2024年1月1日に起きた石川県・能登半島地震に関してNPO法人ETIC.(エティック)と、エティックが事務局を担う全国の中間支援組織のネットワーク 「チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)」は、発災当日から支援活動を行っています(※)。1月23日、これまでの活動報告・意見交換会をオンラインで行いました。
(※)参考記事
>> 【能登半島地震・報告会&意見交換会】いま必要な支援とリソースについて、一緒に考えませんか?
大きな被害を受けた珠洲市、能登町、輪島市、七尾市、また多くの人が避難している金沢市において、地震発生時からの現状、必要な支援などが報告され、意見が交わされました。
現地の支援者たちの声をもとに、170名以上の参加者たちと能登の今後について共に考えた時間の一部をご紹介します。
※記事の内容は1月23日時点のものです。
<登壇者>
森山 奈美さん 株式会社御祓川 代表取締役社長 / 能登復興ネットワーク 事務局長 / 七尾未来基金設立準備会 事務局
安江 雪菜さん 株式会社計画情報研究所 代表取締役社長 / 民間支援事務局 代表
北澤 晋太郎さん NPO法人ガクソー 代表理事
仁志出 憲聖さん 第3職員室 理事 / 株式会社ガクトラボ 代表取締役
山本 亮さん 能登復興ネットワーク 監事 / 里山まるごとホテル 代表取締役
<ファシリテーター>
瀬沼 希望、山内 幸治(NPO法人ETIC.)
避難所を作り、物資支援を展開―能登復興ネットワーク事務局長 森山奈美さん
瀬沼 : 地震発生から今日で23日目です(1月23日時点)。主に、支援にあたる皆さんがどんな動きをしてきたのか、ご報告いただきます。まず、七尾未来基金設立準備会事務局の森山奈美さん、お願いします。
森山さん : 発災直後から地域外の企業からたくさん支援の申し出がありました。シャワーやエアベッド、下着、水、クッションの提供など大型の支援の申し出を直接いただき、民間の物資拠点を通じて必要とされるところへ送り出していきました。
物資支援の様子
企業やシェフ連携で炊き出し。約2800食を各避難所へ届ける
森山さん : 七尾市内では、シェフたちがいくつか炊き出しのチームを作り、活動が始まっていました。水道が止まっていて水が無い中で、JR七尾駅前にある再開発ビルのパトリアで、セントラルキッチン式で作った料理を何十食、何百食と作り届けているチームに、水を汲んで届けるボランティアを送り込むことを担いました。
中能登町の炊き出し拠点で、送り先の調整をしている様子
炊き出しについては、その後、パトリアを拠点にしていたチームは、1月20日で一旦活動を終了し、各避難所が自分達で調達する形に徐々に変化しています。食料提供のネットワークや寄付もあって、各拠点とも炊き出しは続けてきましたが、人件費などを含め費用を持ち出しで炊き出しを続けているところが多かったのが現状です。
また現在、地域外から炊き出し支援の申し出がたくさんあるので、今後を見据えて、ずっと炊き出しをしてくれている各避難所のスタッフの方々が休める日などを作っていくことを目指しています。そのための申し込み対応、オペレーションなど調整部分のシステム化を進めているところです。七尾では、飲食店が再開しているところもあり、炊き出しだけに食を依存してしまわないよう、調整の難しさをいろいろな面で感じながら、一つひとつ取り組んでいます。
支援団体、ボランティアスタッフとの情報共有会議を連日開催
森山さん : 被災地では情報がすごく錯綜していますが、1月2日から毎晩、民間支援事務局との連携で情報共有会議を行ってきました。民間支援事務局は、今回の地震で、企業・団体からの必要な物資・人的なサポートを一時的に受け付ける中間支援機関として、株式会社計画情報研究所(本社:金沢市)をはじめ石川県内でまちづくりに取り組んできたメンバーが立ち上げました。
情報共有会議を始めた頃は、奥能登をはじめ各地域の最新情報を毎日共有していましたが、現在は少しずつ回数頻度を減らして、現在は週1回、エリアごとの情報を共有する方法に変更しています。
様々な団体が連携し、情報を共有し合い、支援にあたっている
また、株式会社御祓川(みそぎがわ)が、2007年に起きた能登半島地震から中間支援的な活動をしていたことで、今回も、災害後、自治体や民間への支援要請があるなか、当初からいろいろな相談が私達に集中するような動きが見られました。あわせて、支援活動では、チャレンジ・コミュニティ・プロジェクト(チャレコミ)の皆さんから大きな人的支援が迅速に提供され、資金的な後押しも受けてコーディネートできています。
