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「世界最貧国」アフリカ・ブルンジでストリートチルドレンをゼロにする!―認定NPO法人テラ・ルネッサンス

2022.09.15 

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認定NPO法人テラ・ルネッサンス

「みてね基金」では、子どもや家族の幸せのために活動している団体を支援しています。

今回インタビューしたのは、第二期イノベーション助成の採択団体の一つ、「認定NPO法人テラ・ルネッサンス」。主にアジア・アフリカ地域の紛争経験国を中心とした自立支援活動や啓発活動を20年に渡って続ける団体です。助成対象事業であるアフリカ・ブルンジでの活動と成果について、現地のプロジェクトに携わる古岡繭さん、川島綾香さんにお話を聞きました。

 

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ブルンジの現地スタッフや受益者の皆さん、古岡さん、川島さん

 

※こちらは、「みてね基金」掲載記事からの転載です。NPO法人ETIC.は、みてね基金に運営協力をしています。

紛争経験国で「取り残された」人々を支援

 

突然ですが、質問です。あなたは「ブルンジ」という国をご存知でしょうか?

 

ブルンジは、東アフリカの内陸に位置する共和国。植民地期に煽られたフツ人とツチ人の衝突から引き起こされた虐殺・内戦により、多大なる傷跡を抱える世界最貧国の一つです。隣接するルワンダと比べてその実情はほとんど報じられておらず、ゆえに「支援から取り残された国」でした。

 

このブルンジでストリートチルドレン※とその保護者の自立支援活動を行なっているのが、京都に拠点を置く認定NPO法人テラ・ルネッサンスです。2001年に当時大学生だった鬼丸昌也さんが、訪問先のカンボジアの地雷原を訪れたことをきっかけに「すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を目指し、創設されました。紛争経験国に取り残された元子ども兵や紛争被害者の社会復帰支援、不発弾・地雷の撤去支援、国内外の災害復興支援、紛争防止のための啓発活動を行なっています。

 

設立当初はカンボジアから支援をスタートしましたが、元子ども兵の問題を解決するためにアフリカ地域へ。比較的活動がしやすいという理由でウガンダから、さらに長年紛争が続くコンゴ民主共和国へと活動地域を広げる中で、ブルンジが抱える問題の厳しさを知ることになったのだと、プロジェクトアドバイザーの古岡繭さんは話します。2021年の「みてね基金」の助成採択により、現地のカヤンザ県で「ストリートチルドレンをゼロにする!」をスローガンに掲げた活動が始まりました。

 

活動

家修理のコミュニティワーク活動中。受益者の様子を聞き取りしている川島さん(写真右)

 

手に職をつける。それだけでは終わらない

 

具体的な取り組みは、ストリートチルドレンやその保護者(シングルマザー等の脆弱な家庭を含む)を対象にした職業訓練施設の建設や職業訓練の実施、自治体と共同でのワークショップ開催など。

 

「モノの援助ではなく、長い目で経済的な自立を目指していく。その意義を伝えることには、正直、難しい面もありますが、現地のブルンジ人スタッフが根気強くコミュニケーションをとりながら、寄り添い型の支援を続けてくれています」(古岡さん)

 

1年目には訓練生として41人を受け入れ、バイク修理・洋裁・小規模ビジネスの3つの分野で技能習得の機会を提供。卒業生の大半が“手に職”を得てビジネスを始めているそう。しかし、ここで終わらないのがテラ・ルネッサンスのこだわりです。仕事が軌道に乗るまでコミュニケーションを続け、伴走支援をすることに力を入れています。

 

バイク

バイク修理を学ぶ元ストリートチルドレンたち

 

洋服

洋裁やデザインを学び、自分で作った服を着てチーズ!

 

「受益者の一人、元ストリートチルドレンの17歳の男の子が、今年の3月からバイク修理事業を始めたのですが、燃料不足の煽りを受けてお客さんが減ってしまって。やる気を失ったのか、何度も仕事をサボって映画を観に行っていたことが分かったんです。発覚後、現地スタッフが彼を事務所に呼び出し、お母さんも同席の上で話をしたところ、再び奮起。翌月の売り上げトップになったことを一緒に喜びました。他の受益者から『本気で叱ってくれてありがとう』と言われたこともあります。やはり“見守る力”の効果は大きいと思います」(川島さん)

 

みんな

現地スタッフの皆さんと川島さん

 

