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全員の才能を開花させる、スペインバスク発チームで起業する超実践的な大学とは ~MTA 共同創業者ホセ・マリ・ルザラガ氏来日レポート

2019.12.09 

「バスク」という地名を耳にしたことはあるだろうか? スペイン北部とフランス南部にまたがるバスク自治州は、スペインともフランスとも異なる文化・言語を持つバスク人が住まう地域であり、美食の街として世界でも有数の観光地だ。

 

そんなスペイン・バスクに拠点を置くモンドラゴン大学から、アショカ・フェロー(※1:最下部に記載、以下同)に選出されているホセ・マリ・ルザラガ氏を迎えた来日特別講演が先日開催された。ホセ・マリ氏は、同大学ビジネス学部における起業家的人材育成プロジェクト「モンドラゴンチームアカデミー(Mondragon Team Academy:MTA)」の共同創始者である。

 

入学直後から学年全体が2チームに分かれビジネスを始めることが必須、一定額以上の稼ぎが進学の要件となるという、超実践的な学びを実現しているMTA。2018年より同じく起業家的人材育成をミッションとした組織としてMTAと親交を深めてきたNPO法人ETIC.クリエイティブシティチームは、ついに2019年秋、ETIC.×MTA連携プログラム(※2)を実現し、第0期には夢やビジョンを持つ17歳~40歳の挑戦者が集った。メンバーは期間限定の「仮想Co-Founder」としてチームを組み、共にビジネスを起こす活動を展開している。また、その活動を通じて起業やチームづくりに関する様々なことを実践を通じて学び (Learning by Doing)、MTAの特徴である「個人よりもチームで大きなビジョンを達成する」という在り方やスキルを体得中だ。

 

今回のレポートでは、なぜ日本にもMTA流起業メソッドを届けようと考えたのか、MTAの類をみない超実践的な学びを支える哲学は何なのか、なぜ世界中の学生がMTAの学びに魅了されるのかを、ホセ・マリ氏、そして現在日本で活躍するMTA卒業生ジョン・アンデル・ムサタディ氏の言葉から紐解いていきたい。

 

▷ 2020年4月より、NPO法人ETIC.と世界8ヵ国で500名を超えるチームアントレプレナーを輩出するMTA JAPANがプロデュースするプロジェクト「774」がスタート! 詳細は「こちら」から(2020年3月加筆)。

カリキュラムの軸は、世界を旅し起業する「ラーニングジャーニー」

右からホセ・マリ氏、ジョン氏

右からホセ・マリ氏、ジョン氏

設立は2008年、10年間で500名以上の起業家と30社以上の企業を生み出してきたMTA。

 

1) 日本で言う学士課程(4年)にあたるLEINN

2) MTAコーチ養成の教育課程(1.5年) TWINN

3) ビジネスプロフェッショナルへの教育課程(1.5年) MINN

4) 6か月で MTAの学習コンセプトを経験する取り組みCHANGE MAKER LABO

 

以上4つのプログラムで構成され、“教える人”という意味での教授はおらず、代わりにコーチと呼ばれる人たちが学生(MTA内では学生ではなく「チームアントレプレナー」とされる)を支えている。

 

LEINNにおいては、学生が様々な国・地域へ旅をしてビジネスを起こしていく「ラーニングジャーニー」というカリキュラムを軸に、スペインをはじめ、サンフランシスコ、インド、上海、ベルリン、メキシコなど世界各地で超実践的プログラムを展開。各国での滞在費は学生自身の稼ぎから捻出することが義務づけられているという徹底ぶりだ。そしてその旅先で生み出すビジネスは、地域にフィットし持続可能であることが求められる。

 

▷MTA誕生の経緯、詳細なカリキュラムについてはこちらの記事へ

世界中で広がる若者と社会の分断に抗い、教育にイノベーションを起こす

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MTAというプロジェクトを生み出した背景に絡め、ホセ・マリ氏は世界中の若者が向き合っている現実をこう語る。

 

「いま世界中で若者たちと社会の断絶が生まれています。社会とつながることができず、自らの役割を果たせないことでもがき苦しんでいる若者たちがいることは、我々にとって大変受け入れがたいことです。これは企業においても同様で、いかに経済的には成功している企業であったとしても、そこで働く一人ひとりのクリエイティブな創造力は発揮されていないという状況が大半です」

 

