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余白を残して多様性を担保し、自然に対して“わきまえ”ながら、地域と共に文化を育む「土佐山アカデミー」【ローカルベンチャー最前線】

2018.12.14 

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高知県高知市「土佐山」地域。県の中央あたりに位置するこの山村は、高知の国名であった「土佐」という名称の発祥の地とも言われており、約2000年前の弥生時代から人が暮らしていたことが調査によって明らかになっている。「土佐山村」として116年に渡って村制を維持するも平成17年に高知市に合併し、今に至る。 002 明治5年、4,000人近くいた人口は、平成30年9月現在で1,000人を割り込んだ。

そんな土佐山地域であるが、立地上、高知市の中でも非常に重要な役割を担っている。生命の維持に欠かすことのできない、“水源地”という役割だ。高知市には、縦断するように鏡川という河川が流れている。土佐山はその鏡川の源流域にあたるため、地域の環境変化は、水を通じてダイレクトに高知市全域に広がることを意味するのだ。

人口が減り、集落が維持できなくなった場合、里山を里山たらしめている田畑や山林の手入れをする人がいなくなり、瞬く間に植物に覆われてしまうだろう。「自然に戻るんだからいいことなのでは?」と思う方もいるかもしれない。しかし、一度人間が手を入れた里山が、開墾や植林をする以前のような状態に戻っていくには、途方もない時間を要する。その間、手入れがされなくなった地域は、人間目線で見るところによる“荒廃”した状態となる。

荒廃した状態の山林は、広葉樹を中心とした自然林に比べ水の保水力が低く、土砂崩れや河川の水量低下を招く原因となる。生い茂った枝に遮られた暗がりの林では、生物の多様性や生命のサイクルも担保されない。そのため下流へ流れる水のミネラル分にも偏りが生まれ、そのミネラルを栄養分とするはずの水産資源などにも影響が広がる。

土佐山の暮らしは、高知市の人々の暮らしにつながり、少し大げさに聞こえるかもしれないが、間違いなく日本、世界ともつながっているのである。

人も自然として生きる文化を育むアカデミー

この「土佐山(旧土佐山村)」を拠点に「人が自然の一部として生きる文化を育む」というミッションを掲げ、「学びの場づくり」を中心に事業を展開しているNPOが「土佐山アカデミー」だ。

 

活動が始まったのは2012年。設立から数えて7年、実にさまざまな事業を行ってきた。これまで、約14,000人が「土佐山アカデミー」に関わり、移住者がのべ43名、移住待機者が2名という状況だという。

 

最初に始めたのは、団体名としてではない事業としての「土佐山アカデミー」だ。それは具体的には、3ヶ月滞在型でサステナビリティを学ぶプログラムで、その後、自家製の梅酒づくりや暮らしの道具づくりのワークショップ、山暮らし体験ツアー、有機畑の開墾ツアーなどを展開。循環型の生活を地域の人たちから学ぶ機会をつくってきた。

斜面を生かした「世界最速?!そうめん流し」というユニークな企画も。

斜面を生かした「世界最速?!そうめん流し」というユニークな企画も。

やがて、「より長く土佐山で暮らしたい」「土佐山に短期間滞在してみたい」という要望が出てきたため、「土佐山ワークステイ」というサービスが生まれた。

こちらがワークステイの滞在拠点、その名もイチョウハウス。

こちらがワークステイの滞在拠点、その名もイチョウハウス。

このサービスは、地域で暮らし、まずは自分の手で何かをやってみるというチャレンジのハードルをできる限り低くするためのもの。月2.5万円ほどの負担(水道光熱費、燃料費などは別)で、滞在拠点とカーシェアリングによる車が提供され、地域リソースのコーディネートも受けられる。

 

これによって希望者が土佐山に中期滞在できるようになり、そこでの暮らしを肌で感じやすくなった。しかし、本格的にここで暮らしていこうと思ったときには、もうひとつ必要なものがある。そう、仕事である。

 

そこで「日本財団」の助成を受け、過疎地域特化型の起業家養成プログラム「EDGE CAMP」を立ち上げた。2014年から毎年開催している、「土佐山地域」での起業事例に学びながら実際に起業することを目指した6ヶ月間のプログラムだ。

