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#経営・組織論

「ちょっとずつ時間やお金を持ち寄るコミュニティをつくる」コミュニティ・ユース・バンクmomo代表理事・木村真樹さんインタビュー(2)

2014.03.27 

前回「非営利の金融機関・NPOバンクとは?」に続いて、コミュニティ・ユース・バンクmomoの代表理事、木村真樹さんへのインタビューをお送りします。

今回のトピックは2つ。配当ゼロの出資者という、それまで見えなかった支援者とどうつながりをつくったのか、そして、なぜ企業や金融機関が地域を支える取り組みに参加してきているのかをうかがいました。 momo支援者との打ち合わせ風景

写真:momo支援者と打ち合わせをする木村さん

地道に集める努力を重ねることで、お金は集まる

石川:現時点で約520名の出資者から、5,000万円以上の出資を集めているわけですが、ゼロからどうやってそこまで原資を集めたのでしょうか。

 

木村:そうですね。「寄付が集まらない三大理由」って聞いたことありますか?

 

石川:いえ、ないです。

 

木村:そのひとつめに「寄付が集まらないのは、集める努力をしていないから」というものがあるんです。momoの場合は寄付ではなく出資ですが、丁寧に集める努力をしてきたから集まったのだと思います。特別なことをしてきたわけではありません。

 

石川:とはいえ、実績とブランドのある金融機関ではないのにお金を集めるのは大変だと思います。ゼロから集める際には、どんなことをされたんですか?

 

木村:momoを始めるときには、実績も何もないわけなので、まずはとにかく理念に共感してもらうしかありませんでした。だから、出資者ではなく、賛同者を集めたのです。若者15人で色んな人たちに呼びかけ、momoがやろうとしていることを丁寧に説明して230人集め、とにかくまずmomoという組織をつくった。それから、あらためて賛同者に「よかったら、出資してくれませんか?」と声をかけていきました。

 

石川:出資してもらうより先に、関係性をつくることから始めたんですね。

 

木村:そうです。自分たちの地域のために、お金を融通するのがmomoですから、ただ集めたのでは意味がありません。ちなみに、momoの設立から3年目には、事業者が融資を希望する総額が、その時点での出資総額を上回ってしまったこともありました。その時には、賛同者にもう一度アプローチしたんです。

ここまで実績を積み重ねてきましたが、今の出資金では足りません。一部でも、出資してくれませんか、と。そうしたら、初期には出資しなかった人たちの多くが応えてくれました。これはうれしかったですね。そんな感じで、とにかく丁寧にひとつひとつやってきました。 金融機関プロボノの様子

写真:momoオフィスで打ち合わせをするプロボノ・メンバー(*1)

*1:プロボノ・・知識・スキルや経験を活かしたボランティアのこと。

石川:お金を通して、地域の人たちのつながりを生みだすのがmomoの役割なのかな、と思いますが、お金を集める側でも、活用する側でも、そのことを徹底されているのですね。

 

木村:つながりの力って、すごく強いですよ。前にmomoの取り組みが1,500万人も視聴者がいる情報番組で特集されたことがありました。さぞ出資者が増えるだろうと思っていたのですが、実際には片手で数えるくらいしか増えなかった。やはり、丁寧にちゃんと理念を伝えて、共感していただくことが大切なんだと再確認した出来事でした。

地域の金融機関が変わったら、momoは解散してもいい

石川:今後momoは、どういった方向に進化していくのでしょうか?

 

木村:momoに出資してよかった、momoから借りてよかった、と今以上に思ってもらえるような仕組みづくりを進めていきます。融資先の数や融資総額ではなく、支援の質を追求したいですね。いつも、そのために何が必要かと考えています。momoだけでは実現できないことは、誰かの力を借りてつくっていく必要がありますし。

 

石川:現時点ではどんなことを進めているんでしょうか。 木村:力を入れているのは、地域の金融機関との連携ですね。僕がこれまでお話してきたことは、理念的には地域の金融機関の人たちと全く変わりません。それに、彼らは金融に関する専門スキルを持っていますし、地域の事情にもすごく詳しいんです。

ワークショップをやると、独居老人が増えているとか、年々商店街が衰退しているとか、本当によく地域のことを見ているし、気にかけています。でも、なかなかその気付きを表現して何かをする機会は、普段のビジネスの現場には少ないわけです。