一方で、社会や学校や企業を非難するのではなく、いかに若者たちが創造力を発揮できるような場にするのかということに意識を向けるべきだと語るホセ・マリ氏。それはモンドラゴン大学創始者ホセ・マリーア神父が謳ったことでもあるという。

 

「世界中様々な分野でイノベーションが起きていますが、教育だけは取り残されています。けれど教育こそ未来をつくるものであり、『もし大学を革新的なものに生まれ変わらせられるなら』という発想で我々はMTAをつくりました」

 

ただ知識を与える教育者ではなく、信頼関係を築き生徒を支え、インスピレーション与えるコーチがいたらどうだろう? 暗記するだけの学び場ではなく、創造力が発揮される場にしていけたら? グローバルなマインドセットを持ち、ローカルに根ざして、世界中の人々とつながり新しいものを生み出していく――そんな、頭脳だけでなく感情、情熱、夢で世界中がつながるビジョンを描いているのだとホセ・マリ氏は語る。

 

また、2008年MTA設立当時に描いたこのビジョンは、アジアを中心に思い描いていたのだと続けるホセ・マリ氏。そしてそれは、現在でも変わっていないのだと続ける。

 

「いまアジアで起こっている様々な出来事は、今後世界で起こっていくことです。日本の人々は真の世界のリーダーになり得ると確信しています」

 

念願の日本での活動がスタートしたことを、心から喜ばしく思っているとホセ・マリ氏は語る。

全員に才能があり、それを開花させるのが教育

「MTAは急進的で革新的な教育を与えることに注力しているのであって、決して“一流大学”を目指しているのではありません。まず学生たちに人生を楽しんでもらうこと、すべての人にチャンスを与えることを目指しています。私たちはすべての人が花開き繁栄してほしいと思っているのです。そのためにチームでなければ成し遂げられないことがあり、日本は歴史的に個人よりもチームプレイの国だと感じていますが、今こそチームというコンセプトに戻るべきだと思っています。

想像してみてください。起業して一人で新しい顧客に会うのは怖いかもしれませんが、信頼できる仲間と一緒ならどうでしょうか。より良いパフォーマンスを発揮できると思いませんか?」

 

創造性と能力開発研究の第一人者として、TEDカンファレンスでのプレゼンテーション「学校教育は創造性を殺してしまっている」で5000万再生超という記録を持つケン・ロビンソン氏のコンセプトを引用しながら、人間が持つ可能性について語るホセ・マリ氏。

 

「ケン・ロビンソン氏は我々全員に“才能”と呼べる素質(the element)があると語っています。教育とはその素質を見つけ、水を与え花開かせる場なのです。忙殺されながら50歳のある朝自分のユニークさについて疑問を持つような人生を人々に送ってもらうことは望んでいません。そして、花の大きさは問題ありません。全員の才能が十分に花開くこと、それが教育の役割だと信じています」

 

また、MTA卒業生でありラーニングジャーニーでは日本の広島を訪れたというジョン・アンデル・ムサタディ氏は、現在再来日しJAM Globalを起業、日本の学生に向けMTA流起業メソッドを学ぶ機会を提供する活動をしている。そうした中で、ジョン氏は日本の若者たちについて感じていることがあるのだという。

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「私が日本で非常にショックを受けたことは、大学卒業後3年以内にそのうちの約3割が仕事をやめるという事実でした。これは若者たちが企業で自らの才能を発揮できていないことを暗に示しているように感じられます。皆が何かしらの才能を持っているのだから、夢を持ってその力をチームの中で発揮していける社会に変革しなければいけません」

 

自分はMTAで革新的な教育を受けたことで人生や自分自身への見方がまったく変わったのだと続けるジョン氏。日本の若者にもそうした体験を届けていきたいのだと語る。

実践を通した学びを支えるMTAメソッドの存在

学生や生徒ではなくチームアントレプレナー、教室はなくオフィス、指導者は教師ではなく、まるで植物を育てる庭師のような役割を果たすコーチ。特定の教科科目はなく会社をつくりプロジェクトを完成させていくことが必修――このような革新的なMTAの教育だが、もちろんその背後には全体を支える骨子となるメソッドがある(下図参照)。具体的には、例えば1年間に50の新規顧客訪問、20冊の課題図書など、プロジェクト完成を目指しいくつもの課題と向き合う必要があるという。

