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世界経済フォーラム選出のリーダー・YGLが語る、世界の10年後(2)

2017.02.16 

日本だけでなく、世界を舞台に働いていきたい。そんな若者にとってヤング・グローバル・リーダーズから得る学びは多いはず。今回は、先日来日していたヤング・グローバル・リーダーズのお二人から、特別に日本の若者への言葉をいただきました。全3部作でお届けする2本目は、「10年後の未来と世界の変化」についてです。

>>前回「世界経済フォーラム選出の若手リーダー・YGLが見る、日本の若者像(1)」はこちら

今、世界が直面している大きな課題は「機会の平等」

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──突然ですがお二人は、2020年、2030年へどのようなビジョンを持っているのでしょうか?

 

Ategeka 難しい質問ですね。まずは平等というものを大切にしていきたい。理想を言えば、世界中の一人ひとりが平等を手にしていることです。現実的な私のビジョンは、スタートアップを計画している若き起業家の人が、スタートアップのための融資資金に容易にアクセスできる土壌を整えること。いいアイデアがあってもお金がなければ実現することは難しいですから。

2020年には、最低でも1000の起業に投資をし、メンターとして関わること。30年には、その数を増やしていければと考えています。キャピタルへのアクセスを容易にすること。そうすることで、世の中の課題を解決するための若き起業家がたくさん生まれてくると信じています。

 

──「平等」、ですか。

 

Ategeka あなたは日本人ですよね。私はウガンダ人です。見た目は違いますよね。ただ、本質は同じだと思います。私たちが欲しいと思うもの。お金、家、車、あなたが欲しいものは、私も欲しいのです。世界中の誰もが、ニーズや欲求というものを持っています。

一方で、十分な食事にアクセスできない人、医療サービスを受けられない人、教育を受けられない人がいますが、そう言った人たちにもニーズや欲求というものがあります。私の言う平等というのは、一人ひとりが教育や医療や職など、ほしいと思ったものをしっかりと受けとれるということです。

一人ひとりが生活の基盤を整え、毎日平穏に生活できること。それが私の言う平等です。一握りの人だけが、資本を握り、大多数の人の機会が失われるというようなことがあってはいけません。

政府が話し合う政策についての協議に、市民が参加する未来を

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──Alemannoさんからも、お願いできますか?

 

Alemanno 私のビジョンについてですが、彼の言うところととても似ています。今の世の中が直面している大きな問題は、機会の平等にあると考えています。社会における所得配分の不平等さを図るジニー係数を見ると、その差は開くばかりです。金持ちはより金持ちに、貧乏な人はより貧乏になっている。これは問題です。

 

──本当に……。Alemannoさんは、この不平等の要因をどう考えていますか?

 

Alemanno それは、不平等をなくすために人々を助けるプロセスにおいて、実際は少しの人しか助けられていないからだと思っています。解決策としては、もっと人々の発言の機会を増やすこと、そうすることでお互いが何を考え、望んでいるのかということを理解できます。これは、非常にトリッキーなことですが、こういったものは政治が解決しないといけないことなのです。平等を訴え、民主化を推し進めていくこと、人々が感じている恐怖や怒りというものを声として届けることが、私の使命です。

権力を持っていない人は、現状とは違った形の政治や社会を求めます。権力を持っている人は、そこを調整しよう・自分を適応させようとはしません。しかし、権力を持っている人が適応していくことは、社会に平等をもたらすために必要であり、それらが社会の利益となるのです。多数の人の意見を反映するものを採用することです。これには市民の人が政治プロセスに参加できるといった民主化が必要です。例えば、政府が話し合うエネルギー政策や、医療について、年金システムについての協議に市民が参加するといったようなことです。

では、なぜ社会において平等が必要なのでしょうか。心理学の分野では、幸せをテーマにいろんな研究がなされています。何が人を幸せにするかを測定した研究では、多くの人は「お金が自分を幸せにする」と考えるという結果が出ました。これは果たして、本当でしょうか?

今の世の中でお金がすべてですか? 大富豪の人も本当に幸せなのでしょうか? 私は、これは違うと思います。なぜなら彼らもまた、今の不平等が蔓延る社会に住んでいるからです。幸せに関する研究分野が証明しているように、幸せと裕福の関係性は比例しているわけではないんです。より平等な社会の実現に向けて活動していくことは、Win-Winの解決策を模索することでもあるのです。

インターネットによる「つながり」という恩恵

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──その解決に、インターネットは一役買うのでしょうか?

