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#経営・組織論

今さら聞けない「SDGs」。書籍『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ』をお薦めするワケ。

2018.08.18 

企業のCSR担当者から「そもそも”SDGs(エス・ディー・ジーズ)”っていったい何なんですかね」って聞かれたことありませんか。

 

筆者は、あります。

 

世の中の認識は、まだそのぐらい。言葉だけが先行していて、まだまだ理解は広まっていないのが現実だとおもいます。みなさんは誰にでもわかるように説明ができますか……? 今「はっ!」とされた方、もしかしたらこの本が役立つかもしれません。

 

ソーシャルプロジェクト

『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ

~コレクティブな協働なら解決できる! SDGs時代の複雑な社会問題~』

佐藤真久、 広石拓司(著)/みくに出版

 

 

 

全192ページに書かれているのは、こどもの貧困や教育の格差、環境破壊、地方の衰退など、複数の要因が絡み合って生じている「複雑な社会問題」を解決していく方法。

 

日々、課題解決のために活動されている社会起業家の皆さんにとっては、もはや当たり前かもしれないですが、まずはこの「社会問題の原因は複雑に絡み合っている」ということが理解されないと、なぜSDGsがこれだけ注目されているのか、コレクティブな協働とはどういうことなのか、説明ができないですよね。

 

わたしはこの本の書き出し(前文)が、ほんとに秀逸だとおもっています。

今回、特別に、著者の佐藤真久さんにおゆるしをいただき、前文の一部をご紹介させていただきます。「はじめに」を読むと、この本がいかにわかりやすく書かれているかが伝わるとおもいます。

 

スタッフ研修に使うもよし、ステークホルダーの皆さんと読書会をするもよし。わたしは、前述の担当者にプレゼントしてみようかなとおもいます。クチで説明するより100倍正しく、早く伝わる気がします!

 

これからプロジェクトを始めようと考えている人にも、すでに取り組んでいる人にも、そして壁にぶつかり悩んでいる人にも、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。

 

以下、本書《はじめに》より一部をご紹介します。

 

 

 

むかしむかし、ある村で、

たくさんの人が飢えや貧しさで困っていました。

それは悪魔が人々の食べ物を奪っていくからでした。

その村に一人の勇者がやって来ました。

勇者は人々が苦しんでいるのを見て、

彼らを助けようと悪魔に戦いを挑みました。

勇者は悪魔と戦い、ついに悪魔を退治しました。

そして、村はみな豊かな暮らしができるようになり、

誰もが幸せに暮らしました。

 

 

 

このおとぎ話で、勇者が村の人たちを助けることができたのは、なぜでしょうか?

悪魔に挑む勇気があったから? 悪魔に勝てるだけ強かったから?

それもありますが、それ以上に大切なことは、「問題の原因が悪魔だ」と明確で、悪魔を倒せば問題が解決できるとわかっていたからでしょう。

 

 

私たちは問題に出会った時に、何が原因なのか、何をやっつければ変わるのか、そのように考えてしまいがちです。

 

 

 

今、社会で起きているたくさんの問題、例えば子育てストレス、介護負担、貧困、地域活性化、気候変動、国際紛争などの問題についても、“悪魔探し”が行われがちです。「資本主義が悪い」という人もいれば、「大企業や大富豪が悪い」「政治家が悪い」という人もいます。社会問題までいかずとも、地域や組織の問題に対して「あのリーダーが悪い」「若者がやる気がない」といった悪者探しをしてしまいがちです。

 

 

しかし、一生懸命に悪魔、悪者を探したとしても、現代の問題は、何が悪いのか、何が原因なのか、一つに定められず、よくわからないのです。資本主義は多くの問題を起こす原因となっていますが、今の豊かさや便利な生活を生み出してきたものでもあります。もし、特定の富豪や政治家が悪いとして、その人をやっつけたとしても、別の富豪や政治家が同じような問題を起こしてしまうかもしれません。子育てについても保育園が足りないことが問題となりますが、保育園さえあれば子育てストレスがなくなるわけではありません。夫婦の協力やそれぞれの会社での働き方、家族や地域のつながり方など、多くの要素が必要です。

 

このように、これまで数多くの人たちの努力があったにも関わらず、未だ解決できず、残されてしまっている問題は、誰か特定の悪い人や一つの原因が起こしていることではなく、一人の人や一つの原因を取り除いても解決や改善につなげることができないものなのです。それらの問題には複数の要素が関係しています。しかも面倒なのは、例えば「資本主義」がそうであるように、一つひとつの要素には良い面も悪い面もあり、要素が相互に影響しあう状況によって、悪い面の影響が強く出てしまうのです。

