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若者の声を届ける「Youth TICAD」で、アフリカと日本が共創する未来を。JICA・若者団体代表の休場優希さんが挑む政策提言プロジェクト【経験者が語る「戦略的休学のススメ」(2)後編】
2025.07.29
現在、JICA職員であり、日本とアフリカの若者たちの共創の機会を提供する一般社団法人アフリカ・アジア・ユース・ネスト(AAYN)の共同代表でもある休場優希(やすみば ゆうき)さん。大学3年で1年間休学し、デンマークと東アフリカ・マラウイに留学しています。
前編では、休場さんが、留学までの経緯、デンマークや東アフリカで気づいた社会との新しい向き合い方についてご紹介しました。後編では、休場さんの現在や国際的な挑戦についてお話を伺いました。
休場 優希(やすみば ゆうき)さん
独立行政法人国際協力機構職員 及び 一般社団法人 アフリカ・アジア・ユース・ネスト(AAYN)共同代表、Youth TICADの創設メンバー
トビタテ!留学JAPAN8期生として、大学3年次にデンマークおよびマラウイに留学。2021年に横浜市立大学を卒業後、国際協力機構(JICA)に入構。本業の傍ら、副業として友人とともに一般社団法人Africa Asia Youth Nest(AAYN)を立ち上げる。AAYNとして、TICAD9ユースの政策提言プロジェクトやYouth TICAD 2025の企画に初期段階から参画。
8月開催の「第9回アフリカ開発会議」に若者の声を届ける
デンマークや東アフリカ・マラウイへの留学、特にマラウイでは女子教育の問題を通じて「アフリカのインフラを整備しなくては」と思ったことが今のキャリアにつながったと話す休場さん。
JICA入職後は、アフリカを中心としたインフラ作りなどに携わっています。3年目となる次のキャリアでは、西アフリカのコートジボワール事務所へ駐在が決まり、引き続きインフラ作りに携わる予定です。
あわせて、自身の活動として、齋藤杏実(さいとう あみ)さんと共同で、2023年に日本とアフリカの若者たちが集まるコミュニティ団体「アフリカ・アジア・ユース・ネスト(AAYN)」を設立(現 : 一般社団法人)。
「自分たちの団体は、私が留学制度を活用した『トビタテ! 留学JAPAN』のOBOGを中心とした若者たちで立ち上げました。日本とアフリカの若者たちが共にアクションを起こす背中を押すエコシステムづくりを目指しています」
2024年には、AAYNの活動の一環として、一般社団法人Africa Diaspora Network Japanら若者団体と一緒にアフリカ開発会議(TICAD)へ若者の政策提言を行うプロジェクト「TICAD 9ユースの政策提言プロジェクト」を立ち上げました。
これまで約900人以上の日本・アフリカの若者を巻き込み、30年後の未来に向けた提言書である「Youth Agenda 2055 : The Future We Want」(以下ユースアジェンダ)を策定しました。これはアフリカと日本の若者が「共に望む未来」を描き、その達成に必要なアクションを提言したものです。
さらに、ユースアジェンダを実行に移すフェーズの始まりとして、今年8月に開催される「第9回アフリカ開発会議(TICAD 9)」の公式テーマ別イベントとして、若者たちが具体的なアクションを共創する「Youth TICAD 2025(ユース ティカッド 2025)」を創設し、若者たちと政策提言を行う準備を進めています。
アフリカの関心事「若者の声を引き出す」を追い風にTICAD開催者と交渉
「現在、アフリカ側の最大の関心事の一つは、『若者の雇用をどれだけ生み出せるか』なんです。今夏の『TICAD 9』でも、若者を中心にトピックをそろえようと潮流が自然と高まっています。
そんな状況から、私たち若者の団体が『自分たちから提言を作成し、TICADに提出したい』と申し出たことは、ラッキーなほどに流れに乗っている状態で、話がトントン拍子で進みました。運営側にも、政策提言に意欲的な人たちがたくさん立ってくれて、予想外の大きなムーブメントになっています」
今回、「TICAD 9」を主催する政府側からアドバイスを2つ受けたという休場さん。1つは、「政策提言を出すだけで終わりにしない」こと。もう1つは、「若者自身が責任をもって実行し、実現に向けて主体的に動くこと」。若者たちの声を日本とアフリカの政府に届け、必要な政策の実現に結びつけるために、同じ志を持つ若者たちと、外務省や国際機関の支援を受けながら準備を進めています。
「『Youth TICAD 2025』には、35歳以下の日本とアフリカに関心のある若者たちから多く参加の申し込みが続いています。大半が、具体的なアイデアを持っていたり、すでにアクションを起こしていたりする方です。
また、私たちはプロジェクト当初から、若者が『TICAD 9』本会合の議論に参加できるように外務省ら主催者側に交渉を続けています。
『TICAD 9』本会合とは、首相や大臣などアフリカや日本の政府が出席して政策について議論をする場です。『Youth TICAD 2025』は、私たちが企画しているものですが、せっかく集まった多くの若者の意見をもとに、私たちが若者代表となって本会議にも出席し、若者自身の声で語ることが大事だと思っているんです」
