「いつだって仕事はオモシロイ方がいい」。 宇宙に飛び立つ町工場、MADE IN JAPANを世界に広めるものづくり企業、古きを守り、新しきを仕掛ける伝統産業。聞くだけでワクワクするような仕事を仕掛けている企業が日本全国にたくさんあります。
そんな企業の、「挑戦する経営者」とともに事業を進める「経営者の右腕」を募集する求人メディアとして誕生したのが、DRIVE REGIONS。1月30日(土)には、「DRIVE REGIONS 転職フェア」を開催します。
今回は、フェアに向けて「なぜ、都市部の若者に向けて中小企業・地域という選択肢を提案するのか」をテーマに、コミュニケーションプロデューサーであり慶應義塾大学特任助教の若新雄純さんとETIC.代表理事の宮城治男が対談しました!
『社会的大義』の無い時代
宮城: この転職フェアの趣旨は、「規模は小さくても、事業や人がおもしろい企業に転職して、自分なりの満足感をもって仕事をする」で、実際にこういった転職に関心がある都市部の若者が増えています。これは新しい潮流であり、地域から仕掛ける中小企業があらためて注目されつつあるといえます。
若新: 僕、そもそも「中小企業も魅力的だ」とか、「地域はこれから面白くなる」という誰かのお墨付きを求めている人がすごく多いような気がして、それって、あんまりよくないと思うんです。 みんな、自分の外の社会に答えを求めてしまっているんですよね。自分や親、周囲を納得させるための都合のいい答えというか、「大義」を探し求めすぎているような気がします。
かつて、日本全体が貧しかった時は、例えば両親や弟・妹たちを食べさせるために少しでも給料が高くて安定している会社に勤めて身を粉にして働くというのは誰もが納得する大義だったと思うんです。 でも日本が成熟し始めた1990年ごろからその大義が薄れてきている。 そんな中で、「ベンチャーや中小企業に行けば成長できる、社会性の高い仕事が求められている、地域が今アツイ…」といった自分や家族を納得させるための「都合のいい解答」を求めている部分はあるんじゃないかと。
宮城: 明確で誰にもわかりやすい社会的な大義が無くなってきたんですよね。これまであると思っていた「成功」を測るモノサシも、実は幻だった。価値観も関係性もより複雑になってきた時代なんだよね。
若新 雄純 氏 (コミュニケーションプロデューサー/慶應義塾大学特任助教)
『正解』を追いかけるのがナンセンスな時代
若新: 本当であれば、自分の内側にある「自分は何を欲していて、どのような時にどんな感情になるのか。何が悔しくて、何が嬉しいのか。」といった人間臭さに向き合わないといけない。 僕らが受けてきた教育って、先生が「これが正解です」といったらそれ以上は考える必要がないという世界で。「解答が先生の手元にはあって、それをどれだけ個人差がないように習得させていくか。」これが今の僕たちが受けた学校教育でした。でも、いよいよ、誰かが決めた「正解」を追い求めていてはいけない時代に突入したんだと思うんです。
宮城: そうだね。さっき、「中小企業・地域に行く」ということが大義・社会性というか、「自分にとって都合の良い正解になってないか」という話がありましたが、今の時代、地域はいくらでも面白くできると思うんですよ。大義を地域に見出してもいいと思う。でもそれは自分で決めることであって、誰かに設定してもらうものじゃない。そういう誰かが設定した大義に頼っても、正解にはならないということを自覚する必要があると思います。
『社会性』の対極にあるもの=『自分性』
若新: 最近、社会性っていう言葉へのアンチテーゼとして「自分性」という言葉を使ってるんです。僕が言いたい「自分性」ってまさにそういうことなんですよ。社会って本来は、自分と相互につながっているものなんですが、僕らが指す「社会性」って言葉は、いつのまにか、自分の外側から大義や正解を探してくる、というようなものになってしまったと思うんです 。そして、「社会性」という言葉がクローズアップされすぎて、それにみんなの目が向き、外側だけを追い求めた結果、自分の内側に何が残っているのかと不安になる人が出てきてしまっている。
僕らがこれから本当に豊かに充実した人生をおくっていくには「自分性」を高める必要があると思うんです。 だから、地域に行く、中小企業に転職するというのも、社会的な意義や評価ではなく、「自分の中の意義や価値」があるかどうかを考えることが大事だと思います。
宮城 治男(NPO法人ETIC. 代表理事)
『自分的大義』を見出す働き方
若新: それと、「地域や中小企業に社会的な価値がある」と言われたら言われるほど、「ベストな地域や中小企業」を慎重に探してしまう。だって、それは「外にある大義」、「人から言われた正解」だから。そうじゃなくて、自分自身で「ここでやってみたい」と自分自身が心底思えるか、自分性・自分的大義を見出だせるか。そういう気持ちになれる企業と出会えるかがこの転職フェアで大事だと思います。
