2020東京オリンピック・パラリンピックやSDGsを、個人と組織のアントレプレナーシップを解放する契機にしようと始まった「Social Impact for 2020 and Beyond」。若い意欲的な次世代リーダーや社会起業家、そして大企業や行政などがポジティブに次の社会を創ろうとする「未来意志」でつながる、創発型のマッチングプラットフォームを目指している。
この「Social Impact for 2020 and Beyond」をNPO法人ETIC.とともに推進するのは、現在8社のパートナー企業たち。イノベーターや若者たちの「未来意志」を応援し、企業自らも2020とその先の未来に向けて、新たな事業・プロジェクトを仕掛け続けている。
この連載で届けるのは、そんなパートナー企業のこれまでの挑戦と、企業の視点から見た「Social Impact for 2020 and Beyond」の姿。企業にとって、このプラットフォームはどのような可能性を秘めているのか? 第1回目は、セイノーホールディングス株式会社の人事部・渡邉久人さんにお話を伺った。
企業発で進める、若者・社会を変える場づくりとは?
道路を走るトラックに描かれた、真っ赤なカンガルー。その姿に見覚えがある方も多いのではないだろうか。そのトラックを走らせている企業こそ、セイノーホールディングス株式会社(以下、セイノーホールディングス)だ。
路線トラックで業界最大手・西濃運輸を中核会社とするセイノーホールディングスは、日本に路線トラック輸送という概念がそもそもなかった戦後、いち早く長距離路線トラックを走らせた業界のパイオニア的存在。
そんなセイノーホールディングスでは、「Social Impact for 2020 and Beyond」への参画以前から、イノベーターを外から応援する取り組みをしている。その一つが、地方創生ビジネスプランコンテスト「カンガルー」だ。
スタートから3年目の2018年冬、「カンガルー」では地方創生をテーマとしたビジネスプランを広く募集した。特徴は、その募集要項にある「皆さんと地方創生に関する熱い思いを共有しあう『場』を設けたいというのが開催の最大の目的です」という一文。応募は29歳以下に限られるが、
- 全くのアイデア段階でもOK(個人・チームともに可)
- 全国どの地域を対象にしたプランでもOK(日本全国共通のテーマもOK)
と、可能性に開かれた場であることが伝わってくる。
過去のファイナリスト・出場者の中に並ぶのは、Forbes誌が選ぶ「アジアを代表する30歳以下の30人」としてRETAIL&ECOMMERCE部門で選出されたEVERY DENIM共同代表の山脇耀平さん、INCO(フランス)主催『2018年女性起業家アワード』にてグランプリを授賞したNPO法人WELgee代表・渡部清花さんなど、現在多方面で活躍する若者たち。
実は渡邉さんは、その創設に携わり、現在も学生たちとのコミュニケーションを続けている当本人だ。「今後は、1期、2期、3期と代を越えて参加者全員が繋がっていけるようなコミュニティをつくっていきたい」と、若者・社会を変える場づくりへの熱意を語る。
創業90年。いま必要なのは、新しい価値を生み出すエネルギー
セイノーホールディングスは、前身である田口自動車の創業から数えると2020年で創業90年目。現在、会社には再びの創業時の熱が求められている。
「創業時は、それこそ現在のベンチャー企業のような勢いのあったセイノーホールディングスですが、成長するにつれ新たな価値を生み出そうという挑戦のエネルギーが徐々に薄れていってしまっています。
免許制度を持つ運送業ということで参入障壁を持っていたり、高度経済成長の中で事業を成長させてきたこともあり、その流れの中で会社が成長していくことも経験しました。
けれど今、人口減少を中心に環境は変化し、会社は安閑とはしていられない状況に置かれています。それこそ創業時に勝るとも劣らないくらいの熱を持って、新たな価値をつくっていかなければいけないと思っているんです」
自社のリソースを社会に解放し、企業・挑戦者がつながるきっかけを
「Social Impact for 2020 and Beyond」の場においても、セイノーホールディングスは自社のアセットをイノベーターたちに開放し、彼らの取り組む社会課題に活かして欲しいという姿勢で参画している。
「先日も、空き家での民泊にチャレンジしたいと考えている学生に、弊社の社宅を使えないかという話をしていたところです。
本来は我々のアセットですから我々が活用しなきゃいけないのですが、社会課題の解決のために活用していただけるのであれば喜ばしいことですから。そんな状況がこれからさらに広がっていけば嬉しいなと思っているんです」
社内での価値創造にこだわらず、広く社会をフィールドと捉えてチャレンジを応援する現在の姿には、社内での数々の挑戦の背景がある。
「これまでは、それこそ普通に自社の中にイノベーターを抱え込んで、あくまでも社の中で価値創造を行おうとしていたんですよ。ただ、逆説的なんですけど、自社にこだわりすぎていたら新しい価値創造がうまく生まれなかったんですね。
手法の一つとしてもっと自由な働き方を許容していく必要があるのだろうと思ったのですが、私たちは運送業が主体ゆえ、業務時間の管理が人命に関わるドライバーが大多数の社として兼業・副業の全面解禁には法令面等乗り越えるべき壁が高い。そう考えたとき、社会に対して何かイノベーションを起こしたいという志を持っている方を、必ずしも私たちの社員として抱え込むだけが世の中のためじゃないな、そういう方たちと私たちは外から関わり合った方が、お互いにとって、そしてイノベーターが生み出す価値を待っている世の中にとってもハッピーなのではないかと思うようになりました」
新入社員の変化も。社外とつながりあうことで、社内も変わる
社外のイノベーターを応援する「カンガルー」をスタートして3年、その場で生まれたアイディアを社内に取り入れていくことにはまだまだ課題があるものの、「カンガルー」を通してセイノーホールディングスのイノベーターを応援する姿勢に共感した若者たちが入社を決める事例が生まれてきている。
「今年は、2017年度入社の大卒5名が本人たちの希望でオープンイノベーション推進室に配属になっています。2017年度入社は50名、そのうちの5名なので、チャレンジに対して積極的な学生の入社が増えたと言えるのではないかと感じています。また、現在のオープンイノベーション推進室の人数は10名なので、その半数が入社2年目の社員ということになります」
オープンイノベーション推進室が生まれたのは、2017年。「まだまだ挑戦し始めたばかりですが、他領域に出て何か自分たちのアセットとコラボができないか、新たなアイディアを社内に取り入れられないかと価値創造に向けて取り組みを進めている」と、渡邉さんは語る。
エコシステムの中だからこそ加速する、価値創造
セイノーホールディングスでは、「カンガルー」にとどまらず、文京区の「こども宅食」へのパートナー団体としての取り組みなど、「未来意志」を持ったイノベーターをさまざまな場で応援している。
「志は高く持って社外の挑戦の場に出ていきたいと思うんです。そうして、そこで出会った人たちの夢を実現する応援をできるような関わりを続けていった先に、コラボレーションでもアイディアの共有でも何かしらの形で弊社の価値創造に繋がっていってくれたら嬉しいことだなと思っているんです」
「Social Impact for 2020 and Beyond」をはじめとしてベクトルを同じくした人たちの集まりであるエコシステムのなかでは、「お互いのチャレンジにシンパシーが生まれて想像以上に物事を早く進められる」とも語る渡邉さん。
「エコシステムという枠組みには、志が一緒になっている人たちが集っています。それは、何となく参加する名刺交換会とはまったく違うもので、明確な意志を持った人たち同士がスピード感を持って進めていくものになる。我々の方が遅いなって思うことが多々あるくらいです。 そういう意味で、それが社外の動きだったとしても、我々も刺激を受けて社の動きを加速させていけるのだと感じています」
セイノーホールディングスにとっての「Social Impact for 2020 and Beyond」とは、イノベーターと繋がりスピード感を持ってともに新たな価値創造に挑む場でもあり、その刺激を受けて自社の変容が促されていく場でもあるようだ。
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ETIC.では、「Social Impact for 2020 and Beyond」をともに推進していただくパートナー企業・団体を募っています。
提案される様々なイノベーターや若者たちからの「未来意志」を応援いただくとともに、自らも2020とその先の未来に向けて、新たな事業・プロジェクトを仕掛け、また新たな未来を切り開く仲間たちとの出会いの機会をともに作っていきたいと考えています。
詳細はぜひこちらから、お問い合わせください。
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