病気や災害、自死などで親を亡くした子どもたち、また親が重度後遺障害で働けない家庭の子どもたちを物心両面で支える活動をしている一般財団法人あしなが育英会。
あしながさんと呼ぶ個人の寄付者からの支援を柱に運営されており、学生のための奨学金制度では、学生たちの「高校や大学、専門学校などへ進学したい」という思いをサポートしています。また、学生寮「心塾」の運営、さらに傷ついた子どもたちの心のケアの活動なども行っています。
そのなかで、学生寮「心塾」は、奨学金によって首都圏や関西圏の大学、短期大学に進学した学生たちの成長を生活面から支える場となっています。現在、設置されているのは兵庫県神戸市の「虹の心塾」と、東京都日野市の「あしなが心塾」。神戸では約40人、東京では約180人が暮らせるよう設備を整えています。
塾生たちが生活する場で、スタッフの方はどんなふうに働きながら彼らをサポートしているのでしょうか。職員の方にインタビューさせていただきました。
>>あしなが育英会「虹の心塾」では学生指導を担当する方(塾監)を募集しています!
阪神淡路大震災の4年後に設立
今回おじゃましたのは、神戸市の「虹の心塾」。最寄り駅はJR東海道線の甲南山手駅で徒歩7分ほどの場所にあります。設立されたのは、阪神淡路大震災から4年後の1999年。とても震災の被害が大きかった場所で、もともとは震災遺児の心のケアを目的に開設されました。5階あるフロアのうち、2階が親を失った子どもの心のケアをする施設、3~5階は奨学生の学生寮として使用されています。
お話を聞かせてくださったのは、寺岡将文(てらおか・まさふみ)さん。4人の塾監(じゅくかん)をまとめる塾頭(じゅくとう)として、虹の心塾の運営などをされています。
寺岡さんがあしなが育英会に入職したのは9年前。実は、もともとあしなが育英会の奨学生で、東京都日野市にある「あしなが心塾」から大学に通っていたそうです。
「工学系の勉強をしていたんですけど、学生の頃に参加したボランティアや海外での経験を通じて教育に興味が湧いてきたんです。そんな中で、団体の方に『スタッフにならないか』とお声がけいただきました。色んな方に支えていただいて大学を卒業したので、微力ながら力になれたらな、と思いました」
3勤務体制のスケジュール。塾生と学食でコミュニケーションも
塾生の生活とともに仕事をしている寺岡さんたち職員の方々。基本的に、9時~17時、13~21時、13時~翌日10時(宿直)の3勤務体制で、宿直の日は月曜日、水曜日、金曜日(ほかの日は警備員が常駐)。職員の方は月3日くらいの割合で宿直をされているそうです。
今回、この中から日勤の場合のスケジュールを教えていただきました。
出社するとまず、虹の心塾にいる塾生たちの人数確認から業務が始まります。外出のほか外泊予定はないかを確認し、それからその日の夕食を食堂に発注するそうです。
昼食は12時から13時。虹の心塾は駅から近いこともあってお店が周辺にあり、寺岡さんを含めてみなさん、お昼ご飯を買って来て食べたり、外食をしたり、自由に過ごします。
午後は、塾頭としての管理業務。塾監との打ち合わせでは、主に、塾生の家庭で解決しなければならない課題がないか、解決するにはどうすればいいかなどを話し合ったり、カリキュラムについて内容を具体的に決めるなどしています。
また日々、虹の心塾での出来事や状況などについては、引継ぎのシステムがあるためそちらを活用しながら情報を共有しているとか。
ここではスケジュールをご紹介していませんが、13時~21時の勤務や、13時~翌日10時の宿直の日は、塾生との会話やふれあいが多くなるそうです。理由は、日中はほとんど外出している塾生たちが虹の心塾に帰ってくるためで、学食を一緒に食べるなどしてコミュニケーションを取ります。
節目や行事を大切に、地域の人とも積極的に交流
続いて、年間スケジュールも教えていただきました。
4月に新たに学生が入塾すると、入塾式が行われます。その後、6月に、日本に自宅のある新入塾生の家庭10軒ほどを訪問し、塾監と保護者とが話をします。
「塾生のことはもちろんですが、家族の背景を知ることを大事にしています。保護者の方にこちらの思いも知っていただくなど交流をし、もし何かあったらすぐに対応できるようにしています」と寺岡さん。
留学生が多いのも虹の心塾の特徴の一つで、塾生約40人のうち3分の1から半分がアフリカをはじめ海外から来た留学生なのだそうです。彼らの中には日本語を学ぶ目的で1年間だけ入塾している場合もあり、留学生のために7月の修了式、9月の入塾式が設けられているそうです。
さらに、虹の心塾はもともと地域に根差した場所として作られたことから、地域とつながる活動にも積極的に参加しています。5月の「だんじり祭り」では地元の人と一緒に塾生が神輿を引き、11月に行われるまちおこしの「ふかえまつり」では地域の人とともに出店。ウガンダの「ロレックス」と呼ばれる卵を巻いた食べ物を販売するなど祭りを盛り上げます。そのほか、年に1、2回、小学校にボランティア訪問し、中学校でも国際交流に参加するなど、小中学生との交流も楽しんでいるそうです。