Copyright ©Mondragon Team Academy ALL RIGHTS RESERVED.  Tがスタートアップの開発について、Mはチェンジメーカーとチームをさらに耕す方法について、Aは数字に関してのテクニカルナレッジに触れている

Copyright ©Mondragon Team Academy ALL RIGHTS RESERVED. Tがスタートアップの開発について、Mはチェンジメーカーとチームをさらに耕す方法について、Aは数字に関してのテクニカルナレッジに触れている

 

またジョン氏は、入学直後フィンランドの道でスパニッシュオムレツを販売することからビジネスを始めたと語る。「それまでは誰かに話しかけることも苦手だったのですが、この挑戦を経て変化をもたらせる自分になっていきました」と当時を誇らしげに振り返る。

 

「1年目にはフィンランド、2年目にシリコンバレー、3年目にはインドと中国でそれぞれ2か月間ラーニングジャーニーが実施されます。そのために日本円にするとおよそ200万円稼ぐことを求められるのですが、入学したての19歳にこれは大金です。そうした実践を通し、私たちは起業家精神を学んでいくのです」

 

とはいえ「そんな“風変わりな教育”、従来の教育の中で実践することは難しいのでは?」と疑問に思われる方も多いのかもしれない。しかしホセ・マリ氏は、メキシコや中国での実践の成果を語り、「新しいものを作り出していくのは難しいことかもしれないが、しっかりとした原理原則をつくりビジョンを描けば実現できる」と熱を込めて語る。

従来の教育になじまなかった若者たちに新しい旅を

MTAのグローバル展開について、拡大戦略ではなく“奉仕の視点”だと語るホセ・マリ氏。

 

「基本的にはその国で我々が必要とされているのかを見ています。まずはその国の若者が置かれている状況です。次に具体的な協働方法ですが、その地域に協働できる事務所が生まれていたり、私がフェローに選出されているアショカの関連地域であったり、リベラルアーツ発祥の大学との協働であったり、自治体単位で縁があったりと、国によってケースバイケースです。その際最も大事にしているのは、ローカルにしっかり適応していくことです。その地域だけの現実というものがありますから」

 

2018年における小中高生の自殺率が1988年度以降最多であったことがつい先日報じられた日本(※3)。そうした現状を抱える現在、MTAの取り組みがこの国で始まることは希望のように感じられる。

 

「何かにフィットしているのかという社会的ジャッジを受け続けた子どもたちは、50歳になっても自分が何にフィットしているのかを考えて生きるようになります。そうではなく全ての人に、その人だからこそのユニークな可能性があるということを伝えていきたいのです。バスクにも、日本での中学・高校に当たる学年でいくつかの学力試験がありますが、そうした学力テストで子どもたちを振り分けることは正しくないとこの10年間の取り組みの中で私は結論づけています」

 

MTAメソッドはマルチプルインテリジェンス(※4)を基盤にし、若者たちの何がユニークで何が優れているのかに着目し、それらの才能を伸ばすことに注力していくものだ。実際、MTAには従来の大学でも優秀とされていたが、大学進学後に学びの意義を失いMTAに転入してきた若者、従来の学力テストでは決して優秀とされてこなかった若者らが同時に在籍している。

 

そんな彼らは、時価総額1億5千万円までにもなったバイオテクノロジー企業を興しForbsU-33に選出されたり、入学時その学力では難しいだろうと世間的には言われていた大手テクノロジー企業への夢の就職を叶えたり、故郷の高齢者をケアするローカルNGOを立ち上げたり、ケガで選手としてのキャリアをリタイアしたけれど競技のリーディングカンパニーに就職しビジネスディレクターになったりと、それぞれの才能を発揮し夢を叶えているのだとホセ・マリ氏は語る。

 

「日本の若者にも、特に従来の教育に馴染まなかった学生たちに新しい旅を提供していきたいと思っています。スペインでオフィシャルな学位として実践を続け、1,500人のチームアントレプレナーが関わってきたMTAメソッドは、社会に新たな道を示していけていると思っています」

チームアントレプレナー育成の秘訣とは

さて、ここで講演はいったん終了。引き続き、MTAの最も大きな特徴である「チームアントレプレナー」についてNPO法人ETIC.代表の宮城治男を交えた3名のトークへ移る。

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▷優秀なリーダーだけを育てるのではなく若者全員を対象にしている背景

 