一人ひとりとの関係性を大切に育み、時に家族も巻き込みながら、じっくりと自立支援に取り組んでいく。そんな活動には、手間も時間もかかるもの。「NPOに対する助成は『短期で数多く』の実績を求められる助成が多い中、「みてね基金」は最長3年というスパンで、『目標達成のための軌道修正にも柔軟に対応できますよ』と深い理解を示してくださいます。政治情勢が不安定で状況が変わりやすい地域で支援活動をする上で、とてもありがたいです」(古岡さん)

 

3人

現地スタッフさんと会話する古岡さん

 

現在は、現地スタッフ10人、日本人スタッフ2名がテラ・ルネッサンスのブルンジ事務所で活動しています。現地スタッフの中には、内戦で家族を失ったり、自身も被害を受けたりした当事者も少なくありません。「自国の苦難の中にいる子どもたちやその家族を支援する仕事を通じて、自分自身の生活も持続できることを誇りに思う」。そんな現地のスタッフの言葉に、古岡さん・川島さんも胸を熱くしたのだそう。

 

「もしかしたら、私たちがやっていることは“お節介”なのかもしれません。でも、『これがきっと生涯に役立つ支援になるはず』と信じてやってきたことが、彼ら彼女らの自信や誇りにつながっていると実感できるときは心からうれしいです。洋裁やバイク修理の技能訓練を通じて、これまでできなかったことができるようになった子どもたちの目の輝きは本当にきれいで力強いです」(川島さん)

 

男の人

職業訓練生の卒業セレモニーにて、バイク修理コースを終了した生徒たち

 

子どもたちが未来を描ける社会へ

 

今後の目標は、ストリートチルドレンを生み出さない仕組みづくり。自治体との連携をより強化していきたいと意気込みます。

 

ストリートチルドレンをゼロにする。その目標が達成された世界のイメージは明確です。

 

「今だけではなく未来を描ける子どもたちが増えると思います。『今日どう食べて生活をつなぐか』ではなく、『1年後、3年後に何ができるか』と夢や理想を持つ子どもたちが町中に溢れたら、この国全体が元気になるはずです。そんな未来をつくる歩みに貢献していきたいですね」(川島さん)

 

赤いTシャツ

バイク修理訓練生に「誰がリーダーになるの?」と質問すると『僕が!僕が!』

 

現地の施設で行った訓練第1期の卒業セレモニーでは、プログラムの助成に日本の基金が関わっていることを説明。「遠く離れた国の誰かが、みんなの幸せを願っているんだよ」――そう伝えることで、同じ世界に生きる人と人をつなげる循環をつくっていきたいという願いを込めているのだそう。

 

「チャリティー活動というと難しく考えてしまう方もいるかもしれませんが、寄付や講演会の参加など、無理なく関われる活動から始めてみるといいと思います。好きなことや趣味など、自然と興味を持てる分野の周辺に、社会貢献のきっかけは見つかるはず。自分自身が楽しめることが、サステナブルな支援にもつながると思います」(古岡さん・川島さん)

 

集合写真

職業訓練1期生の卒業セレモニーにて記念撮影

 

※ブルンジでは7000名以上のストリートチルドレンが確認されている(2022年7月時点 ブルンジ政府調べ)

取材後記

 

インタビューはアフリカ・ブルンジとつないでのオンライン形式で。途中、停電で回線が止まるシーンもあり、支援の現場で奮闘する日常を垣間見た気がしました。一方で、お話をする二人の表情は終始明るく朗らか。「自分が楽しめることが大切」という言葉をそのまま表すようでした。(ライター 宮本恵理子)

 

みてね基金事務局とテラ・ルネッサンス ブルンジ事務局はときどき「家族アルバム みてね」を使い、現地の活動写真を見ながらコミュニケーションを行っています。ブルンジでのご活動のご様子がいつも鮮やかにタイムリーに伝わってきて、ご活動に親近感を覚えています。ブルンジの生活習慣に驚いたり、ブルンジの子どもたちの笑顔からいつも多くのインスピレーションをいただいています。ありがとうございます。(みてね基金事務局 関 麻里)

 


 

 

団体名

認定NPO法人テラ・ルネッサンス

申請事業名

ブルンジの社会的弱者世帯の子どもの保護と自立支援プロジェクト

 

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宮本恵理子

1978年福岡県生まれ。筑波大学国際総合学類卒業後、出版社にて雑誌編集を経て、2009年末にフリーランスとして独立。主に「働き方」「生き方」「夫婦・家族関係」のテーマで人物インタビューを中心に執筆。家族のための本づくりプロジェクト「家族製本」主宰。主な著書に『大人はどうして働くの?』『子育て経営学』など。