能登半島地震から約半年、現地で復旧・復興活動を推進してきたみなさんが、5月31日、東京に集合。リーダーたちによるトークセッション(前編)の後、参加者も一緒に作戦会議を行いました。
会議の後半では、能登で活動を推進する団体から計8人がどんな現実と向き合いながらどんな活動に取り組んでいるのかを発表しました。参加者は8人の話を聞いたうえで、関心のある登壇者のもとに集まり、能登との「関わりしろ」をつくる時間を過ごしました。その一部をご紹介します。
「能登のこれからのために」輪島市・珠洲市・能登町・七尾市・金沢市で活動するリーダーたちの目線から
<登壇者>
森山 奈美(もりやま なみ)さん 能登復興ネットワーク 事務局長 / 株式会社御祓川 代表取締役(石川県七尾市)
伊藤 紗恵(いとう さえ)さん 奥能登ブリッジ / 合同会社CとH 共同創業者(石川県珠洲市)
橋本 勝太(はしもと しょうた)さん 奥能登ブリッジ / 合同会社CとH 共同創業者(石川県珠洲市)
足袋抜 豪(たびぬき ごう)さん みんなの馬株式会社. 代表取締役CEO(石川県珠洲市)
仁志出 憲聖(にしで けんせい)さん 一般社団法人第3職員室 理事(石川県金沢市)
林 俊伍(はやし しゅんご)さん 株式会社こみんぐる 取締役 / 現代集落 主宰(石川県珠洲市)
森 進之介(もり しんのすけ)さん 能登町移住コーディネーター《能登町定住促進協議会》(石川県能登町)
山本 亮(やまもと りょう)さん のと復耕ラボ 代表(石川県輪島市)
酒井 可奈子(さかい かなこ)さん 株式会社御祓川 東京コーディネーター(石川県七尾市)
※記事中敬称略。
オンラインワークや物作りなど女性の働きやすい環境をつくりたい―伊藤紗恵さん(合同会社CとH)
伊藤さん
伊藤 : コミュニティを活性化させ、震災によって能登を離れた多くの若い世代が再び戻りたくなる地域にしたいと思っています。例えば、オンラインワークや物作りなど女性や若い世代が働きたいと思う環境を提供することで、能登に戻る・能登と関わり続ける間口を広げたいです。また、震災で全壊した珠洲市での拠点を再開するにあたり、一緒にゼロからのコミュニティづくりに関わることに興味がある方は力を貸してください。
里山里海と暮らしから豊かな関係をつくりたい―酒井可奈子さん(株式会社御祓川)
酒井さん
酒井 : 2007年の能登半島地震をきっかけに立ち上げた能登スタイルストアを通して伝えたい価値は、能登の里山里海の暮らしです。震災があってかわいそうな土地、なのではなく、1300年以上続いてきた里山里海と暮らしから豊かな関係性をつくっていきたい。私も関係人口の一人でした。みなさんも新しい生業づくり、里山里海の担い手になってください。
発酵的復興の学校を作りたい―森山奈美さん(能登復興ネットワーク 事務局長)
森山さん
森山 : 能登の美しい里山里海の暮らしをこの先も守っていくために発酵に着目しました。発酵的復興の学校を作りたいと思っています。たくさんの担い手が必要です。また、能登半島地震からの復興に向けていろいろな動きがあり、そのどれも厳しい道のりが予想されます。しかし、確実にいえるのは、小さな取り組みの積み重ねが、能登や日本の未来をつくっていくということです。発酵的復興の学校、どう作っていければいいか一緒に考え、一緒に挑戦してください。
「子どもたちが来てくれる居場所づくりを」―仁志出憲聖さん(一般社団法人第3職員室)
仁志出さん
仁志出 : 最初は、居場所を作れば子どもたちが来てくれると思っていました。でも、それは違っていて、来てくれるためには、企画を中高生と一緒に作ったり、交流する機会を作ったりすることが大事だと実感しました。これからも子どもをしっかりと支援していきたいです。
「人手不足が課題」―足袋抜豪さん(みんなの馬)
足袋抜さん
足袋抜 : 珠洲市で馬牧場の運営を続ける中で、たくさんの支援を感じています。一方で、人手不足が大きな課題となっています。関わってくれる方を募集しています。珠洲市はまだ復旧が進んでいないけれど、復興に向けて前に進みたい。協力をお願いします。
「マイクログリッド化を目指し、地域のアップデートを」林俊伍さん(株式会社こみんぐる)
林さん
林 : 珠洲市の真浦町は孤立化が進んでいる町です。僕たちはマイクログリッド化を目指してきましたが、現在は、予定より早く5年後、2年後には実現しなければと大きな危機感を持って仲間と取り組みを進めています。震災後の課題は、能登だけではなく、ほかの地域でも起きるべき問題が一気に噴出したと思っています。関心がある方、一緒に未来をつくってください。
「能登の復興は集落と一緒に活動をすることが大事」森進之介さん(能登町移住コーディネーター)
森さん
森 : 能登町は様々な文化が、ごちゃまぜでカラフルな状態にあり、集落数は190以上あります。奥能登では、歩いて5分の隣の集落でも生活習慣が異なったり、集落がお互いのことをよく知らないということも珍しくありません。能登が復興していくためには、集落と一緒に活動することがとても大事です。僕自身は、仕事を通して住民のリアルな困りごとに日常的に触れています。困っていること、求められている支援について伝えたい。関係人口事業や、ボランティア活動受入についても相談してください。
「アドベンチャーな町にしたい」山本亮さん(のと復耕ラボ)
山本さん
山本 : 僕たちが大切にしているのは、森の恵みを生かす、暮らしを楽しむ仲間を増やすことです。輪島市の三井(みい)はもともと林業の町として発展してきました。森をキーワードに、様々な事業が起こるアドベンチャーな町としてみなさんとつながっていろんなことをしたい。企画・運営を一緒にしてくれる人、応援してくれる人とつながり、能登の復興をワクワクする未来に変えていきたいです。
「自分の関わりしろは?」参加者と一緒に復興をつくる作戦会議
作戦会議では、8名それぞれのブースに、多くの人が輪を作り、熱心に質問をし、真剣に答えを聞く姿が見られました。「今、能登はどうなっているのか、自分に何ができるのか知りたい」。そんな強い関心があふれる場となっていました。
実際に「こうしたらどうだろう」「この時期なら自分は行けます」といった具体的なアイデアや意見も出されていました。いくつかのグループでは、参加者一人ひとりにポストイットが配られ、例えば、仁志出さんを囲んで子どもの居場所づくりについて話したブースでは、「一緒にこの活動できませんか?」「自分もこの活動で動きたいです」といった言葉もたくさん集まったといいます。
森山さんの発酵的復興の学校づくりでは、「モチベーションを保つ温度管理が大事」という意見をもとに、「地域外からより高い当事者性を能登に持ち込み、働きかけるとどうだろう」といった話し合いに発展。新しいプロジェクト立ち上げの構想も生まれたようです。
能登の復興を思う人たちが一同に集まった今回の能登復興セッション。参加者たちが自身の目で見て、耳で聞いて、自分の考えや思いを語っていたときに発していた静かな熱気は、今後、能登の復興にどんな関わりをつくるのでしょうか。当日、イベントに参加できなかった方にも、この記事が能登に関わるきっかけになれば幸いです。
現在、能登の復興に携わる仲間を各団体・企業で募集中です。ご関心ある方、力を貸してください。
>> DRIVEキャリア 特集「復興を支え、能登の未来をつくる仕事」
エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。
>> SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付
>> Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)
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