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NPOマネジメントの現場から:「早く行きたいなら一人で行け、遠くへ行きたいならみんなで行け」SVP東京代表理事、NPOカタリバ常務理事/事務局長・岡本拓也さんインタビュー(4)

2013.12.18 3,249view 

ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(SVP東京)の代表、そしてNPO法人NPOカタリバの代表代行の二足のわらじを履く岡本拓也さん(36)。初回はユーラシア大陸放浪のさなかでマイクロファイナンスと運命的に出会った経緯を、そして前々回と、前回は事業再生プロフェッショナルからNPOのマネジメントへと転身した際の決断や迷いについて語っていただきました。最終回となる今回は、「カタリバやSVP東京をマネジメントする現場から岡本さんが得たもの」をお送りします。

SVP東京代表理事、NPOカタリバ常務理事・事務局長 岡本拓也さん

<写真:岡本拓也さんインタビュー風景>

早く行きたいなら一人で、遠くへ行きたいならみんなで行け

石川:(前回の続き)企業を辞めてカタリバとSVP東京のマネジメントに転職された2011年3月から、約2年半が過ぎました。その間を振り返って、いかがですか。

岡本:2年半の間は、ともかく必死でした。話してかっこいいようなことは何もありませんが、事業は着実に成長していると思います。カタリバは女川町と大槌町でコラボ・スクール事業を展開していますし、震災以前からの「カタリ場」事業も、これまでに全国28都道府県へ届けることができました。僕はカタリバで職員番号が10番なのですが、今では50名近くの職員がいます。

石川:深さと規模の両方で成長されていますね。

岡本:そうですね。一方のSVP東京も、代表承継の際には、事業を継続すべきなのか?というゼロベースから議論を進めていましたが、今では100名以上のパートナーが所属して、多様な社会起業家と協働でプロジェクトを進めています。最近では、世界的なIT・コンサルティング会社を退職してフルタイムスタッフが参画してくれました。いよいよ第二創業期も大詰めを迎えています。

石川:NPOやソーシャル・ベンチャーの変革プロセスをマネジメントとして支える上で、大事にしていたことはありますか。

岡本:僕は、「早く行きたいなら一人で、遠くへ行きたいならみんなで行け(If You Want To Go Fast, Go Alone. If You Want To Go Far, Go Together)」というアフリカのことわざが好きで、よく使っています。カタリバでもSVP東京でも、このことを大事にしてきました。

石川:NPOマネジメントの現場において、その考え方はどのように活かされているのでしょうか。

岡本:例えば、自分で考え抜いた結果出した戦略と、他のメンバーとの対話から生まれる戦略とが食い違うことがあるとします。自分では色々調べて論理も検証した上で言っているので、これがベストだと思っているわけです。そういったときに、問題解決のために最適そうな解を選ぶか、みんなで対話して納得できる解を選ぶか、という問題が発生します。その2つは、常にイコールになるとは限りません。そういう時に、議論を尽くした上で、僕は最適解ではなく、納得解を選ぶことがあります。譲れない部分はしっかりとおさえつつ、信頼するメンバーの意見を取り入れながら方向性を修正するのです。

石川:それは、なぜでしょうか。

みんなが納得して働ける環境をつくる

岡本:結局のところ、みんなで納得感をもって取り組んだほうが、結果としてうまくいくことが多いという実感があるからです。ちょっと遠回りだったり、危うさがあるように見えても、みんなが腹に落ちている状態で物事にあたったほうが、まわりまわって不思議と良い結果につながることが多いですね。そういうことを踏まえて、最終的に意思決定します。あとは、その結果をまるごと引き受ける腹を括ることが大切ですね。

石川:正しいことをやっている感よりも、自分が決めてやっているという楽しさが先に立つでしょうね。

岡本:はい。それに、そういう進め方をしていると、メンバーも僕が彼らを信頼していることをわかってくれます。そうすると、思ったことをちゃんと出して、オープンに議論するという風土が組織に浸透します。僕がメンバーを信頼し心を開けば、メンバーは必ずそれを受け止めて、心を開いてくれる。そういう意味で、組織の在り方はトップやマネジメント層の鏡みたいなところがあると思います。それに結局のところ、みんなで信頼し合い、自律的に仕事をしたほうが人は成長します。それが、組織の成長と社会へのインパクトに繋がっていくのだと思います。

