TOP > スタートアップ > 何としても解決したい課題があるからこそ、「長距離走」に備える ー 社会起業家特化の伴走支援プログラム「社会起業塾イニシアティブ」卒塾生インタビュー

#スタートアップ

何としても解決したい課題があるからこそ、「長距離走」に備える ー 社会起業家特化の伴走支援プログラム「社会起業塾イニシアティブ」卒塾生インタビュー

2024.03.28 

社会起業塾もうすぐ春ですね。桜が咲きはじめるこの時期、挑戦の気持ちが高まる方も多いのではないでしょうか。「解決したい課題や実現したい社会像はあるけれど、何をしたらいいか分からない」と悩んでいる方におすすめしたいプログラムが、社会起業家特化の伴走支援プログラム「社会起業塾イニシアティブ(以下、社会起業塾)」です。

 

これまで156名の社会起業家を輩出し、22年続いているこの伴走支援プログラムでは、創業期の起業家がさまざまな問いと向き合い、実践と学びを往復します。単に事業をつくるだけでなく、ブレないミッションと、課題の本質に向き合う粘り強さを備えるための志や姿勢、経営者としてのあり方・事業の進め方についても身につけます。

 

今回は卒塾生のお二人に、プログラムを通して得られたことや変化したこと、卒塾後の関わりについてお伺いしました。

 

<お話を伺ったお二人>

平井 登威 さん / NPO法人CoCoTELI 理事長

2022年卒 特別メンバー

2001年静岡県浜松市生まれ。関西大学 4年生(休学中)。幼稚園年長時に父親がうつ病になり、そこから心理的・身体的な虐待や情緒的なケアを経験。精神疾患の親をもつ子ども・若者支援の土壌づくりにチャレンジするNPO法人CoCoTELI理事長。

栗野 泰成 さん / 一般社団法人チョイふる 代表理事

2022年卒 花王社会起業塾

1990年鹿児島県生まれ。大学卒業後、小学校教員・JICA海外協力隊での教育現場を経て、2021年に一般社団法人「チョイふる」を設立し、代表理事に就任。 「生まれ」によって人生が左右されてしまう現実を変えるべく、子ども支援事業を展開中。

 

どう事業を進めたらいいのか分からない不安と、周囲と比べてしまう焦りの中で

 

ーーさっそくですが、お二人が社会起業塾に関心を持ったきっかけを教えてください

 

平井さん(以下、平井):当時はまだ学生団体で、法人化など色々と模索していた時期だったのですが、なかなか非営利を対象としたプログラムが見つかりませんでした。他のプログラムを見ても、経済合理性の中での話がベースにあるような気がして、なかなかしっくりきませんでした。

 

縁あって社会起業塾をみつけて、ホームページに掲載されている卒塾生を見たり、実際にお話を聞いてみたりして、ここなら自分が求めているものがありそうだなと感じたので挑戦しました。そのときは、解決したい課題はあるけれど何をしたらいいのか分からない不安や焦りも大きかったです。

 

栗野さん(以下、栗野):ETIC.(エティック)のMAKERS UNIVERSITYに参加して、事業の立ち上げが難しいと悩んでいた時に、社会起業塾を紹介してもらって挑戦しました。これまでアクセラレータープログラムに参加したこともあるのですが、非営利や経済合理性のない領域での課題解決ってなかなかお金にならなくて、どうやって事業として持続可能なものにしたらいいんだろうと悩んでいたタイミングだったので、応募しました。

非営利や経済合理性のない領域で、事業をすすめることの難しさ

 

ーーそんな悩みがあったのですね。「非営利や経済合理性のない領域での、持続可能な事業は難しい」とは、どんなところで感じますか

 

栗野:僕は、経済的に困難を抱える子育て家庭を対象に活動しているため、当事者からお金をいただくことは当然難しく、また、数としてマジョリティではない層に対しては、企業からお金をもらう広告モデルなども成り立ちづらいと感じています。日本にはまだまだ寄付文化も根付いていないし、行政予算も限られる中で、取り残される領域の範囲が広がっていると思います。

