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マイナスからのスタートの方が絶対にいい!SHAREFUN®・中川ケイジさんインタビュー(後編)

2016.10.20 311view 

オシャレなふんどしを企画販売する「SHAREFUN®(しゃれふん)」のプロデューサーであり、一般社団法人日本ふんどし協会の中川ケイジさんインタビュー後編です。前編では、美容師から会社員になるまで、そして会社員時代にうつ病になった中川さんがどのようにふんどしと出会い、事業を始めることになったのかを語っていただきました。後編では、いよいよ「SHAREFUN®」・一般社団法人日本ふんどし協会の“はじまりの物語”に迫ります ! 

西武池袋店・女性下着売り場でのトーク姿

西武池袋店・女性下着売り場でのトーク姿

夫婦合わせた全貯金30万円からスタート

―そこからどんな準備をし、何を始めていったのでしょうか?

事業資金なんてまったく無かったのですが、唯一夫婦2人で引っ越しのために貯めていた30万円がありました。さすがにそれに手をつけるわけにはいかない、と躊躇していたら、奥さんが「このお金使っていいよ ! 」と通帳を出してくれたんです。「利子は高いんだからね ! 」と。ありがたかったです。

その資金を握りしめて、まずはおしゃれなふんどしのアイディアを、京都で和雑貨を生産している大学時代からの先輩に相談しました。奥さんの次に、助けを求めたのはその方でしたね。すると「素材は天然素材の麻(特にリネン)がいいんじゃないか ? 麻の生地はいっぱいあるから、1度作ってみるよ」と、すぐにサンプルを作ってくれたんです。

出来上がったものを締めてみると、今まで自分で買ってきた物よりも断然良くて。これですぐにでも生産しよう ! ということになりました。

ブランドの名前とかパッケージとか、最初は僕が作りました。まったくの素人なのですが(笑)。お金はなかったんですが、時間だけはありましたし、何よりもこの快適さを早く世に出したくて。

さて次は売り場だということで、ネットショップを作りました。自分ではサイトを作れなかったので、できる方をネットで探して、30万円あったうちの20万円をそこで使いました。それで12月1日から売り始めました。

現在のオンラインショップ。右上には女性誌・anan。なんと、ananのカラダにいいもの大賞2016「良質睡眠でリフレッシュ」部門で、SHAREFUN®(しゃれふん)が大賞を受賞!

現在のオンラインショップ。右上には女性誌・anan。なんと、ananのカラダにいいもの大賞2016「良質睡眠でリフレッシュ」部門で、SHAREFUN®(しゃれふん)が大賞を受賞!

2月14日を「ふんどしの日」に

―12月1日が開店記念日ですね。いきなり売れるものですか?

いや、最初の時期は、友達も買ってくれませんでしたよ(笑)。親ももちろん買ってくれなかったですね。親はふんどしで起業するって言ったら電話越しに泣いていました(笑)。まぁそうですよね…大丈夫か ? ってなると思います、そりゃ…。

―説明しづらいですよね…。

最初の月は5枚も売れなかったのかな。でも12月にオープンして、サイトのリリースを色々なところに送ったんですけど、繊研新聞さんが取り上げてくれて、紙面に載ったんです。それがなぜかYahoo!に転載されて。

実は、オシャレなふんどしブランド「SHAREFUN®(しゃれふん)」を立ち上げたのと同じタイミングで、「日本ふんどし協会」を立ち上げてるんです。ふんどしのことを調べれば調べるほど、全国に小さいブランドはあるのに繋がっていないし、買いにくいし、普及するための広報活動も何もしていなかったので。だからそれを全部取りまとめて、中立的な立場でふんどし人口を増やすような活動をできないかなというのが始まりでした。その日本ふんどし協会で、世に広まりやすい分かりやすい記念日があった方がいいと思って、2月14日をふんどしの日として申請したんです。「2=ふう」「10=とお」「4=し」と多少強引ですが、ゴロが合ったからです。決してバレンタインデーにぶつけたわけではないんです(笑)。

それがメディアの方々にウケたようで、年明けに「ねとらぼ」さんが取材してくださって、ネットで広がっていき、2月14日には約100枚ほど売れました。同時に取材も増えていき、ベストフンドシストアワードの授賞式も行いました。

―「ふんどしの普及に貢献したプロフェッショナルに活躍される方」が受賞するのでしたね。第1回はどなたでしたでしょうか?