 

Ategeka インターネットからは、膨大な数にのぼる「つながり」の恩恵を受けることができます。これはとても素晴らしいことです。例えば、私たちの例で言うと、地方で仕事をしていたとしても、仕事に関する膨大なデータを収集することができます。人々がどのような病気にかかっていて、どのような薬を接種しているのかといったことですね。

インターネットは引き続き重要な役割を担っていくと思いますが、未だに多くの人がインターネットに接続できない環境にいます。これは解決すべき課題であり、世界中の人々が均等に、より簡単に情報・教育・メディアのコンテンツにアクセスできるようになることが必要です。多分、日本のスマートな若い人たちがそういったことを可能にしてくれるのではと信じています。

SNSのプラットフォームからの恩恵と、社会へのコストのバランスを考える

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──Alemannoさんは、一方でネガティブな側面も考えていらっしゃいそうですね。

 

Alemanno インターネットはすべての問題を素早く解決してくれるという認識がこれまではありました。誰もが政治に参加できるようにし、誰もが会社を立ち上げることを可能にし、多くの価値を創造する機会を与えてくれました。しかし、現実は必ずしもそうではありません。それは我々が多くをインターネットに期待しすぎているからなのかもしれません。

インターネットはあくまでもツールで、それらを使うことがゴールではありません。FacebookやTwitterのように、多くの人がインターネット上でコミュニティやプラットフォームを立ち上げることに力を注いでいますが、社会の課題がFacebookなどによって解決されてきたでしょうか。SNSのプラットフォームからの恩恵(ベネフィット)と、社会へのコストのバランスをしっかりと考えないといけません。

コストよりもベネフィットが重要視されますが、コストとして、予期せぬ結果をまねくということも頭に入れておかなければいけません。インターネットに対しては、よりクリティカルになる必要があります。結果としてではなく、ひとつの道具として使うことを意識しなければいけません。個々人が、より活動的になるためのツールでしかないのです。

 

──どんな「予期せぬ結果」が現実では起きているのでしょうか……?

 

Alemanno 現実は、誰がインターネットの社会をコントロールしているのでしょうか。多分ほんの一握りの人でしょう。それは新たな形の帝国であり、もう一つの政治システムであると言えます。そのシステムの中では、特定かつ一握りの人たちが、インターネットでデータコントロールやアルゴリズムを使って、私たちがどのような暮らしを送るべきか、どのような環境が私たちの選択を決定するか、を決める権利を与えられています。しかし、これは不平等な社会そのものだと思います。あなたを消費者とさせていく現在の経済システムにおいては、収入がすべてなのです。

ご存知のように、Facebook上の投稿は、すべての情報があなたの見たいものではないと思います。他の人があなたに見てもらいたい(見るべき)と考えている情報が流れて来ているのです。しかし、そのプラットフォームから抜け出る意外に、あなたはその罠から免れる術はないですよね。

FacebookでもGoogleエンジンでもすべてのものはオープンではありません。都合の悪いことについては隠すようなこともあります。これはインターネットのダークサイドの部分です。

社会起業家による、国境を越えた相互の交流が必要

──インターネットが加速させていると思いますが、collective impactが潮流になっていますね。これから世界中で恊働がおこっていくのではないかと思いますが、これからの世界の社会起業家たちの間で、どのような恊働が起きると考えますか?

 

Alemanno collective impact という言葉自体が非常に複雑なワードになってきています。どのようなモデルケースが機能するかしないかといことを、国境を越えて話し合わなければならないでしょう。どういったものが機能するかいなかを議論し、ブレストし、アイデアを共有していくことが必要です。

これまでは、特定の大企業といった組織がそれらを担ってきていたと思います。GoogleやFacebookがアジア市場に進出したりなどです。しかし、世界中のどの地域でも同じようなやり方が通用するかというと、そうではありません。そのため、社会起業家は、既存の組織や起業家たちのエコシステムと共存しながら、もっとモデルのテストやアイデアの再現をして、それらが自分たちの取り組む特定分野において、より通用するようなモデルを開発することが求められます。

社会起業が成功する要因として、適切な組織や人と交流できるかということがあります。社会起業家による、国境を越えた相互の交流が必要です。その理由のひとつは、自分のアイデアの実現のために、よりよい実践環境を手に入れることができるからです。もうひとつは、資本の循環が起きるからです。こういった取り組みがコレクティブインパクトを生んでいくのではないでしょうか。

社会起業家は通常、ローカルなインパクトを生みだすと考えられています。なぜなら、彼らが解決しようと取り組む課題は、1つの地域で起こっているものだからです。しかし、それらは他の国でも起きています。社会課題は本来、グローバルなものなのです。1つの国で上手くいくものは、他の国でも上手く行く可能性があります。地球規模で社会の課題は山積みしています。特定の箇所で成功した事例が他の箇所ではどのように機能するかといったことを、繰り返し実践していくことが大切です。

バランスが保たれていれば、コラボレーションも起きやすくなる

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──Ategekaさんはどう思われますか?

