TOP > ローカルベンチャー > 地域から新しいスタンダードを生み出す。全国の挑戦者が集った「地域仕事づくりプロデューサー戦略会議」開催速報

#ローカルベンチャー

地域から新しいスタンダードを生み出す。全国の挑戦者が集った「地域仕事づくりプロデューサー戦略会議」開催速報

2016.11.22 

働き方、コミュニティ、ビジネスそして経済。どれもが変革期にある日本で、個性ある地域の資源や文化、歴史を活かして、新しい未来を目指す動きが続々と生まれています。

いつの時代も新しいスタンダードを作ってきたのは、これまでとは違う未来をつくる意思を持っている人たち。そんな地域づくりど真ん中の挑戦者が全国から集い、次のスタンダードを語り合う「地域仕事づくりプロデューサー戦略会議」が、11月13日(日)に東京都港区の日本財団ビルで開かれました。 1

自治体、省庁、企業や大学関係者、NPOなどから、150名が参加。地域の実践者42名から最新の知見を学び合う

今年のテーマ「地域から新しいスタンダードを発信する」で、掲げた問いは3つ。

  • 社会の多様性や資本を豊かにする、新しい循環型経済の作り方とは?
  • ローカルベンチャーがつくる、新しい働き方とこれからの地域産業とは?
  • 地域の主体性にスイッチを入れるコーディネーターの在り方とは?

地域の実践者42人が登壇し、16の分科を開催。自治体から省庁、企業や大学関係者、NPOなど様々なバックグラウンドを持つ150名を越える参加者が議論を交わしました。 1

やってくるローカライゼーションの時代、プロデューサーとはチェンジエージェント。

オープニングでは、本イベントを主催するNPO法人ETIC.理事で東京都市大学の佐藤真久教授が、登壇しました。先行きが見えない現在は「ありたい社会×ありうる社会」を考える必要がある、と指摘。「事業だけで成果を出す時代から、コレクティブインパクトの時代になってきている」と話しました。

さらに、イギリスのブレグジットや米大統領選でトランプ氏が当選するなど、世界で自国第一主義が出てくる中、国家間の軋轢が強くなると予想。こうした社会背景の中で、「昔と違うのは、国家と別に地域がある。地域が国家に頼るのではなく、自立して他の地域とつながっていくローカライゼーションの時代がやってくる。この場もひとつのモデル。こんな時代のプロデューサーとは、変革を促進するチェンジエージェントたちだ」と投げかけました。 2 株式会社エンパブリックで代表取締役を務める広石拓司さんは、「ソーシャルラーニングを地域づくりで実践する!」と題して、文京区の取り組みを紹介。地域に関わっていない人が、地域課題解決の担い手になるには、「地域の人が役割を見つける環境を整えることが大切。地域の人たちが出会って学び、問題意識を深めるサイクルを通して、ゆるやかな担い手への階段を作っていくことがプロデューサーに求められる」と話しました。

「地域の未利用不動産を活かす」「大企業と地域のこれからの事業のつくりかた」など、参加者も体感できる多彩な分科会。

分科会は1時間15分×3ターム。最初は「地域の未利用不動産を活かして地域の価値を高める」「都市の資源と地域をつなぐ~大企業と地域のこれからの事業のつくりかた~」など5つが開催されました。

「地域の「実践者」をどうやって増やすか~ピッチと聴衆参加型ブレストで、挑戦者と応援者を量産する方法~」では、「カマコン」メンバー・ファシリテーターの宮田正秀さんと本多喜久雄さん、いわき市のNPO法人「TATAKIAGE Japan」の理事兼ディレクター小野寺孝晃さん、一般社団法人「Bridge for Fukushima」のプログラム・オフィサー加藤裕介さんが、登場。

住民がやりたいことをみんなの前でスピーチし、そのアイデアをみんなで磨いて、仲間を募る「カマコンバレー」は、鎌倉でIT企業を中心に始まり、福島県をはじめとした全国に広がって住民主導プロジェクトを続々と生み出しています。 3 分科会では、参加者が実際に体験。いわき市を中心に実践している小野寺さんが「誰かがしゃべったことを具体的に活動にする仕組みを作りたい」、福島の高校生を対象とした加藤さんが「高齢者を巻き込みたい」とお題を出し、グループごとに4分でアイデアだしをしました。

