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ルールはたった一つ、応援し合うこと 「評価」から「応援」へと変化するコミュニケーション【 Beyond Conference 2022 開催レポート】

2022.12.15 

 

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社会・地域課題解決や新しい価値創造に挑む人を全力で応援するピッチ&ブレストの場。それが Beyond ミーティングである。何らかに"挑む"人4〜6名がアジェンダオーナーとしてピッチし、グループに分かれてブレストを行う。その場でなされるのは批判やアドバイスではなく、「それいいね!」という応援や加担(乗っかり)の応酬だ。組織、肩書、世代、事業領域を越えて、上下関係もなく、誰もが平等に参加し、語り合う。

 

NPO法人ETIC.(エティック)が事務局運営を担うand Beyond カンパニーは、「意志ある挑戦があふれる社会を創る」をミッションに立場や組織の垣根を超えてつながり、イノベーションを起こすバーチャルカンパニーだ。このand Beyond カンパニーが2022年4月に開催した「第1回 Beyond Conference 2022 」では、Beyondミーティングが実際の企業において、どのように挑戦やイノベーションを推進する役割を担っているかについて、参加企業担当者が登壇しトークセッションが行われた。

 

※こちらは、「サステナブル・ブランド・ジャーニー」掲載記事からの転載です。

私もやりたいことをがんばってみよう、という好循環を育む

 

「"評価する"から"応援する"コミュニケーションへ 〜Beyondミーティングで越境と挑戦を推進する企業担当者と共に考える〜」と題されたセッションでは、Beyondミーティングを企業がどのように取り入れ、それによりどのような効果が表れているかが共有された。このBeyond ミーティング の概要は冒頭に触れた通りだが、アジェンダオーナーを応援するための応援コーディネーターを割り当てると共に、応援の輪を拡げるため運営をフォーマット化している点や企業間連携を生みやすい仕組みになっているところにBeyondミーティングの独自性がある。

 

「わたしも仲間になりたい」「私もやりたいことをがんばってみよう」

Beyondミーティングが目指すのは、アジェンダオーナーがピッチを通じてミーティング参加者のポジティブなアクションを引き出す一方、参加者からの共感やアイディアをもらったアジェンダオーナーも自らの挑戦をもっと加速させたくなる、という好循環だ。

 

 運営事務局や企業・地域団体等含め2021年2月末までに83回開催され、のべ487名が登壇、4,454名が参加しているという。

 

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成果としては、「アイデアを得られる」「人脈がひろがる」などビジネス面での効果に加え、「参加者から応援されることでモチベーションが上がる」「気づきが得られる」といった個人的な好影響も登壇者には実感されている。応援する場、つながりや仲間づくりの場として今後も継続して主催したいと、登壇者満足度は約85%、参加者満足度は91.6%にものぼる。

 

 

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アイデアはギフト

 

アビームコンサルティング株式会社からは、デジタルプロセスビジネスユニット SCMセクター コンサルタントの田之上 礼氏が登壇した。田之上氏は同社でサプライチェーンコンサルタントとして働くかたわら、社内Beyondミーティングイベントの運営を担当。アジェンダオーナーとテーマのブラッシュアップや資料作成をフォローするだけでなく、自身でBeyondミーティングに登壇した経験も持つ。その時のアジェンダは「“世界一幸福な国”と言われるブータンの社会課題について」だったという。

 

同社には「サステナビリティユニット」と呼ばれる社内組織があり、社会的インパクトの創出を目指している。Beyondミーティングがきっかけとなってサステナビリティに関する社員の意識づけができ、さらにグローバルメンバーとの交流・リレーション構築につながっていると、田之上氏は社内におけるBeyondミーティングの好影響を語った。海外オフィスからの参加率が約20%、外部組織からの参加率約40%と、通常の業務ではなかなか交流できないメンバーと意見を交わせる機会にもなっている。毎回、終業後に90分のオンラインミーティングを開催する。2021年度は年に4回ほど実施した。

 

とはいえ課題がないわけではなく、とりわけアジェンダオーナーの確保が難しい、と田之上氏は明かす。この解決策として、事前準備や候補者選定を早めに行い、準備期間を長くとれるようにしているという。また、イベント参加者が固定化しないようにアナウンス方法にも工夫を凝らす。全社アナウンスだけでなく、部署ごとにもアナウンスを徹底。関連イベントと連携し、参加者の交流を促進する。

 

そうした努力をいとわないのも、ひとえにブレストで得られたアイデアや多様な意見、インタラクティブなコミュニケーションがもたらす価値を、参加者たちが実感しているからに他ならない。それは「アイデアはギフトだ」という田之上氏の言葉に集約されている。

 

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新規事業のアイデアを活性化

 

江崎グリコ株式会社からは経営企画部に所属する李 美羅氏が登壇。大学卒業後、2018年に江崎グリコに入社し、経営企画部に配属以降、主にエンゲージメントの向上や、D&I、新規事業アイデア創出等、組織・人事に関わる業務を担当しており、and Beyond カンパニーにも2018年から参画する。

 

社内でBeyondミーティングを主催したきっかけについて、新規事業の立ち上げを推進するとともに、社内の議論活性化を目的に、事業案を持った社員が登壇し、社員間でブレストを行うBeyondミーティングの形式を活用することになったと李氏は話す。業務として行われている既存取り組みも含め、誰が、どのような課題意識やプラン、情報を持っているのかを知ること、また、部署を越えた横のつながりをつくることは重要な目的だったという。

 