 

石川:スキルもやる気もあるけれど、それが活かされていない。

 

木村:そういった問題意識があって、2012年から、地域金融機関からのプロボノを巻き込み、2013年には地域のNPOの行動の成果を可視化する取り組みを進めました。来年度(2014年度)は、さらに多くの金融機関や企業を巻き込んで、プロジェクトを立ち上げていきます。 金融機関を巻き込んだプロボノ・プロジェクトを展開

写真:営業時間後のmomoオフィスに集まるプロボノ・メンバー

石川:出資者、ボランティア、融資先のプラットフォームに、地域の金融機関や企業が加わってきているのですね。見方を変えると、momoが切り拓いてきたNPOの支援に、少しずつ地域の金融機関が参入しつつある。このまま順調にいって、地域の金融機関がmomo化したらどうしますか?

 

木村:その時は、momoは必要なくなるんじゃないかな。笑 でも、そう簡単にはそういう世界はやってこないと思います。だからmomoが先例をつくることで、ちょっとずつ流れを作っていく必要があるでしょうね。地域密着で働いていて、地域の事情を熟知している地域の金融ビジネスパーソンがそういう動きを始めたら、地域がものすごく耕されるんじゃないかと思います。

 

石川:momoは地域に、新たなチャレンジを支援するエコシステム(生態系)をつくっていますね。企業参入について言えば、すぐには儲からないかもしれないけれど、社会にとって大事だし、本業につながる示唆があるから取り組む、という流れは今後加速していくでしょうね。

 

木村:特に地域ではリアリティがあるでしょうね。現実的に海外展開が難しい地方銀行や信金からすれば、「地域社会が成り立たなければ、自社のビジネスも成り立たない」という言葉は、グローバルに展開する余地のある大企業よりもはるかにシビアです。自分たちが暮らす地域が存続しなければ、地銀や信金のビジネスは本当に成り立たないですから。

 

石川:確かに・・。おっしゃるとおりですね。地域を限定しているからこそ出てくる視点だと思います。

 

木村:みんなで地域を盛り上げていこう、という機運は、確実に高まっていると思います。面白いのは、それがバラバラの動きではなく、行政や企業、NPOなどセクターが混ざり合って進みつつあるということです。

お金を軸に、みんなが時間やスキルや知恵を少しずつ持ち寄るコミュニティが東海地域には生まれつつあります。税金払っているからOKとか、誰かにまかせておけばいいや、という話ではなくて、みんながちょっとずつ社会参加しないと、地域はよくならないよね、という空気が醸成されつつあるように思いますね。

 

石川:そういうお話を聞くと、僕も地元(愛知県)に帰りたくなります。  

続く:(3) なぜ、momoを立ち上げたのか。木村さんが母親や地域から受け継いだもの。

戻る:(1) 非営利の金融機関、NPOバンクとは。なぜ今、全国に次々とNPOバンクが生まれているのか。

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コミュニティ・ユース・バンクmomo 代表理事/木村真樹

1977年愛知県名古屋市生まれ。大学卒業後、地方銀行勤務を経て、A SEED JAPAN事務局長やap bank運営事務局スタッフなどを歴任。2005年にコミュニティ・ユース・バンクmomoを設立し、若者たちによる“お金の地産地消”の推進や、市民公益活動へのハンズオン支援を行っている。13年4月には一般財団法人あいちコミュニティ財団を設立し、代表理事に就任。東海若手起業塾実行委員会理事、愛知淑徳大学非常勤講師、全国NPOバンク連絡会副理事長、認定NPO法人日本NPOセンター評議員なども務める。

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石川 孔明

1983年生まれ、愛知県吉良町(現西尾市)出身。アラスカにて卓球と狩猟に励み、その後、学業の傍ら海苔網や漁網を販売する事業を立ち上げる。その後、テキサスやスペインでの丁稚奉公期間を経て、2010年よりリサーチ担当としてNPO法人ETIC.に参画。企業や社会起業家が取り組む課題の調査やインパクト評価、政策提言支援等に取り組む。2011年、世界経済フォーラムによりグローバル・シェーパーズ・コミュニティに選出。出汁とオリーブ(樹木)とお茶と自然を愛する。