ヒアリングを重ね、示唆を持ち寄ってチームで議論をしながら見出していきました。 実施したリサーチの内容:kaienプロボノチーム作成

実施したリサーチの内容:kaienプロボノチーム作成

石川:オンラインで公開されている調査結果のレポートも、非常に充実していますね。リサーチの結果が、起業家のアイデアに肉付けされていく様子が分かるようです。 発達障がいをもつ大学の課題:kaienプロボノチーム作成

発達障がいをもつ大学の課題:kaienプロボノチーム作成

腰塚:結果を踏まえて、kaienは新しいサービスの提供をはじめたそうです。スタート当初より、広報しなくても人が集まるほどの反響だったと聞いています。また、プログラム参加者は来年度250%増となる見込みだそうで、ニーズの高いサービスであると改めて感じました。 新規事業のテストマーケティング結果:kaienプロボノチーム作成

新規事業のテストマーケティング結果:kaienプロボノチーム作成

石川:横浜のプロボノに参加してみようかな、と思っている方はぜひ目をとおしておくとよい資料ですね。どんなことをするのかイメージがわくと思います。最後になりますが、どんな方にプロボノとして参画していただきたいですか?

 

腰塚:起業家が取り組む課題に、熱烈な思い入れや共感をもっている人ですね。様々な観点からの問題意識や視点を持った個性が集まり、それがチームとして交じり合って、よい結果を生み出すことが多いです。まずは説明会に気軽に来ていただいて、起業家の想いや雰囲気を感じていただければ。

 

石川:起業家のプレゼンテーションを直接聞いて、何かを感じた方にご参加いただきたいですね。お話ありがとうございました!

9/20(金)プロボノ募集説明会を実施します!YOKOHAMA CHANGEMAKER’S CAMP 過去のプロボノチームによる成果物は、こちらのサイトからダウンロードしていただけます。  

ETIC.横浜ブランチ マネージャー/腰塚 志乃

神奈川大学在学中より、学生シンクタンク政策立案コンテストに参加、その後運営スタッフ として従事。ライフスタイル雑貨メーカである(株)イデアインターナショナルにてのインターンシップを経て、日立製作所に入社。横浜地域での国内の交通事業者向けの情報システム営業などを担当し、横浜での地域を繋ぐ仕事がしたいと想いETIC.横浜プロジェクトへ参画。自治体、地域企業、大企業、NPOの、連携し地域を変革することに取り組んでいる。

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石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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