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実在する中学生35人が主役の映画『14歳の栞』から観た、他者と自分の境界線の未来

2021.05.19 

SNSによる誹謗、中傷、炎上にまつわるニュースは、見飽きるほど日常的なものになっている。

 

WEBメディアを運営しているひとりとしても、それは対岸の火事ではない。自分が企画して書いた記事には良くも悪くも、どういう反応が起きるのかは気になるし、個人アカウントでなにげなく発信したSNSのつぶやきにコメントが連なると、ドキドキしてしまうこともある。24時間後には消えてしまうストーリー機能や、ログ機能がないClubhouseが流行ってしまうのも理解できる。いつの間にこんな発言しづらい世の中になってしまったのか。

 

そんな最中に見たこの映画に、わたしはとてつもない希望を感じてしまった。映画『14歳の栞』。とある中学校の一クラス35人全員に密着し、ひとりひとりの物語を紐解いていく青春リアリティ映画だ。

 

表紙

 

なぜ、こんな映画をつくることができたのか。

 

この映画の最大の特徴は、実在する中学生の日常をありのままに映し出していること。驚いたことに、全員が実名で登場している。こんな奇跡のような映画が、劇場公開されるなんて、「日本はまだまだ捨てたものじゃない!」と感動してしばらく席を立てなかったぐらいだ。

 

なぜこんな映画をつくることができたのか。当メディア「DRIVE」の編集メンバーでもある乗越貴子さん(通称:たかちゃん)による考察が興味深い。

 

サクラ

 

………………

 

親子で見る『14歳の栞』|乗越 貴子@ DRIVEキャリア事務局 @norigoetakako #note

 

自分の娘がこの映画に出演していたことを想像してみる。恋愛模様や、友だち同士の微妙な関係が、全国公開されることを、どういう心境になったら、OKを出すだろうなぁと想像する。また、子どもたち自身が、どういう気持ちになったら「映画、公開していいよ!」と胸を張って言えるだろうか、と想像する。

その背景を知りたくて、ネットサーフィンしている中で、制作チームのこんなツイートを見つけた。

 

Twitter

 

完成品は、35人の物語が1つにまとまっているが、その前には、35人、一人ひとりの短編映画があったのである。

35分の1の自分ではなく、自分だけの物語に耳を傾けてもらった経験は、生徒にとってかけがえのないものだったのではないだろうか。親にとっても、我が子が、世界でたった一人のかけがえのない人間なのだと、実感できる経験だったのではないだろうか。

親や先生、そして、子ども自身も「自分(我が子)は自分(我が子)でいいのだ」と思えないと、それを残しておきたいと思えないし、公開したいとも思えないだろう。

制作チームの並々ならぬ労力と、愛を感じるし、その愛を受け取ったからこそ、親や子供たちが公開していいよ、と言えたんじゃないかなぁと思うのだ。

 

………………

 

かけがえのないひとりに共感と愛おしさ。そして自分を見つける。

 

乗越さんの考察が正しいか否かというより「人は愛をもってつながれる」ということを信じたいという思いがある。

 

映画を観ていただくと一目瞭然だが、実在する人間から発せられる言葉は手触りがリアルだ。子どもはとっくに成人し、アラフィフに差し掛かる筆者だが、登場する生徒たち全員が愛おしくてたまらなくなった。「子どもを見る母親」という目線がそうさせていると思っていたが、どうも違う。登場する中学生たちの不安と期待で揺れ動く気持ちや、周囲の言葉や微細な態度に反応してしまうところなど、心から共感できる部分が多かったからだ。

 

他者のなかに自分を見いだす感覚は、face to face で関係性を築くことが難しい今の時代に極めて重要な体験ではないか、と筆者は考えている。この映画を観たほとんどの人は、出演していた彼らの輝く未来を願っているだろう。彼らのことを興味本位で探ったり、利用しようとする大人はいないのではないかと思う。

 

授業中

 

製作会社による公式Twitterアカウントでは、以下のような注意書きもある。

 

onegai1

 

このような声明をきちんと打ち出しながらも、観客を信頼している製作陣の開かれた心にもあらためて感動する。本来、人間は感じ合うことができる生き物であるはずだ。『14歳の栞』は奇跡の映画であり、人が持つ感性を信じる希望の映画でもあると思う。

 


 

<『14歳の栞』について>

とある中学校の3学期、「2年6組」35人全員に密着し、「誰もが通ってきたのに、まだ誰も観ることができなかった景色」を映し出す青春リアリティ映画。主題歌にはクリープハイプ の人気楽曲「栞」を起用、ナレーションはタレントのYOUが務める。監督は短編映画「ハロー!ブランニューワールド」(2019)で注目を集めた竹林亮、そして同じく同作を手掛けた栗林和明が企画・プロデュースを担当している。(プレスリリースより引用)

 

■基本情報:

タイトル:14歳の栞

ジャンル:青春リアリティ

公開日:2021年3月5日(金)ホワイトシネクイントにて先行公開

2021年3月19日(金)全国順次公開

スタッフ:監督 / 竹林亮、企画・プロデュース / 栗林和明 他

配給:PARCO 企画製作:CHOCOLATE Inc.

上映時間:120分

公式サイト:https://14-shiori.com

Twitter:https://twitter.com/14shiori_cinema(@14shiori_cinema)

『14歳の栞』上映劇場はこちら!

 

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野田 香織

1974年兵庫県生まれ。短大卒業後、印刷会社でグラフィックデザインの仕事に携わり、不動産広告やCIなどを担当。2006年からマドレボニータに参画、人生賭けて挑みたいテーマを見つける。2009年にNPO法人ETIC.に参画。社会起業塾、アメリカン・エキスプレス・アカデミーなど起業支援のプログラム運営の後、求人サイト「DRIVEキャリア」のコーディネーターに。個人のキャリア相談の他、さまざまな組織の採用、人事の相談にも乗っている。

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