世界に大きな影響を与えるG7サミット(先進7カ国首脳会議)とG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)では、30歳以下の若者が議論し、各サミットに声を届ける公式関連会議「Y7/Y20サミット」があります。休場さんたちは、まさに「Youth TICAD 2025」が「TICAD 9」に対して、同じ役割を持ち、また今後のTICADにおいても公式化されるように提言をしているのです。
日本とアフリカ、両方にとってWin-Winな未来を共に創る
「『TICAD』は、もともと日本がアフリカ開発のために開催されてきたイベントですが、これまで、アフリカの若者たちが関心を持つ『多文化共生と社会的結束』や『社会的結束』について語られたことがありませんでした。
でも、人と人とがコミュニティをつくり、共に生きていくうえで偏見をなくすために何が必要か、お互い心地よく生きていくためにどうすればいいか、これらを考え、議論することは、日本とアフリカが共同で生きていくために重要なトピックだと思っています。なぜなら、これからは、日本がアフリカを支援するという、これまでとは少し異なる関係性になるだろうと言われているからです。
というのも、日本は今後の少子高齢化に突入していく中で、アフリカを支援できる規模も期間も限られているかもしれない。そう考えると、『これまでの支援する、支援されるとは別の、新しい関係性を作っていかなくてはいけない』というのが若者たちの同意です。お互い"win-win"の立場で、お互いが恩恵を受けられる関係性を共創していくのです」
「TICAD」への参加者たち
休場さんによると、若者支援が社会課題解決のど真ん中にあるアフリカでは、若者の施策に対する予算が優先的に計上され、政府は、若者の意見を全面的に取り入れる姿勢を示しているそうです。
「なぜなら、アフリカは世界で最も若者層が多いからです。若者を自立させていくことが、社会で最も大事なことだと捉えられているんです。平均年齢16歳から20歳の若者層が中心となる国がすごく多い中で、一番影響力を持つのは若者で、社会を主導的に動かせるのも若者のはずなんです」
アフリカでは若年層の失業率が約30%を占める国もあるそう。無職で日常的にやることがなくなれば、若年妊娠に陥ったり、過激派組織に入ったりなど極端な状況に陥ってしまう恐れがあると言います。
「現在、アフリカをはじめ治安が不安定な国は多いですが、紛争中の国も含めて、問題の根底にある課題の一つは職がないことです。アフリカでは失業率の高さに危機感を持っていて、就業支援など、若者の安定的な成長を実現することが大事な議題や課題だとされています。
日本で若年層が抱える課題は真逆で、アフリカのように失業が深刻な課題ではないものの、選挙でもなんでも人口層が薄いからなかなか意見が反映されにくく、社会の中で透明化されているように感じます。一方、少子高齢化社会で労働人口減と向き合わねばならず、社会保険料などの責任は重くなるばかり。
そんな中、日本の若者には、将来の希望が見えづらい人が増えているようにも思っています。私自身、『アフリカではあんなに若者が注目されている。いいなあ』という思いが正直あるんです」
アフリカ・日本の若者のエンパワメントをセットで促す
日本とアフリカの現状を踏まえて、「例えば...」と、休場さんが提示する提言はこうです。
「アフリカで若者支援の議論が進んでいるとき、もしくはアフリカの若者が社会で何かアクションを起こすとき、ぜひ日本の若者も巻き込んでくれたら、と思っています。
そうすれば、アフリカと日本、両国で若者が置かれた状況をうまく補完しあって、今までにないインパクトを生み出すことができると思うのです。これまでの活動で国際機関やアフリカの政府関係の方ともお話をしますが、必ず日本の若者が置かれている現状についてもお話しています。
『日本の若者のことを忘れないでほしい。アフリカの若者と一緒にエンパワメントすれば、それぞれの良さをレバレッジして、必ず全員の人生に良い影響があるはず』と伝えると、理解してくれることが多いです」
「まずはやってみる」うまくいかなくても発見がある
高校、大学と、自分の人生について深く考える経験をした休場さん。あわせて、デンマークと東アフリカでの留学で、新しい社会との付き合い方を見つけ、現在は、やりたいことがある日本とアフリカの若者の背中を押すため、多くの人と奔走しています。
自身の人生と向き合ったあの時期を、「2年遅れで始まった大学生活をさらに1年間休学し、留学したことは勇気のいることだったけれど、人生で最も良い決断だった」と振り返ります。いま、学生生活や進学と向き合う若者たちには、こんな一言を送ってくれました。
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「やりたいことをまずはやってみる、でいいのではないでしょうか。私は、行動を起こした後、経験した出会いやエピソードが次のステージにつながっていたように感じています。やってみたら、いつの間にか流れに乗ってうまくいくかもしれないし、うまくいかなかった時にも、新しい発見があります。やってみる、が大事なのかなと思います」
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