 

 

このように、何か一つの原因を取り除く対応では解決できず、複数の要因が相互に影響しあって生じる問題は、“複雑な課題”と呼ばれています。私たちは難しい問題に出会うと、何かを悪者にする、もしくは問題を分解して要素にするなど“単純化して”考え、「悪者や一番の原因をなくす」というシンプルな問題解決を考えてしまいがちです。しかし、“複雑な問題”は、複数の要因の相互作用の結果として生じているため、単純化やシンプルなアプローチでは解決できません。そのような問題を解決するには、複数の解決策が相互作用しながら問題に対応できる状況をつくる、言い換えるなら“問題に対応できる社会システム”を生み出す必要があるのです。

 

(引用おわり)

 

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ソーシャルプロジェクト

『ソーシャル・プロジェクトを成功に導く12ステップ

~コレクティブな協働なら解決できる! SDGs時代の複雑な社会問題~』

佐藤真久、 広石拓司(著)/みくに出版

東京都市大学大学院 環境情報学研究科教授/佐藤真久(さとう・まさひさ)

1972年生まれ、東京都出身。筑波大学第二学群生物学類卒業、同大学院修士課程環境科学研究科修了。英国国立サルフォード大学にてPh.D取得(2002年)。地球環境戦略研究機関(IGES)の第一・二期戦略研究プロジェクト研究員、ユネスコ・アジア文化センター(ACCU)の国際教育協力シニア・プログラム・スペシャリストを経て、現職。現在、国連大学サステイナビリティ高等研究所客員教授、ESD円卓会議委員、環境省SDGsを活用した社会問題同時解決支援事業委員長、UNESCO ESDグローバルアクションプログラム(GAP)フォーカルポイント、IGESシニア・フェロー、JICA技術専門員(環境教育)、ESDコーディネーター(文部科学省事業)、NPO法人ETIC.(社会起業家のためのインキュベーション・プラットフォーム)理事などを務める。JICA環境社会配慮助言委員会委員、アジア太平洋地域ESD国連組織間諮問委員会テクニカル・オフィサー、環境省協働取組加速化事業委員長、北京師範大学客員教授などを歴任。国際的な環境・教育協力の他、協働ガバナンス、社会的学習、中間支援機能などの地域マネジメント、組織論、学習・教育論の連関に関する研究を進めている。 編著として『SDGsと環境教育:地球資源制約の視座と持続可能な開発目標のための学び』(学文社)、『大都市圏の環境教育・ESD:首都圏ではじまる新たな試み』『環境教育と開発教育─実践的統一への展望:ポスト2015のESDへ』『持続可能な開発のための教育ESD入門』(いずれも筑波書房)。

株式会社エンパブリック 代表取締役/広石拓司(ひろいし・たくじ)

1968年生まれ、大阪市出身。東京大学大学院薬学系修士課程修了。シンクタンク(三和総合研究所(現・三菱UFJリサーチ&コンサルティング))勤務後、2001年よりNPO法人ETIC.において社会起業家の育成に携わる。2008年株式会社エンパブリックを創業。「思いのある誰もが動き出せ、新しい仕事を生み出せる社会」を目指し、地域・組織の人たちが知恵と力を持ち寄って仕事づくりを進めるための実践支援プログラムを開発・提供している。文京ソーシャルイノベーション・プラットフォーム、ちよだコミュニティラボなど自治体との協働によるソーシャル・プロジェクトが生まれる基盤づくり、企業のコミュニティ力向上プログラムなど、計画・ビジョンの策定、コンサルティングから、場づくり、プロジェクト立ち上げ支援まで一貫したプログラムを提供している。受託案件、自社の根津スタジオなどで、年200本のワークショップを実施。 『あなたの経験をみんなの学びに 共に考える講座のつくり方』(エンパブリック)、日経Bizアカデミー連載「ソーシャルビジネスが拓く新しい働き方と市場」など執筆多数。慶應義塾大学総合政策学部、立教大学経営学部、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科などの非常勤講師も務める。

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野田 香織

1974年兵庫県生まれ。短大卒業後、印刷会社でグラフィックデザインの仕事に携わり、不動産広告やCIなどを担当。2006年からマドレボニータに参画、人生賭けて挑みたいテーマを見つける。2009年にNPO法人ETIC.に参画。社会起業塾、アメリカン・エキスプレス・アカデミーなど起業支援のプログラム運営の後、求人サイト「DRIVEキャリア」のコーディネーターに。個人のキャリア相談の他、さまざまな組織の採用、人事の相談にも乗っている。

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