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アジアの仲間とつながる社会起業家の挑戦―若者の起業支援プログラム「Youth Co:Lab」参加者インタビュー

2023.08.23 

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今年は渡航制限も緩和され、「世界で挑戦したい、動き出したい」とうずうずしている方も多いのではないでしょうか。そんな方にぴったりのプログラムが、Youth Co : Lab(ユース・コーラボ) 「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ」(以下SIC)です。

 

アジア太平洋地域で開催されているこのコンテストでは、SDGs達成に焦点を当てたビジネスモデルやアイディアを広く募集しています。国連開発計画(UNDP)とシティ・ファウンデーションが共催し、若者による社会革新や起業を支援するプログラムYouth Co:Labの一環です。

 

本プログラムを通じて、アジア太平洋地域で15,000人以上の若手社会起業家や起業志望者が支援を受け、1,700以上の社会的事業の立ち上げや加速に繋がっています。さらに、SICの受賞者は、新たな学びや、ユース・コーラボアジア太平洋地域サミットなどでグローバルに事業を紹介するチャンスを獲得することができます。

 

そのアジア太平洋地域サミットが、今年7月にバンコクで開催され、ユース・コーラボ SIC日本大会2022でLeave No One Behind賞を受賞した本嶋さんが参加しました。今回は本嶋さんに、プログラムを通して得られたことや、バンコクサミットでの学びについてインタビューします!

 

本嶋さん

冷蔵庫プロジェクト代表 本嶋向日葵 (もとじま・ひまわり)

東洋大学1年 国際学部グローバルイノベーション学科所属。日比両国にルーツを持つマニラ生まれ東京育ち。 マニラの高校に留学時、貧困の連鎖に苦しむ同世代の若者を目の当たりにして、途上国貧困支援事業「冷蔵庫プロジェクト」を発案。

Youth Co : Lab ソーシャルイノベーションチャレンジ日本大会2022 Leave No One Behind(誰一人取り残さない賞)受賞 。日本政策金融公庫主催「高校生ビジネスプラン・グランプリ」第10回グランプリ受賞。東京都起業家スタートダッシュ第1期生。NPO法人ETIC.『Makers university u-18』第8期生。

日本の豊かさとフィリピンの貧しさを見て感じた、自分自身の存在意義

 

――本嶋さんが社会課題に関心をもったきっかけを教えてください。

 

本嶋さん : 4歳でフィリピンから日本にきて、学生時代を過ごしました。元々はやりたいこともなく、将来へのビジョンもなくて、社会課題への興味も薄かったんです。

 

高校二年生のタイミングで大学受験を意識し、進路について考えたときに、「自分は何ももっていない。このままじゃだめだ」と感じて。何も知らないから、まずはルーツであるフィリピンに留学しよう、これを機に自分のことを知ろうと思って、高校二年生の時にフィリピンへ留学しました。

 

フィリピンの貧困エリアに行って、同世代が貧困の連鎖から抜けられずに諦めている姿をみて、「生まれる国でこんなにも差が出るんだな」と思い、やるせなくて。日本の豊かさとフィリピンの貧しさの間にいる自分の存在意義を考えさせられて、何かを起こしたいと思ったことがきっかけです。

 

――それから事業をはじめたんですね。ソーシャル・イノベーション・チャレンジ日本大会2022 Leave No One Behind賞を受賞された、「冷蔵庫プロジェクト」とはどのような取り組みでしょうか。

 

本嶋さん : 途上国の貧困女性に冷蔵庫と資金を提供して、子育てをしながら自宅玄関先でミニストアを経営してもらい、所得向上によって貧困からの脱却を目指すというプロジェクトです。暑いフィリピンでは冷たいものがよく売れるので、冷蔵庫を組み入れています。

思いついたきっかけは、幼いころの経験にありました。幼少期はマニラに住んでいて、母がミニストアを営み、私もお店のお手伝いをしてお菓子をもらっていたことがビジネスの原体験です。

 

――事業を立ち上げるのは、とても大きな一歩だと思います。不安や、壁だと感じていたこと、難しかったことはありますか。

 