大賞は安田大サーカスの団長・安田さんです。いとうせいこうさん、勝俣州和さんなど、そもそもふんどしをされていた方たちにお送りしました。この授賞式には松竹さんが劇場を貸し出してくださり、たくさんのメディアの方々を取材に呼んでくださって、本当にお世話になりました。

2016年のベストフンドシストアワード授賞式のようす

2016年のベストフンドシストアワード授賞式のようす

「どうやったら人に言いたくなるか」を考えていた

―ふんどし協会を作るという発想が素晴らしいなと思いました。これはどうして思いついたのですか?

サラリーマン時代から、日本唐揚協会の八木宏一郎さんと友達だったんです。元々「からあげが単純に好きだから、このおいしさをもっと広めたい」という男性2人がノリでやり始めたような団体なんですけど、それが今や飲食業界やデパートの活性化など、色々なところで皆がハッピーになっていくきっかけとなっていて。そんな彼らの活動を見て、素晴らしいなという思いがあり、そういう視点でふんどしのことを考えてみたら、日本の文化だけれど今のままじゃ絶対廃れていくといった危機感を感じました。ただ逆に、今が底辺に近い状態だからこれはチャンスだと思ったんです。ちょっとでも価値が上がったら、だいぶ変わるということですから。伸びしろがむちゃくちゃあるなと思って。

1メーカーでは伝えきれないこと、巻き込めないことも、中立的な「協会」という団体を通して発信すれば、それが叶うんじゃないかと思ったんです。

―ここでもご友人の存在に助けられているんですね。しかし、”ふんどし”というテーマはメディアに取り上げられやすいキャッチーさを持っていますよね。ある程度狙っていたところはあるんですか?

そんなに計算して考えてはいないのですが、お祭りのイメージや、おしゃれとはかけ離れたイメージの強いふんどしですから、このギャップは目を引くだろうなとは思ってました。同時に、いきなり一気に広がることなんてなくて、まずは「ふんどし」と言うワードをできるだけ世に出して、その中で少しずつ、実は快適で健康にも良くて、おしゃれなものもたくさんあるんだということが伝わればいいかなと。ふんどし人口なんてほとんど0%に近いんだから、長期戦になることは覚悟のうえ。最初の5年位はとにかくSNSで「ふんどし」というキーワードを世に出せるか、が勝負だと思っていました。、広告などにお金がかけられないからこそ、「どうだったら人に言いたくなるかな ? シェアしたくなるかな ? 」とはいつも考えていました。

―そこは戦略的に考えたということでしょうか?

うーん、戦略的というよりは、ただ楽しかったんです。今までの仕事と違って、考える時間が楽しくて楽しくて。あ ! こんなアイディアがある ! って思いついたら、やっちゃえ ! ってすぐに実行できるんですよ。当時のサラリーマン時代は、いいことを思いついたとしても「それで今期いくらの売上になるの ? 」で終わっちゃう場面が結構あって。思いついたらすぐ発信しちゃえるスピード感、そしてすぐ反応があるということ…それが楽しかったですね。

―それはサラリーマン時代にはない楽しさですよね。

はい。だってなんの1点の曇りもなく、「これはいいものですよ」って自信を持って言えることって、今までの経験ではなかったんです。会社では、この3か月は太陽光パネルを売りますとか、この3か月はミネラルウォーターを売りますとか、お題が決められたらそれをなんとか必死に売ろうとするしかなかったので。いや、でもこれは、あくまで僕が組織の中であまりにも仕事ができなかったからというのもありますが……(笑)。

小田急百貨店でのふんどしフェア

小田急百貨店でのふんどしフェア

人と同じようにやっても自分は勝てないと分かっていた

―要領が悪いとおっしゃっていましたが、そういう自分なりの戦略みたいなものは考えていらっしゃったように感じます。

会社員時代の経験をして一番良かったことは、「自分は皆と同じことをやっても勝てない」と分かったことなんです。真面目だから頑張っちゃうんだけど、なにせ要領が悪い。

これを心の底から理解できたら強いですよ。まだ誰もやってない、人と違うことをするしか生きる道はないんです(笑)。

でも、やってる人がいないってことはすごいチャンスだと感じていました。どれだけニッチな部分でも、その世界のトップを獲りにいけるということですから。「ふんどしといえば中川ケイジ」のポジションを取れたら、仮に他にどうしてもやりたいことが見つかったときにもやりやすくなるだろうし、たとえ事業に大失敗したとしても、きっとその後ネタになるなと思ったんです。