石川:岡本さんのお話からは、一貫して「腹を決めて仕事に取り組む」というメッセージが伝わってきます。それを自分だけに適用するのではなく、一緒にはたらくメンバーが「自分のやりたいことと仕事がつながっている」ということを、とても大事にされているのですね。

出会った志を忘れずに挑戦し続けることの大切さ

石川:最後に、これからNPOやソーシャル・ベンチャーに転職しようという人たちに向けて、何かアドバイスをいただけませんか?

岡本:僕が伝えたいことは、「腹を決めるか、決めないか」が大事で、「能力のあるなし」は問題ではないということですね。僕は「人の能力にそれほどの差なんてない」と心から思っています。だからこそ、日々腹をくくって仕事に取り組めているかどうかが大事だと思うんです。その小さな差が、やがて大きな積み重ねになってくるのだと思います。

もうひとつは、僕が出会って心を動かされた人たちのように、「自分の芯からやりたいと思えることが、仕事やその結果につながっているか」ということです。そういった瞬間の積み重ねの先に、遠くにたどり着けたり、大きな結果がうまれたりするのではないかと思います。

石川:腹をくくるということ、そして自分と仕事を一致させていくということですね。これは働き始めた後にも、折にふれて問いなおすべきことだと思います。

岡本:どうやって腹をくくるのか、という問いを持つ人もいると思います。意を決して飛び込む対象が見つからない、という状況です。僕はよくカタリバに参加している大学生や、転職に悩む若手社会人から相談を受けるのですが、その時は「あせらなくていい」と伝えています。加えて、「でも、その思いを忘れないでほしい」とも。「その熱を、30歳になっても忘れずに持ち続けてほしい」と、よく話しています。だから、情熱を傾ける対象が見つからない時はじっと火を絶やさず、自分を磨いていってほしいですね。

石川:いずれどこかで機会は巡ってくるから、ということですね。

岡本:僕の場合はそうでした。公認会計士の資格を取るときも人一倍苦労したし、学生時代からソーシャルビジネスを起業したようなカリスマでもありません。ただ、とにかく21歳の頃に出会った志を決して忘れずに、以来自分が正しいと思うことを愚直にやり続けてきました。

石川:チームやリーダーからの信頼が厚い岡本さんが、どのようなことを考えて日々仕事に取り組んでおられるのか、そしてどういった道を通ってそこに辿り着いたのかが、とても気になっていましたが、今日のインタビューで、その一端が垣間見えたような気がします。お忙しい中お時間いただき、どうもありがとうございました。

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SVP東京代表理事、NPOカタリバ常務理事・事務局長/岡本拓也

1977年大阪府生まれ。大学時代に1年間休学し、短期留学と海外約30ヶ国の旅を経験し、バングラデシュにてマイクロファイナンスと出会う。大学卒業後に公認会計士に合格し、大手監査法人にて監査やIPO支援等を担当。その後、同じPwCグループのコンサルティング会社・プライスウォーターハウスクーパース株式会社にて企業再生業務に従事。同社に在職中に出会ったソーシャルベンチャー・パートナーズ東京(以下、SVP東京)を通じてソーシャルビジネスの世界に魅了され、震災直前の2011年3月に独立。同年4月よりSVP東京 代表理事(2011年6月〜)に就任し、5月よりNPOカタリバの理事 兼 事務局長に就任(2013年6月より常務理事)。現在に至る。その他、KIT虎ノ門大学院 客員教授、内閣府 共助社会づくり人材ワーキンググループ専門委員、東日本大震災復興支援財団「まなべる基金」選定委員なども務め、現場と支援の両面から、ソーシャルセクターの成長と成熟に尽力中。

この記事を書いたユーザー

石川 孔明

石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。

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