宮城: そうだよね。地域の小さな会社で挑むというのは、その「自分的大義」と向き合って社会や自分を深く掘り下げる機会として、いいかもしれないね。
若新: その「いいかも」ぐらいが大事ですよね。「いいね!」という正解ではない。「いいかも」の「かも」の中に、自分と向き合うための余白がある。 大事なのは、行ったところが潰れるかもしれないし、想定外の何かが起こるかもしれない。そうした時に不満を言ってしまうのは、誰かが言った「地域が面白い、価値がある」という正解を鵜のみにして、外の答えにすがってしまうからだと思います。 中小企業や地域に行く、ということは、「自分と向き合う」ために意味のあるリスクの取り方をするということだと思います。リスクがない、というのはウソですからね。(笑)
宮城: 今でも、地域や中小企業に行くこと自体にはリスクはたくさんあると思いますよ。(笑)でもそれは、従来の価値観でのリスク。視点を変えれば、都会や大企業にいるリスクの方が大きいという考え方もできますし。「自分の頭で考えなくてもいい環境」で仕事をしていることは非常にリスクが高いことと言えるかもしれないですね。もちろん、大手にいることが悪いわけではないですが、その中で「なんとなく仕事しているな」と感じる人は実はハイリスクな環境で仕事をしているのかもしれません。て、それは20?30代のうちに「自分自身の大義や価値基準に気づく・育む機会を持ちづらい」ということだから。
『ゆらぐ』働き方へ
若新: 地域に行っている時間は、自分の中の「大義」を探していたり、価値観を問い直している「ゆらぎ」の時間。地域や中小企業で働こうと考えている人は、人生におけるキャリアの解決ではなくて、「キャリアに対する問いを深めるチャンス」だと捉えたらいいと思います。
宮城: そうだよね。この「ゆらぎ」自体は、これまでの価値観の中には無かったものだし「丸がつく」という種類のものでもない。だからこそ「ゆらいでいる」という時間や状態そのものを大事にしたらいいと思います。
『ゆらげる』場所
宮城: そういう意味では、若者だけが変わらないといけないという話ではないですよね。社会全体がともに未来を作っていかなければならないフェーズに入ってきている。だからこそ、中小企業も自己変革を遂げながら、挑戦したい若者がおもしろがり続けられるような企業であってほしい。それが社会変革にもつながったりして。 企業もともに「ゆらぐ」ことで進化をしていきますよね。新しい領域に一緒に挑んでくれる若者を採用したければ、企業自体も一緒に挑戦をしてくれないと。そしてそれは企業にとって得難い進化のチャンスになると思います。
若新: そのとおりですね。人と組織の間に完璧なマッチングが存在しない以上、就職する若者も採用する企業も、採用後には歩み寄り続けなければなりません。「条件・機能が合致するか」で人を採用するやり方は大きく見直されていくと思いますし、「採る・採られる」ではなく、「関わる・ともに変わる」という絶え間なき関係づくり・リレーションシップが必要だと考えています。 これ、転職フェアのトークセッションでは、求職者だけでなく、企業側とも一緒に考えたいですね。若者の「ゆらぎ」を受け入れ、自らもゆらぎながら、一緒に悩んでいけるような経営者と話したいですね。そういうのってできますか?
宮城: 例えば、将来起業・独立しようか悩んでいる若者の、自分の中の納得感や「起業する自分的意味」を見つけたいという「ゆらぎ」も受け入れた上で、採用してくれるような企業や経営者、ということですよね。おもしろいと思います。
若新: では、当日は地域や中小企業で「ゆらぐ働き方」について話しましょう。
宮城: いいですね。楽しみです。この話の続きを、当日、会場でしましょう。
コミュニケーションプロデューサー/慶應義塾大学特任助教/若新雄純
専門は産業・組織心理学とコミュニケーション論。全員がニートで取締役の「NEET株式会社」や女子高生がまちづくりを担う公共事業「鯖江市役所JK課」、週休4日で月収15万円の「ゆるい就職」など、人や組織、地域社会の多様な成長モデルを研究・模索する実験的プロジェクトを多数企画・実施中。さまざまな企業の人材・組織開発コンサルティングなども行う。数々の実験的プロジェクトを紹介した著書『創造的脱力 かたい社会に変化をつくる、ゆるいコミュニケーション論 』(光文社新書)が好評発売中。慶應義塾大学大学院修了、修士(政策・メディア)。Webサイト:若新ワールド http://wakashin.com/
NPO法人ETIC. 代表理事/宮城治男
1972年徳島県生まれ。1993年、早稲田大学在学中に、ETIC.学生アントレプレナー連絡会議を設立。2000年にNPO法人化とともに代表理事に就任。これまで500人以上の社会起業家の輩出・支援に取り組む。
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