貧困層が低価格な治療費で医療が受けられるスキームを展開しているデヴィッド・グリーン(Project Impact)や、教師を養成する仕組みを通じて教育格差の問題を解決しているウェンディ・コップ(Teach For America)のような、国際展開を行う社会起業家がまだまだ少ないと言われている日本。
NPO法人ETIC.(エティック)が今春から新しく手掛けるソーシャルスタートアップ アクセラレータープログラム 「SUSANOO(スサノヲ)」では、確立した成功モデルを他地域・他分野へ展開していくことを目指す起業家の輩出を行っていきます。今回は、プログラムリーダーである渡邉賢太郎さんに、どんなプログラムなのかを伺いました。
写真:3/3のキックオフイベントは代々木能舞台で開催される
リーンスタートアップ(高速仮説検証)×ソーシャルビジネス
田村:まず、SUSANOOについて、どんなプログラムか教えてもらえますか?
渡邊:半年間、週1の頻度で集まってセミナーやワークショップを行いながら、事業を作るために必要なことを実践的に学んでいくプログラムです。「リーンスタートアップ※」という考え方を用いたカリキュラムになっており、今春から開催する1期では、5チームを募集します。
今までETIC.が培ってきたネットワークやノウハウ、また、IT分野の第一線で活躍し、2030年までにアジアにシリコンバレーをつくることを目指して起業家の育成に取り組む、孫泰蔵氏(MOVIDA JAPAN株式会社代表取締役兼CEO / NPO法人ETIC.理事)の全面的な協力を得ながら実施いたします。 ※リーンスタートアップ(lean startup):米国の起業家、エリック・リース氏が2008年に提唱した、創業・新規事業の手法。”リーン”とは日本語で「無駄がない」という意味。最低限のコストで仮説検証を繰り返し、市場のニーズを探りだすことが特徴。
田村:全方位的なサポートというのは、どういったことでしょう?
渡邊:世の中にある起業家支援は、ヒト・モノ・カネ・情報のどれかを提供するものがほとんどです。SUSANOOでは、メンタ―や専門家とのマッチング、コワーキングスペースの提供、活動支援金の提供、セミナー実施など、これら4つの全てが揃っています。コワーキングスペースの提供については、ETIC.としても初めての試みになります。
メンタ―も、NPOやソーシャルビジネスなどソーシャルセクターだけでなく、ビジネスセクターで活躍している人が揃っています。
確立した成功モデルを他地域・他分野へ展開していくことを目指す
田村:これまでは、起業家個人のストーリーに焦点があたっていた部分もありますが、インパクト(社会にうみだす変化・事業の成果)に焦点をあてていくというのは、面白いですね。
渡邊:根本的なモチベーションとして、社会的にインパクトのあることをしたいという想いを持っている人であれば歓迎です。社会的にインパクトを出せる仕事をしようと考えるときには、公務員や政治家というキャリアをイメージする人が多いかもしれません。
今回のプログラムでは、起業時から大きな展開を意識して事業に取り組む、NPOを中心とした組織を「ソーシャルスタートアップ」と提唱し、これまで起業家という選択肢を考えてこなかった人にも、憧れを感じていただけるようにしていきたいです。社会起業塾は1年間、じっくりと内省しながら自分自身と事業を見つめなおしていくプログラムですが、SUSANOOでは仮説検証を繰り返し、スピード感を持って動いていきます。
「ノーベル平和賞をとれるような卒業生を輩出したい」
田村:ハードルが高く感じる人も多そうですが、どういった人材を求めていますか?
渡邊:最低2人のチームで、共同創業者と一緒でないと応募できない仕組みになっていますので、そこはハードルとなるかもしれません。起業は、1人だと成功率がそんなに高くないので、参加までに仲間を見つけてきてほしいなと思っています。そこをクリアしていて起業したいという想いがあれば、ビジネススキルに自信がある方でも、スキルには自信がないけれど勢いでは負けないという方でも、歓迎です。
田村:プログラムを運営していく上で、大切にしている想いなどがあれば、お聞きしたいです。
渡邊:今までは、何かしらの社会課題を解決すること、つまりマイナスをゼロにすることを「ソーシャルビジネス」と言っていたように思います。けれど、社会課題は機会でもあるわけです。「あったら更によくなる」というものをつくり、ゼロをプラスにしていく。そういった考え方のサービスが生まれていくといいと思います。ノーベル平和賞をとれるようなサービスを生み出す卒業生を、輩出したいですね。
田村:ありがとうございました!
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ETIC. ソーシャルスタートアップアクセラレータープログラム リーダー/渡邉賢太郎
2006年3月立命館アジア太平洋大学卒、2010年8月三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社を退職。2011年から二年間の世界一周の旅を経て2013年8月より現職。
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