 

平井:同じように感じています。寄付においても、多くの場合「社会の変化(社会が良くなること)」がリターンとなるため、営利と比べ非営利の方が資金提供においてよりアウトプットの質や確度が求められると思います。そうなると、より活動基盤が整った先に資金が流れていって、活動基盤を整える創業期の難しさもありますし、非営利においての挑戦のハードルは高いように感じていました。

 

ーーそこから、社会起業塾への応募を決意されたんですね

 

平井:当時自分がどう事業を進めたらいいのかも分からなかったですし、焦りというか、周囲の起業家のみなさんがどんどん前へ進んでいるのに、自分は全然進んでないような感覚があって、不安から一歩踏み出したのも大きかったですね。

 

栗野:僕の場合は、代表の立場になると、なかなか客観的なフィードバックやアドバイスをもらえなくなったり、怒られる経験がなくなって、成長が止まっちゃう危機感がありました。日々現場で目の前のことに追われていると、中長期のことも考えられなくなるので、考える時間を意図的に取るためにも応募したというのは大きいかなと思います。

映し鏡のように、自分と向き合い続けて軸を深める8ヶ月

 

ーー実際に入ってみて、社会起業塾はどのような場でしたか

 

平井:社会起業塾期間は、「どの山を登りたいの?」という問いを常にいただきました。伴走してくれる方々も一緒に向き合って、悩んで考えて、日中や夜も相談にのってくださいました。人を応援する雰囲気があったからこそ、自分と深く向き合うことができたと思います。

 

栗野:とことん寄り添ってくださる場でした。NPOだろうが株式会社だろうが、自分の軸を明確にするために、「本当は何をしたいのか」を問われ続けるのですが、しっかりと考えぬく時間を取ってもらえたのが大きかったです。他のアクセラレーターだと、そこを結構さらりと通りすぎて、ビジネスモデルの話の割合が大きいのですが、社会起業塾は逆に自分軸が明確じゃないとそもそも先に進めないので、もやもやする期間は長いかもしれません。けれどその軸こそが一番大事で、逆に言えばそこで明確にしておかないと、後々苦しむのは自分だとも思っています。

 

平井:僕も社会起業塾では沢山悩んだのですが、答えを教えてくれるというよりは、「あなたはどう思うの?」という問いを、否定せずに常に投げかけてくれて、寄り添ってくれて、その人の評価軸で判断していないという安心感がありました。

 

栗野:わかります。僕は映し鏡のようにも、その場を使っていました。自分が今考えてることを伴走してくれる方々に話すと、「それってこういうことですか?」と投げかけてくれました。「あ、そういう風に伝わるんだったら、もうすこし違う伝え方をしないといけないな」とか、そのやり取りを経て、自分が使う言葉や方向性がより明確化されました。

 

平井:社会起業塾生それぞれにフェーズや事業領域があり、その人に合わせた最適な事業形態のアドバイスやフィードバックもいただきました。例えばスタートアップ向けのアクセラだと、株式会社で資金調達をして、イグジットが前提で、というようなものも多くあります。けれど社会起業塾の場合は、それぞれの解決したい課題がベースにあって、NPOの人もいれば、株式会社の人もいる。経済合理性のある領域だったら、それに合った形でよくて、事業形態・志向もそれぞれの解決したい課題、登るべき山に合わせてアドバイスしてくれます。そもそも設計からユニークで、僕には合っていると感じました。

 

ーー自分の軸に向き合い続けた社会起業塾を経て、感じている変化はありますか

 

平井:自分のことを信じていいんだと思えるようになりました。きっと参加していなかったら、手段ばかりに目がいっていたと思うのですが、何をするのにも目的や、立ち返る場所を重要視するようになりました。

 

