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いずれは〇軒に1軒が空き家に!?地方の「空き家」が持つ問題と可能性とは

2017.01.23 

20c0e6484e83de97041c1e7c27665d83_s最近、空き家をリノベーションしたカフェや宿泊場所が増えてきています。その空き家が今、社会問題になっているのをご存知でしょうか。総務省の「住宅・土地統計調査」によると、現在ほぼ7軒に1軒の割合で空き家になっているとのこと。また野村総合研究所の試算によると、このまま減築が進まない場合、2033年には3軒に1軒が空き家になるとしています。

そんな深刻化する空き家問題ですが、地方では空き家を生かして地域活性化につなげている事例も。いったい、空き家がはらんでいる問題と可能性は、どのようなものなのでしょうか。

これからの空き家問題、地方では何が問題になる?

まず、空き家の何が問題になっているのでしょうか。都市では空き家が「ある」ことが問題で、景観の問題や防災上の危険があります。一方地方では、人口流出につながってしまうため空き家に「なる」ことが問題になっています。

 

そのため、地方の自治体では空き家を行政代執行(国や地方公共団体が、撤去命令に応じない人の代わりに行政機関が撤去などを行う強制的な行動のこと)を使って解体することよりも、むしろ空き家を活用し、人口を呼び戻すための材料にしたいと考えています。また、空き家を活用し、観光資源として活用する自治体も出始めています。

 

実際に活用していくうえでどのような活用の仕方があるのか、その展望について、中川寛子著『解決! 空き家問題』(筑摩書房、2015年)から紐解いていきたいと思います。a0002_001915

空き家問題を解決するための3つの活用法

本書では空き家の活用例として、「収益性」「公益性」「社会性」という3つのキーワードで分類し、具体的にどのような活用方法があるのかについてまとめています。

 

●収益性

 

まず、収益が上がることを第一義とする収益性を目指す活用方法として、古民家カフェなどが挙げられています。例えば東京都大田区北千束にあった旧栗の湯は現在、ボルダリングジムに使われています。活用の背景として、ボルダリングは登ることが目的なので、ある程度高さがなくてはいけません。そこで「天井が高い」という銭湯の特徴が生かされた活用方法として紹介されています。これだけ天井の高い建物を活かそうとすると費用がかさみますが、そのままの空間を生かすことで出費が抑えられると述べられています。

 

●公益性

 

次に社会に貢献することを第一義とした公益性の活用方法として、空き家を活用した生活支援が挙げられています。

 

例えば、大分県豊後大野市にある養護老人ホーム「常楽荘」。ここでは、施設長が適切な生活支援体制を整えることができれば、介護保険制度に依存せず、在宅で生活ができるのではないかと考えたそう。そこで、3軒の空き家を用意し、介護放棄や在宅復帰に向けて調整中の入居者が生活をしているといいます。この事業では、高齢者福祉課・自治委員・民生委員などが関わっていて、地域の人たちにもこの事業の意味を理解してもらったうえで空き家を活用していると紹介されています。

 

●社会性

 

最後に、人口減少が問題化している地域で、その問題解決につなげることを重視した、社会性を第一義とする活用方法です。代表的なのは農山村地域や地方都市で行われている、「空き家バンク」的な活用です。

 

空き家バンクとは、空き家の処分に困っている人と移住希望者をつなげる仕組みのこと。具体的には、空き家を所有している人が自治体の運営する空き家バンクに登録することで、その空き家情報を購入したい人や借りたい人に情報を提供するものです。

 

空き家バンクを活用した例として、広島県尾道市が挙げられています。もともと自治体で空き家バンクを運営していた尾道市。しかし思うようにうまくいかず、「NPO法人尾道空き家再生プロジェクト」に業務を委託。昭和30年代に建てられた洋品店を、子育てママのためのサロンとした例など、すでに再生した空き家は10件ほどに及び、実際に移住してきた人も70人を超すと述べられています。

 

尾道の事例が成功した要因として、このNPOの存在に加え、様々なイベントがあるため関わりやすいこと、さらに物件情報だけでなく、使える空き家なのかについても公開し、再生するときの道具や知恵までも貸してくれることが挙げられています。ELLsyuumeigiku150928457696_TP_V

大家さんの理解を得るために

このように、「収益性」「公益性」「社会性」という3つのキーワードに基づいて空き家の活動が広がっていますが、本書では空き家活用の課題も挙げられています。

 

1つ目の課題は、実際に空き家を活用すべく地域に行ったとしても、大家さんの理解が得られないということ。この場合、空き家バンクを活用することもひとつの手ですが、地域のキーパーソンと事前につながっておくことで、そのキーパーソンを介して空き家を貸してもらう方法が有効だといいます。

 

大家さんの理解を得た例としては、東京都品川区の、旧東海道の宿場町「品川宿」の空き家を借りてコミュニティスペースにしている「うなぎのねどこ」です。この事業を始めた「まちひとこと総合計画室」の田邊寛子氏は、このコミュニティスペースとなるオフィスを借りる際に、地域のまちづくり協議会の方の一言で、大家さんの反応が変わったといいます。

 

2つ目に、借りる側と貸す側の情報をつなげるマッチングの問題が挙げられています。例えば世田谷区の場合、「世田谷トラストまちづくり」では、大家と市民団体からの双方から相談を受けていますが、大家さんからの相談は3割程度と少ないため、世田谷区では地域のNPO団体などと情報交換をし、定期的に空き家についての情報を拾い上げています。このように、借りる側と貸す側をつなげることで、地域として空き家を活用する道は広がりそうです。

空き家をビジネスのための資源に変える

空き家を活用することによる効果について、本書では次のように述べられています。

 

「空き家についても首都圏を中心とする都市部では少なく、地方圏での多さが目立つ(中略)つまり、地方での空き家対策はイコール地域の若返り、活性化であると考えられるわけである。」(p.41)

 

空き家は首都圏ではなく中国、四国、九州地方といった地方に多くあります。地方活性化が叫ばれている今、空き家を活用したビジネスは、地方活性化の鍵になる可能性を秘めているのです。

 

これから3軒に1軒が空き家になるという試算も出ている空き家。しかし今回紹介したように、地方では人口流出問題を解決するために空き家を活用する例が増えています。地方にねむる空き家の特徴を生かし、ビジネスのための資源に変え、地域活性化につなげる。そんなチャンスが、空き家問題の中にあるのではないでしょうか。

 

この記事を書いたユーザー
木村 麻由佳

木村 麻由佳

大学のプログラムで島根に行ったことがきっかけで地域活性化に興味をもつ。東京にいながらでも地域と関わっていきたいと思い、ETIC.に参画。趣味は音楽鑑賞・散歩。

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