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起業家支援のその先へ。社会を変えるビジネスアイディアに“共犯”する「SUSANOO Fall 2015」

2015.12.09 

世間はハロウィン一色の10月30日、夜の恵比寿ガーデンプレイスホールに250名もの企みを胸に秘めた老若男女が集った。

和太鼓がホールを揺らすこの“祭り”の首謀者は、NPO法人ETIC.×孫泰蔵氏によるソーシャルスタートアップ・アクセラレータープログラム「SUSANOO(スサノヲ)」の第1期・第2期に参加した起業家だ。 SUSANOO2015fall

同じビジョンを目指す起業家ד共犯者”

「今はまだその価値を認められていなくても、世の中にとって大切なスタートアップを生み出していくのがSUSANOOです。2016年までには100社のスタートアップを輩出し、SUSANOOの仕組みで社会をつくるという夢がある。今日、その夢をつくる共犯者に皆さんがなってください!」 渡邉賢太郎 証券会社で勤めるなかリーマンショックに遭遇し、「お金って一体何なのだろう?」という疑問を抱いて世界を一周したSUSANOOプロジェクトリーダー渡邉賢太郎。彼は、10人中9人が無謀なチャレンジだと感じるような常識にとらわれないチャレンジにこそ、世の中の閉塞感を打破するムーブメントの可能性があると信じている。

SUSANOOとは、そのような体の内側から沸き立つような自身の直感に従った、革新的な起業家が集うプロジェクトだ。「Think Big!」をキーワードに、高速仮説検証や同期の仲間やメンターとの切磋琢磨によって、これまで多くのスタートアップが生まれてきた。

「SUSANOO 2015 Fall」と名づけられた今回のイベントは、そのメンバー内にとどまらず、“共犯者”としての参加者と新たなコラボレーションを生み出すためのチャレンジに位置づけられる。 道端慶太郎さん 第2期メンバーの道端慶太郎氏もこう続く。「私たちSUSANOOチームは、愛と勇気と熱さだけは誰にも負けません。そして、その熱さだけが世界を変えてきたことを知っている。今日はどうぞ燃え移らないように気をつけて!」

境界を越えて「Think Big!」に未来をデザインする

教育に対する既成概念にとらわれず、それを媒介として分断された世代や地域間を結びつけることで新たな教育市場を開拓する「Re:ducation」。田舎と都市、生産と消費、上司と部下など、一見対立し両極端にある二つのライフスタイルを一人の人間が並行して楽しむ生き方を提案する「Dual:Life」。行政が担ってきた公式サービスを、ITなどのテクノロジーを用いて効率よく品質の高い仕組みを再構築し、市民が創る公共を実現する「Re:public」。これら三つのテーマで語られるのが、SUSANOOメンバーたちの“未来をデザインするブレスト”だ。 未来をデザインするブレスト オープニングの熱気も冷めやらぬなか、“共犯者”である参加者たちは会場の三か所に散らばったプレゼンテーターのもとへ集い始める。たった一人が立てるくらいの小さな「箱」の上で、マイクも使わず身体全体でプレゼンテーションを表現する起業家たちに、それを全身で受け止めようとする“共犯者”たち。

「僕たちは、日本酒・馬・蝶と、まったく違う事業を手掛けています。それでも、『失われてゆくものの再定義』という価値観は共通する。そこをともに考えていきたいんです。逆風の業界でともに“荒ぶる”ことで、業界を変えていけると思っています!」

そう語るのは、「40年で3分の1の規模に縮小している日本酒業界に楔を打ち込み、多様で豊かな日本酒文化を未来に受け継ぐ基盤をつくること」をビジョンに掲げているNaorai inc.の三宅紘一郎さん。

「蝶で人と自然の調和した世界をつくる」ことをビジョンに掲げる世界を蝶で♪の道端慶太郎さん、「馬が馬らしく生き続け、人間と共生できる社会」をビジョンに掲げる&H.の吉村優一郎さんと共に、「絶滅危惧種と絶滅危惧“酒”」としてタッグを組み、ブレストアジェンダに挑んでいる。このような一見まったく結びつかない事業者同士でのチャレンジは、驚くべきことにこの場において彼らだけではない。 ブラッシュアップのようす プレゼン後には、願う未来を同じくする起業家と共犯者で机を囲み、自由なブレストでアジェンダを深めていく。そこには、異分野での起業家同士の境界が存在しないだけでなく、「主催者」と「参加者」という境界すらも存在しないかのようだ。