「EDGE CAMP」の一コマ。「ナリワイ」の伊藤洋志さんなど、すでに全国の過疎地域で活躍する起業家や専門家が講師・メンターを務め、プロジェクト立ち上げに必要なスキルやノウハウ、フェーズに合わせたアドバイスが提供される。

「EDGE CAMP」の一コマ。「ナリワイ」の伊藤洋志さんなど、すでに全国の過疎地域で活躍する起業家や専門家が講師・メンターを務め、プロジェクト立ち上げに必要なスキルやノウハウ、フェーズに合わせたアドバイスが提供される。

これらの事業を積み上げるうちにメディアにも取り上げられることも増え、そのノウハウや知見を得たい自治体や企業による視察や研修、コンサルティングの依頼が舞い込むようになっていく。

県からの委託を受けて、「高知県ふるさと応援隊(地域おこし協力隊)」の初任者研修なども担当。

県からの委託を受けて、「高知県ふるさと応援隊(地域おこし協力隊)」の初任者研修なども担当。

アウトドアブランド「snow peak」とIT企業の「HEATIS」が展開している、企業のワークスタイル変革をサポートする「OSO/TO(オソト)」というサービスに「土佐山アカデミー」も参画し、現場運営を担う。

アウトドアブランド「snow peak」とIT企業の「HEATIS」が展開している、企業のワークスタイル変革をサポートする「OSO/TO(オソト)」というサービスに「土佐山アカデミー」も参画し、現場運営を担う。

その他にも、高学年の小学生から大学生までを対象にした、次世代リーダー育成プログラム「森の子ども会議」や、高知県の中山間地域に眠る課題や資源を持ち寄り、ナリワイ(元手が少なく多少の訓練で始められて、やればやるほど健康と技術が手に入り、仲間が増える仕事)の形や方法論を実験しながら仲間づくりもできる場「Nariwai Startup Salon」を定期的に開催。

「Nariwai Startup Salon」の一コマ。

「Nariwai Startup Salon」の一コマ。

「株式会社CAMPFIRE」と「高知県庁」「土佐山アカデミー」で3社協定を結び、クラウドファンディングで資金を集めて「ナリワイ資源データベース」と「OTAKARA地図」もつくっている。

 

「OTAKARA地図」は、観光地図ではない。活用されるのを待っている空き家や山林、ノウハウを提供してくれる協力的な住民の情報などをまとめた、地域の「OTAKARA」をアーカイブした地図なのだ。掲載されている資源を活用したいという人材が出てきたら、資源の活用資金をクラウドファンディングで集める。「連鎖するクラウドファンディングの仕組みづくりも兼ねているプロジェクト」だという。

 

地域に受け入れられた要因と、やって見えてきた難しさ

このように、「土佐山アカデミー」の活動内容を見ていくと、つくづく枚挙にいとまがない。どうしてこんなに多彩な展開をしてこられたのか、アカデミーの事務局長を務める吉冨慎作さんにお話を伺いながら、紐解いてみたい。

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まず、土佐山地域がもともと学ぶことに対して意識が高く、新たな考え方を受け入れる素地があったという“地域性”が挙げられる。明治期には自由民権運動も盛んだったという。

 

「土佐山には、昔から“社学一体”という考え方がありました。これは言葉の通り、“社会教育と学校教育は一体である”という考え方。社会、地域、学校、どれかが人を育てるのではなく、この三つ全てが人を育てる要素なんだという価値観を、土佐山の人々はもともと持っていて、だから土佐山の住民たちには“学びのことなら協力する”という素養があるんです。旧土佐山村の村民憲章には、『私たちは、教え教わる学習の村をめざします』という一文も書かれているんです」

 

“スタートの仕方”と“タイミング”も良かったと言えるかもしれない。

 

平成23年、高知市はこの“社学一体”を軸に据え、土佐山のこれからの百年を考えていく『土佐山百年構想』を公に向けて発表した。

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この『土佐山百年構想』のなかで三つのプロジェクトが具体的に掲げられているのだが、そのうちのひとつだった「土佐山・生物多様性アカデミー」が、現在の「土佐山アカデミー」の原型に当たる。

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昨今では当たり前となった「地方創生」という言葉がまだ世の中に広まっていない時期に、未来志向かつ具体的な構想を持った自治体と連携する前提でスタートできたというのは、ゼロから起業するよりもアドバンテージが大きかったはずだ。

 