瀬沼 : エティックでは、もともと御祓川とはチャレコミの仲間として様々なプログラムをご一緒してきた中で、今回も、会議の運営サポートや、チャレコミのネットワークを通じて現地のコーディネートを行う右腕人材を送り込みました。また、東日本大震災の時からのつながりも含め、有識者の方々とのアセスメント設計や人材支援などを行っています。今後も現地の中間支援組織をサポートする形で人材のサポートを続けて行っていきたいと考えていますし、中長期的な地域の復興に携わる右腕人材も送り込みたいと構想しています。
森山 : 同時に、現地での人材コーディネートでは、早い段階から、学生ボランティアの方たちが「いつでも行けます」とネットワークを作ってくれました(能登地震学生グループ「わかものと」)。先ほどのセントラルキッチンへの水供給など、現地から要望があったところにボランティアスタッフをつなぐことを何件か行っています。私たちは現地に入っている学生たちがスムーズに活動を行えるよう調整をしています。このあたりは、当初から外部から来てくれた私の右腕の方たちがしっかりとサポートしてくれています。
必要なところへ迅速に人材を送るために動く人たち
こうした情報共有の機会をもとに個別の動きをより効果的に推進していくために、私たちは能登復興ネットワーク(NRN)を立ち上げました。
能登復興ネットワーク(NRN)のWEBサイトより
時間の経過とともに、七尾市内でも多くの災害支援ボランティア団体が入ってきているものの、情報が錯綜しており、どこで誰が何をやっているのか、正確な情報が把握しきれないという状況でした。この課題に対しては、緊急支援を行う災害NGO結からの提案で、一旦、七尾市内でボランティア活動をする人たちに可能な範囲で集まってもらい、情報共有会議の第1回を1月18日に行いました。参加してくれた人たちはLINEオープンチャットでつながり、「今日、こういった内容の支援要請がありました」「この支援ならできます」といった情報交換を、ノート機能を使って行っています。
七尾市と協定を結び、情報のアセスメントに向けて準備を進める
森山さん : 現在、最も集中して取り組んでいるのは、避難所で生活されている方の中長期的な生活を支える情報の収集や判断材料を集めることです。民間の私たちは、当初から目の前の困っている人たちのところへ、どんどん必要な支援を届けてきました。
しかし、今後は(七尾市は水道の復旧が長期化するという見通しもあり)避難所での生活が長期化することが見えているなかで、避難所や避難者の方々の状況をしっかりと把握しながら、市役所と一緒に情報の共有・判断をし、対策を検討していく体制づくりを進めています。
避難所等に的確な支援を届けるために情報を収集し、分析していく
まずは、避難所の運営リーダーの方々から現状について話を伺うことから始めました。先週土曜日(1月20日)にいくつかの避難所をまわり、結果を七尾市役所に報告しました。市役所からは、「こうしたデータをもとに、さらに避難者の方々が今後どう生活を再建していくか情報の収集や分析をしてくれないか」という要請をもらい、能登復興ネットワークが七尾市と協定を結ぶ形で、現在、具体的なアセスメントに入る準備を進めています。七尾市との協定でアセスメントが順調に進めば、今後は奥能登にも展開したいと考えています。
各地に避難している方たちとつながりを持ちつつ、適切な支援を―民間支援事務局 代表 安江さん
瀬沼 : 民間支援事務局と連携した会議を始めたという話について、計画情報研究所の安江雪菜さん、当時の活動状況などを教えてください。
安江さん : 私達は、2007年の能登半島地震後、御祓川と一緒に、能登半島の暮らしや旅情報を発信するECサイト「能登スタイル」をオープンし、能登の魅力を広く伝える活動を行ってきました。
計画情報研究所では、金沢市内の交通システムの仕組み作りなど街づくり事業を行っていますが、今まさに弊社の設計チームも道路の復旧のために緊急点検、応急設計のようなことを行ってていて、日々、道路の状態が進んでいることを実感しています。緊急的な復旧工事に取り組む建設会社の方々に尊敬の思いを抱いています。
ECサイト「能登スタイル」より
では、民間支援事務局に関してご紹介します。
1月2日、「能登半島地震・民間支援事務局」を立ち上げました。立ち上げの経緯は、災害直後からの支援活動の必要性を強く感じたためです。
「能登半島地震・民間支援事務局」のWEBサイトより
具体的に、まず私たちの事業に携わっている松中権は、日頃、性的マイノリティの啓発活動を行っていますが、お正月を石川県の実家で過ごしていた時に地震に遭いました。その後、松中のつながりをもとに東京のネットワークからいろいろな支援の申し出があり、また紛争地や災害被災地で人道支援を中心に活動するNPO法人ピースウィンズ・ジャパンがいち早く石川県に入り、災害医療を行う際もいろいろなサポートを行っていました。そうした中で、支援の受け皿として事務局を立ち上げました。
