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地方創生ど真ん中一丁目 〜行列のできる中小企業の事業相談所はいかにしてできたか? (後編)

2016.05.25 

年俸1200万の地域の仕事

秋元:さっき小出さんの3つの条件のうちの”情熱”についてなんですが、よっぽどおせっかいな人じゃないと、やっぱりできないんです、この仕事って。 日向の募集は年収1000万円と高額じゃないですか。先ほどの小出さんのお話で地域活性のど真ん中でこれだけの意義のある仕事が生まれたということは、とてもすごいことだと思う。同時に、これを担えるようなコミュニケーション能力やビジネスセンスのある人は、もっと給料をもらえる人たちでもあるわけです。

でもそういう仕事よりも、おせっかいで、昼夜問わず中小企業の皆さんと一緒になって走りたい、という情熱がある人じゃないとやっぱりできない。言葉を変えると、社会起業家的、と言えるかもしれない。そういう人たちでなければいけないっていうのが、”情熱”っていう言葉の表裏だと思ってるんですよね。

だからそういう意味では、とてもDRIVE的だし、とてもソーシャルなチャレンジでもある。 8M0A5762 小出:ビジネスセンスの高い人、コミュニケーション力のある人って、どこだって引く手あまたなんですよ。どの世界に行ったって圧倒的なパフォーマンス示すんですから。ところが、そういった人たちの中でも、やっている仕事に対して疑問を持ってる人たちっていうのが少なからず居ると思う。

大企業での自分の働きが、企業のプラスになっているかもしれないけど、働き方としてそれだけでいいのか。自分たちの会社の儲けに繋がってるかもしれないけども、それでいいのか、と思っている人たちって、たくさんいるはずなんですよね。それが具現化したっていうのが、東北震災のときに仕事を投げ打って東北に入る人たちであり、あるいは全国の街おこしっていう世界の中に身を投じるような若い人たちだと思うんですよ。

ぼくはずっと全国のコミュニティビジネスやETIC.の活動を見ている中で、本当に優秀な人たちが地域の中で頑張ろうとしてることがよくわかった。昔、地域おこしのプロフェッショナルを作ろうというセミナーで2回くらい講師やったことがあって。上場企業の課長とか外資系の会社の人たちが4、50人も集まっちゃって、それこそ熱病状態で議論をしている。聞いてみたの。

「なんでこんなことに興味があるの?」 そうしたら、 「地域おこししたいんです」 って言う。 「じゃあやればいいじゃん」 って言うと、 「そう言ったって、仕事がないんですよね」 って。

彼らはその時点で相当な年収を持ってやってきていて、それを投げ打ってやるっていうのは無理なんだってわかった。でももしそういうポジションがあれば、積極的に本当にプロフェッショナルな可能性を持つ人が来るんじゃないかと思ったんです。少なくともこういったポテンシャルのある人たちに対して、正当な報酬が払われるような体系にしたかった。それを国に働きかけてやったのが、よろず支援拠点(*)なんです。

岡崎、天草、そして五島列島へ

小出: どの町にもどの地域にも産業ってあって、中小企業がある。農業者だっている。その中から一人でも多くの前向きな人たちを生み出していくことが我々のミッションであり、ミッションが具現化したときには、地域の中に前向きなチャレンジャーが増えるってことじゃないですか。

その町は元気になるに決まっていますよね。これが究極の絶対的な地方創生のモデルなんですよ。それにようやくみんなが気づきだしたからバタバタといろんなところがやろうとしているんです。

OKa-Bizプロジェクトで秋元くんたちに任せるっていうのは、実は相当な賭けだった。自信はあった。だけど、やっぱりやらせてみないとわからない。失敗したらどうなるってあるわけ。失敗すると、「経験ではなく適性だ」ってことの証明が崩れちゃうんですよ。次がなくなっちゃう。

でも秋元くんたちは、信じられないくらい上手くやってくれた。完璧に証明されちゃったわけです。そこでまた次の可能性が広がった。だから今、バタバタと全国に広がっていく現象が起きちゃうんですよ。 次にやったのが熊本の天草。島です。周辺の島をあわせた全体で人口12万人くらい。実は最初に聞いたときは無理だと思った。でもどうしてもやってくれって言われて。公募で103人集めてピカピカの2人を選んだ。そうしたらまた月間150件くらい相談来ちゃった。予約を取るのに1か月以上待つような状態になって。ここでまた次のステージ行っちゃったんです。