また、「土佐山アカデミー」の運営スタンスの中には、多くの人が関われる余白の存在がある。吉冨さんは組織のスタンスについて次のように話す。

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「世界から、県外・県内から、地元の資源を発掘する人、農業をする人、新しい商品を生み出す人、アカデミーの講師になる人、中規模ビジネスをやる人、一日だけワークショップに参加する人、炭をつくる人、1/3は土佐山で2/3は東京で過ごす二拠点の人。いろんな人が学び合って、主体的にさまざまなプロジェクトを立ち上げられる場としての土佐山を目指す、というのが僕たちのスタンスです。そこにたどり着くのであれば、広告代理店のような企画っぽいネタをたくさん投げてもいいし、アカデミックに地域や自然の仕組みを分析するアプローチでもいい。最終的な落としどころがアカデミーの世界観に合っていれば、何をしてもいいという組織になっています」

「組織としてのビジョンはあるけれど、そこにたどり着くのなら方法は各々に任せる」という、とても曖昧な入り口で外部の人々を迎え入れる。そうやって、7年でおよそ14,000人を受け入れてきた。単純計算で年間約2,000人という人と関係を持ってきたことになる。しかし、「難しさも感じている」と吉冨さんは言う。

「日本財団の助成を受けて、土佐山の資源や空間をつくって起業したい人はプログラムを無料で受けられるという企画を1年目にやったんです。定員8人で募集して、40名の応募があって、13人がチャレンジして、その半分が今も土佐山にいます。そんな風にしていろいろやってきて感じているのは、人が一人生きていくだけのお金を稼ぐことの難しさです。都市部でデザイナーをしている人は、デザインという技術を持っているわけですが、地方で起業するというスキルを持っているとは限らない。しかも、中山間地域で生きようと思ったときに、地元の人からお金を取る仕組みで生計を立てるのはとても難しいです。母数が1000人しかいないですし。となると、地域リソースや自分のスキルで、都会のニーズを満たすナリワイをつくらなきゃいけない。東京の半歩先を頭に入れて、未来を予測して、企画や事業を考えなきゃいけない。生きていくお金が稼げないということは、その土地を出ていくことにつながる。成功体験もできない。せっかくチャレンジしたのに、それはもったいないなと。起業することがゴールじゃなくて、住み続けることがゴールだとすると、地元の人からお金を取る形じゃない事業にしないといけないんじゃないかと思うんですね」

そんな気づきから、先述した過疎地域特化型の起業家養成プログラム「EDGE CAMP」も、今年はマイナーチェンジを図っているという。

「これまでは、事業計画をつくって、メンターがメンタリングして、ペルソナを使ってターゲットを設定して……とやっていたんですけど、今年は、最新・最先端の刺激的な情報を持つゲストに来てもらって、高知にいながらにして最先端の情報を得て、そのときの自分の資源と組み合わせていこうというチャレンジをしています。ゲストには、『デンソー』のイノベーション室でNASAとも仕事をしてきたような人、名刺管理アプリ『eight』のコンテンツストラテジストでメディア『BNL』の編集長、建築アイドル、廃材をアートにして市場価値も生んでしまうアーティストといった、それぞれの分野で最先端を行く人たちに来ていただいています」

自然界において、細胞の変化は必ず端(EDGE)から起きるという。そして吉冨さんは、地方こそが日本の「EDGE」であり、周囲よりも15年先行して人口が減り始めた高知は「EDGE中のEDGE」だと話す。

「課題の最先端がある場所に、最先端の刺激を持ち込んで、課題を解決する仕事は純粋におもしろいですし、本気で地方から日本を変えていくアプローチが生まれるんじゃないかと思って『EDGE CAMP』もやっています」

 

地域に支えられ危機的三年目を乗り越える

現在「土佐山アカデミー」の経営は、主に自治体系のコンサルティングや企業とのタイアップ事業の収入に支えられている。今でこそ軌道に乗った経営も、当初の収入は補助金とワークショップの売上のみ。3年目までは苦しい状況が続いていたという。

「3年目は危機でしたね。なんとか黒字にはしたんですけれど、稼ぐために毎月毎週ワークショップを繰り返していたので、疲弊してしまって。このままじゃだめだということで、行政からの委託事業を受けるようになるんですが、行政仕事のシステムもあまりよくわかっていなかったので、資金ショートさせてしまって。売り掛けはあるのに現金がないとなって、NPOのそもそもの仕掛け人で、理事にも入っていただいている地元の方に相談に行って、お金を借りたこともありました。『金はこっちに任せろ』と言っていただいて、そのときは周りをはばからず泣いてしまいました。みなさんも、委託事業を受けるときは資金繰りに気をつけてください(苦笑)」

この体験もあって、吉冨さんはローカルで起業するときの関係者に地元の人間がいることのメリットを感じているという。

「相手によるところもあるので一概には言えないんですけど、僕らの場合は、地域のキーマンの方が理事にいてくださったので、とても安心でした。例えば、今僕たちはシェアハウスを7軒運営しているんですが、地域に縁もゆかりもないNPOが外からやってきても、誰もそんな物件を貸してくれないんですよね。でも、キーマンの方がいてくださっているので、『貸してもいいよ』と言ってもらえる。田舎は信頼があってこそ。僕たちも、地域との小さな信頼を積み上げて、つながりを深めていきたいと思ってます。

こうして、地域に支えてもらいながら危機を乗り越えた「土佐山アカデミー」は、研修や委託事業をコンスタントに受託できるようになり、経営基盤を安定させることができた。明確に稼ぐ事業ができると、吉冨さんらを疲弊させたワークショップ事業にもいい影響が出てきたという。

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「ワークショップを稼ぐためにやると、結局回数を増やすか、少し安くして人をたくさん呼ぶしか選択肢がなくなります。ワークショップを、それ単体で稼ぐのではない、土佐山が解決しなければならない課題を学びに変える役割を担うもの、と設定し直したことで、より本質的なワークショップを設計できるようになりました」

本質的なワークショップができるようになったことで、よりリアルな課題が抽出され、解決案も提示される。講師を務めたり、課題や資源を提供したりする地域住民にもやりがいやメリットが生まれる。稼ぐ事業、稼がない事業を分けたことが、いい連鎖を生んだのだ。

自然に対して“わきまえ”ながら、何よりも自分たちが楽しむ

吉冨さんは言う。

「もともと効率とか経済優先でつくられた今の状況を続けるとまずいことになるって、みんなわかっているじゃないですか。温暖化とか人口減少とか、このままじゃ流石にやばいって。でも急ブレーキを踏んで減速して、すべての人が自給自足すればいいのかというと、僕は違うと思う。パソコンもいるし、インターネットも必要。そうなったときに、田舎の人が当たり前にやっている『あるものを大切にする』『ないものは自分でつくる』『生えてくる以上のものは切らない』『ずっと住むために関係を大切にする』といった、自然や人に対する“わきまえ”みたいなことが、すごくヒントになるような気がするんです。“わきまえ”を持った上で、最先端のAIやIOTといったテクノロジーも取り入れながら、次の100年を考えていく。そういう学びの場にしたいし、社会的なサステナビリティの仕組みを設計するのが僕たちの仕事かなと思っています」

今後のことを聞くと、「それぞれが生きる中で持っている価値観や判断基準を、少し自然の側に寄せるような学びの場や企業研修をしてきたい」と吉冨さん。

「事業でも些細なことでもいいんですけど、迷ったときに、自然にとってどっちがいいのか、100年単位で見たらどっちがいいのか、そんな価値基準で物事を判断してもいいんじゃないかと思うんです。短期的に見れば、それは間違いに見えるかもしれませんが、長期的に見ればこっちの方が正解、ということは必ずある。水が高いところから低いところに流れるように、自然に囲まれていると、そこにルールがあることに気がつきます。自然のルールを組織や事業に組み込むことができるよう、自然が教えてくれることも体系化してプログラムに落とし込むこともできたらと思っています」

そしてもうひとつ、本質的な課題を見つける人材と、アイデアを考えて実際に取り組むプレイヤーをうまく分けることで、課題の解消を加速させられるのではないかということも、吉冨さんは考えているという。

「本質的な課題に気がつける人って、現場に入って忙しい人なんですよね(課題を見つける人)。現場にいるから、ここが解消されれば良くなるはずってことが見えているんだけど、そのことを口にして『お前やれよ』ってなったら困るから言わない、ってことがあるんですよね。その課題を東京の人(アイデアを出す人)にシェアすると、『こういう資源が使えるよ』『販路があるよ』、とかいろんなアイデアが出てくる。でも、それは東京の第一線にいるから出てくるわけです。だから、むしろ居続けてくださいって話で(笑)。