どんな意見にも評価や判断はせず、応援目線がキーワード。すると、「老人ホームで開催したら」「子どもたちの前で宣言をする」など会場は盛り上がり、合計60近いアイデアが生まれました。

本多さんは「『全部ジブンゴト』、これが一番大事にしている呪文です。人のせいにしておくことはしない。完全なる当事者意識です。僕らは頼む側になる人を増やしたい。やりたいこと、楽しいことに人を巻き込む、みんなでジブンゴト化する」と話しました。 4

「地域本来の役割を果たすことで、地域が継続する」

ネットワーキングランチをはさんで、第2タームでは、「初めての“社会的インパクト評価”~その価値を見える化すると社会が変わる~」、「右腕人材で地域企業の経営革新を推進する」など6つの分科会が開かれました。

「地方創生戦略から考えるローカルベンチャー~「稼げる行政の仕組み」をつくる~」には、岡山県・西粟倉村の上山隆浩・産業観光課長、日南市の田中靖彦・商工政策課商工係主査が登壇しました。平成の大合併を選択せず、ローカルベンチャーの群れを育てる取り組みを続けている西粟倉村では、地域資源の森林を活かした経済を作ろうと「100年の森林構想」を掲げ、クラウドファンディングや付加価値、エネルギーまで森林に関わる複数のベンチャーが連携しています。

現在、森林以外にも出張バーや染め物など20社近くが起業し、125人の雇用を作ったといい、上山さんは「地域本来の役割を果たすことで、地域が継続する。そして課題を見つけてチャレンジし、そこに外部の人を巻き込む。百年の森構想の先にローカルベンチャーがあり、その先に村が課題だと思っていることに取り組むソーシャルビジネスがあるのではないか」と話しました。 5 宮崎県の日南市は、「創客創人のまちづくり」を掲げて、民間人材を積極的に登用しています。マーケティング専門官や商店街再生のマネージャー、街並み再生などのポストに民間の専門家をつけ、「日本一組みやすい自治体」として地域資源と企業のリソースを活用して一緒に事業を進め、ローカルベンチャーのビジネス環境整備やネットワーク作りを支援しています。

田中さんは地元の若者への影響として、「ITなど6社が起業している。地元の子どもたちにITとは何かというのが自動的に理解されている。高校生には地元の企業を見学させていく。IT企業が来たおかげで(若者の)賃金が上がっている。地域の働き方を変えていく」と話しました。 IMG_6010_Fotor

中山間地域で、若手経営者たちが連帯保証で総事業費1億7千万円の再建計画を

最後の第3タームは、「農家・企業・学校と連携した、子どもたちが地域へ愛着を持つ仕組み」、「地域の金融機関が人材のコーディネート機能を担う」など5分科会が開催。 「廃業支援・事業継承を含む経営統合へ~日本一小さな温泉街の地域中小企業の新たな挑戦~」では、人口わずか400人の島根県・有福温泉の再生への挑戦が紹介されました。

アクセスが悪い中山間地域に位置するハンディを乗り越えるべく、若手経営者たちが連帯保証で総事業費1億7千万円の再建計画をまとめて民間主導で取り組んでいます。有福振興を中心としたホールディングス型のモデルで旅館の経営やサービスを統合。さらに、都市部の学生インターンの外部人材を活用し、予算1千万円上限で朝食会場を改変するなど、大胆な取り組みを実施してきました。今後は、温泉街全体の事業計画が必要として、廃業と事業継承を目指しています。 6 7 旅館の跡継ぎとしてUターンした有福振興株式会社の樋口忠成・取締役は、「有福温泉は高齢化率が60%くらい。このままだと経営者すらいなくなる。でも、この最悪な事象をひっくり返すと、ホールディングなら社長一人で済む」と話し、旅館間のワークシェアなど人手不足を逆手にとった取り組みを紹介。

また、「街が廃墟になったら人は来ない。両隣が廃墟で自分のところだけ人が来るということはあまりないと思う。どこかで手を握る作戦をやっていくための横展開の事例になればいい」という。

有福振興のコーディネーターを務める青山桃子さんは、「観光地は面で再生しないと、どうにもならない。温泉地のランドマークの建物や店は我々で巻き取ってやっていかないと厳しい。廃業と事業承継は暗いイメージですが、我々は出口戦略を作っていて、目指せ、明るく楽しい廃業、事業承継です」と話しました。

この記事に付けられたタグ

コレクティブインパクト
この記事を書いたユーザー
アバター画像

DRIVE by ETIC.

DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )