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「人をいかし、つながりを大切にすることで地域を豊かに」 南三陸町のハブパーソン、阿部忠義さんの想い

2016.07.03 

宮城県北東部沿岸に位置する南三陸町。東日本大震災の津波で大きな被害を受けましたが、現在 新しいまちづくりが進んでいます。そして、雇用の創出と交流人口の拡大、地域活性化を目指したさまざまな事業も新しく生まれています。

そのような事業を数多く立ち上げ、持続可能なビジネスにするため日々奔走しているのが、阿部忠義さん。南三陸のゆるキャラ・オクトパス君のグッズやまゆ細工などを制作する「入谷YES工房」設立の立役者であり、現在は大正大学地域構想研究所南三陸支局の職員として、「一般社団法人南三陸研修センター」を拠点に地域振興事業に取り組んでいます。

阿部さんが仕事や職場で大事にしているのは「人をいかす」こと。人を大切にする阿部さんのもとには、移住者を含め多くの若者が集まってきます。

なぜそこまで「人」にこだわるのか?「人がいきる職場」とはどのようなものか? 阿部さんに話を伺いました。 また、南三陸に移住し、阿部さんの部下として南三陸研修センターで働く安藤仁美さんに、「人がいきる職場」で働くことについて、そして南三陸で暮らすことの魅力を語ってもらいました。 阿部忠義さん

地域の財産となる人を育て、人がいきる職場をつくる

南三陸でさまざまな事業を手がける阿部さんに、ビジネスや人材育成におけるビジョンを尋ねたところ、「組織ありきではなく、人をいかす職場や地域社会をつくりたい」という答えが。甚大な被害をもたらした東日本大震災を経て、その想いが強くなったそうです。

 

「組織は自然災害には勝てませんが、人は残ります。人が育っていれば、組織によらずどこでもやっていけますし、地域にとっての財産となります。もちろん利益を生み出すことも大事ですが、人を育む職場でないと、個人にとっても地域にとっても意味がないと思うのです」と話します。

写真左の「オクトパス君」を生み出し南三陸を盛り上げてきた阿部さん

写真左の「オクトパス君」を生み出し南三陸を盛り上げてきた阿部さん

もともとは南三陸町役場の職員だった阿部さん。若い頃からアイデアマンと呼ばれ、おもしろいことをやろうとする型破りな公務員だったそうです。

 

「でもそれを周りの人が認めてくれていたのです。震災後は特に、地域の活力を取り戻すために必死だったので、公務員の守備範囲を超えてさまざまな事業を立ち上げて活動してきましたが、自由にやらせてもらえたのは町長はじめ上司たちの理解があったからですね。退職した今になっても感謝しています」。

 

人に恵まれた環境のありがたさが身に染みている阿部さんだからこそ、そこで受けた“恩”を次世代に還元しようとしているのでしょう。 そのような阿部さんの考え方・スタイルを、職場の若手スタッフはどうみているのでしょうか。南三陸研修センターで研修プログラムの企画・コーディネートをする安藤さんは、次のように話します。

 

「忠義さんは、仕事に人を当てはめるのではなく、その人の特性や得意分野に合わせて事業を広げてきた方。忠義さんのおかげで、この地域には、自分の居場所を見つけて輝いている人がたくさんいます。決してNOとは言わずに何でもやらせてくれるので、いろいろなことにチャレンジできます」。

 

安藤さん含め、阿部さんのもとで伸び伸びと働いている人がたくさんいるようです。

人と人、人と地域をつなぐ「ハブパーソン」

「人をいかす、人を育てる」ことと同じように阿部さんが大切にしているのは、「人と人、人と地域をつなぐ」こと。人と出会った際の「おもしろい!」というインスピレーションに基づいて、「じゃああの人に紹介しよう」「あの地区につなごう」と、よい化学反応が起こるようなマッチングをしてきました。

 

