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ユースプログラム次世代共創シンポジウム 2020年社会を変えるプロジェクトを創り出せ

2016.12.14 

2016年10月21日、ユースプログラム次世代共創シンポジウムが開催されました。

文部科学省(スポーツ庁、文化庁)がイニシアチブをとるスポーツ・文化・ワールド・フォーラムのユースプログラムとして、2019年のラグビーワールドカップ、2020年のオリンピック・パラリンピック、そして2021年の関西ワールドマスターズゲームズなどを見すえて、政府が世界経済フォーラムと連携し、自治体・経済団体等とともに推進しているものです。 08

2020年という契機に、国境を超えた新しい協働を生み出す

「Co-Creation, Co-Growth for TOKYO 2020 and Beyond. 共に創ろう、新たな成長」というフォーラムのコンセプトのもと、2020年、そしてそれ以降にわたっても、スポーツ・文化・経済・行政・市民社会の領域や国境を超えた協働、新しいアイデアを生み出すことを目指すイベントです。

1日目は本シンポジウム、2日目はワークショップと2日間にわたり、第一線で活躍するダボス・ヤンググローバルリーダーや研究者、そして日本の高校生・大学生・社会人が、国境やお互いの所属を越えて、取組みやアイデアについて共有し、ディスカッションするとても有意義な場になりました。 29

いま求められているのは、社会を変革するチェンジメーカー

オープニングでは、IOC (国際オリンピック委員会)のCedric Daetwyler氏が、2020年とそれ以降のレガシー(長期にわたる、特にポジティブな影響:こちらの記事参照)を創り出すために、必要なことを会場に語りかけます。 28

オリンピックは、スポーツの祭典としてだけでなく、「変化のためのカタリスト(変化を促すもの)」としての機能も持ち合わせています。よりよい世界をつくるための、よりよい人間になるための動機づけとして、ポジティブな力や社会的変革をもたらすことができるのです。 では2020年の東京オリンピックのレガシーを創っていく上で、いま何が足りないのでしょう?それは、社会に変革をもたらす人(チェンジメーカー)です。そうです、それはあなた方なのです。 オリンピックで重要なのは、勝つこと(克服すること)ではなく、そのために精一杯の努力をしたということなのです。議論に参加して、リスクを取り、アイデアをシェアして、お互いにつながり合っていくことで、共に2020年とその先までレガシーを創りあげていきましょう。

「わたしはあなたのために何ができるのか」そこからはじめればいい。

パネルでは、イノベーティブな戦略を用いてホームレス問題を解消し、地域コミュニティを強化するCommunity Solutions代表Rosanne Haggerty氏、アショカフェロー、Forbes誌が選ぶ30 Under 30 社会起業家部門にも選出されているRides for Lives 創業者兼CEO, Christopher Ategeka氏、途上国の人々へ革新的なテクノロジーを届けているコペルニク・ジャパンの中村俊裕氏が登壇し、国境やスポーツ・文化・経済・行政・市民社会の領域を超えた協働、新しいアイデアを生み出し持続可能な事業にしていくことなどを自身の経験を踏まえて語りました。 22 Rosanne Haggerty氏は、1990年にタイムズ・スクエアにある荒廃していた旧名門ホテルを改装し、ホームレスに安価な住居と就業支援サービス等を提供。治安を解消し地価の向上にも貢献しています。対話からホームレスの個人情報を収集し、データ化、それを分析することによってリソース配分をするデータドリブンかつインパクト志向の事業を展開しています。

 

オリンピックは、日本が直面している社会課題を解決する機会です。しかし、例えばホームレス問題に関して言えば、オリンピックによってもたらされる大きな資金で、ホームレスを見えない所に追いやるだけでは、問題の解決にはなりません。お金の使い方を間違えないことが非常に重要で、持続可能なレガシーを残していくことが必要です。

 

と語りました。

Christopher Ategeka氏は、ウガンダ農村部などで、現地の人々が容易にヘルスケアサービスにアクセスできる手段の提供と持続可能なヘルスケアサービスのために医療に携わる人材育成の基盤を作る事業を展開しています。

ヘルスケアアクセスのない農村部で、両親を亡くし、貧しい中で幼い兄弟を育て上げたAtegeka氏は、Scholarshipを受けて得た機械工学の学位と多くの人々の協力のもとに、モーターバイクの救急車、移動式の病院などを開発、サービスを創り出し運営しています。Christopher氏は、会場にこう語りかけました。 25

どこからはじめても、いつはじめてもいい。出発点はなんでもいい。 「わたしはあなたのために何ができるのか」そこからはじめればいい。

 

強く胸を打つ、とても印象的な言葉で、会場がその力強い言葉と熱意に胸が熱くなった瞬間でした。

ダボス・ヤンググローバルリーダーや研究者、そして日本の高校生・大学生・社会人が向き合った17のアジェンダ

続くラウンドテーブルでは、来日したダボス・ヤンググローバルリーダーや研究者、そして日本の高校生・大学生・社会人が、下記17つのトピックの中から最も興味のあるものを選択し、国境やお互いの所属を越えて、取組みやアイデアをディスカッションしました。