岡崎市だって、富士市だって、太平洋ベルト地帯で、製造業があって、大消費圏が近くにあって、実は恵まれてるんです。地域おこしに関する視点から見ると、圧倒的多数の町はそんなに恵まれていない。天草っていうところは島で、周りは海しかない。観光客も来ないから沖縄以上に厳しい。だからあそこで成功しちゃうと、だったらウチも、ということで五島列島からも依頼が来るようになる。

 

——そこでできたら本当に他のどこでも出来ると。

 

小出:そう。秋元くんにも手伝ってもらいながら、天草を上手く浮上させるための仕掛けづくりを全力でやる。そうすると次のステージがある。そういうことを考えながら、ムーブメントを広げ突破していくっていう感じなんです。

今そういう状況にあるからこそ、DRIVEみたいなところでそういう可能性のある若い人たちに、こういう可能性を知ってもらって、チャレンジしてもらいたい。間違いなく、次から次にそれが起きてきますから。

地域を動かすために、地域のど真ん中に立つ

小出:地域を元気にしたいと思うのなら、地域を全体で掴めないとダメなんですよ。端っこでやっていても地域は動かない。地域を動かすためには、ど真ん中に立たなきゃいけないんですよ。これまでのど真ん中っていうのは、政治の方にいっちゃっていたけれども、そうじゃなくて地域に密着している産業がど真ん中。だからこのモデルなんですよ。

町の中の産業支援、産業政策というど真ん中に立つ。当事者が少なくないというのが重要なんです。当事者が一部だけだと地域を動かさない。このモデルはみんなが当事者なんです。それを若い人たちに託すっていう。それが今流れとしてできちゃったんですよね。 8M0A5693 ——町の産業支援っていうのがど真ん中だっていうのは、秋元さんも感じますか。

 

秋元:私が15年やってきたG-netという組織は、長期インターンシップ事業に取り組んできた。その分野では、こと地域や中小企業に特化した存在としては評価をいただけていると思っています。

ただ一方で、オリンピックでいうと10年前の”ラグビー日本代表”。マイナー種目ですが、いつかブレイクする種目だと思ってやってきました。

一方で、中小企業支援っていうのは、喩えるなら”女子卓球”くらいメジャーな種目なんです。福原愛ちゃんみたいな人って日本中みんな知ってるし、石川香澄ちゃんもほぼみんな知ってるじゃないですか。競技人口もそこそこいる。 それくらいの差を感じます。G-netは15年やってるのに、OKa-Bizは2年半。悔しいけど、でも2年半のOKa-Bizの名刺を持っている方が評価知名度が高いんです。行政の方と会う時も、G-net の秋元より、OKa-Bizの秋元のほうが上の人が出てくる。

 

小出:地域からの期待度が違うんです。地域を動かすためには、一部を対象にしているだけでは絶対に動かない。地域を動かすには、地域全体を幅広く面でとらえなければいけない。面で捉えられるのは何かというと、地域の中で頑張っている中小企業者、小規模事業者、農業者を面で捉えるようなサポートで。その中に普通にいわゆるコミュニティビジネスも入ってくる。社会起業家のような人たちもいる。それをやっているのがこのf-Biz、OKa-Bizのモデルなんです。町からすごい期待もされているし、町を動かせる。だから究極の地域おこしなんですよ。

 

秋元:お話をしていると、ふつうの会社の人たちの中に、志を持って事業やっている人がいっぱいいる。話聞けば聞くほど、それっていわゆる社会起業家じゃんって思う人たちだってたくさんいらっしゃる。それをすごく実感しましたね。町にいる普通の社長さんと話しいても、志を持ってやっているおじさんがいるわけです。子育てママでも、「家で自宅サロンやりたいですと。産後のママの支援をしたい」と。産後支援に取り組んでいるNPOと言ってること変わらないわけですよ。

 

——でも社会起業家という言葉は知らない。

 

秋元:そう、知らない。社会起業やソーシャルビジネスなんて知らないって。だからご自分は普通のサロンだと思ってるんですよね。だけどこれって世の中調べてみてこういう存在なんだよって言うと、「え、そうなんですか」っていう人たちが普通においでになる。 そういう人々に日々出会い、サポートしていくという可能性があり、やりがいです。