受験も失敗して、サラリーマン時代もうまくいかなくて、唯一美容師のときだけは自分で考えて行動してプチ成功したと思っているんです。その経験が唯一あるから、あれと同じことをやれば、たとえ限られた一部の人だけだったとしても、自分の仕事で誰かに喜んでもらえるんじゃないかなって。自分は要領が悪い ! とハッキリ理解したことで、だったら人と同じことはしないぞ ! と決めたことが、自分が変われた瞬間でした。

―誰もいないところを探して、そこが本当に好きなところだった、というのは強いですね。

自分が本当に「良い」と感じて「好き ! 」と思えたことが、たまたままだ誰もいなかった。というのが正しいですね。ですが、誰もいないから競争はしなくていいんですけど、一方で自分で市場を1から作らなきゃいけないというのはあります。誰もふんどしなんか買っていないところに、ふんどしを売ろうとするわけですから…。でもふんどしが本当に好きで、「間違いないから絶対試してみて ! 」って堂々と言えたら絶対市場は作れるという、そこだけは変な自信がありました。

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小田急百貨店でのふんどしフェア

小田急百貨店でのふんどしフェア

マイナスからのスタートの方が絶対にいい

―その自信はどこから来るんでしょうかね?

いや、もうそれは、ふんどしが素晴らしい下着だからですよ!!

う〜んなんだろう…僕自身がふんどしによって、あんなに苦しかったうつ状態から完全復活できたという強烈な実体験があったからかもしれません。ふんどしは単なる下着なんですけど、それだけではない、「体験」というところが僕は大きいと思うんです。ほとんどの人が締めたことがないわけだから、ほとんどの人にとって、これから初めての体験ができるわけです。はじめての体験というのは人に言いたくなるし、やったかやってないかの差がすごく大きく出る。「やってみないと分からない ! 」という感覚が伝えられると思ったんです。だから物を売るというより、体験を伝えていけばきっと面白いんじゃないか…。しかも3.11の後だったので、渋谷の街だって飲食店は電気を消したりと、世の中全体がどんよりと暗い雰囲気の時期で。でもこんなときだからこそ、ふんどしの話は誰でもどこでも絶対に盛り上がるから、じわじわ広がれば日本中が楽しくなるはず ! と確信したんです。

それに、一般的なイメージがあまり良くないものでも、そこに本当のポテンシャルがあったら一気に上げやすい。僕は今、子育てのために茨城県の水戸市に移住したんですけど、茨城県は万年全国の魅力度最下位なんですね(笑)。でも行ってみたらすごく良い地域なんです。だからこそ、広報のやり方次第で相当変わる伸びしろを持っているはず。すべてはふんどしと同じで、マイナスからのスタートの方が絶対いいなと感じています。

―ちなみにふんどしは男性と女性、どちらの売り上げがいいのでしょうか?

SHAREFUNに関しては女性ですね。当初は男性物が多かったんですけど、途中でレディースを作ってみたら売れ始めて、今では女性のお客様が全体の7割に迫る勢いです。

また、ギフトで女性が男性へ購入するパターンも多いです。元々そこは狙っていて、女性にファンがつかない限りふんどしなんて絶対広まらないと感じていました。女性にいかにふんどしへの抵抗を下げてもらえるかが肝ですね。

―それは狙い通りですか?

いや、正直、ここまで女性用の人気が高まるとは思っていませんでした。事業を進めるうちに、実は女性の方が下着が身体に与えるストレスが意外にも多いということが分かってきたんです。

ぴたっとゴムで体に密着するパンツを何十年も、何の疑いもなく24時間365日つけることによって、血液の循環や、それに伴う睡眠の質など、身体には実は割と多くの負担がかかっているんですね。本当は、寝るときは裸でいいんですよ。寝る時の8時間だけは解放されていたらいいんですけど、24時間365日、みなさんきちんとパンツ履いてますよね。欧米では夜は下着はしないという習慣があったりするのですが、日本人はちゃんといつも履いちゃうので。

うつ病や不妊、男性機能で悩んでいる人たちに「健康」としての、障がいを持っている人たちに「体験」としてのふんどしを届けたい

―今後はどういった展開を考えてらっしゃいますか?