「自らの手で未来をデザインする」という想いさえ共有できていれば、向き合うテーマの違いはむしろ、お互いにない視点を提供し合える土壌になる。多種多様な現場で課題と向き合う挑戦者たちと“共犯者”たちが生み出す化学反応こそ、このハレの日の一番のごちそうになるのだ。

「企みを共有する場」が生み出すもの

SUSANOOメンバーによるピッチも、この祭りでは“企みの共有”になる。

「讃える」、「繋げる」、「加わる」。参加者は、これらの意思表示となるメッセージカードを手に、各ピッチに対し自分ごととして何かしらのアクションを起こしていく。

「本日はこの場で、起業家のニーズと皆さんのアクションを繋げたいと思っています。といっても、すでにFacebookのページでウィッシュリストを掲載したところ、ドローンが欲しいと書いたメンバーにドローンをくださる人が現れました。マッチング、起きています!」

驚きの導入に湧き上がる会場。最高のスタートを切った起業家たちのピッチには、続々と三つのカードを掲げた手が挙がる。 盛り上がる会場 「LGBTの73パーセントは、生活に支障が出なかったとしてもカミングアウトしたくないと言います。それは、現在の典型的なLGBTのイメージが固定され偏っているから。僕は、このような少数の自分に自信のあるLGBTの人たちだけがカミングアウトでき、承認を得られるような状況を変えたい!」

そう声を張り上げたのは、「セクシャリティに関係なく、すべての人がありのままで生きられる社会」をビジョンに掲げるやる気あり美の太田尚樹さん。この状況を変えるアクションとして、セクシャリティーにこだわらない人たちが交流する「Aキッチン」を始めたいと語る。 やる気あり美・太田さん 「このキッチンでは、カミングアウトしてもしなくてもいいんです。LGBTでなくてもいい。ただセクシャリティーにこだわらない人たちが、ともにキッチンを囲み談笑するなかで、自然とお互いを受容し合える場所にしたい。そうやって、自信のない人たちが今すぐにでも自信を持ってカミングアウトできる社会をつくりたいんです」

熱い想いを軽快なテンポで語る太田さん。ピッチを締めくくると、会場は大音量の拍手につつまれた。続く「このキッチンを実現できる場所、ありませんか?」との声にも、われ先にと「加わる」の手が挙がる。 カードを掲げる参加者たち 「はじめまして。レシピ投稿サイトを運営する会社に勤めています。弊社には30人同時に料理ができるキッチンがあるのですが、ぜひ検討させてください!」

驚きの申し出に、自分ごとのように歓声をあげて喜ぶ参加者たち。その後も、学生だけで居酒屋を経営している早稲田大学の学生が場所の提供に名乗り出てくれるなど、想いに共感し共犯者を名乗り出る声は各起業家のアイディアに想像以上の発展をもたらした。

ソーシャルの領域で、誰も見たことのない圧倒的なグルーブを

SUSANOOプロジェクトのCo-Founderであり、東京大学在学中にヤフージャパン立ち上げに参画、ガンホー・オンライン・エンターテイメントをはじめ、起業家として多数の事業を創造する孫 泰蔵氏(Mistletoe株式会社・代表取締役社長兼CEO)はこう語る。 孫 泰蔵氏 「今回のフェスでは、ソーシャルスタートアップ起業家の挑戦に対し、人や施設の紹介をはじめ、いろんなかたちでコミットしてくださる方がどんどん出てきてくれました。今後はそういったコミットが積み重なって、最終的にその場に圧倒的なグルーブが生まれるような演出や仕立てを、もっともっと磨いていきたい。磨いていけば、絶対に今までみたことないグルーブが生まれてくるはず」

そうしていくことで、応援する側とされる側といった区別がない、会場全体が一体感に包まれるような、これまで誰も経験したことのない場になるはずだと、熱く語る孫氏。 境界を超えるSUSANOOの挑戦の続きは、来年春を予定している。 集合写真

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桐田理恵

1986年生まれ。学術書出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2018年よりフリーランス、また「ローカルベンチャーラボ」プログラム広報。