2026年の地域の姿

——最後に、2026年、10年後っていうのをどう見てらっしゃるのかということをお聞かせください。

 

秋元:スケーラブルだと思ってるんです。富士市や岡崎市、天草などでやっているこの取り組みが、他地域に展開していく実感がある。たとえば公的産業支援機関は全国に約2300か所くらいあって、そこが一つずつ変わっていく、ダイナミックな可能性まであるなと思うんですね。 そういう意味で2026年というのは、地域における中小企業支援とか小規模事業者創業者支援の在り方そのものが変わっている時かもしれません。

小出さんのように、「自分たち売り上げ上げるのが仕事だよね」、「セールスポイントを生かす、ターゲット絞ることが大事だよね」って、支援に関わる人たちみんなが言えるようになっていると。それがスケールする可能性。2026年に、f-Biz的、OKa-Biz的な取り組みが日本各地で大きな流れになっているってすごくワクワクすることじゃないかなぁと。

 

——ありがとうございます。小出さんはどう見てらっしゃいますか?

 

小出:我々のf-BizとかOKa-Bizでやっている取り組みっていうのは、まず間違いなく究極の地方創生のモデルなんです。全国どこの町だって普遍的に機能する。

地域の中小企業者、小規模事業者が今よりも良くありたいって思ってないはずがないのだから、それが具現化できるような場所があるとすれば、それはみんなに望まれるはずだから。

日本の、国内の景気価格を見たときに、10年後今よりも環境が良くなってるとはとても思えないですよね。より厳しくなる。ということは、我々のサポートがより求められるということになる。その時にサポートがもっと広範囲に展開されていると望ましい社会になるし、絶対そうなるだろうとみてるんです。

当面の間、最も大きいのは人の問題なんです。可能性のある人が、現状ではなかなか見つからないってことなんです。だけどそれを一つ一つ我々は探し出して見つけるっていうふうにやってるんですが、もっとたくさんの人たちにこれを知ってもらいたいなと。 そして10年後、より少子化が進み、より人口減少が起き、地域経済っていうのはその中で厳しくなるに決まっている。求められていることは何か? ブレイクスルーするために何が必要か? イノベーションだと思うんですよ。

政府が求めているような、次世代を担う新産業を育成するようなイノベーションっていうのは、我々みたいな公のサポートでも生み出すことが難しいし、今までだってないんですよ。それはやっぱり民間セクター。 一方で、日本の99.7%で構成されている中小企業者、小規模事業者は、小さなイノベーションを起こせるんです。

小さなイノベーションを多発させると、やっぱり大きな力になるんです。ここだな、って思うんです。地方にとってみても、そこに活路を求めていくことじゃないのかなって。 我々はそこでフロントランナーでありたいし、僕は秋元くんと一緒になってそういう可能性を開いていかなくちゃいけなくて、そういう前提のもと10年後を考えたときには、そんなに悲観しないでも済むかもしれない。 責任重大ですよ。人の人生がかかっているんですから。企業の生き死に、従業員たちも含めたらものすごい人たちの生き死にがかかっている。

だから結局これは貧困対策にもなるし、あるいはシングルマザーの相談なんてのはいっぱいあって、いろんな意味で社会課題の解決の糸口になってるわけですよ。 だからこそ若くて志の高い仕事をしたいと思ってる人たちにはこれから背負っていってもらいたいと思うんですよね。本当の意味で地域のど真ん中に立って、本当の意味で地域を動かす。究極の地域おこしを。

 

——10年後に本当にそれが全国に広がっていったらほんとうに素晴らしいです。ありがとうございました。


 

【真の地方創生】行列ができる相談所が起こす、企業・町の「奇跡」を支えるスタッフ募集(2017.11更新) 岡崎ビジネスサポートセンター OKa-Biz(株式会社やろまい)

(募集終了)f-Biz(エフビズ)をモデルとした「大村市産業支援センター」の開設にあたっての求人はこちら

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DRIVEメディア編集部です。未来の兆しを示すアイデア・トレンドや起業家のインタビューなど、これからを創る人たちを後押しする記事を発信しています。 運営:NPO法人ETIC. ( https://www.etic.or.jp/ )

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