事務局の業務としては、物的支援と人的支援の受付窓口から始め、森山さんや地元の人たちが入りながら少しずつ業務内容を設定し、事務局の体制を作り上げていきました。
1月2日には、17時にSNSで支援の呼びかけを行い、7時間後の1月2日24時までに21件の申し込みをいただきました。その後、いろいろな物資を提供してもらい、また3日にも25件の申し込みがあり、水をはじめたくさんの物資提供の申し込みを受けました。同時に、倉庫を設けて、そこから物資を必要な避難所へ送り届けるというロジスティックな面を整えることも進めていました。
その際、一時的に青年会議所会員の倉庫を借りつつ、それとは別に一つ物資支援の倉庫を借り、一括で物資支援を受け付けていました。ただ、災害が起こったのはお正月だったということと、石川県の一般の物流機能が止まってしまっていたため、1月2日や3日に発送したものでも避難所へ届くのは1月10日すぎになる恐れがあるなど、そういった確認作業が複雑で前半はなかなか落ち着きませんでした。
金沢市内で適切なものを適切なタイミングで受け取るためには、チャーター便が安心で、例えば一般のECサイトを通じて物資支援となると、物流ではどうしてもタイムラグが生じてしまいます。そういったものはどうすればよいか?といった課題も上がりました。
とはいえ、2日に一度くらいのペースで、いろいろな避難所に足りない物資を送っていました。その後、県から必要な物資はいきわたったという報告のもと、私たちの倉庫は1月15日で一旦閉じました。
現在は、金沢市内に二次避難している方々をグループ分けして、物資を提供しながら、情報提供、避難者のコミュニティづくり、炊き出しなど、金沢でもうしばらく落ち着いた時間を過ごしてもらうことを考慮しながら事務局運営を行っています。
今後の支援活動については、活動内容を整理して考えつつ、民間支援事務局の法人化も検討しています。金沢市へ二次避難している方々のコミュニティづくり、つながりづくりを継続していくこと、輪島市など現地で避難している方たちとのつながりを持ち続けること、また現地で生業をどう創っていくか、復興について私たちが想像し、考えながら一緒に作り上げていきたいという思いがあります。中長期に向けた支援のかたち、バックキャスティングの支援のかたちを改めて考えていきたいです。
>> 後編(子ども支援やコミュニティ形成の現況等)に続きます。
【能登半島地震・報告会&意見交換会】
・第1回目 : 1月23日(火)16:00~17:30(※終了しました)
・第2回目 : 2月20日(火)14:00~15:30
・第3回目 : 3月12日(火)16:00~17:30
関心ある方はご参加ください。お申し込みはこちら
https://forms.gle/6gC5aQokXL1unuGP9
今回の報告会・意見交換会の開催と同時に、「能登復興ネットワーク クラウドファンディング」が立ち上がりました。能登のためにできることを模索している方はのぞいてみてください。
能登半島地震から未来に向けた力強い一歩を。復興に向けた活動を強力に推し進めたい!
https://camp-fire.jp/projects/view/736115
【期間】2024年1月23日(火)〜3月4日(月)
【目標金額】7,700,000円(2月15日現在は13,000,000円のネクストゴールに挑戦中です)
【主催】能登復興ネットワークいやさか
< 森山奈美さんから一言 >
「能登が能登らしく復興することを掲げてスタートしました。また、今回の能登復興ネットワークの愛称は『いやさか』です。『いやさか』は、おまつりの時に私たちがかける掛け声で、『この土地が長く栄えますように』との願いを込めた言葉でもあります。私たちの能登がどんなふうにかたちをかえても、『長く続く』と祈りを込めて、これから活動をしていきます。共感していただける方に届き、支援いただければうれしいです」
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エティックでは今後、中長期にわたる支援を続けていくための寄付を受け付けています。
SSF災害支援基金プロジェクト 能登半島地震緊急支援寄付
https://saigaishienfund.etic.or.jp/donate-noto
Yahoo!JAPANネット募金 令和6年1月能登半島地震地域コーディネーター支援募金(エティック)
https://donation.yahoo.co.jp/detail/5545002/
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