栗野:二つあります。一つが、自分の軸に対する覚悟が決まったこと。やはり自分はこの領域でやっていきたいというのを、このプログラムで何度も感じました。二つ目は、理想の社会の解像度が上がりました。理想の社会を実現するためには、今何をしないといけないというのを整理しやすくなったことが、自分の中での変化かなと思います。

卒塾後の繋がりと、育まれているエコシステム

 

ーー卒塾をしてから、いまも社会起業塾の繋がりは続いていますか

 

平井:同期が仲良しで、今も定期的に集まっています。また、「社会起業塾の卒塾生」というワードで、先輩方ともつながれて、定期的に相談させてもらったりしています。

 

栗野:僕も、このエコシステムはすごいなと折に触れて思っています。つい一昨日も、同期の現場見学をさせてもらったり、別の同期とは寄付モデルの構築で一緒に動いたりと、そういった繋がりもあります。たとえばイベントで「社会起業塾を卒塾しています」と話すだけでも、お会いした先輩起業家と共通点ができて話しやすくなったこともありました。

 

ーーいまも大切にしているメンターの言葉を教えてください

 

平井:「大丈夫」という言葉です。当時まだ法人化もしていなくて、今後どう動いていいのか右も左も分からず不安が大きかった中での「大丈夫」という言葉はとても印象的で、今も救われています。

 

栗野:「課題の対象者の方のニーズが本当にあるのか」というのを何度も聞かれたことが印象的です。今でも大切にしていて、なんちゃって社会起業家と真の社会起業家を分けるのはそこだということを、定期的に振り返っています。

何としても解決したい課題があるからこそ、マラソン用のエンジンを積む

 

ーー栗野さんと平井さんが思う、社会起業塾の価値とは何でしょうか

 

平井:納得度の高い軸を見つけることができることだと思います。自分の内側から引き出してもらえるので、より本質的なところを問われるのが、僕の中では一番よかったです。

 

栗野:短距離走用のエンジンというよりは、本当にマラソン用のエンジンを積ませてもらったような感覚ですね。中長期走り続けるための大事なものが得られたのは一番の価値だなと思います。

 

ーーお二人の今後の展望や、大切にしたいことを教えてください

 

平井:やっぱり僕は、この課題に関わり続けたいです。解決するにはきっと百年くらいかかるだろうな、自分が生きている間には解決できないだろうなと思っていても、やはり僕は関わり続けたいと強く思っています。

 

栗野:今やっていることの延長にはなりますが、対象者の方のニーズを起点に考えること、あとは社会における自分たちの役割は何かということを、定期的に振り返りたいです。自分たちがやりたいことだけをやるのではなく、既存プレイヤーではここがカバーできていて、ここは取り残されてるから、じゃあ自分たちの団体としての社会的役割はここ、というふうに事業をすすめていけば、この先もブレないのかなと思っています。

 

ーー最後に、これから社会起業塾へ応募される方への応援メッセージをお願いします!

 

平井:本気で解決したい社会課題がある方は、ぜひ参加してほしいプログラムだと思います。応援しています。

 

栗野:大人になってから、こんなにも利害関係関係なく、真剣に自分のことを応援してくれる人と出会える機会はそうそうないと感じています。本当にこれから事業を続けたり大きくしていきたいという方は、ぜひ挑戦してほしいです。

 

<編集後記>

 

ここまで読んでくださりありがとうございます。お二人の話をきいて、悩み考え抜いた先に自分の軸を信じて、想いと願いをのせて言葉を届けることの力強さを感じました。

 

社会起業塾には、解決したい社会課題に真剣に取り組みたい方を徹底的に応援し、心から信じて関わるコミュニティがあります。こちらのプレエントリーからご登録いただくと、エントリー開始の情報をお届けします!2024年度社会起業塾の募集は、5月下旬公開予定です。熱意ある起業家のみなさんの応募をお待ちしています!

 

この記事に付けられたタグ

社会起業塾ETIC.起業
この記事を書いたユーザー
アバター画像

DRIVE by ETIC.

DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )