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“まずはやってみる”で単独3カ国留学する17歳がみつけた“知らない”を強みにした応援観とは?──ドルトン東京学園 高等部2年 二宮詩帆さん

2025.12.08 

「社会課題解決にチャレンジする人の背中を押したい」「応援の大切さを広げたい」そんな思いで、活動する「応援コーディネーター」を知っていますか。

 

応援コーディネーターとは、社会課題に挑戦する人をサポートする応援隊の役割を担う人のことで、「Beyondミーティング(※1)」というブレスト会議の場で活動しています。

 

ブレスト会議前には伴走役として挑戦者である登壇者の発表内容のブラッシュアップを行い、ブレスト会議当日は多様な参加者が集まる場でファシリテーションをしながら場を盛り上げます。

 

本特集では、その活動を通して、知らなかった社会課題に触れることで視野が広がり、自身の変化を感じている方たちのインタビューをお届けします。

 

第4回目は、17歳の二宮 詩帆(にのみやしほ)さん。社会人向けカンファレンスへの参加、単独3カ国留学、社会課題テーマでの登壇など、さまざまな挑戦を続けてきました。応援があるからこそ挑戦できる環境で育ち、いつか応援する側になりたいと応援コーディネーターに挑む彼女の“知らない”を強みにかえる応援観とはどんなものでしょうか。その素顔に迫ります。

 

 

香港での交流が「まずはやってみる」の原点に

──9歳まで香港で過ごしたあとの、日本での生活はどんなギャップを感じましたか?

 

二宮 : 1歳で親の転勤で香港に移住し、現地ではインターナショナルスクールに通っていました。多様な文化や背景をもつ友人たちと日々触れ合い、お互いの言語を知らなくても、分かり合えてコミュニケーションが取れたという環境にいたことは、アクティブに「まずはやってみる」という価値観につながっていると感じます。

 

その後、香港のデモ激化で9歳で帰国し日本の公立小学校に通いましたが、全員同じルールに従う校則によって個性が抑圧されているように感じました。もっと自由な環境で学ぶため、生徒が「自由と協働」の精神で自ら判断し行動することが求められるドルトン東京学園の中等部に進学することにしたんです。

 

この学校は、ルールで縛るのではなく生徒が自分で考え責任をもって行動します。生徒のやりたいことを応援する先生方の全面的なサポートのなか、取り組みたい研究テーマを深めることができますね。中学3年生の修了探究でギャル文化について、高校2年生の卒業探究でスナックについて研究しています。

 

ドルトン東京学園内にある、NTT東日本と連携した無人決済の校内売店。商品の選定・店の運営も生徒が行い、店舗運営を体験する取り組みを行っている

 

価値観が変わった「Beyondカンファレンス」への参加

2024年5月、高校1年生だった二宮さんは企業・NPO・行政など多様なセクターが集まり共創を生み出すためのイベント「Beyondカンファレンス(※2)」に参加します。

 

──自律的な学校生活を送るなかで感じていた課題はなんでしたか?

 

二宮 : 全校生徒は6学年で600名程度、1学年100名程度のため、全校生徒の顔が見えるような状況でした。大人と話す機会がほとんどなく、もっと新しい人と出会いたいと思っていたんです。

 

そんなときに国語の授業を担当していた清水先生が「羽田で開催されるカンファレンスに一緒に行きませんか?」とチャットで生徒に呼びかけていた情報を見つけました。いろいろな大人が集まる場所という点におもしろさを感じ「行ってみたい」という単純な気持ちから参加してみました。

 

まるで友人と会話するように話をする二宮さん(左)と清水先生(右)。清水先生は生徒が「生涯抱えて生きていけるような問いを持つこと」を願っている

 

──年齢差のある参加者ばかりのカンファレンスに参加してみて、何か発見はありましたか?

 

二宮 : 参加する前は緊張しましたが、予想以上に温かい雰囲気で価値観が変わりました。日本では年功序列の傾向が強く年少者の意見はあまり聞かれないというイメージを勝手に持っていたのですが、カンファレンスでは逆に年少者だからこそ、「意見を聞きたい」と周囲の大人から尋ねていただけたんです。

 

また違う意見でも愛を持って話し合いをすることで良いアイデアが生まれるんだなと、とても感動しました。

 

「Beyondミーティング」の初登壇で感じた、応援という大きな支え

その後、2024年の「Beyondカンファレンス」を通じて知り合いになったNPO法人ETIC.のスタッフに紹介してもらい、2024年11月に「Beyondミーティング」に登壇者として初挑戦。

 

──保護動物に関するテーマで登壇をしようと思ったきっかけは何ですか?

 

二宮 : 当時は「トビタテ!留学JAPAN(※3)」でドイツ・スイス・イギリス3カ国に1人で留学することが決まっていたのですが、採択テーマが保護動物についてでした。

 

以前から保護動物に興味があり、学校のゼミ活動で猫の保護団体と連携したり、毎年3月に開催されるDalton Expoという学習発表会では、自分たちで製品を作り、その売り上げ全額を保護団体に寄付する活動もしていました。

 

留学に行く前に、日本での保護動物の現状をより深く知りたいと考え、保護団体だけでなく、一般の日本人の保護動物に対する感覚を知るために登壇させていただきました。

 

2024年11月開催の「Beyondミーティング」で参加者約30名を前に登壇する二宮さん。タイトルは「ぎゃるマインドで保護犬を救う!」

 

──登壇して得られた気づきはなんですか?

 

二宮 : 当日はとてもびくびくした気持ちで登壇しました。けれど参加者の皆さんとブレストすることで自分に足りないものを知ることができましたし、登壇に向けて資料やピッチのブラッシュアップで伴走してくれた応援コーディネーターの方が、真摯に自分と向き合ってくれたことが本当に心強かったです。

 

場数が圧倒的に少ないなかで、的確な助言や「大丈夫」という言葉をもらえたことが非常に大きな支えになり、応援の大切さを強く実感しました。

 

登壇後に、二宮さんのテーマに関心ある参加者が集まりブレストでアイデアを出し合っている様子。赤い洋服を着ているのが二宮さん。両脇は応援コーディネーター

 

応援される側から応援する側へ。「知らないこと」を強みに

──応援コーディネーターにチャレンジしてみようと思ったきっかけはなんですか?

 

二宮 : 不安な中でも私が挑戦ができたのは、親や先生、周りの応援があったからです。応援があるから怖くても挑戦できる。そこから自分も応援することで誰かの背中を押したいと思うようになりました。

 

ドルトン東京学園では、企業や外部プログラムに一定時間以上参加することで単位と認められます。応援する側に立ちたいという気持ちから、2025年6月から「Beyondミーティング」を運営する事務局にインターンすることに決めました。そこで応援コーディネータにも挑戦してみることにしたんです。

 

オンライン開催のBeyondミーティングで応援コーディネーターに初挑戦。二宮さんは左の列の上から二番目

 

──初めて応援する側になってみて何を感じましたか?

 

二宮 : 若者が運用する新しいメディア事業の開発をしている高木俊輔さん(東京大学 休学中)の応援コーディネーターをしました。

 

彼の取り組みに共感して応援コーディネーターに手を挙げましたが、資料やピッチをブラッシュアップする打ち合わせで専門用語が出てきたり、物事の仕組みについて知らないことが多かったり「本当に貢献できているのだろうか」ともやもやした気持ちになりました。

 

経験不足や知識のなさを痛感し「応援したいけれど、どうやってサポートできるかがよくわからない」と難しさを感じましたね。

 

でも何も知らないからこそ、「知らない人の目線」に立ち素朴な疑問をたくさん投げかける役割ができたのではないかと感じています。その点では、アドバイスというより質問という形で貢献できたと思っています。

 

──挑戦を応援をすることで見えた問いは何ですか?

 

二宮 : 自分の弱みも知ることができ、足りない部分も分かりました。「どうすればもっと良くなるのか」という問いが自分の中で芽生えましたね。「もっと知識を深めたい。もっと頑張りたい」という原動力にもなっています。

 

──次なるステップとして挑戦していることがあれば教えてください。

 

二宮 : インターン活動の一環として「Discord」というオンラインコミュニティ内で「挑戦を日常的に応援する」仕組みづくりを実験的に実施しています。

 

Beyondミーティングの登壇者がほかの参加者と交流する「おかわりBM」という企画をDiscord内で開催し、1回のイベントだけで終わらないつながりが生まれたり新たな気づきも得られました。

 

東京大学の先輩・後輩関係の登壇者、高木さん、松本さんに声をかけ「おかわりBM」を企画・開催した

 

100円の応援投資が1万円になり返ってくるような恩返しがしたい

──二宮さんにとって応援とは何でしょうか?

 

二宮 : 「挑戦と応援」が、私には重要なキーワードで「ほかの人がやっていないことを経験したい」という気持ちが強くあります。

 

例えば留学も、当時16歳が誰も知り合いがいないなか、一人で3カ国を周るというのは珍しいですが、同世代がしないようなことに積極的に挑戦したいですし、そこには応援が不可欠です。

 

ドルトン東京学園のグラウンドで

 

将来は「ビッグな女性になりたい」という目標を掲げています。歴史の教科書に登場する女王・卑弥呼のように、多くの人々を動かす女性に尊敬と憧れをもっています。ビッグな女性になって、いま本当にお世話になっている多くの方たちに、「あのときのあの子が、こうなったのか!」と喜んでいただきたいです。

 

例えば、100円応援投資したら1万円になって返ってきた、といった感覚で応援してもらった恩返しをしたいし、私の成長を見届けていただきたいです。

 

──ありがとうございました。

 


 

応援コーディネーターの活躍も楽しめるBeyondミーティングは、次回12月17日(水)に開催。

二宮さんは応援コーディネーターだけでなく、司会にも初挑戦する予定です。

ぜひ二宮さんと一緒に応援しませんか?

 

「Beyondミーティング#69」

12月17日(水) 19:00-21:00

申込 : https://bm69.peatix.com/view

 


 

 

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(※1) Beyondミーティング

and Beyondカンパニーが主催する全力応援ブレスト会議。組織・立場・世代を越えて誰もが自由に参加できる場として毎月開催されています。

(※2)Beyondカンファレンス

“意志ある挑戦が溢れる社会を創る”ために、企業や大学、NPOが業界や事業規模の違いを超えて連携・協働することを推進する年1回のイベント(主催:and Beyondカンパニー)

(※3)トビタテ留学JAPAN!

文部科学省が中心となり、企業の寄付金も活用して運営される「官民協働」の海外留学支援制度。意欲ある全ての日本の大学生・高校生が、海外留学に自ら一歩を踏み出す機運を醸成することを目的としている。

 

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芳賀千尋

1984年東京生まれ。日本大学芸術学部卒。 20代は地元と銭湯好きがこうじ商店街での銭湯ライブを開催。 1000人以上の老若男女に日常空間で非日常を満喫してもらう身もこころもぽかぽか企画を継続開催。2018年からETIC.に参画。

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