僕はいつも5年を一区切りとして次のステップに進んでいるんですが、ちょうど今ふんどしに関わって5年目なんです。この後どうしようかなというモヤモヤがある。ビジネスとしてもっと大きくしていきたいという思いと、本当に届けたい人にちゃんと届いているのか ? という疑問があるんです。僕が本当に届けたい人は、うつ病や不妊、男性機能、冷えやむくみ、など何らかの体の不調で悩んでいる人たちです。そういう意味で、今の普及活動についてももう一度 1 から見直して改善するタイミングだと思っています。

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西武池袋店の女性下着売り場では、体調不良で悩む女性のためのトークイベントも開催

西武池袋店の女性下着売り場では、体調不良で悩む女性のためのトークイベントも開催

ふんどしは紐と布と布用のボンドがあればできる、つくるのがカンタンなんです。先日障がい者を支援する施設で、父の日に合わせて手作りのふんどしを作るイベントをしました。参加者に生地を選んでもらって、布用のボンドでくっつけて、そこに絵を描いて、お父さんにあげようという内容でした。たった2時間のワークショップだったけれど、ふんどしに触れることが初めての人たちばかりでしたし、やったことないことを体験してもらいました。障がいを持つ子どもたちとそのご両親が皆さんで本当に楽しんでくださって…何よりも、お父さんとお母さんがすごく喜んでくださった。

そのとき、「ふんどしを使ってコミュニケーションが生まれるワークショップ」を広めていきたいと感じました。全国の障がい者施設をワークショップをしながら回って、さらに彼らでも簡単に着脱できるような、介護にもつながるユニバーサルデザインのふんどしを作りたいと思っています。そしてそれが少しでも彼らの仕事につながっていくようにしたい。

施設でもらった寄せ書き

施設でもらった寄せ書き

―認知を広げるための活動をメインとする段階は終わったということでしょうか?

そうですね。この5年間は「ふんどし」というキーワードが出ていればなんでもありだと思ってやってきました。おかげさまで、ある程度は世に広めることができたのかなというところと、どうしてもふんどしというキーワードを前面に出しすぎることで、本当に届けたい人に届かない場合も出てくる。デリケートゾーンの問題で苦しんでいる人とか、オーガニックコットンじゃないとダメな人とか、そういう健康にトラブルがあって助けを求めている人に届けていきたいと思っています。そういう意味でも、おふざけに写ったり、無理に笑いを取りにいくようなことはしないです。

―どういった人たちといっしょにやっていく予定ですか?

商品作りに関しては、今も福島の被災した縫製工場にお願いをしているのですが、災害で困っている方に少しでもお仕事としてご一緒したいと思っています。近々、熊本の縫製工場に行ってくる予定です。

あとは、日本ふんどし協会の内部のスタッフとして、今後のビジョンを一緒に作っていってくれる人を積極的に探します。加えて、全国の施設での体験イベントや様々なふんどし普及の活動を手伝ってくれるボランティアスタッフも。

どちらもふんどしについての知識というよりも、「世の中を変えたい ! 良くしたい ! 」という熱意がありあまってる人にJOINしてもらいたいと思ってます !

ふんどしを通して、少しでも多くの人を元気にしていくことが、今、僕のやるべきことなのかなと思っています。

―これからの新しいステージも、楽しみにしています ! 本日はありがとうございました。

この記事を書いたユーザー

DRIVE編集部・桐田理恵

DRIVE編集部・桐田理恵

NPO法人ETIC. DRIVE編集部。1986年生まれ、茨城県育ち。大学時代は文芸の研究をしつつルワンダ人とのコミュニケーションを楽しみ、2011年より医学書専門出版社にて企画・編集職に就く。精神医学や在宅医療、緩和医療の書籍づくりを経て、2015年よりDRIVE編集部の担当としてNPO法人ETIC.に参画。

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