 

A. パラスポーツの明日Ⅰ B. パラスポーツの明日Ⅱ C. ホームレスと貧困、チャレンジセーフティネット D. 共につくり支える皆のための教育 E. 多様性と共生社会~LGBT・障害 F. 多様性と共生社会~国際協力Ⅰ G. 多様性と共生社会~国際協力Ⅱ H. 多様性と共生社会~難民 I. ジェンダーと全員活躍社会 J. 先端テクノロジーと社会~AI&ロボティクス K. 先端テクノロジーと社会~身体拡張 L. 超高齢化社会のヘルスケア M. 芸術活動の推進と共生社会 N. シェアリングエコノミー O. 持続可能な消費と生産のスタイル~物 P. 持続可能な消費と生産のスタイル~食 Q. クロスセクターの協働によるコレクティブインパクト

 

議論のトピックは事前に決まっておらず、まず何を議論するかを話し合うグループや、自己紹介を兼ねて自分が行っているプロジェクトを共有し、そこから気になるトピックについて議論を深めていくグループなど、自由な形式でディスカッションがはじまります。 30

社会変革は感情、感性から生まれる。

M(art: 芸術活動の推進と共生社会) グループ

盲目の人向けのソーシャルビジネスを行っているヤンググローバルリーダーのGinaさんに対して「プロジェクトをどのように事業(ビジネス)にしていったのか?」という質問がありました。Ginaさんは、事業を通して得た気づきをこう語ります。 12

何をやっているか(what)をあまり語らないことが重要です。whatは表層や成果物のことしか、相手に伝えません。「盲目の人」や「アート」というキーワードは表面的で、結果でしかないです。大事なのは、あなたが届けている価値(value proposition)や、何故それをやっているのかという物語(story)を伝えることです。 なぜそれが大切かと言うと、社会変革(social change)は、表層的な事象や論理だけから生まれるものではないのです。社会変革は感情、感性から生まれます。だから、物語(story)を共有することで、ひとりの人間とひとりの人間がつながっていくことが、変革の起点になるのです。盲目の人、アーティスト、障がい者など、同じ特徴をもつ人間でも、ニーズは異なるので、1人1人がきちんとつながることを抜きにして、変革は有り得ません。 無茶なチャレンジも含めて、ぜひ夢は見てください。しかし、1人で進まないでください。色々な世代、色々な分野にメンターを持ってください。そのメンターとのやりとりから得られたアイデアやサポートが、パズルのようにはまって、新しいものが生まれるのです。そうして生まれてきたものが、自分たちの人としての軸を強くしてくれます。

 

Q(クロスセクターの協働によるコレクティブインパクト)グループ

自己紹介を兼ねて共有されたいくつかのプロジェクトの中から、HEC Paris教授のAlbertoさんのリードのもと、「ペットの殺処分問題を解決するためのビジネスモデル」を構築することになりました。

飼い主、獣医、保健所、ペットショップ、行政、市民などステークホルダーをリストアップし、それぞれにとっての価値(value proposition)は一体何なのかを検証します。様々なアイデアが共有され、議論が深まることで、最終的に、クラウドファンディングでペットを飼えなくなった飼い主とペットを必要とする人をマッチングするビジネスモデルを考案し、その中で行政、企業(事業者)、市民などのクロスセクターの協働の必要性とそれがどのようなインパクトをもたらすかを議論しました。 20 C(ホームレスと貧困、チャレンジセーフティネット)グループは、「どんな家に住みたいかホームレスの人に描いてもらうことで、空き家のリノベーションやマッチングを行う」アイデア、H(多様性と共生社会~難民)グループは、「難民のためのインターシッププログラムをつくる」アイデア、A(パラスポーツの明日Ⅰ)グループは、オリンピアンの為末大氏と共に、”オリンピックにパラリンピックが追いつこう”という発想自体がダイバーシティに欠けるのではないか?という問題意識から「お互いをカバーできる共創社会をどのように創り上げていくのか」を議論し、様々なアイデアが共有されました。

開かれた心と頭で他者と向き合い、アイデアや想いを共有すること

どんな未来に、どんな社会にわたしたちは生きたいのでしょう。次の世代に、何を残していきたいのでしょう。そのために必要な社会変革の機会が2020年の東京オリンピックにあります。

では、いま取組まなければいけない課題とは一体何でしょうか。誰かのために、わたしたちが今できることは何でしょうか。間もなく2016年も終わり、2017年が幕を開けます。このシンポジウムで参加者1人1人が、開かれた心と頭で他者と向き合い、アイデアや想いを共有しました。

お互いにつながり合っていくことで、コミュニティが生まれ、日本から世界に向けた前向きで具体的なアイデアとアクションが発信されていくことでしょう。この小さなアクションが、社会を大きく変える共創の源であることを願ってやみません。DRIVEでは、引き続き社会変革をもたらす若者たちの挑戦を追いかけていきます。 34

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Erika Tannaka

岐阜県出身。シンクタンク研究員を経て、現在は外資系戦略コンサルティングファームリサーチャー。プロボノとして政策提言や課題調査などNPOの支援に携わる。

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