現在、約40名の復興支援員が活動している福島県。その中の1つが、2013年度より活動を開始した福島県双葉町の復興支援員チーム「ふたさぽ」です。
今回は、東京都から福島にIターンし、ここ「ふたさぽ」で活動する芳門里美さん(26)に、復興支援員の仕事内容ややりがいなどを伺いました!
コミュニティ形成をサポートする「復興支援員」
塚原:早速ですが、「ふたさぽ」のチームがどんなことをしているか教えていただけますか?
芳門:「ふたさぽ」では、福島県双葉町の町民の方々の自活サポートをしていて、双葉町役場と協働して、自治会活動、情報伝播、町民グループ立上げ、避難地域各地での交流イベントのお手伝い、広報サポート、外部連携等を実施しています。
塚原:コミュニティ形成という文脈で多岐にわたり、活動されているのですね。活動する上でのポイントはどんなところでしょうか?
芳門:ポイントは町民の方々のモチベーションを上げることだと思っています。
塚原:なぜそう思われるのですか?
芳門:原発事故後、町民の方々は、今後の人生の先行きに不安を抱いていると感じています。震災前の日常を取り戻すことはまだ難しいので、まずはイベント等の限定的な時間でもモチベーションを上げられる種を一つでも多く蒔けたらいいなと考えて、日々活動しています。双葉町復興支援員のとある1日
被災地外の出身でも、復興の役に立てるかもしれない
塚原:芳門さんは、どういった経緯で、「ふたさぽ」へ参画したのでしょうか?
芳門:大学時代に社会福祉士の資格を取得したのですが、社会人になってからはシステムエンジニアとして、Web開発に取り組んでいました。ですが、もともと大学で専攻していた福祉分野の知見を活かした仕事がしたいという思いを持っていました。
そんな中で2013年に津波の被災地である宮城県南三陸町で働く友人に会いに行く機会があり、前を向いて活動する被災者、支援者の方々との出会いをきっかけに東日本大震災の復興に携わりたいと考えました。
塚原:もともと福島県出身というわけではないと思いますが、なぜ福島へ?
芳門:南三陸町で働いていた友人も、被災地外出身で、Iターンで働いている人だったんです。その友人を見て、「被災地外出身の自分にもできることがあるかもしれない」と感じました。そこで「ふたさぽ」の求人に出会い、飛び込んでみることにしました。「ふたさぽ」は、私以外に6人のメンバーがいるのですが、私以外にも福島県外からIターンしている方が数名います。
町民の方々に、ワークショップを行う芳門さん
報道で取り上げられない姿やいろんな考え方を知る
塚原:「ふたさぽ」の活動をしていくなかで印象的だったことを教えて下さい。
芳門:ある仮設住宅で開催された農園開きがすごく印象的でした。参加された方々は、手慣れた様子で苗植えを行ったり、足が悪い方で畑に入らずとも苗植えの様子を嬉しそうに眺めている姿は、とてもいきいきしていました。震災前は当たり前だった「畑」という日常がこんなにもみなさんを元気にするのだと実感しました。こんな瞬間がもっと増える様にお手伝いができればと思いました。
塚原:「ふたさぽ」に参画されて、今まで気づかなかった、知らなかったことについて理解が深まりましたか?
芳門:そうですね。町民の方々の感情や行政の葛藤など、活動開始前は知らないことが多かったです。報道だけではわからない情報や感覚の大切さを知ることができました。これは現地に身を置いているからこそ理解が深まったと思います。
塚原:そのなかで、芳門さん自身の考え方に変化はありましたか?
芳門:町民の方をはじめ、関係するすべての方について、人の考えは十人十色だと考えるようになりました。考えが散らばっていても最終的に後悔しない選択をみなさんができる事が復興なのかなと感じています。そのためにも「被災者」となりがちな町民の方々が、生活の中で「主体者」となる活動のサポートをすることが「ふたさぽ」の役割ではないかと考えるようになりました。
「ふたさぽ」が双葉町にとってのサプリになれれば
塚原:今後、「ふたさぽ」で芳門さんは、どのようなことに取り組まれるのでしょうか?
芳門:男性向けのイベントを企画する女性グループを起ち上げたいと思っています。現在各イベントへの男性の参加は少ないです。男性が参加したくなるイベント実施のため、男性の趣味や隠れた特技をよく知っている奥様方やご家族の女性陣がアイデアを出し合い、イベントの企画・運営をするグループにしたいです。またそのグループに参加することによって女性陣で悩みやストレスを共有できる場となるよう取り組みたいと考えています。
塚原:ずばり、現在の目標は?
芳門:「ふたさぽ」を、町民の方々をはじめとする、多くの人に知って貰いたいし、もちろん町役場内の方にもっと知ってもらいたい。「ふたさぽ」と一緒に何かに取り組むことで一人でも多くの双葉町の方々が「復興に関わっているかも」と感じられるようにしていきたい。個人的には、「ふたさぽ」が双葉町にとってのサプリになればいいなと思っています。(笑)
塚原:お忙しいところ、お話ありがとうございました!
ふたさぽ(福島県双葉町復興支援員)/芳門里美
法政大学現代福祉学部在学時に社会福祉士を取得。大学卒業後に一般企業に就職してシステムエンジニアとして輸出入業務システムの企画、web開発を行う。2013年に宮城県南三陸町を訪れた際に前を向いて活動する被災者や支援者との出会いを契機に東日本大震災の復興に携わりたいと考え、双葉町復興支援員になることを決意。
ふくしま連携復興センター/塚原大介
信州大学経済学部卒業。民間企業で重電機器の営業担当として国内民間企業や海外電力会社顧客向け業務を行う。2013年2月より一般社団法人RCF復興支援チームに転職し、主に福島県内の自治体のコミュニティ再生に関する事業の企画マネジメントを担当。2014年3月より一般社団法人ふくしま連携復興センターに出向し、福島県復興支援専門員として活動中。
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