では、実際にはどのようなミーティングになったのだろうか。 李氏によると、4名の社員が登壇し、それぞれが持ち込んだ事業案をもとにブレストテーマを設定。それぞれの事業案は、「うつ病発症を予防するための栄養サービス」「バイオマスによる創エネシステムを食品工場へ届ける」「地球と私にやさしいタンパク食」「環境負荷低減をコンセプトにした未来のサステナブルコーヒーデザイン」と、食と健康を軸にしながらもアイデアの振り幅は広い。アジェンダオーナーの想いが何か、に焦点をあてて壁打ちや相談をしながら、応援の場・仲間集めの場として準備を進めていった。  

 

アジェンダオーナーに対するフォローとともに、マネジメント層にも実際に雰囲気を理解してもらうため、社内版の実施前に、Beyondミーティング運営事務局が主催するBeyondミーティングへの参加を促し、“応援する場”を体感する機会もセッティングし、この会の狙いや重要性を理解してもらった。

 

主催してみて大変だったことについては、アジェンダオーナーのモチベーション維持を挙げる。アジェンダオーナーにとっては、通常業務に追われている中で、個人で業務外の活動をしていくことの肩幅の狭さを感じていたという。アジェンダオーナー自身が工夫していた点としては、応援コーディネーターとの打ち合わせをマイルストーンに事業案を練り、当日の会においては、自ら社内外の知り合いに告知して参加者を集るなどして、モチベーション向上につなげていたという。主催側として工夫した点としては、ランチタイムでの短い時間形式にすることで参加のハードルを下げ、より多くのメンバーが集まれるようにした。

 

大変なこともあった一方で、当初の目的だった他部署とのつながりだけでなく、グループ会社と本体のつながりなど、普段なかなか機会がない接点をもつくることができた、と李氏はBeyondミーティングを主宰したメリットを実感する。

 

「今後、提案内容を事業化して進めていく際の、仲間づくりの一歩になったと思います。アジェンダオーナーからも、“応援されたことが純粋に嬉しかった”や“自分の考えがこんなにもポジティブに受け止めてもらえるんだと驚いた”という声がありました。」

 

新規事業に取り組む人が社内で孤立してしまうというのは、ありがちなことだ。志や問題意識を同じ熱量で共有できる仲間を見つけだすのも、リモートワークの普及もあって難しくなっている。だからこそ、つながりをつくる機会は大切だ。社員のエンゲージメント向上を目指す会社にとっても、モチベーションをケアできる点において応援の場を設けることは効果的だと李氏は語った。

セレンディピティが生まれる

 

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社からは、長谷川 裕氏が登壇。調査・開発本部 ソーシャルインパクト・パートナーシップ事業部(登壇当時の所属)で、グローバルヘルスに関する受託調査、コンサルティングに取り組む。日本企業によるグローバルヘルス課題解決の取り組みを促進させるべく、新たなイニシアチブであるWELCO Lab for Global Healthを2020年に立ち上げ、運営をリード。セクターの壁を越えたマルチステークホルダー連携を加速させるファシリテーターとして、日々邁進中だ。

 

長谷川氏の場合はBeyondミーティングをこれから開催しようとしている立場から、なぜ開催しようとしているかについて話を展開した。

 

WELCO Labでは、セクターを越えた多様なプレイヤーの連携を促進するとともに、参加企業が取り組む新たな挑戦を過去形ではなく未来形で発信している。これはBeyondミーティングが掲げる「挑戦と越境」という精神そのものであり、「応援」を大切にする考えにも親和性が高いと長谷川氏は話す。

 

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長谷川氏は、「組織人ではなく個人として、未来を話し合う場」としての価値をBeyondミーティングに見出しているという。組織人としての肩書や制約条件の中での議論からは、殻を破った発想は生まれにくい。個人としての想いやパッションを共有して対話することで、共感や応援を集め、そこから新たな共創が生まれる。普段出会うことのない様々な立場や価値観の参加者が、個人としてフラットに参加するBeyondミーティングの場では、これまでにない想定外の化学反応、すなわちセレンディピティが生まれることに期待を寄せる。

 

立場を越えて、応援しあう文化をつくる

 

and Beyondカンパニーが目指すのは、垣根を越えて、意志ある挑戦が溢れ、未来を創る場所。そして、ひとりひとりが問いを育む場所。そして、ひとりひとりが問いを育む場所。所属も年齢も性別も、あらゆる垣根を越えて、妄想をぶつけあえる場所。妄想はその人の内から湧いてくるもので、その妄想がなければイノベーションも未来もはじまらない。だから、ベンチャー企業も大企業も、NPOや行政も、アカデミアもアーティストも関係なく、「ルールはたった一つ、応援し合うこと」とコンセプトを掲げる。

 

たくさんの人に挑戦してほしい。多種多様な挑戦がひろがっていく社会にしたい。しかしそのためには、挑戦する心が折れないようにポジティブなコミュニケーションを展開する必要がある。それは、「応援フルな環境」と言い換えることもできるだろう。評価ではなく応援をするコミュニティや企業風土があれば、抑圧や恐れをふりはらって挑戦を志す人がもっと出てくるのではないだろうか。そして応援をする側からも、「自分もこういうことができるのでは」という新たな気づきやアイデアが生まれてくるのではないだろうか。

 

どんなアイデアも尊重する姿勢や協働する価値を学ぶ時間。まさにそうした「応援するコミュニケーション」を体感する場としてBeyondミーティングがあるのだ。

 

 

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