本嶋さん : 私は計画を立てるのが苦手で、やりたいと思ったらまずは行動してみる性格なんです。経営や管理の仕方も分からなかったけれど、留学した時お世話になった方にお電話をして相談したら快く引き受けてくれたので、「じゃあやってみよう!」という気持ちで、自己資金3万円で始めました。

 

難しかったことは、国民性を理解するということ。フィリピンの貧しい人々は、その日暮らしの感覚が強く、一定の収入を得ると満足してしまい、いざという時のために貯蓄をしようとしません。また、恥をかきたくない意識が強く、問題が起きても隠してしまい、それが大問題につながる恐れがあります。

 

以前、冷蔵庫が壊れたけれど黙っており、売上が減っていたことがありました。理由を聞くと、「冷蔵庫が壊れたのを咎められることや、修理代が気になって言い出せなかった」と言われたことがありました。

 

文化の壁を乗り越えるために、フィリピンの人々の考え方や習慣について、フィリピン出身の母からアドバイスをもらいました。店主に対する経営アドバイスも、日本的な言い方だと伝わりません。フィリピンの方にこちらの真意が伝わるような言い回しに変えて、毎週雑談を交えて、オンラインでヒアリングをしながら業務改善に努めました。

世界への一歩を踏み出すために、応募を決意。一起業家としての挑戦

 

全体写真

 

――なぜソーシャル・イノベーション・チャレンジに応募しようと思ったのでしょうか。

 

本嶋さん : 高校生の自分の取り組みがどう評価されるのか知りたくて、成長したいという思いと、世界への足掛かりにしたいと決意して応募しました。

 

――受賞者3組に対して、シティグループとデロイトトーマツグループによる、3カ月の合同メンタリング・セッションがありました。セッションはどのような場でしたか。

 

本嶋さん : シティグループのメンターからは、世界金融やVC、資金調達について教えてもらいました。デロイトトーマツグループのメンターは、東南アジアでの起業経験がある方で、フィリピンでの起業の際の注意点やアドバイスをいただきました。

 

驚いたのが、普段はビジネスのプロフェッショナルとして活躍されている方々が、社会課題解決に対して純粋な思いをもっていらっしゃることです。

 

高校生の私に対して、一起業家として真摯に向き合ってくださり、今何が必要なのかということについて全力で向き合ってくれる方々に出会えたことは、大きな喜びでした。メンタリング期間が終わった今でも、個別にメンタリングの機会をいただいていて、とてもありがたいなと思っています。

手も声も震えた、バンコクでの登壇。アジア各国の仲間とつながる喜び

 

発表

 

――バンコクサミットは、どのような場でしたか。

 

本嶋さん : 参加者のみなさんは国や地域、言語も異なりますが、同じように社会課題を解決しようという熱い想いがあって、分け隔てなく交流し、称えあう姿が印象的でした。一人一人がピッチ登壇する際、終わるたびに会場が盛大な拍手で包まれていました。登壇後は、「ここがよかった」と互いに肯定し合っていて、そのような姿を見たのは人生ではじめての経験だったので、自分でも言葉にならないほど感動しました。

 

実際に私も登壇させていただいたのですが、とても緊張して、手も声も震えました。今回最年少でのプレゼンテーションだったこともあり、登壇後は沢山の方に声をかけてもらい、アドバイスや支援の申し出もいただきました。みなさんとても良くしてくださり、まるでアジア太平洋各国に、お兄さんやお姉さんができたような感覚でした。

 

――とても素晴らしい経験で、熱量が伝わってきます。サミットでの経験を経て、自分自身で感じている変化はありますか。

 

本嶋さん : サミットでは「絶対自分から話しかけて、友だち作ろう!」と思って参加しましたが、現地でいざ英語を使うとなると、はじめは緊張して全く話すことができませんでした。