宮城:例えば特別に優秀だと思う人と普通の人を分けられるとしたら、後者が花開く過程を大切にしているのがMTAだと理解しました。世界を舞台に優秀な若者を集めていくこともできると思うのですが、あえて全員こだわる背景はあるのでしょうか。

 

ホセ・マリ氏(以下、敬称略):原理原則として、普通の人たちがすごいことをできると本当に信じているのです。それこそ世界中でクリエイターを人口の80%くらいまでに引き上げられるのではないのかと思っています。もしそれがたったの3%だったら、残り全員はフォロワーになってしまいますから。 世界的に成功している企業に関わって大物になっていくのも一つの成功の在り方ですが、それだけが成功ではありません。例えばMTAには非常に大きな成果を出している若者もいますが、そうした大木だけを育てることに注力しているのではなく、小さな花でもその人なりの花を咲かせることが大木と同等に重要なものだと考えています。そうした小さな花を讃えていきたいし、一人ひとりの人間を理解していかに彼らを社会とつなげていくのかが我々の目指しているところなのです。

 

▷チームアントレプレナー成功の秘訣 ①信頼関係の構築

 

宮城:入学直後に1学年が2グループに分けられ起業するということですが、まったく知らなかった人々とどうやってチームになっていけるのでしょうか。

 

ジョン氏(以下、敬称略):信頼関係の構築はまず個人レベルから始めます。同じアイデアや感情をまずは個人間で共有していき、段々とチーム全体の信頼関係が育まれていきます。

 

ホセ・マリ:信頼関係を育むステップは様々ありますが、まずは自分自身(Me)をしっかり理解してもらうことをMTAでは大切にしていて、その次に私たち(We)が続きます。さらに次に、物事をフォローするだけでなく生み出していくということ、「主体」となる段階へ進みます。これらは講演中にご紹介したメソッド内にも記されたステップになります。

 

▷チームアントレプレナー成功の秘訣 ②失敗や対話から自分、チーム、他者を発見する

 

ホセ・マリ:挑戦に正しい間違いは一切ありません。大切なのは失敗し、その中で自分を発見し潜在力を見つけていくということです。そして、そこからチームを発見し、さらに個々人が違う存在であることを認め合っていくのです。 MTAにとって重要なトピックとして、「人から始めるべき」という考え方があります。私たちは平等、民主的であることが基本です。教授から学ぶのではなくメソッドを軸にして、対立した際には対話を用い共通の理解が生まれてからはじめて物事が進んでいきます。リーダーとフォロワーの関係性ではなく、全員がリーダーなのです。

 

▷チームアントレプレナー成功の秘訣 ③共感と多様性への理解を育む

 

以下、会場からの質疑応答に移っていく。

 

Q:自他理解、信頼関係の構築のために意図的に準備されている仕組みはありますか?

 

ホセ・マリ:共感と多様性を培うプロセスが必要なので、意図的にツールを導入しています。例えば収入の格差がある者同士では溝を埋めることが難しかったり、互いをリスペクトすることが困難であったりしますが、お互いをしっかり見つめ合って理解し学び合うというプロセスを通ってもらいたいので、半年ごとにチームメンバー間による360度評価システムを導入しています。

 

ジョン:知らない人同士でチームを組み半年後に評価するのは正直大変なことでした。それでもお互いの意見をシェアしていく中で、確かに信頼関係は強固になっていくんです。私は4年前にMTAを卒業したのですが、今でも当時のチームメンバーとは毎年会っていて、それほどの関係性を築けたのだと思っています。

 

ホセ・マリ:そして、そもそもの話になりますが、個々人が自分のやりたいことを学ぶスペースがあれば一体自分は何者なのかその志を思い出すことができます。全員にエンパワメントすることで、ソリューションは自然と生まれていくものなのです。

 

▷チームアントレプレナー成功の秘訣 ④チームでスモールステップから始める

 

Q:起業した後、負債を抱えることはないのでしょうか? 抱えた場合どのように対応していくのでしょうか。

 

ジョン:入学したらチームアントレプレナーとして最初に一人ひとりが封筒に入れられた5ユーロを受け取ります。そして次の2時間でそのお金を原資にさらにお金を集めてくるという課題が与えられます。たった2時間でいったいこの少額をどう増やせるのかと思われるかもしれませんが、そのときチームだからこそできることが見出されていきます。MTAではお金のないところからお金を作り出すのが起業だと考えられています。少額からでいい、チームで大きくしていけばいいのです。 また、何より重要なのは失敗することです。失敗から以外では学べません。ですから赤字になることもありますし、負債を抱えることもあります。それはしっかり返済していかなければいけないものですが、それは学びでもあるのです。MTAはみんな失敗しますし、私も大きく失敗しました。でもそれは忌避すべきことではないのです。