実際 安藤さんも、阿部さんとの出会いが、南三陸研修センターでの仕事や移住につながりました。「忠義さんは、台風の目のように、いろいろな人や案件を引き付けるパワーを持っています」と安藤さん。「私は移住者と地域とのつなぎ役のような存在ですから」という阿部さんは、まさに南三陸の「ハブパーソン」です。

「南三陸研修センター」や「入谷YES工房」がある南三陸町入谷地区の風景

「南三陸研修センター」や「入谷YES工房」がある南三陸町入谷地区の風景

そんな阿部さんのもとには、他地域からもたくさんの人が訪れます。来訪者に対しても、「人と人、人と地域をつなぐ」という阿部さんの姿勢は同じ。そのベースにあるのは、相手に対する“おもてなし”の気持ちです。

 

「震災後、南三陸には多くの方が来てくれました。せっかく来てくださったからには、満足して帰ってもらいたい。いろいろな人たちとの“縁”をつなぐことで、相手が求めるものをできるかぎり提供したいと思っています」と阿部さんは話します。

 

だから、南三陸を繰り返し訪れたり、移住してきたりする人が多いのでしょう。相手のことを想う温かい心づかいが、交流人口を増やし、地域の活力につながっています。

地域や人とつながって暮らし働くことの心地よさ

では、阿部さんとのご縁もあって南三陸に移住した安藤さんは、実際に暮らしてみてどうなのでしょうか。

 

「小さな町だからこそ、みんなが家族や同級生のような間柄で、嘘がない関係です。そのような温かい人間関係の中に居させてもらって心地がよいですね。信頼があるのは、南三陸が好きという気持ち、地域への想いを共有しているからだと思います」と、南三陸での暮らしがとても気に入っている様子。

 

安藤さんは、南三陸研修センターでの仕事においても、地域とのつながりを強く感じています。

 

「私は、大学生や企業のための研修プログラムのコーディネートや、地域振興事業、町の情報発信などを行っています。グループ会社のような関係にある『入谷YES工房』や『農工房』とも一緒に、地域全体で物事を捉えて事業を進めているのが、南三陸研修センターの一番の特徴だと思います」。

南三陸研修センターとグループ会社のような関係にある「農工房」のみなさん

南三陸研修センターとグループ会社のような関係にある「農工房」のみなさん

このように地域に根差した事業を行う南三陸研修センターでは、現在新たなスタッフを募集しています。求めるのは「好奇心が旺盛で明るく元気な人、職場や地域の人とのコミュニケーションが上手な人、どんな仕事も楽しみながら取り組める人」。

 

「南三陸の力になってほしいというより、あくまでも自分自身を磨くためにお越しいただければ。南三陸で暮らし働くことに興味がありましたら、気軽に遊びに来てください。南三陸の自然と人をまるごと案内します! 」と、阿部さんも熱いラブコールを送っています。

ボランティアの人たちに向けて入谷地区を案内する安藤さん

ボランティアの人たちに向けて入谷地区を案内する安藤さん

南三陸の豊かな自然のなかで、地域の人々と関わりながら生活し、「人がいきる」職場で働きたいという人は、ぜひこちらをチェックしてみてください。

 

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3.11東日本大震災
この記事を書いたユーザー
小島 まき子

小島 まき子

ライター、編集者。ひと・まち・食・旅をテーマにした取材・執筆および書籍編集を行う。東日本大震災をきっかけに東北沿岸部を訪れるようになり、なかでも南三陸に魅了され、つながりを深めている。ソーシャル&エコ・マガジン『ソトコト』で東北の“いま”を発信する連載記事「ソトボラ新聞」を執筆中。留学や国際交流事業で培ったコミュニケーションスキルとグローバルなネットワークをいかし、海外取材や翻訳、国際交流プログラムのコーディネートなども手がける。通訳案内士に合格し、日本のローカルな魅力を訪日外国人に伝える体験・ツアーづくりを模索中。

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