年間の行事でほかに特徴的なものとして、1月に在塾継続面接があります。これは、虹の心塾では1年ごとの更新のため、次年度も継続して塾で生活する希望があるか、それはなぜなのか、そういった塾生の思いを確認する機会として設けられているものだそうです。
4月の入塾式や2月の卒塾式などもあわせて、節目や行事を大切にしている虹の心塾。毎月のように行事があり、メリハリのある生活が送れるようになっています。
何が正解かわからない時代だからこそ、真剣さを大事にしたい
1年間を通して、1年生から4年生まで、それぞれの塾生たちの成長に携わっている寺岡さん。塾監としての経験も長く積んだ寺岡さんに、「塾生と向き合うなかで大切にしていること」を聞くと、次のように話してくださいました。
「何が正解なのかわからない今、大手企業に入れば安心とも言えない時代になっていると思います。その中で大切にしたいのは、第一に、相手の人のことを考えて真剣に取り組む姿勢。この真剣さが土台になければ、上手い意見や将来の展望などを語っても、塾生には伝わらないのではないでしょうか。僕は、これからも情熱や真剣さを持ち続けたいと思っています」
また、国際交流が日常的に行われる虹の心塾ならではの考え方として、「多様な背景をもった塾生たちの文化や考えなどを受け入れる姿勢も必要」だとも話します。
「何かあった時も、まずは話を聴いて、そこにどんな背景があるのかを知ろうとする姿勢が大事なのだと思います」
虹の心塾には、塾生のための「談話室」があります。キッチンがあり、気軽に話ができ、何か疑問を感じた時もそこで相手に投げかけるなど、塾生一人ひとりが自由に活用しているそうです。
寺岡さんや塾監の方々は、こうした塾生同士の関わり合いがいい方向へと進むように、見守りながらサポートしています。
「塾監が塾生の相談を受けるなど、塾生との時間はとても大切にしていますが、同時に、塾生には、何かトラブルが起きても塾生同士で解決できるような力を身に付けてほしいと思っています。特に4年生など上級生がほかの塾生を見守り、支えられるように私たちもできることをしていきたいです」
毎週水曜日には寺岡さんと塾監全員が集まり、1週間の間に起こった出来事を共有したり、対応を決めたり、その先の1週間のスケジュールを調整したりするそうです。午後すべての時間を使って打ち合わせをすることもあるとか。そういった中、新人の塾監はベテランの塾監とペアを組み、対応や声がけの仕方などの指導を受けながら現場経験を積んでいきます。
人は変われる。その過程で自分はどう関われるか。
最後に、あしなが育英会への入職を考えている方にメッセージをお願いしました。
「虹の心塾の塾監は、人を育てるという、成果が見えるのか見えないのかわからない世界での仕事になると思います。だからこそ、塾生たちの幸せを考えて、真剣に向き合っていただける方と一緒に議論ができればうれしいなと思います。あとは宿直があるのである程度の体力が必要でしょうか(笑)」
「また、虹の心塾では、社会で活躍されている方を講師にお呼びして塾生のみんなにお話しいただく『心塾講座』という時間があるのですが、元塾生が講師になって塾生たちと話すことがあるんです。OBOGになってもつながれる関係性を持てることがうれしいですね」
心塾講座の様子
「それに、1年生の時にはいい噂に縁がなかった塾生が、色んな人とぶつかって倒れてという経験を繰り返して、4年生の時に誰かを引っ張るリーダーになっていることがあります。そんな姿を見ると、人って変われるんだなって思うし、自分はその成長過程で何ができるか考えさせられます。こんなふうに塾生と向き合い、彼らの変化に立ち会うことができるこの仕事だからこそ、僕自身も得られることが多いです。今のこの環境に感謝しています」
あしなが育英会「虹の心塾」で働きたい人、募集!
今、あしなが育英会では虹の心塾で塾生たちの成長を見守る塾監の方を募集中です。学生と関わることにご関心ある方、仲間になって、ともに彼らを応援しませんか?
<一般財団法人あしなが育英会「虹の心塾」募集概要>
- 募集ポジション
塾監
- 雇用形態
正社員
- 給与
月給23万円~25万円
(その他賞与、諸手当あり 当会給与規程に基づく)
- 勤務地
兵庫県神戸市東灘区本庄町1丁目7-3
神戸虹の心塾レインボーハウス
- 応募資格
・ある程度の英語でコミュニケーションが取れる方
・社会人経験が3年以上ある方
「一般財団法人あしなが育英会『虹の心塾』」の募集要項の詳細はこちら!
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