本質的な課題に気づいている人がいて、アイデアを出す人がいれば、あとはプレイヤーだけ。地元の人はもちろん、移住してナリワイを作りたい人、大学生、地域おこし協力隊など、やりたいけど何からやればいいのか迷っている方にとっては、課題とアイデアが用意されているなんて最高のステージですよね(笑)。でも田舎の感覚と都会の感覚にはやっぱりズレがあって、片方だけだと難しい。そこを調整できる、両方の感覚を持った人があいだに入ることができれば、発見と実践は分離できるんじゃないかって思っています。よく、よそ者は風の人、地元の人は土の人と言われますよね。風と土が合わさって風土が生まれる。僕はそこに、風と土を繋ぎ、間を埋める『水の人』がいると、もっと豊かになるんじゃないかって思うんですよね」

最後に、「土佐山アカデミー」に関わり始めた頃の自分にアドバイスするなら、どんなことを伝えるか聞いてみると、こんな言葉が返ってきた。

「パッと思いついたのは、『なんとかなるから大丈夫だよ』ですかね。もともと僕、お金のこととか得意じゃないタイプなんです。だから事務局長なんて務まるのかなって、最初は結構ビビってたんです。でも、なんとかなります(笑)。あと補助金だけでの立ち上げは結構厳しいよってこと。補助頼みだと、やりたいことじゃなくてやらされ仕事になっていっちゃう。やりたいことをやったほうが絶対にいい。自分たちが一番楽しんでいるということが何より重要です。僕たちが楽しんでいない状態の研修なんて、誰も受けたくないですよね。楽しんでください(笑)」

これから地方での起業を考えるとき、「土佐山アカデミー」の事例から学ぶことは多いはずだ。

 

例えば、その土地によそ者を受け入れてきた文化があるか、チャレンジしやすい風土かを見極めることも大切だ。特に2011年以降、移住やローカルという言葉がメディアに取り上げられるようになって7年が過ぎ、各地に散ったプレイヤーや賑わいが見えやすくなってきている中で、自分にとって、会社にとってちょうどいい場所はどこなのか、難しく考える必要はないが、ちゃんと選ぶことも大事だろう。

 

また、稼ぐ事業と稼がない事業を明確に分ける、というのも重要なポイントではないだろうか。得てして、課題解決型の事業は収益を出すのが難しかったりする。ただ、スタートしたばかりで「売上が上がらないからできない」と言っていると、人や地域との関係が深まっていかない。大きく稼げなくても関係資本を貯めるために行う事業、効率よく組織を安定させるために収益を上げる事業、という風に分けることも、本質的かつ安定的な事業経営をするための選択肢のひとつかもしれない。

 

そして、これからの時代の経営に欠かせないサステナビリティを確保する意味でも、吉冨さんの話していた「自然に寄せる」という目線は重要ではないかと思う。自らの事業やサービスの顧客を幸せにするかだけでなく、働くスタッフは幸せか、環境ひいては地球にとって本当にいい影響を生むのか、自分自身はハッピーか。関わる全ての人にとって良いという選択肢があるとすれば(あるはずである)、それは全ての始まりである「自然」へのいい影響がない物事から生まれるはずがないからだ。まずは、あなた自身を「自然に寄せる」ところから始めてみてはいかがだろうか?

 

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ローカルベンチャーPROFILE

特定非営利活動法人 土佐山アカデミー

所在地:高知県高知市土佐山高川1226番地

設立:2012年10月1日

設立代表者:高橋 幹博

売上:3500万円

従業員:3名

URL: http://tosayamaacademy.org/x/

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赤司研介(SlowCulture)

編集者・ライター。1981年、熊本県生まれ。2児の父。東京の広告会社でコピーライターとしてキャリアを積み、2012年に奈良県東部の農村地へ住まいを移す。転居後は大阪の印刷会社CSR室に勤務。2016年より「SlowCulture」の屋号で活動を始め、「健やかな選択」につながる編集・執筆に取り組んでいる。2018年より「合同会社オフィスキャンプ」に合流。編集ユニット「TreeTree」共同代表。奈良を日英バイリンガルで編集するフリーペーパー「naranara」編集長。「NPO法人ミラツク」研究員。Webマガジン「greenz.jp」や「京都市ソーシャルイノベーション研究所 SILK」のエディター・ライターとしても活動中。