 

ホセ・マリ:何事も始めるにあたっては、お金は少ないところからですよ。シンプルに始めて拡大していくのがMTA流です。最初から投資があるわけではなく、稼いだ資金をセーブして投資というプロセスを繰り返す中でビジネスを学んでいきます。もちろん各自アイデアに合わせて、適切なタイミングで新たな顧客だけではなく投資家も探していきます。 そしてジョンも述べましたが、MTAでは失敗は祝うべきことであり学びの機会だと捉えられます。その代わりそこから徹底的に学び、同じ失敗は二度と繰り返さないということを大切にしています。

 

▷チームアントレプレナー成功の秘訣 ⑤意思決定のスペースをつくる

 

Q:いま中学校の教師をしていますが、従来の日本の教室にこうした学びは本当に導入できるのでしょうか?

 

ホセ・マリ:どうぞMTAメソッドを活用してください。これはどんなシステムにも適合できるような非常にフレキシブルなつくりになっています。大学、高校、企業、家族もチームと捉え応用していけると思います。すでに日本でも導入していて、これを活用するために必ずしも大学の学位は必要ありません。プロトタイプとして導入を試みていただくことも可能です。どういったコンピタンスを育成していきたいのか、現在の教育の構造の中でどういったリソースがあってどう活用できるのか、どういうエレメントを使って伸ばしていくのかという視点で捉えてもらえれば、このメソッドは適用されていくのではないかと思います。

また、言われたことに従っていく訓練しかされていない若者たちにとって、自分自身やチームとの繋がりを感じていく過程は非常にチャレンジングなものになります。まず生徒たち自身が自分で意思決定していけるスペースをつくらねばなりません。そして、そうした“囚われの身”だった若者たちを集めると、最初は逃げて逃げて逃げて、しばらくすると自由の身だと気づき逃げる必要がないことを知っていきます。そうして誰に教えられなくとも、何をすればいいのか、本当に情熱を傾けられるものが何なのか徐々に考え始めるのです。自らの意識で意思決定していくことが即座に起こっていきます。

 

*

 

現在、日本においては東洋大学と拓殖大学でプロジェクトを進めているMTA。ETIC.との新たな取り組みも、今後こちらで情報発信をしていきます!どうぞお楽しみに。

 

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※1:市民セクターのソーシャル・キャピタルを支援することを目的とした社会起業支援非営利組織アショカ(Ashoka: Innovators for the Public)は、社会システムを変革する活動をする社会起業家を「アショカ・フェロー」として認証、アショカのネットワークに入れることで活動の発展や影響力拡大を支援している。代表的なアショカ・フェローには グラミン銀行を立ち上げノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏、Wikipediaの創業者であるジミー・ウェールズ氏、Teach For Americaの創業者であるウェンディー・コップ氏など。

※2:NPO法人ETIC.では、2019年10月にMTAとの連携プログラムである「Entrepreneurs' MARKET 774 (ナナシ) 」をスタート。プロダクトも、チームも、すべてがナナシ。さぁ「無」からはじめよう、というコンセプトがネーミングの由来。①「無」から何かを創り出すこと、②「無」から顧客をつくること、③「無」からチームをつくりインパクトを最大化していくこと、この3つを実践的・体感的に学び合う。774第1期は、2020年春にスタート予定。問い合わせは、ETIC.クリエイティブシティチームまで(cct@etic.or.jp)。 

※3:NHK NEWS WEBで報道されていたが(2019年11月現在)、リンク削除のため厚生労働省による平成30年中における自殺の状況資料を参考として記載する(資料はこちら)。

※4:1983年にハーバード大学教授ハワード・ガードナーが提唱し世界で広く認知されつつある理論。 知能をIQテストに基づく知能観では測ることのできない複雑で複合的な力、常に変容・発達可能な力と捉える。

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桐田理恵

1986年生まれ。学術書出版社にて企画・編集職の経験を経てから、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。2018年よりフリーランス、また「ローカルベンチャーラボ」プログラム広報。