 

Ategeka バランスが大切です。最初は、あなたがコラボレーションしたい会社や人、世界がどのようなニーズを持っているかということを把握すること。すべての人が何かしらのニーズを持っています。コラボレーションを生むためには、彼らの要求にどのように答えられるか、自分のニーズがどのように満たされるかということを考えないといけません。ある人は、あなたから資金を得たいと思っていたり、あなたの商品を買いたいとか、あの人はこれが欲しいとか、そういったことは分かるかもしれません。

しかし、重要なのは、なぜその人は、その商品を買いたいのかということです。相手をしっかりと観察することです。例えば、私がペンを作ったとします。あなたに買ってほしい。ポイントは、なぜ他にもたくさんのペンがあるのに、これを買わないといけないのかということを相手に理解してもらうことです。自分のペンがベストであるということをしっかりと把握する必要があります。

さらにいうと、なぜそのペンが必要なのかということです。お互いに何が必要かを読み取り、その間のバランスをとること。もし私があなたに投資をしてもらいたいとしたら、あなたは、なぜ私に投資をする必要があるのかということを考える必要があります。多分そこから生まれるインパクトに期待しているからでしょう。バランスがしっかりと保たれていれば、コラボレーションも起きやすくなるわけです。

つらい時期には、周囲の人の共感を得られることが状況を打開する大切な要素

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──ここからは、お二人の個人的な部分のお話も聞かせてください。起業家としてタフな場面にたくさん出会ってきたと思いますが、そういったときはどう自分を奮い立たせてきたのでしょうか?

 

Ategeka どんなビジネスにおいても、挑戦というものは避けられません。必ず直面する問題です。もし挑戦をしなければ、そこにイノベーションは生まれません。

良きリーダーは、困難な状況をどのように打開するか常に思考を巡らせています。底辺からスタートした私の場合、いつも自分に言い聞かせているのは、「状況は今よりももっと酷くなるかもしれない」ということです。しかし、想い通りにいかないときにこそ、エネルギーが得られるのです。

ときに本当につらく、従業員に給料を払えなくなるなど、嫌になることがあるかもしれません。しかし、自分や組織のビジョンをしっかりと理解していること、それをもってつらい時期でも周囲の人の共感を得られることが、状況を打開するための重要な要素となるのです。他の人にとってはどうかわかりませんが、これが私の考え方です。ある人は、もっと悪くなると考えるよりも、もっとよくなると考えたい人もいるかもしれませんが。

より良いリーダーになるためには、失敗が必要である

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──Alemanno氏はどうでしょうか?

 

Alemanno 起業家へと成長していくためのプロセスは、結果と同じくらい重要なことです。起業とはプロセスであり、旅であるということを認識することが大切です。旅の途中で困難に直面しますが、それは必要なことであって、なぜそういった困難に直面する必要があるかというと、困難な経験は、自身をコンフォートゾーンから抜け出させ、違う角度から物事を捉える力を与え、自己を見つめ直すことにつながります。ビジョンに到達するには失敗を数多く経験しないといけません。

問題は、その困難をどのように乗り越えるスキルを身につけるのかということです。自分のスキルや方法論を磨き、チームで乗り越えられるような風潮をつくっていくことが大切です。私は、多くの人と自分の考えを共有してきました。いろんな人と情報を共有しながらも、多くの人からフィードバックやアドバイス、サポートをもらいました。その過程は、それまでの自分の考えを改め、より良いものへと変換していくためのプロセスそのものでもありました。その都度ビジョンを修正し、より現実的にビジョンを語れるようになりました。こういったプロセスが大切であり、もし失敗することが変化するということであれば、それらは、よりよいリーダーになるために必要なことなのです。失敗が必要であるということが私からのメッセージです。

 

──失敗することは変化することで、リーダにとって必要。

 

Alemanno 特に日本では、失敗するということに強い抵抗があるのではないでしょうか。失敗を受け入れるという文化を醸成していかなければいけません。失敗は大切な経験のひとつなのです。失敗はときに人を強くしてくれます。成功するには、エクセレントであるべきという考え方から、成功するには失敗を経験する必要があるという考え方に意識を変えていかなければいけません。何度も言いますが、クラスで優等生であろうとする必要はありません。

>>次回「世界経済フォーラム選出のリーダー・YGLが語る、「失敗する」ということ(3)」はこちら。

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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