一緒に同行してくださったUNDPの天野さんは、たくさんのサポートをしてくださったのですが、その姿勢から学ぶことも多くありました。天野さんが全く知らない方々にも積極的に話しかけていらっしゃる様子をみて、「私も勇気を出さなきゃ」と思って、そこからは恥ずかしがらずに自分から話しかけるようにしました。

 

そのおかげで、20カ国以上に友人ができました。つながったSNSでは、彼・彼女らが毎日事業の進捗を投稿していて、バンコクから帰国しても日々刺激を受けています。事業に対する意識も高まり、来月フィリピン行くときに、個人事業主として登録することにしました。2店舗目を立ち上げようと思っているので、店主になっていただけそうな方とメールでやりとりをしたり、自分にできることを進めています。

 

サミットでもう一つ感じたのは、日本は先進国であり、他のアジアの国々よりも進んでいるという自分自身の中にあった偏見や驕りのようなものです。ですが、それは大きな誤りでした。途上国であるフィリピンなどの東南アジアチームの方々は、やる気に満ち溢れ、プレゼンの内容も素晴らしく、驚きと感動がありました。

 

日本にも素晴らしい社会起業家が多くいらっしゃいますが、「世界の人々に負けてはいられない」という思いが芽生えました。同時に、日本に足りないものは何だろうか、日本はこのままでいいのだろうかという危機感も抱きました。

 

――周囲の友人やご家族は、本嶋さんの様子や成長をみて、どのような反応でしたか。

 

本嶋さん : 大学の教授に今回のことを報告したところ、素晴らしい経験をしたねと関心を持っていただき、講義内での発表の機会や、大学ウェブサイトへの掲載をしていただきました。私の所属する国際学部は留学生も多く、留学生の友人にユース・コーラボやサミットでの経験を話したところ、「私もぜひ参加したい」と言っていました。家族からは、おめでとう、がんばったねと声をかけてもらいました。

 

――ユース・コーラボは世界と繋がる良い機会ですが、本嶋さんにとって、グローバルな視点を持ちながら、現場に根差して活動することの意義は何でしょうか。

 

本嶋さん : 正直、自分自身がグローバルにやっているという意識はあまりなくて、目の前にあることを精一杯やっているだけなんです。

 

その中で、どうやったら貧しくて困っている人々の生活をもっと豊かにできるのかを考えて、実践しています。失敗して落ち込むこともありますが、プロジェクトによって貧困世帯の収入が向上して喜んでもらえると、やってよかったなと思います。「自分がやらないで誰がやる、私が変えるんだ」という想いでプロジェクトに取り組んでいます。

世界への一歩を踏み出したいあなたへの、応募メッセージ

 

メンバーと

 

――最後に、これからソーシャル・イノベーション・チャレンジに応募される方への応援メッセージをお願いします。

 

本嶋さん : 私は高校三年生で応募をしましたが、UNDPとシティ・ファウンデーションの共催であることや、錚々たる審査員の方々を前にとても緊張したことを覚えています。ですが審査で関わる皆さんは、年齢に関わりなく若手起業家の支援に真剣に向き合ってくださいました。臆することなく、熱い思いを持った高校生や、若い世代の方にも参加してほしいです。

 

学生と社会人の垣根はなく、同じ土俵にたてることは、「ソーシャル・イノベーション・チャレンジ」ならではだと思います。特にセッションのメンタリングは、高校生で専門知識が浅い私にとっては、これから事業を進める上での貴重な知識の獲得に繋がりました。勇気をだして、ぜひ一歩を踏み出していただきたいと思います。

 

<編集後記>

まっすぐな瞳と笑顔でお話をしてくださる本嶋さんからは、熱い想いと、描くビジョンに向かって挑戦をつづける芯の強さを感じました。本嶋さんのように、勇気をだして一歩を踏み出した先に広がる可能性を信じて、ぜひ一人でも多くの方に応募をしていただきたいと思っています。

 

◆Youth Co : Labソーシャル・イノベーション・チャレンジ2023の概要はこちらから

https://www.undp.org/ja/japan/news/youth-colab-sic2023

◆応募締切 : 2023年9月25日 (月) 正午

 

写真提供 : UNDP

 


 

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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